一昔に比べて近年減少しているというサルモネラ属菌による食中毒。
しかし前回のような集団食中毒や死亡者も時々発生する食中毒だったりもします。
そこで今回は前回に引き継いで、サルモネラ菌についてその食中毒統計データなどを見ながら、その実態と傾向を見ていきたいと思います。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

沖縄県の老人ホームでサルモネラ食中毒発生、死者も

前回お話したように、沖縄の老人ホームでサルモネラ属菌による集団食中毒が発生。
そして1名の死者が出ています。

沖縄県衛生薬務課は1日、名護市の特別養護老人ホームで、施設内で調理した給食を食べた40~90代の男女11人がサルモネラ属菌による食中毒を発症、1人が死亡したと発表した。(略)

施設の届け出を受け北部保健所が21日から調査。「春雨のあえ物」と、有症者7人、調理従事者3人の便から検出されたサルモネラ属菌の血清型が一致し、食中毒と判断した。

サルモネラ属菌による集団食中毒自体は、1~2年に1回くらいの頻度でたまーに発生するものなので、まあ珍しくはありますがそこまでというわけではありません。
事実、昨年も9月に54人の集団食中毒が発生しています。

ですが、死者まで出るというのは結構なレアケース。
前回も触れましたが、日本国内でも10年ぶりの話です。

毎年、食中毒による死者というのは数名くらいの数で出ています。
ですが、そのほとんどは自然毒。誤って有毒植物を食べたり、といったケースです。
実際に、昨2020年においても自然毒で3名が死亡。
たまにノロウイルスでの死者が出たりもしますが(2019年で1名など)、そのくらいでしょう。

そんなわけで、サルモネラ食中毒で死者が出るというのは結構珍しいことなのです。

とはいえ、1980年代から2000年くらいまでは、サルモネラ食中毒というのは今よりも頻度の高い食中毒でした。
つまりここ20年で我が国はサルモネラ食中毒を克服した、とまではこのように言えないでしょうが、しかしそれでも大きく減退させてきたのは間違いありません。

…と一般的に言われています。
言われているんですが、それがどのくらいのものなのかについては余り具体的には言われてもいません。

そこで今回は、厚生労働省の統計データなどから、その実態や傾向について見ていきたいと思います。

なお、まだ前回の記事を読んでいないという方は、出来ましたら先にこちらの記事に目を通しておくと、よりお話の理解が早いことかと思います。


一般財団法人顕微鏡院

サルモネラ食中毒による死者数は本当に減ったのか

いやいや、「サルモネラ食中毒による死者数は本当に減ったのか」というけど、そりゃ10年出てないんだから減ったんだろうよ。
と、そんな感も確かにするところですが(笑)、まずは前回からの話をついで、ここから実際にデータを見ていくとしましょう。

実は厚生労働省では日々の食中毒報告を集計し、それらを年度データにまとめて毎年定期的に公表しています。

今では大体3月下旬くらいにその前年データが集計し、出されています。
ですから最新のデータは、まあ速報もあるものの年度データとしては昨2020年のものです。
この統計は1996年、平成8年からスタートしていますので、ここから昨年までのデータをぼくが集計し、オリジナルでグラフをいくつか作ってみました。
今回はそれらを使ってお話を進めていくとしましょう。

まずは、サルモネラ食中毒による死者数のグラフです。

どうでしょうか。
こうやって見ると、2006年くらいまでは毎年1~3名の死者が出ていたことがわかります。
他データを見てもわかるのですが、しかしこのあたりを境にしてサルモネラ食中毒はぐっと減っており、死者についてはほとんど出ていないことがわかります。

しかし2011年に珍しく3名が犠牲に。
そしてそれ以降は0人が続き、今年2021年に、その横に1名が追加される、といった状況です。

ちなみに前回もお話した通り、2011年の3名というのは、なぜか全て九州。
しかも2名はともに沖縄県。
そして痛ましいことにそのうち1名は、恐らくは生卵を食べた、まだ8歳の子供でした…。

