最新の食品業界ニュースから気になった話題を定期的にピックアップし、食品衛生管理のプロの目線からコメントさせていただきます。
今回は、埼玉県で発生したウェルシュ菌による集団食中毒についてお話していきます。

本日の時事食品ニュース

 

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

埼玉県の福祉施設でウェルシュ菌の集団食中毒発生

えー、皆様すっかりご無沙汰してしまっております。

前回の最後の更新が、3月半ば。
つまり1ヶ月、更新をさぼってしまいました。
ハイすみません、全てこの高薙の責任であります。
めたくそ言い訳なんですけど、事務所の引っ越しやら年度末年始の業務やら、その疲れなのか途中体調を崩したりなど、それこそ「あっ…!」と言う間に1ヶ月が経過してしまいました。
恐ろしく早かった…。

そんなわけで本日より、改めての更新再開となります。
再びどうぞよろしくお願いします。

ということで、再開1回目は最近発生した食中毒のお話をするとしましょう。
実はこの4月、立て続いて大規模な食中毒が多発しているのです。
一体どういう状況か、追っていきたいと思います。

「93人が食中毒…豆腐ハンバーグ、カボチャの甘煮食べ 埼玉・羽生の施設 熱に強いウエルシュ菌検出、対策は」

埼玉県は、羽生市の障害者施設を運営する社会福祉法人「共愛会」で、7日に提供された豆腐ハンバーグなどを食べた3~81歳の入所者の男女93人が下痢などの症状を訴え、うち28人と従業員1人から食中毒を引き起こすウエルシュ菌が検出されたと14日発表した。

このところ多発している集団食中毒

先にも触れたように、実はこの件のみならず、今年に入ってからこのところ大規模な食中毒が、実はポツポツと起こっていたりするのです。
得にこの4月中旬には、いくつかの食中毒報告が集中的に挙げられています。

例えばこれを書いている4月17日、秋田県大仙市で弁当によるノロウイルスの集団食中毒で37人が発症したかと思えば、

先の件に前後して、南では長崎県長崎市の保育園で、41人の食中毒が発生。
こちらの原因は、なんとカンピロバクター。

うーん、カンピロバクターで41人ってのは多いですね。

で、こういう場合は大概が二次汚染だったりします。
つまり、カンピロバクターに汚染された器具や手指やらで食品が二次的に汚染される、ということです。
この場合、効率よく(?)汚染されるので、このように集団化することがよくあります。

こちらの報道には「生肉出してないのになぜ?」なんて書かれていますが、そうじゃないんですよ。
生肉(の加熱不足)が原因じゃなかったからこそ、このように大規模化したんですよ。

あ、ちなみにノロウイルスによる集団食中毒もあちこちでまだ連発しています。
4月13日、茨城県日立市の特別養護老人ホームで35人が発症とのこと。

それから今月上旬の4月4日には、三重県四日市市の結婚式場で、やはりノロウイルス。
こちらは59人が食中毒、とのこと。
めでたい式なのに、いやはや。

この他にも、3月下旬には岐阜の保育園で原因不明の集団食中毒で50人が報告されていたりなど、このようにこのところ結構大きめの食中毒がポロポロと報じられています。

そして何より、少しさかのぼって2月にはやはり同じ埼玉県(上尾市)で、中学校での給食が原因で700人を超えるというウェルシュ菌での大規模な集団食中毒が起こっています。
これについては、今のところ今年最大規模の食中毒だということで、ウチでも記事に取り上げていますね。
しかし連続すぎだろ、埼玉県!

