最新の食品業界ニュースから気になった話題を定期的にピックアップし、食品衛生管理のプロの目線からコメントさせていただきます。
今回は、またまたウェルシュ菌による集団食中毒が発生。
しかも今度は、7000人超ということです。

本日の時事食品ニュース

 

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

またもやウェルシュ菌での集団食中毒が発生

いやねえ、実はニュースの消化が追いついてないんですよ。
実はこれら以外にも幾つか取り上げたいネタはあるんですが、ごめんなさい、書くのが全然追いついてない。
更新がちょっと遅れているのも、そんなわけですみません。
一体誰が悪いのかというと、これはもう多分ぼくじゃなくて、ここ数日ほどぼくの仕事の能率を影ながら恐ろしく低下させているディープステイト以上の暗黒陰謀因子「杉花粉」に全ての要因があるはずなので、攻めるのはそっちにしてくださいズルルルルルー…。

さて、しょうもないイントロ挨拶はこのへんで。
つい先日、静岡県沼津市の小学校で発生した、給食によるウェルシュ菌の集団食中毒を取り上げました。
ここでは、前々回の記事通り84人の発症者が出たわけですが。

ところが、なんと。
その僅か数日内には、今度は埼玉県で、しかもそれをさらに大きく上回る規模でのウェルシュ菌集団食中毒が発生した、というニュースが方向られていたのです。

埼玉県上尾市の中学校に通う生徒などおよそ700人が下痢や腹痛などの症状を訴え、埼玉県は、給食が原因の集団食中毒と断定し、詳しい原因を調べています。(略)

県の保健所が調べたところ、症状を訴えているのは、市内の5つの中学校の生徒700人と教員18人の、合わせて718人に上りました。
県によりますと、症状を訴えた生徒などから食中毒の原因となるウエルシュ菌が検出され、症状が出た状況から今月17日に出された給食が原因の集団食中毒と断定しました。

しかしまあ、たまたまというのものあるのでしょうが、よくこんなに連続するものですなあ。
それもなんとこちらでの発症者数は、700人オーバー。
結構な規模というか、10倍とまではいかずともそのレベルの拡散ぶりです。

そんなわけで、このように真冬であるにも関わらず立て続いているウェルシュ菌食中毒について、これまで以上に、より深く掘り下げてみたいと思います。

大規模化しやすいウェルシュ菌食中毒

さて、今回のこのウェルシュ菌食中毒ですが。
同じウェルシュ菌由来であるにも関わらず、前回の患者数は84人。
いや、それでも結構多い方でもあったんですけど、対して今回は700人以上というのだから、これは相当な規模です。

このように、ウェルシュ菌食中毒の一番の特徴として、まず何よりも「集団化しやすい」ということが挙げられます。
つまり、食中毒一発での患者数がえらく、膨れ上がる。
これが、何はさておきウェルシュ菌食中毒、最大の特徴です。


Wikipedia

もう少し具体的に話していきましょう。
ウェルシュ菌食中毒の発生件数自体は、毎年平均して、およそ30件程度。
厚生労働省統計を見ても、例えば2019年で22件、2018件で32件だから、まあ毎年そんな感じになってます。
尤もこれらは「年間を通して」の総計数ですから、どちらかといえば決して多いものではありません。
対して、カンピロバクターなんかは319件(2018年度)とその10倍発生しています。
このことからも細菌性食中毒としては、ウェルシュ菌食中毒事態は、それほど多いわけではないのが判るでしょう。

つまりウェルシュ菌食中毒の発生件数はカンピロバクターの1/10でしかないのですが、しかし。
患者数から見ると、全く違う側面を見ることになります。
なんとそのカンピロバクター患者数1,995人を300人以上も上回る2,319人(いずれも2018年度)出しているのだから、何をいわんや。
このように年によって多少の差はあれど、ウェルシュ菌食中毒の患者数は毎年、カンピロバクターを数百人くらいは上回っており、いかにウェルシュ菌食中毒が頻度の割に集団化しやすいかを物語るものとなっています。

加熱食で起こるウェルシュ菌食中毒

まずウェルシュ菌食中毒最大の特徴、それは「頻度の割に集団化がしやすいこと」だというのが判った。
さて。
続くウェルシュ菌食中毒の特徴はというと、「高温で加熱された食品でおこりやすい」ということです。

ある統計によると、ウェルシュ菌食中毒の原因食品のうち、50~70%以上が加熱された食品で発生していることが報告されています。
一般的にウェルシュ菌食中毒は、カレーやシチュー、ロールキャベツのような、高温で長時間かけて煮込んで作るような食品でよく発生される、と言われています。
これが、ウェルシュ菌食中毒が別名「給食病」と言われている所以です。