サルモネラ食中毒の事件数は本当に減ったのか

いやだから「サルモネラ食中毒の事件数は本当に減ったのか」って、そりゃ減ってるんだろうよ。
そう言われかねませんが、まずはやはり実際にデータを見ていきましょう。

どうでしょうか。
これを見ると、1999年をピークにして、以降は減少傾向を示しているではありませんか。
しかも2000年代後半にもなると、驚くほどに減少が見られています。
以前は年間数百件はあったサルモネラ食中毒が、2000年くらいから100数件くらいになり、そしてやがては3桁を割るようになっていくのです。

これらのことからも、ここ30年近くで日本国内のサルモネラ食中毒が大きく減少していることがわかるでしょう。

これをもう少し全体的な視野で見たのが、こちらです。


国立感染症研究所

これは「国立感染症研究所」さんのところののデータなのですが、幾つか興味深い事実が見られます。
まず、サルモネラ食中毒に関しては、以前はそれほどでもなかったものの、90年代後期になってぐんと上昇した。
しかしそれ以降、ガクンと激減している。

そして、これにほぼ同調を見せているのが、実は「腸炎ビブリオ」による食中毒。
これも90年代のピークから、激減に転じています。

しかし一方で、「カンピロバクター」に関しては減少がそれほどに見れていない。
また同様に減少がそれほど見られないものも、他にありますね。
「小型球形ウイルス」。つまり、「ノロウイルス」です。

これらのことから、日本の食中毒のトップランカーがサルモネラと腸炎ビブリオから、カンピロバクターとノロウイルスに、2000年代からその座を譲ったことがわかるでしょう。
うーむ、興味深い!

サルモネラ食中毒の患者数は本当に減ったのか

毎度お話するように、食中毒統計には2つの見方があります。
それは、上で触れた食中毒の「事件数」と、もうひとつがそれによって生じた食中毒の「患者数」です。
食中毒が多い、少ない、などという話をするとき、それら双方からの視点が必要であり、いずれのデータを欠かせても説得力を失います。

というわけで、サルモネラ食中毒の、今度は「患者数」を見てみましょう。
サルモネラの食中毒の患者数は本当に減ったのでしょうか。

いや、だーかーら、減ったっつってんべ!?「ビキィーッ!」

ちょ、ちょ、判りましたからデータを見ましょう。

と、このように、患者数が減ったのがわかるでしょう。
成程、1990年代まではサルモネラ食中毒の患者数というのは毎年なんと1万人を超えていた。
しかしそれが2000年代に入ると数千人レベルに減っていく。
そして今や数百人くらいにまで抑えられるようになった。

ただし面白いのは、事件数ほどキレイになだらかな曲線を描いていないことでしょう。
つまり、ポツリポツリと上昇下落を繰り返している。
事件数で一番多かった1999年ではなく、1996年がピークなのもちょっと気になる。
実際、この1996年というのは、80年代から見ても一番のサルモネラ食中毒の患者数ピークなのです。

ではなぜこの時期、サルモネラ食中毒が多かったのか。
その理由は、サルモネラ属菌の中でも「Salmonella Enteritidis(サルモネラ・エンテリティディス、以下SE)」が広く鶏の間に蔓延したため、卵の汚染が広がったからと言われています。
1980年代後期、欧米、とくにイギリス、フランス、そしてやや遅れて米国などを中心にSEによる鶏の汚染が広がり、国際的な問題となります。
結果、1989年にはジュネーブで「鶏および卵のサルモネラ汚染防止に関するWHO緊急会議」が行われ、サルモネラ食中毒に対する各国の意識統一や規制見直しなどが図られたのですが、しかしそんなことは簡単に解決する話ではありません。
そして90年代、ヨーロッパから輸入されたSEの保菌鶏がその発端となり、日本にもSEが蔓延することになったのです。上での90年代の高い事件数は、こうして発生が広がったがゆえのものでした。

さて。
先程お話した通り、患者数データでは激減がみられている2000年以降でも、その年によって時折ポコンと上がる年がみられますね。
2011年や2015年などがそうです。
もう一度グラフを。ほら、微妙に2011年と2015年は微妙に上がっているでしょ?

