最新の食品業界ニュースから気になった話題を定期的にピックアップし、食品衛生管理のプロの目線からコメントさせていただきます。
今回は、セブンプレミアムの納豆へのガラス片混入事件についてです。

本日の時事食品ニュース

 

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

セブンプレミアムの納豆にガラス片が異物混入!?

ドドドドーっと怒涛の忙しさだった、今週。
ちょっと油断しているうちに更新がちょっと置いてけぼりになってしまいました。
すみません…。

さて。
こないだこんなニュースが入ってました。
なんとセブンプレミアムの納豆にガラス片が入っていたんだという。

納豆を家族が食べたらガラスの破片が入っていたと、ツイッターユーザーの男性が写真を一時投稿し、注意を呼びかけた。

メーカーのあづま食品(宇都宮市)では、「様々な検知機を通しており、製造過程では考えにくい」とする一方で、破片を外部検査に出したことを明らかにした。宇都宮市保健所は、工場での混入の有無を確認するため立ち入り検査を始めた

実はこれ、ぼくが知ったのは事件が一段落し、炎上騒動も片付いた一昨日の話。
実はYoutubeでの上の動画で、その騒動の存在を知ったわけです。
すんません、忙しさにかまけたわけではないんですが、情報収集をちと怠ってしまいました…。

そのため、今更この件に触れるのもどうかなとも考えたんですけど、折角のネタですし、何より異物混入に対して示唆に富んだ話でもあるため、扱うことにさせていただきました。

あづま食品のセブンプレミアム極小粒納豆

さて、軽めに事実確認だけしておきます。
報道によると、今回ガラス片が混入していたとされているのは、セブン&アイ・ホールディングスのPBである「セブンプレミアム」。
「セブンプレミアム極小粒納豆」という「ヨークベニマル」で販売された納豆であり、これはそこからの依頼を受けた「あづま食品」の栃木県宇都宮市にある工場で作られたもの、だということ。

「あづま食品」は全国に4工場を構えているのですが、それらの中でもこの宇都宮市にある「栃木工場」がメインの工場である様子。
なんでも「あづま食品」の本社もここにあるようで、本社直轄の工場だというわけです。
そんな工場で、本当にガラス混入なんてありえるのでしょうか。


あづま食品

なお、報道によると、混入した破片は5~6ミリ程度のビンを割ったようなガラスだという話。

「破片が何かを特定しようと、同社で外部検査に出したことを明らかにした。1週間ほどで結果が出るといい、その内容は男性に文書で報告したいとしている。」
と、報道にはありますが、こんなのは異物混入が発生すれば理由は何であろうが、まずはさておき、お抱えの検査機関に依頼するのはごく当たり前の話。

ちょっと踏み込んで解説すると、メーカー担当が異物を受け取り、それを大急ぎで検査機関に郵送する。
それだけでも2日くらいはやっぱりかかります。
一方、検査機関だって暇じゃないので、検査にあたるのに3~4日かかります。
今回はガラス片ですからFTIR分析検査が必要です。が、まあそんな大変な検査ではありません。
検査後、報告書を作成し、その日のうちにメールあるいはFAXで速報が届きます。
原本が必要なら、さらに検査機関からの郵送の日数が加わります。
そうして報告書が出るまで、およそ1週間程度が必要になるわけです。
実際ぼくが昔、このような仕事をしていたので、よく知っています。
土日や祝日などを挟んだら1週間の報告書提出なんてむしろ早いほうです。よほど大急ぎでやったのでしょう。

尤も、「文書で報告」といってもせいぜい「検査したけど、やっぱりガラスでした」くらいしか、報告書には書かれません。
検査機関は、憶測だけで報告書を書きません。(正確には、書きたがりません)
なので、比較検査(異物の検体が、可能性のあるものと同じ素材なのか比較して分析検査すること)でもしない限り、こういうものに使われるガラスだとは、よっぽど特殊ではない限りそこに書かれないものです。
当たり前ですが、日本製だのメイドインUSAだのなんてガラス片には書いてないので、そんなものは到底わかりません。
メーカーも「これ、使っている大豆が米国製なんで、アメリカ製かどうかわかりませんかね」なんておよそ常識外の無茶なことを検査機関に尋ねるかもしれませんが(検査分析あるある)、神様じゃないので判るはずがありません。

納豆工場でガラス片は混入するのか

さて。
この納豆ガラス片混入事件ですが、工場での混入というのはありえるのでしょうか。
もう炎上も鎮火したことだし、勿体ぶらずにさっくり結論から話しましょう。

プロの目から一言、これに尽きます。

「普通にありえません。」

ゼロとまでは言いませんが、可能性はかなり、というか極めて低いと思います。
「極めて低い」とはどういうことかというと、少なくとも工場内では入ることはないだろう、というレベルの話です。
「工場内での混入リスクが極めて低い」ということは、それ以外で混入した可能性が極めて高いという話です。