例えば、ウェルシュ菌食中毒を起こす一番のイメージといったら、寸胴鍋で大量に作る給食のカレーが想像つくのがこの食中毒の世界です。
これはどうしてなのでしょうか。
面白いことに、このことは、ウェルシュ菌の特徴に大きく関わっている話でもあるのです。

ウェルシュ菌の特徴と、煮込み料理で起こる理由

実はウチでも以前、ウェルシュ菌についての基礎的な解説記事を、書いてきました。

ですが、今回はそれらをも踏まえ、さらにもう少し深くウェルシュ菌について追ってみるとしましょう。

さて。
ウェルシュ菌とは何か。
その質問について、一言で答えるならこうなります。
ウェルシュ菌というのは、クロストリジウム属に属する芽胞形成の偏性嫌気性グラム陽性桿菌だ、と。

…うん、わかります、わかります。
何を言ってるんだ、と。
文章でヅラヅラ書いても、何のこっちゃとなりますよね。(笑)

そこで、ウェルシュ菌の特徴をめっちゃ判りやすくまとめてみるとします。

ウェルシュ菌の主な特徴
  • 芽胞を作る
  • 高温で加熱してもなかなか死なない
  • 酸素がないところで増える(偏性嫌気性)
  • 高めの温度帯で増える(43~55℃)
  • 繁殖スピードが速い(45℃で10分)
  • どこにでもいる

 

ええと、しかもこれらの特徴は皆、互いに関連していることだったりします。
ですがその関連を追ってみると、成程そりゃ確かに給食などで集団食中毒になるわ、と腑に落ちる、といったつながりになっています。
そして、それが判るとウェルシュ菌食中毒というものがよりよく見えてくることでしょう。
そんなわけで、一つ一つ解説していきますね。

まずそもそもとして、ウェルシュ菌というのは、どこにでもいる細菌です。
普通の人や動物、魚などの腸内にも存在するし(といってもウェルシュ菌といっても種類がいくつかあって、ぼくらの腸内に普通にいるウェルシュ菌は食中毒を起こさない種類のものです)、自然界にも普通に存在していて、水や土の中にも存在しています。

つまり、土中にいるということは野菜などの農産品にも付着していても、全くおかしくはない、ということです。
だから、自宅でもカレーやシチューなどを作る前には、野菜をよく洗わなければいけないのです。
じゃないと、ウェルシュ菌を付着させたままカレーやシチューを作ってしまいかねない。

いやいや、待てと。
待ってくださいよ高薙さんよ、と。
あのな、カレーにしたってシチューにしたって、「グッツグツ」に長時間煮込んで作るじゃないか、と。
だって、人によったらカレーなんて3時間以上も煮込む人だっていまもんね。
んまあ少なくたって、30分くらいは普通に「グッツグツ」に煮込みますよね。
で、あんだけ「グッツグツ」に煮込んで、食中毒の原因になる菌なんて生きていられるわけないじゃないか。
これをどう説明すんだよと。

ええ、そうなんです。そうなんですとも。
普通なら、そう思いますよね。
でもその「普通」ではないのが、ウェルシュ菌なのです。

では、どういうことなのか。

「芽胞」ていうのがあるんですね。
で、ウェルシュ菌における最重要な特徴として、この「芽胞」を作る菌だということが挙げられます。
さてこの「芽胞」というのは、細菌によって作ることができる、外側のバリアのような固い殻のことです。
この芽胞に守られることによって、ウェルシュ菌は普通の加熱での死滅を免れることができるのです。

つまり、ちょっとやそっと煮込まれたからといっても、芽胞にくるまれたウェルシュ菌は死なない、ということになります。
「ちょっとやそっと」と書いてますが、実際に完全にウェルシュ菌を殺しきるためには、100℃で6時間以上の加熱という、尋常ではない加熱が必要となります。
この「尋常ではない加熱」が「ちょっとやそっと」のレベルです。
勿論こんな調理法は普通やらないので、ウェルシュ菌の食中毒を防ぐとしたら、調理前の野菜の洗浄で洗い流すことが重要だ、ということになるわけです。

高温HEAD-CHA-LA、無酸素は寧ろご褒美、それがドMウェルシュ菌

さあ、高温調理もHEAD-CHA-LAなウェルシュ菌。
騒ぐ元気玉…とは全然言いませんが、彼らお得意の「芽胞」にくるまれて、高温をやり過ごします。
それがウェルシュ菌です。

