最新の食品業界ニュースから気になった話題を定期的にピックアップし、食品衛生管理のプロの目線からコメントさせていただきます。
今回は、「ウイスキーにおけるジャパニーズウイスキーの表示に関する基準発表」についてです。

なおこの記事は、今回、そして次回と、二部構成でお話させて頂いています。
(こちら①はその前編となります)

本日の時事食品ニュース

 


日本食糧新聞

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

「ジャパニーズウイスキー」の表示基準が発表

(こちらは二部構成の「前編」になりますので、もし「後編」から来られた方は、まずはこちらを最初に読んでください。)

皆さん、こんにちは。
そろそろ春めいてきたとはいえ、毎日、まだまだ寒いですね。
寒いときには、やっぱり濃いお酒が欲しくなる高薙です。
まあ、寒かろうが暑かろうが濃いお酒は欲しくなるんですけどね。

さて、濃いお酒といったら、ウイスキー。
先日2月16日、結構突然ではあったんですが(組合側としては寧ろ満を持して、というところでしょうけど)、「ジャパニーズウイスキー」の表示基準が発表され、酒好きをザワつかせるということがありました。

日本洋酒酒造組合は2月16日、「ウイスキーにおけるジャパニーズウイスキーの表示に関する基準」を発表した。

「国内外の消費者の適正な商品選択に資することで消費者の利益を保護し、事業者間の公正な競争を確保するとともに品質の向上に資することを目的とする」もので、施行日は2021年4月1日。
海外市場へ向けてもHPや各地の生産者団体を通し、英文で発信する。
詳細は日本洋酒酒造組合ホームページに掲載している。

今回は、この自主基準とジャパニーズウイスキーについてお話していくつもりなんです、が。
折角なので!
ジャパニーズウイスキーでも飲みながら、皆さん、ゆっくりと話していくとしましょうか。

今回の話、特に後編で出てくる「グレーンウイスキー」の「知多」を頂きながら…。
それでは、乾杯ー。

存在していなかったジャパニーズウイスキーの法的基準

はい、今回のこのジャパニーズウイスキーの話なんですが。
結論から言えば、ここにきてようやく「ジャパニーズウイスキーの定義」が定められた、というものです。

これっておそらく、全く知らない人からすれば「え!?ていうか、今までジャパニーズウイスキーの定義ってなかったの?」とむしろ驚いてしまうかもしれませんね。
そうなんです、
意外かもしれませんが、「ジャパニーズウイスキーの定義」は、これまで、法的にも、また業界団体の基準としても存在しなかったのです。
後に詳しく解説しますが、ウイスキーの法的基準は酒税法によって定められています。
ですがこれが、大雑把というか、ユルユルというか、俗な言い方をすればザル法でした。

まあ、言うても「酒税法」というのは、あくまで税金についての法律です。
何か食品の品質を規格するような、例えば食品衛生法やJAS法などとは基本的に性質自体が違うわけです。そりゃある程度は仕方がないというか、逆によくそれしかなかったなというところもないわけでもない。

そのため、よくよく実情を知れば知るほど、「ジャパニーズウイスキー」という名を使った、ヘンテコな製品が普通に出回っていたりしている。それがこのジャパニーズウイスキーの世界だったのです。
よって今回、「日本洋酒酒造組合」がその「ジャパニーズウイスキー」の表示に対しての自主基準を設け、発表した、というのが今回の大筋の話です。

この「日本洋酒酒造組合」というのは、いわゆる業界団体です。
食品業界の大きめな業界団体同様、大手を中心にクラフトウイスキーのような小規模の企業まで参加しており、割と力があるほうのように見受けられます。
それもあってか、この日本洋酒酒造組合は他にもいくつかの自主基準をこれまでも制定してきています。
なので、他の食品業界団体の取り決め同様、法的強制力のないあくまで「自主基準」だとはいえ、それなりに実効性のあるものでしょう。