納豆への異物混入要因(ルート別)
  • 資材由来(原材料の大豆や包材などに混入していた)
  • 製造由来(工場での納豆の製造工程上で混入した)
  • 流通由来(流通、小売段階で商品内に混入した)
  • 消費者由来(購入後、開封した後に混入した)

 

一般的に異物混入要因は、上の通りです。

このうち、流通時には開封しないんだから混入するわけがない、となればそれ以外の3つのどれかになります。
で、今回工場内でのリスクが低い、ということは、残るは2つ。
「資材由来」と「消費者由来」のどちらかです。

つまり、大豆や包材に元々混入していたか、じゃなければこれを買って食べてTwitterにあげた人が(故意かどうかはさておいて)自分で入れてしまったか、そのどちらかだということになります。
そして後に詳しく書きますが、「じゃあ資材由来か」となるかといえば、そんな簡単にもなりません。てゆーか、ないです。
要するに可能性として一番突出して高いのは、購入者が何らか自分で混入してしまってそれに気づいていない、というケースです。
別の報道で、
「異物が混入してしまった経緯については、製造段階で入る事は考えられないため、輸入した大豆に異物が入っており、それが検知できずにすり抜けてしまったのではないかと説明されたそうです」
とあります。
これはどういう意味かというと、「あんたが入れたんでしょ、とは言えないので、仕方なく次の可能性を一応解説しておいた」ということです。

工場での異物混入ではない理由

ではどうして工場での異物混入ではないのでしょうか。

工場内がどうであるとか、そういう以前の話としてこれはもう端的に、現状でのメーカー側の対応を見ればすぐにわかります。
現状において、メーカーが納豆を回収すると動いていないからです。
報告時の段階で病院に行ってくださいなどとあれだけ真摯な対応をしたメーカーが、未だその対応をしようとしていない。
普通、メーカーがガラス片の混入を認めたら、これはもう待ったなしでロット回収案件です。
にも関わらず、メーカーからの報告が未だにホームページやリコール情報にあがっていない。
発生から今日までもう10日を経て、まだ動いていないのだから明白です。

ところで一般の人は、何でもかんでも異物混入したら回収が義務だろ、くらいにしか考えていないでしょうが、そんなことは全くありません。
する必要も義務もなければ、簡単にするべきでもありません。
そもそも食品衛生法にはそんなことは書かれていませんし、そういう人が考えている以上に回収、リコールというのは無駄なものです。

今回この話はあまり踏み込みませんが(以前にも書いているので、そっちを読んでみてください)、だって、ちょっと考えてみてください。
企業が、原料を購入し、工場で人や機械や他の資材を投資してそれを製造し、物流コストを支払い、販売するものが製品です。
それぞれみんなお金がかかっています。
それを今度はまた、大金を使って回収するわけです。
こんなものは世の「けしからん」の謝罪代わりにする程度のものではそもそもない、ということです。

ましてや、全国流通のセブンプレミアムでの回収といったら、数万個レベルです。これをまともに回収するとなると、ウン百万円クラスの費用が必要です。
当たり前ですが、回収したものは全部廃棄処分ですからね。
数万個、全部ですよ。フードロスを真逆で行く話です。

あとメーカーはバカじゃないので、何の責任もない理想家が簡単に口にするように「世に再度安く回す」なんてことは、絶対にやりません。
「やりません」というか、判っていないからそういう話をするのであって、常識的に考えてありえません。
そもそも回収するプロセスの温度管理もしていませんし、商品状態もわかりません。
なので、そんなものを世に出すくらいなら、最初からしなくてもいいリコールなんて手段をハナから取りません。

さて、そんな異物混入によるリコール、製品回収の唯一の法的根拠は「健康被害」です。
これはしっかりと食品衛生法にかかれています。
なのでこれが発生しかねない場合、行政指導によって、回収の義務が生じます。
今回もガラス片ですからね、メーカー側にもし問題があるとした場合、直ちに回収対象となったでしょう。

ちなみにそうした行政回収は、世の数多の食品リコールのうちのほんの数%です。
残りの大半のリコールは何かというと、別に法的に何の問題もないけれど各社が自主的にお金を自分で出して自主的に回収している「自主回収」です。
自主回収なので、一般企業が製品回収にいどむ基準に「決まり」というのは存在しません。
なので各社任せで行っているわけですが(だから自主回収なのです)、とはいえ、そこにもだいたいの基準というのを各社想定しています。
それがこの「健康被害の可能性」と、あとは大きく「拡散性」と「社会的影響」です。
「拡散性」というのは、ガラス片ですから他の製品にも影響を及ぼしかねない。つまり他の製品にも異物混入している可能性が考えられる。
こういう場合に、製品回収をやむなく実施するのが普通です。

さて、今回はガラス片なので、この「拡散性」の観点から間違いなく、工場側に起因があれば即回収でしょう。
工場の何らかのガラスが破損して混入した、という話ですからこれはもう間違いない。
にも関わらず、現状未だ、その対応に踏んでいません。
ということは、イコール、工場に責任はないと断言しているという意味です。

