最新の食品業界ニュースから気になった話題を定期的にピックアップし、食品衛生管理のプロの目線からコメントさせていただきます。
今回の話題は、沖縄で発生し、あまつさえ死者まで出したというサルモネラ菌の集団食中毒についてお話します。

本日の時事食品ニュース

 

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

沖縄県の老人ホームでサルモネラ食中毒発生、死者も

皆さん、ゴールデンウィーク真っ盛りですが、楽しんでいますか?
ぼくは自宅でも基本毎日お仕事ですし(泣)、新型コロナのこともあって基本的には巣ごもり連休なんですが、それでも家族皆でルーフバルコニーで焼き肉したりと、それなりに満喫しているところです。

さて、そんなGWの最中、沖縄県の老人ホームで給食を食べてサルモネラ属菌の集団食中毒が発生、死者も1名出たというニュースがあがってきています。

沖縄県衛生薬務課は1日、名護市の特別養護老人ホームで、施設内で調理した給食を食べた40~90代の男女11人がサルモネラ属菌による食中毒を発症、1人が死亡したと発表した。(略)

施設の届け出を受け北部保健所が21日から調査。「春雨のあえ物」と、有症者7人、調理従事者3人の便から検出されたサルモネラ属菌の血清型が一致し、食中毒と判断した。

ではこれについて、プロの衛生管理屋として少しばかり考えてみたいと思います。

サルモネラ食中毒はどうして発生したのか

死者まで出したという今回のサルモネラ集団食中毒。
このようにサルモネ属菌の集団食中毒は、時折給食などで起こることがあります。

今回のは11人と、規模としてはそれほど大きいわけではありませんが、しかし死者が1人出ています。
サルモネラ食中毒で死者が出るというのはここ近年では珍しいことではありますが、このように全身感染に移行してしまった場合、重篤化あるいは死ぬこともないわけではありません。
特に高齢者においては感染性動脈瘤の合併症の危険も高まる、と言われています。

さて今回の食中毒ですが、原因は「春雨の和え物」となっています。
春雨と何をあえたのかはわかりませんが、春雨をもどし食材とあえるだけでしょうから、一般的に考えて加熱はしません。
調査した保健所も、「食材を加熱しておらず、菌が食品を汚染した可能性がある」と言っていますので、春雨あるいは具材を扱うときに何らかのかたちで汚染されたのでしょう。

特に考えなければいけないのが、鶏肉や卵その他生肉など、何かの食材を扱った際にサルモネラ菌が器具や食材に付着し、それが汚染を広げたという二次汚染の可能性です。
このようなサルモネラの二次汚染は、割と起こり得るものです。
サルモネラは乾燥に滅法強いため生存していることもあり、また少数の菌数でも発症する(SE)ので、二次汚染が起こりやすいのです。
これについては、後にも事例を出してお話するとしましょう。


一般財団法人顕微鏡院

サルモネラ菌について

一言で「サルモネラ菌」といっても、そこには2000種以上が含まれます。
その中にはチフス菌などもあるのですが、一般的に「サルモネラ菌」といえば「Salmonella Enteritidis(サルモネラ・エンテリティディス、SE)」が代表的です。
ちなみにこのSEを「ゲルトネル菌」、ともまれに呼ぶことがありますが、これは1888年、ドイツでこの菌を発見したゲルトネル教授にちなんだものです。尤も近年はそう呼ぶことも少なくなりましたが。

このサルモネラ菌は牛や豚、鶏などの腸内に生息する菌ですが、それ以外にもネズミやほとんどの家畜、ペット、鳥類の腸内にも生息しています。
ですからネズミが多い施設内で糞が混入すれば、サルモネラの食中毒の危険性も高まることになります。

サルモネラ属菌をちょっと専門的に言うと「通性嫌気性のグラム陰性桿菌」となります。
ま、難しいことはさておいて、取り敢えずは空気があってもなくても増える細菌なのだ、と思ってください。
そのため、例えば鶏肉に付着していたサルモネラ菌が増殖し、それを食べると通常8~48 時間後(時には3~4 日後に発病事例もあり)、腹痛、下痢、発熱(38℃~40℃)、嘔吐などといった症状を起こすことになります。

ではどんな食品でサルモネラ食中毒が起こりやすいのか。
サルモネラの主な媒介食品といったら、代表は鶏肉と生卵です。
実際、鶏卵の生食、つまり生卵でのサルモネラ食中毒では死者も出ています。(次項でお話します)

それから鶏以外の食肉、乳、その他野菜などとなります。が、まあ大概の場合はほぼ、鶏由来です。
他にも色々あるけれど、ダントツで、まずは鶏です。


一般財団法人顕微鏡院

天下の顕微鏡院さんのとこの資料をお借りします。
少し古めの資料ですが、いまでも実状はそう変わらんでしょう。
このように、圧倒差をつけてダントツで鶏になっています。
それと豚や牛由来もこのように結構あるのもポイントですね。