それから、ウェルシュ菌の次の特徴を解説しましょう。
ウェルシュ菌は、酸素がないところを好みます。(偏性嫌気性)
ただし偏性嫌気性といっても、ボツリヌス菌のように完全に酸素がないと生きていけないわけでもないところもまた、ウェルシュ菌の厄介なところでしょう。

さて、高熱もHEAD-CHA-LA、酸素がないのはむしろご褒美。
そんなドM細菌は、まさにカレーやシチューのような料理の中がぴったりでしょう。

しかもさらにドMなことに、カレーやシチューのようなドロリとした粘性の高い加熱食品を大きな鍋で煮込む場合、酸素は中に入りづらくなります。
ましてや鍋底近くにおいては一層のこと入りづらくなり、その結果食品内の酸素はなくなり、ウェルシュ菌にとってはこの上ない環境となる。

結果、加熱調理が終わって他の菌がその高温に耐え切れず死滅するなか、その食品の中で生き残っている菌もほとんどなくなる中、そこはまさにウェルシュ菌ヒャッハーな独壇場になる、というわけです。

カレーは冷める間が一番危ない

少し、まとめましょう。
ウェルシュ菌は「芽胞」を作ってその中でやり過ごすので、高温調理でも死なない。
しかも酸素がないほうが好きな「偏性嫌気性菌」なので、デロっとしたカレーのようなものの中のほうが生きやすい。
結果、長時間「グッツグツ」に加熱されるカレーの中でも生き残っていることのできる細菌は、ウェルシュ菌の他にいなくなる。…とまでは言わないまでも、少なくなる。

ただし。
いくら高温状態内でも芽胞のバリアによって耐えられるウェルシュ菌でも、さすがにその環境の中で増殖まではできません。
なので、ウェルシュ菌は食品の温度が下がっていくなか、つまり煮込んだりの加熱調理を終えて火が消され、それが放置されて冷めていく中で次第に増殖温度帯を迎えることで、はじめて増殖が可能になります。
するとこれまで芽胞の中で眠っていたウェルシュ菌が、またむくむくと活動し始めるのです。

しかもウェルシュ菌の増殖温度帯は他の細菌に比べて高めです。
一般的には、55℃にもなればすぐさま増殖が始まる、とも言われるくらいです。
つまり、加熱後まもなくぼやぼやと放置していると、もう間もなくウェルシュ菌は活動を始めてしまう、ということです。

この冷却を、例えば急速冷却機などの施設で冷却すれば、増殖の温度帯を手速くぬけることができます。
しかし給食施設などで普通に鍋に入れたまま常温で冷ますとなれば、ウェルシュ菌に増殖する時間をみすみす与えてしまうことになります。
ましてや大量に作り置きするような給食などの場合、分量が多ければ多いほど冷却に時間がかかり、そのぶんだけウェルシュ菌の増殖を許すことになるでしょう。
(もちろん、カレーなどは鍋底近くの温度が冷めづらいのはいうまでもありません)

さらに厄介なことに、ウェルシュ菌は増殖時間が非常に短いのも特徴なのです。
そもそも、ウェルシュ菌は細菌なので、細胞分裂によって増殖します。

で、その増殖のスピードは10分程度(45℃)、とかなり短く、増殖速度が速い。
つまり乱暴な話、10分あれば1つのウェルシュ菌は2つになり、またさらに10分あればそれが倍になり…と倍々ゲームで増えていくことが計算上できる、というわけです。

さあ、他の細菌よりも高めの温度帯で増殖ができる、つまり他の菌より早く増殖がスタートできる。しかも増殖速度も速いときた。
こうなると、食品の中はもはやウェルシュ菌の独壇場です。
細菌というのは、競合する他の菌がいないほうが増殖がしやすい。
ということは、もし仮に他の細菌が高温調理を生き残っていたとしても、あるいは高温調理後に入ったとしても、もはやそこはウェルシュ菌のヒャッハー状態。
ウェルシュ菌は勢いを増して、その食品内で増殖するでしょう。
他の菌はもう死んでいるか、死にかけているのに、元気なのはウェルシュ菌だけ。そんな状況になります。

とまあ、これらの条件が相乗効果で加わることで、給食などでつくる大量調理のカレーなどがウェルシュ菌の増殖にうってつけ、となるわけです。
そしてこうして大量に作ったカレーなどの煮込み料理などが、多くの人が食べられるということから、ウェルシュ菌食中毒は集団化しやすいのだ、ということになるのです。

