最新の食品業界ニュースから気になった話題を定期的にピックアップし、食品衛生管理のプロの目線からコメントさせていただきます。
今回は、「ウイスキーにおけるジャパニーズウイスキーの表示に関する基準発表」についてです。

なおこの記事は、前回、そして今回と、二部構成でお話させて頂いています。
(こちら②はその後編となります)

本日の時事食品ニュース

 


日本食糧新聞

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

表示基準の評価は?

後編:(こちらは二部構成の「後編」になりますので、もし以下の「前編」をお読みでなければそちらを最初に読んでいただくと理解がより深まります)

はい、前回の前編に続いて、後編です。
業界団体によってジャパニーズウイスキーの表示基準が発表されたよ、というのが前回のお話でした。

では今回の基準については、どのように評価されているのでしょうか。
そこでぼく個人の、勝手な意見を述べていきます。

まずは改めてもう一度、今回の基準内容を見てみましょう。

「ジャパニーズウイスキー」表示の製法品質要件
  • 原材料:麦芽、穀類、日本国内で採水された水に限ること。 なお、麦芽は必ず使用しなければならない。
  • 製造:糖化、発酵、蒸留は、日本国内の蒸留所で行うこと。 なお、蒸留の際の留出時のアルコール分は 95 度未満とする。
  • 貯蔵:内容量 700 リットル以下の木製樽に詰め、当該詰めた日の翌日 から起算して 3 年以上日本国内において貯蔵すること
  • 瓶詰:日本国内において容器詰めし、充填時のアルコール分は 40 度 以上であること
  • その他:色調の微調整のためのカラメルの使用を認める

 

これらについてですが、方向性としてはある程度予想通りだったとはいえ、その内容としては結構踏み込んだものになったな、というのが個人的な印象です。
ポイントはいくつかあるので見ていきましょう。

まず、「麦芽は必ず使用しなければならない」とある。
そして麦芽、穀物、水と、原材料を規定しています。
これは、ぼくらの世界にも関係する面白い話ですね。

大麦を原料とする点において、ウイスキーと麦焼酎はそれほど変わりがありません。
唯一の違いは糖化のさいに、麦芽の酵素を使うのか、それとも麹を使うのか、です。
ウイスキーの場合、大麦の麦芽がもともと持っている酵素を活性化させ、それを使って発酵させます。
一方、焼酎は酒税法によって発芽した穀物の使用を禁じています。
ではどうするのか。
日本古来の酒の造り方、つまり麹を加えて糖化を行うのです。
つまりこの自主基準は、麹の使用を禁じ、焼酎との区分を明確にしているわけです。

そして、今回の基準では、上にはありませんが第3条の適用範囲において、しっかりと輸出品についても触れています。

第 3 条(適用範囲)
本基準は、事業者が日本国内において販売するウイスキー及び日本から国外向けに販売するウイスキーについて適用する

と、このように海外用の販売品についても、その適用範囲に定めています。

前回、海外で売られている「ジャパニーズウイスキー」が麦焼酎であった、という話をしました。
今回の自主基準は、そのような混乱による誤解をただすためのものといえるでしょう。
これによって「だったらアメリカの法律に聞いてくれよ」と逃げるのを防いでいるわけです。

しかも輸入原酒を詰め替えてジャパニーズウイスキーとして販売することを貴人るため、日本国内の蒸留所でこれらの糖化、発酵、蒸留を行うことをその条件としています。

グレーンウイスキー問題

このように、さすが長らく議論して作っただけのある非常によくできた自主基準である、というのがおおむねの捉え方のようです。
ですが、一つだけ考えるべきポイントがあります。
それが、グレーンウイスキー問題です。

ウイスキーというのは大きく三つに分けられます。

ウイスキーの種類
  • モルトウイスキー:大麦が原料
  • グレーンウイスキー:穀物(小麦やトウモロコシ)が原料
  • ブレンデッドウイスキー:モルトとグレーンの混合

 