「んじゃ、メーカーはリコールのお金をケチってんじゃないか。」
これも絶対、ありえません。
今回の話は、天下の「セブン&アイ・ホールディングス」のPBです。
何せセブンプレミアムというPBで作るわけですからね、相手は天下のセブン&アイ・ホールディングス。
大手の取引先ですから、こんなことをすれば、そりゃ当然ながら責任を詰められます。
PBで出す製品に異物混入といったら、メーカーにとってはやもすれば死活問題になりかねない。
対応を間違えたら課長以上クラスの首が飛ぶ世界です、目先の金の話の次元じゃありません。

にも関わらず動いていないのだから、メーカー側はもうセブンとの間で話がついており、これは消費者由来の混入だと決着がついている、ということです。

ガラスの混入を考えてみる

現状から、工場での混入として動いていないということはわかった。
でも、実際のところ、どうなのだろう。
ぼくはこの工場を全く知りもしませんが、一般論としてお話しましょう。

まず第一に、それなりの規模の食品工場ではそもそも設備や機材などにガラス製品を極力使いません。
照明施設や計器パネルなど、どうしても使わざるを得ないもの以外に、ガラスを用いることはほとんどないでしょう。
その「どうしても使わざるをえないもの」が破損しているかどうか、くらいしかガラス片の混入要因は存在しません。

ましてや、「セブン&アイ・ホールディングス」クラスのPBを作る、となるとそれ相応の衛生管理レベルを求められます。
定期的な場内監査は勿論ながら、場合によっては規格認証も必要になることもあります。
事実、この栃木工場は「FSSC22000」を取得しています。
FSSC22000は、一般的に思われるほど楽勝で取得出来るものではありません。
システム構築・整備もさることながら、場内の衛生管理体制も厳しく評価されます。
つまるところ、このあづま食品の栃木工場というのはそんな簡単にガラス片が入ってしまうような工場ではない、ということです。

上でも触れた通り、ぼくは昔、大手の検査機関で働いていました。
そこで日々、様々な異物検査に関わってきたわけですが、長いこの世界での経験の中の体感として、ガラスの異物混入というのはそれほど多いわけではありません。
当然ながらゼロではありませんが、ガラス片の混入というのは、こと食品製造工場でも避けるべき事態です。
少なくとも、このレベルの工場が起こすような話ではありません。

しかも報道にあるように、この工場では金属探知機以外に、X線検査機を使っている。
これで異物を逃すというのはごく稀でしょう。

ところで、先の異物ルートに「資材由来」というのがありました。
つまり、大豆に元々ガラス片が混入していた、という可能性です。
でもこれも結構、考えにくい話です。

だって、納豆って、どうやって作ると思いますか。
大豆を洗浄して、浸漬させて、長時間蒸煮して、で発酵して作るわけです。
大量の水を使って洗浄したり、浸漬するなかで、微小だろうがなんだろうが、異物はすべて除去されます。
で、この上で、金属探知機とX線検査機を通すわけでしょ?
この間で除去されない、ってありえますかね。
ていうかありえないから、そんなに資材由来の異物クレームがないんです。

とはいえ、もし購入者側に本当の本当の本当の本当に問題が欠片も存在ない、というのであれば最終的にはこの可能性が「一応」浮上するでしょう。
結果、そのための対応を今後考えていく、つまり資材の検品から洗浄の工程の精度を高めていくようにする、というあたりがおそらくは今回の事件に関するメーカーサイドの改善事項における現実的な落としどころになっているのではないでしょうか。

まとめ

今回は、ちょっと前にTwitterで炎上していた「納豆へのガラス片混入」について、プロの目線からお話させていただきました。

…とね、他人事だと「それ、ぶっちゃけ消費者由来でしょ(笑)」と思うわけですよ。
でもそんなプロのぼくですら、実際に異物混入にあってみると、「あれ、これぼく由来じゃないよな!?」と思うんです。
プロ中のプロであるぼくでも、ですよ!?

↑このように、長年この世界でメシ食ってきて、これだけの経験と知識を備えたぼくだって、缶チューハイに金属異物入ってたときには、思ったんです。

「いやいや、待て自分!
ねーから、普通にマジでねーから。
名だたる大手メーカーの工場で、ストレーナーでフィルター超えて作って、こんなん出るわけありえねーから。
だったら、もっとオオゴトになってっから。」

専門知識を備えてそう理解できて、だから怒りも別に全然しないけれど、でも自分由来だとは思えないものなんです。
ましてやプロでもない普通の人なら、尚更のことでしょう。

なので、購入者の気持ちは確かに、理解できないわけでもない。
ないけれど、とはいえ、気持ちの理解はさておきよくよく考えてみれば、メーカー側にはこういう事情や事実があるわけです。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

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