ウェルシュ菌食中毒はどうやって起こるのか

では、ウェルシュ菌食中毒は、どのように起こるのでしょうか。
ここにも実はウェルシュ菌らしい特徴があったりするのです。

さて、このようなウェルシュ菌食中毒は、そもそも人間が食品内に大量に増殖したウェルシュ菌を食べて体内に取り込むことで発生するものです。
結論から言うと、その体内に取り込んだウェルシュ菌が腸内で芽胞をつくるときに毒素を作るのですが、この毒素(エンテロトキシン)が腸を傷つけることで食中毒を起こすのです。
つまりはこの、体の中で毒素を作って人の健康を害するという「生体内毒素型食中毒」というのが、ウェルシュ菌食中毒の大きな特徴でもあります。

ん、あれ?
いや…ちょっと待ってよ…?

そう思われた方。
はい、実に鋭いですねえ!

そうです、そうなんです。
先述お話しました。
加熱食品を作る際、その高温で煮込むような加熱調理過程において、ウェルシュ菌は「芽胞」を作ることによってその「グッツグツ」な高熱環境から身を守ります。
で、その芽胞形成の際にも当然ながら、エンテロトキシンは作られることになるんです。
ということは、つまりその段階で、食品内にもウェルシュ菌が作った毒素は存在することになるわけです。

では、その毒素を食べることで食中毒になるのではないか。
つまり、食品内に細菌が作った毒素があって、それを食べて食中毒になるのではないのか。
そう思うのも無理はありません、

特に、同じくエンテロトキシンを作る黄色ブドウ球菌などでの食中毒を知っているかたなら、より一層そう思うかもしれません。
しかし、ウェルシュ菌の作るエンテロトキシンと、黄色ブドウ球菌の作るそれは少々違うのです。


(黄色ブドウ球菌)Wikipedia

確かに黄色ブドウ球菌食中毒というのは、黄色ブドウ球菌自体ではなく食品に産生されたエンテロキシンを食べることで起こされるものです。
それは黄色ブドウ球菌エンテロトキシンは頑丈で熱や酸にも強いため、加熱されても壊されず、そして胃や小腸に作用して食中毒を起こすものだからです。

しかしウェルシュ菌が作るエンテロトキシンはそこまで頑丈ではありません。
そのため、ほとんどが熱や酸で簡単に無毒化されてしまうため、それを人が食べても大概が胃の中で分解されてしまうのです。

そうではなく、ウェルシュ菌食中毒のほとんどは、むしろ食品内で生き残り、大量に増殖したウェルシュ菌そのものを食べることで発生しています。
口から体内に取り込まれたウェルシュ菌は、胃酸をもかろうじて耐えてそのまま生き残り、腸内で増殖します。そしてそこで芽胞形成の際に、毒素であるエンテロトキシンをまた作ることになります。
それが腸の粘膜に作用し、腸管内に水分が流出され、下痢をもたらすのです。

まとめ

今回は、ウェルシュ菌の集団食中毒事件を受けて、より詳しくウェルシュ菌について触れてみました。
かなり深いところまで触れきれたと思います。

さらにいうなら、これらを踏まえてなのですが、ウェルシュ菌食中毒はこのように「発生時期にとらわれない」という特性があります。
もっといえば、このように条件さえ揃えば真冬でも発生するのがウェルシュ菌による食中毒だったりもするのです。
これについては、前回の記事を読んでみてください。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

■□貴方の工場・店舗で悩んではいませんか■□
・どうやって防虫管理・衛生管理をすればいいか判らない
・今やっている防虫管理・衛生管理が正しいか判らない
・何か問題が発生したときの対応が判らない
・取引先や保健所の査察が不安だ
・でも余りコストもかけられない
だったら貴方が防虫・衛生管理のプロになればいいのです!

高薙食品衛生コンサルティング事務所にようこそ
  • 私達は、どんな工場、お店の方でも防虫管理・衛生管理のプロレベルに育成することが出来ます。
  • 何故なら、防虫管理・衛生管理のプロとは、基礎知識に加えて「正しい管理の仕組み」を作れる能力を持つ者のことだからです。
    この「管理の仕組み作り」を知るこそが、防虫管理・衛生管理のプロへの道なのです
  • そんな防虫管理・衛生管理のプロを育成し広めることで、日本の「食の安全安心」を、さらにより広く、より高くさせることが私たちの使命だと信じています
  • どうですか?
    そんな防虫管理・衛生管理のプロにあなたもなって、本当の「食の安全安心」を私達と一緒に広げていきませんか?