最近人気のある「シングルモルト」というのは、ブレンドされていない原酒、「モルトウイスキー」です。(単一醸造所のモルトウイスキー)
しかし一般的に出回っている安価めなほとんど多くのウイスキーと呼ばれるものは、そのモルトウイスキーがブレンドされた「ブレンデッドウイスキー」です。

では、このブレンデッドウイスキーというのはどうやって作るのか。
それはモルトウイスキーに「グレーンウイスキー」を混ぜて作るのです。
グレーンウイスキーというのは、乱暴な話が(一般的には)「ブレンド要員ウイスキー」です。
よって、安いウイスキーは、当然ながらグレーンウイスキーの比率が高まります。

モルトウイスキーとグレーンウイスキーは、そもそも原料が違います。
モルトウイスキーは、その名の通り「大麦」です。ですから発芽した大麦がその原料です。
しかしグレーンウイスキーは、トウモロコシなどの大麦以外の穀物から作ります。

さらには、でここからが面白い…というとちと悪いかな、まあ今回の話においても重要なんですが、これら双方は、製造法、蒸留法が違います。

まずモルトウイスキーはポットスチルという「単式蒸留機」を使って蒸留します。
それほどの量を生産はできませんが、しかしこれによって風味に深みを与え、独自のウイスキーの個性を作り出すのです。

一方、グレーンウイスキーは「連続式蒸留機」を使うことで、大量生産します。
それによって風味はモルトウイスキーより薄くなり、ライトになります。
もっともグレーンウイスキーはあくまでモルトウイスキーに対する「ブレンド要員」なので、それほどの個性はかえって不要であり、いかに多く作るか、が重要なわけです。
つまり重要な核になる原酒としての「モルトウイスキー」は単式蒸留機での少量生産、そしてブレンド要因である「グレーンウイスキー」は大掛かりな機械、連続式蒸留機によって大量生産している、ということになります。

さて、このように大量生産を目的とした連続式蒸留機は、大規模で、高額であり、資金力のある大手メーカーしか備えていません。
となると、小規模のクラフトウイスキーメーカー、あるいは新規参入メーカーなどは、高い設備投資である連続式蒸留機を持っていないため、自力でグレーンウイスキーを作れません。
ではどうしているかというと、グレーンウイスキーを輸入しなければいけないわけです。

それでも、これまではグレーンウイスキーに輸入原酒を使っても何の問題もなく、ジャパニーズウイスキーを名乗ることができました。
しかし、この表示基準に従えば、「糖化、発酵、蒸留は、日本国内の蒸留所で行うこと」という項目に抵触することになります。
つまりこの基準次第では、現状連続式蒸留機を持っている大手メーカーにおいては何の足かせにもならないけれど、中小規模のクラフトメーカーにとっては、場合によってはブレンデッドウイスキーを作る大きな壁にもなりかねない、という一面があるのも事実でしょう。

ジャパニーズウイスキーを飲んでみよう

さあ、ここまで学んだら、次は実学。
実際にジャパニーズウイスキーを飲んでみることにしましょう。

まずはジャパニーズウイスキーのセレクトから。
ささっと近所のヤオコーに寄ったところ、発見しましたよ「知多」を。
(というか、これしかそそるものがなかったというか…)


Amazon

ラベルには、「SINGLE GRAIN JAPANESE WHISKY」と書いてあります。
そうです、この名目がまさにこの酒の何たるかを語っています。
シングルのグレーンのジャパニーズウイスキーなんですね、これ。
うーん…。
本当のことを言うなら、普通に王道的に山﨑や白州あたりを選びたかったけれど、でもね、仕方ありません何せ近所にあったヤオコーですから…。

さて、この「知多」はサントリーが誇る、今となっては人気のウイスキーです。
その名の通り、愛知県は知多半島の「知多蒸留所」で造られているウイスキーです。
しかもこれ、グレーンウイスキーなんですね。