つまり事件数自体はそれほど高くはないのに、患者数だけが高い年が、時々あるということ。
それにはどんな理由があるのでしょうか。

2011年については、前回お話しました。
死者が3人出たのみならず、北海道の中学校で患者数1,500人を超える大規模なサルモネラ食中毒が発生したのです。
それが全体数を押し上げる結果となってしまった。

では2015年はどうか。
この年には、12月、愛知県の仕出し弁当で1,200人以上ものサルモネラ食中毒が発生したのです。
このように、事件数は確かに近年大きく減少はしているものの、しかしときにはそれが大規模に広がりかねないのがサルモネラ食中毒の怖いところでもあるでしょう。

サルモネラ食中毒が減少したのはなぜか

このように、近年は大きく減少傾向がみられるサルモネラ食中毒。
しかしながら、何でも話やデータによると、海外、とくにサルモネラに悩まされている英国や米国では日本ほどまでに効果が出ていない、とも言われています。

特に毎年140万人が感染し、400人近くが死亡しているという推計もある米国などは、7.2℃以下の低温流通義務化を進め、また検査体制を強化しているのにも関わらず劇的な効果が見込めず、増加傾向の時期すらもあったほどです。
このことは、非加熱での鶏卵の生食の危険性はまず置いたとしても、日本の鶏卵の安全性を語る裏付けにはなるでしょう。

日本では、当時サルモネラ食中毒のピークを迎えていた1998年、鶏卵の表示基準や液卵に対する規格基準を定めるとともに、ワクチンを使用開始。
加えてメーカー側の努力により、衛生管理レベルが全体的に上昇したことも大きな理由といえるでしょう。

そもそも、サルモネラ菌というのは鶏や牛、豚などの動物の腸管内に生存しています。
ではこの腸管内にあるサルモネラがどうして鶏卵を汚染してしまうのか。

その経路は二つあります。
何らかの理由で卵の表面を汚染してしまう「on egg汚染」と、卵の中にそもそもサルモネラが入り込んでしまう「in egg感染」です。

鶏卵へのサルモネラの汚染経路
  • on egg汚染(卵殻の表面を汚染)
  • in egg汚染(卵内を汚染)

 

「on egg汚染」の場合、卵殻の洗浄・殺菌によって取り除くことはできなくもありません。
ですが「in egg汚染」は卵内部ですから、そうした対策が届きません。

ただしこれら汚染卵のうち、その99点何%くらいが「on egg汚染」であり、「in egg汚染」はそれこそ数千個に1個程度しかありません。
基本的にそれ以外の、ごく一般的な原卵は無菌だと言われています。
一方で、産みたて(洗浄前)の鶏卵の卵殻の表面には夥しい細菌が付着しています。(10の6乗~7乗くらい)
当然その中にはサルモネラ菌も含まれていることがあり、これらが卵内に入りこむことで鶏卵汚染が進むことになります。
世のほとんどの鶏卵のサルモネラ汚染は、実はこうして発生しているのです。

そこで、重要になるのが鶏卵加工段階での、サルモネラon egg対策です。
つまりは、鶏の感染防止対策や感染率の低下対策が必要になります。

これについては現在、GPセンターをはじめとした生産者側でサルモネラ陽性雛を排除し、感染源の鶏排除、洗浄・抄読強化、ネズミの侵入・生息減対策、などから、さまざまな対策がなされます。
一般論としてですが、鶏卵の生食を前提としない(のでそれほどに徹底した殺菌対策をしない)欧米に比べ、生食が前提(が故に万全を期す努力をしている)日本とでは、その管理レベルの桁が違っています。

それらの結果、今や鶏卵のサルモネラ汚染は、10万個に3検体のみ、とも言われるほどになり(注:もうちょっと多い説もあり)、またその菌数も問題となる100を超えなることはないともいわれています。

まとめ

今回は前回に引き続き、サルモネラ食中毒について、こちらでは統計データを実際に見ながらお話を進めさせていただきました。

なお、今回の記事は前回↓のお話をついでのものですが、

それ以外にも、以前ケーキのお話の際に、サルモネラ食中毒について触れています。
こちらの記事↓も興味があれば読んでみてください。
80年代のケーキによる大規模サルモネラ食中毒など、ちょっと興味深い話となっています。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

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