そんなわけで、このように細菌縦続いている集団食中毒のその一つが、今回挙げているこの埼玉県羽生市でのウェルシュ菌による食中毒です。

ウェルシュ菌とは

まずはちょっとだけ基礎的な話を。
何度か解説していますので、知っている、読んだという方はこの項は読み飛ばしてしまって結構です。

ということで、以下、簡単にウェルシュ菌をご紹介します。
集団食中毒になるくせに、事件数も少なく、また比較的軽症なことが多いので結構マイナーだったりしますので。


Wikipedia

さて、このウェルシュ菌は「芽胞」という熱に強い頑丈な菌のバリアを形成する、いわゆる「偏性嫌気性」の食中毒菌です。
「偏性嫌気性」というのは、酸素のあるところではあまり増殖しない菌のことです。
ですから、スープやカレー、煮物などの中の、酸素のないところで増殖します。
尤も少しくらい酸素があっても増殖するのがこの偏性嫌気性の厄介なところでもあったりします。
しかもタンパク質を分解させないため、味にも変化がなく、食べても気づきません。

実はウェルシュ菌は、土壌や水中など、自然環境にも広く分布しています。
土壌菌ですから酸素のない土中にいますので、野菜なども汚染されています。
また人間や動物の腸内にも普通にいる菌でもあります。
というか、実はウェルシュ菌には種類が幾つかありまして、でその仲間の一部が食中毒を起こす毒素を作る悪い菌なのです。

またウェルシュ菌は、芽胞によって高熱の加工にも耐え、増加します。
これによって増加したウェルシュ菌を食べると、人間の腸内で毒素(エンテロトキシン)を作り、食中毒が発生します。

ただしウェルシュ菌の食中毒は、規模は大きいですがそれほど重症にならないことが多いです。
およそ一日程度で回復することも多いので、問題が深刻化しないこともままみられます。

原因食材は何だったのか

ということで再び今回のニュースに戻りましょう。
今回、食中毒を起こしたセントラルキッチンで作ったメニューを見てみましょう。

食中毒発生時のメニュー
  • ご飯
  • 豆腐ハンバーグ
  • かぼちゃの甘煮
  • すまし汁

 

果たして全メニューがこれらなのかは全くわかりませんが、報道に見られたのは上のようなものです。
皆さん、これらの中で一番怪しいのはどれだと思いますか。

ぼくはやはり「かぼちゃの甘煮」ではないかと思います。
ウェルシュ菌食中毒の原因食品は、このような大量に加熱調理、とくにカレーやシチューなどのような煮物が多いからです。

まず上の基礎解説からもわかるように、ウェルシュ菌というのは土壌など自然界のどこにでもある菌です。
それらに汚染された食材が加熱されても、芽胞を形成されてしまい、死滅することはありません。
そしてウェルシュ菌が残った状態のまま、長時間放置されると、再び発芽増殖を始めます。

しかも、ここで厄介なことが2つあります。
まず1つ目は、ウェルシュ菌が発育できる温度は高めだ、ということ。
ウェルシュ菌の増殖最適温度は、43~47℃。これは食中毒菌としてはかなり高めの温度帯です。
ということはつまり、加熱調理後の早いうちから増殖が可能だ、ということになります。

それから2つ目は、増殖時間が短めだということ。
ウェルシュ菌は細菌なので、細胞分裂で増殖します。その時間が45℃で約10分しかからない。
つまり、1つ目に合わせて考えると、加熱後の早い頃から増殖が進みやすい、ということになります。

これらのことを鑑みるとわかるように、ウェルシュ菌による食中毒を防ぐためには「速やかな冷却」が重要だ、ということです。
それを怠った場合、このような煮物の中でウェルシュ菌が増殖。
その多量に増えたウェルシュ菌を食べた人の腸内で毒素(エントロトキシン)が生成され、食中毒に至る、というわけです。

報道のリンク先にある下のコメントは、そういう意味を指してのものだということです。

県食品安全課は、「ウエルシュ菌は熱に強い形態をとり高温でも死滅せず、調理後に放置すると増殖する。
放置せず早く食べたり、早く冷やす工夫をしたりしてほしい」と呼び掛けている。

まとめ

今回は埼玉県羽生市で発生したウェルシュ菌の集団食中毒についてお話いたしました。
ウェルシュ菌については何度か書いていますので、そちらの記事も是非読んでみてください。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

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