そう、グレーンウイスキーについては先程話した通りです。
そこでも触れた通り、グレーンウイスキーとは乱暴な話が、一般的には「ブレンド要員」です。
つまり普通は、完全な脇役。
ところが、この「ブレンド要員」をガチに主役にしようと試行錯誤したのが、この「知多」でした。
普通は、風味やクセの強いモルトウイスキーを引き立てるためのわき役グレーンを、主役にしたのがこれだったのです。
その意味では、確かに画期的ではありました。
これもまたジャパニーズウイスキーの高い技術の恩恵でしょう。

…と考えてみると、この「知多」というのは、今回の話をするに結構うってつけのウイスキーかもしれないな…。
さあ、ではそんな「知多」を味わってみるとしましょうか。

まずはいきなり、ストレートで飲んでみる。
うむ、グレーンウイスキーらしい軽やかさ、穀物感が特徴か。
そして口の中でしびれと一緒に、甘みと香が広がる。
一瞬で抜けるウッディさと、すぐにすうっと消える軽さ。ドライな切れ。
このさっぱりとした軽さと甘みが、やはり知多なんだろうか。
反面風味が弱いので、ストレートよりやっぱり何か加えたい。
やっぱり炭酸水かな。だよな、やっぱり。

そこでハイボールにしてみる。
いきなりふわっと軽さが増し、香りが高まった。
ああ、美味い!正解だわ。
これは本当に、こういうウイスキーなんだな。

幾つか、つまみを用意してみました。
これらに合わせていくとしましょう。

まずは、九州黒豚の生ハムを合わせてみる。
見ての通り、生ハムは「非加熱食肉製品」だ。
ていうことは、発酵食品だ。
発酵食品である生ハムと、発酵食品であるウイスキー。合わない道理が、見当たらない。(そうか!?)

では、一口。
うーん、普通。悪くはない、以上。
でも、やや強めな生ハムの油分を洗ってくれるのがいい。

そこでハイボールにしたまま、ナッツ類をいただく。
うーん、これは弱い。ここはやっぱり風味のあるモルトウイスキーだわ。
知多である異味が、よくわからない。

続いてほうれん草のキッシュを。
ここで少しだけ炭酸水を足してやろう。
あ、美味い!今まででは一番、これが合うかもしれない。
複合的な味わいを、受けるウイスキー。その強みが出てる。
何よりも、サクサクした生地やバターのコクをよく受けてくれているのがいい。
キッシュ、日本酒やワインだとちょっと考えるところだけど(日本酒なら純米吟醸、ワインだったら白かな)、軽いハイボールにはピッタリだ。

ホタルイカの釜揚げ。
合うか、これ!?
と思ったけれど、あれれ?そんな悪くない。いや、いい!
そりゃ確かに、酢味噌とかにしてしまうと微妙になってしまいそうだけど、しょうが醤油なら悪くないぞ!
いつもならこれは日本酒案件だが、ホタルイカで知多、これはちょっとアリだな!

チョコ。
娘ちゃんがもらってきた友チョコの残りを合わせてみる。

あー、違うわ、全然違う。
こういうのは風味に深みのあるウイスキーだわ。
さすがにわかってきたけれど、「知多」には「いわゆるウイスキーのとも」みたいのをモルトウイスキー以上に合わせることはできない。
でもそのかわりに、気軽な飲みになんでも合わせるレンジの広さが、この知多なんだな。

結論。
うん、やっぱり相手を邪魔せずに受け止めるのが、知多の役目なのでしょうね。
逆に言えば、それ単体ではちと風味が物足りない。
その意味では、食中酒というのがピッタリなのかもしれないですね。

まとめ

今回は、前編、後編と二部にわたって「ジャパニーズウイスキーの表示基準」についてのお話をさせて頂きました。
そしてこちら後編では、前回を継いでこの表示基準の評価ポイントについてお話いたしました。
さらには、その話をしながら実際にジャパニーズウイスキーを飲んでその感想についてもお話させていただきました。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

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