それと、「サルモネラ」は乾燥には滅法強いので、低温度で調理してから乾燥によって水分活性で菌対策、なんて製品には時折食中毒が出ます。
イカの乾製品、イカ菓子や珍味みたいなもの。
これでも時々起こります。
付近の海が鶏や動物の糞便で汚染されていて発生、というケースです。

ただし。
サルモネラは加熱に弱い菌でもあります。

このように65℃で3分。
70℃だと1分で死滅します。
それほど加熱条件が厳しいわけではありません。
O157やカンピロバクターより、熱に弱い。

つまりまともに調理すれば、付着していた「サルモネラ」はほぼ死滅する、というわけです。

10年ぶりに死者が出たサルモネラ食中毒

実はサルモネラ菌による食中毒で死者が出たというのは、ここ近年なかったことでした。

厚生労働省の食中毒統計をさかのぼってみると、サルモネラ食中毒で死者が出たのは、今回の前だと2011年。
10年もさかのぼることになります。
ちなみにこの年はサルモネラによる死亡者が3人と、例年にないものでした。

しかもその3人のうちの2人は、今回と同じ沖縄県で起こったサルモネラ食中毒事件だった。
上報道での「沖縄では10年ぶり」というのは、そういうことです。
つまり2007年以降、サルモネラ食中毒によって死亡者が出たのは、1人を除いてそのほとんどが沖縄で起きている、ということになります。

更に言うのであれば、その2011年の3人のうち残る1人は、宮崎県、つまり同じ九州です。
このときは、宮崎県で生卵入りオクラ納豆を食べた老夫婦が一人死亡しています。
その結果、サルモネラ菌に汚染された生卵が使用されたことが判明しました。
これにより出荷業者は卵の回収義務に加え、損害賠償数千万円の支払いが裁判によって決定したということです。
(沖縄でのサルモネラ食中毒死亡も、生卵が原因ではないかと疑われました)

実はサルモネラによる死者というのは90年代後期から2000年代初頭くらいにかけて、毎年ポツリポツリと数人出ていたものだったのです。
それが2000年代後期から、すっかり見られなくなった。
だからこの2011年というのはちょっと稀な年だったと言えるでしょう。

ちなみにサルモネラ食中毒自体、それまでは年間数百件程度も発生していたのに対し、2000年くらいからガクンと減っており、2008年以降からは年間3桁に至ることはなくなりました。
これについては、実際にデータを見ながら次回、改めてお話したいと思います。

サルモネラ食中毒の当たり年?2011年

先のとおり、日本国内でサルモネラ食中毒によって死亡者が出たのは、2011年以降10年ぶりということになります。
そしてこの年は死亡者が3人と、例年になく多い年となってしまった。

それからもうひとつ、2011年はサルモネラ食中毒の患者数が、過去十数年でも多い年となっていたのです。
ここらへんは次回統計を見たほうがわかりやすいのですが、2008年以降減少傾向にあり、翌年2012年からは年間患者数が3桁にまで減少していくサルモネラ食中毒に対し、この2011年だけちょっとポコン、と頭出ていたのです。
まさに2011年というのは、サルモネラ食中毒の当たり年でした。(食中毒だけに!)

しかも注目されるのは、事件数はそれほど変わらなかったということです。
つまり2011年は、サルモネラ食中毒の発生数はそう変わっていないのに、患者数が増えたということです。
どういうことか。
集団食中毒の規模が大きかったのです。

その象徴が、北海道でこの2011年に発生した、中学校での給食によるサルモネラ食中毒でしょう。
結果、1522名がサルモネラ食中毒となりました。

この事件はサルモネラ食中毒を知るのに優れた事例といえるでしょう。
少し深堀りしてみます。

まず、ここでは、ブロッコリーが原因だと究明されました。
ではブロッコリーは加熱不足だったかというと、しかしそうじゃなかった。
ブロッコリーはしっかり茹でられていたのですが、その茹でたブロッコリーを他の野菜と混ぜるための機械が原因だったということが後に判明するのです。

この機械のシャフトは温水で洗浄されていた。
しかし、その温水は52℃に設定されていたのです。
52℃ではサルモネラを殺すことが出来ません。
上にも書きましたが、サルモネラ属菌を死滅させるには65℃で3分、70℃だと1分という加熱が必要になるのです。

しかもさらに、その機械の近くで生の鶏肉を調理していたことも判明します。
つまり鶏肉に付着していたサルモネラ菌が、その機械のシャフトを汚染し、それが洗い流されず、また温水で死滅しきれず、汚染を拡散させてしまった。
いわゆる「二次汚染」というもの、それがこの大規模食中毒の原因だったのです。

まとめ

今回は沖縄で死亡者まで出てしまったサルモネラ菌の食中毒についてお話いたしました。

上の通り、サルモネラ食中毒は確かに近年、減少傾向にあります。
ではどのようにそれが減少していったのか。
次回はそれをもっと具体的に統計データとして追ってみようではありませんか。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

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