発表された表示自主基準とは

では、今回発表されたジャパニーズウイスキーの自主基準とは、どのようなものなのでしょうか。
少し追ってみてみましょう。

「ジャパニーズウイスキー」表示の製法品質要件
  • 原材料:麦芽、穀類、日本国内で採水された水に限ること。 なお、麦芽は必ず使用しなければならない。
  • 製造:糖化、発酵、蒸留は、日本国内の蒸留所で行うこと。 なお、蒸留の際の留出時のアルコール分は 95 度未満とする。
  • 貯蔵:内容量 700 リットル以下の木製樽に詰め、当該詰めた日の翌日 から起算して 3 年以上日本国内において貯蔵すること
  • 瓶詰:日本国内において容器詰めし、充填時のアルコール分は 40 度 以上であること
  • その他:色調の微調整のためのカラメルの使用を認める

 

とまあ、主だったところはこんなところ。

これら以外にも、例えば「ジャパニーズ・ウイスキー」みたいに単語間を分断するなだとか、日本を想起させる人名や都市名、地名などを表示をするなだのと、結構細かいところにまでしっかりと定義されたものになっているのはさすが、よく議論された賜物だといえるでしょう。
なにせ2016年12月からずっと議論を進めてきたということで、かれこれ4年がかりで作られてきた、ということになります。
なお、興味のある方は日本洋酒酒造組合のホームページを確認し、読んでみてください。

で、これらの結果、自主基準においてジャパニーズウイスキーと表示できることになるのは、大手メーカー銘柄としては次のようなものであるということです。

大手メーカーの「ジャパニーズウイスキー」表示可銘柄
  • サントリー:響、山﨑、白秋、知多、ローヤル、スペシャルリザーブ、オールド、季、
  • ニッカウヰスキー(アサヒ):竹鶴、余市、宮城峡、カフェグレーン、
  • キリン:富士、

 

ジャパニーズウイスキーのこれまでの実情

今回のこの話、ウイスキー好きの間でもそれなりに大きな話として受け止められているようです。
というのも、これまでも日本のウイスキーについては、長い間その定義が存在せず、そのため多くのウイスキー好きにとっても「これで本当にいいの!?」という状態が続いていたからです。

このところ、日本のウイスキーが世界的にも評価が高まっているのは皆さんも周知の事実でしょう。
事実、「山崎」や「竹鶴」などが国際的な賞を受賞して名を高め、ここ10年でいわゆるジャパニーズウイスキーをとりまく環境は世界的に大きく変わっています。
その結果、日本は今や、スコットランド、アイルランド、米国、カナダに並ぶ世界5大ウイスキー産地とされているのです。
にも関わらず、法制度面としては戦後に定めた酒税法しか存在しておらず時代に錯誤したままであったため、国内外ともに「それってジャパニーズウイスキーなの?」というものが出回っている、というのが現実でした。

先にも触れたように、これらウイスキーの法的基準は酒税法で決められているのですが、その緩さからいくつかの問題が問われてきました。

ジャパニーズウイスキーの主な問題
  • 生産場所を規定していない(海外原酒を輸入し国産として国内外に販売が可能)
  • 熟成期間、度数などの規定が定められていない
  • 樽熟成に関しての規定がない
  • 焼酎、泡盛なども、場合によってはジャパニーズウイスキーとして輸出・販売が可能
  • 90%までのブレンドが可能

 

これらのなかでもよく言われてきたのは、海外から輸入した外国産原酒でも、日本国内でブレンドし、瓶詰さえすれば「国産」となってしまう、という話です。

つまり中身がいくら外国産原酒だったとしても、簡単に「ジャパニーズウイスキー」が名乗れる、という状態でした。
それは今回の表示基準のように、糖化・発行・蒸留・貯蔵を日本国内の蒸留所で行うこと、という規定がどこにも存在しなかったからです。結果、日本国内で瓶詰すれば「ジャパニーズウイスキー」になることが可能でした。
ワインなどでなされている原料原産地の表示も、ウイスキー(酒類)にないことも、それを助長させてきたことです。

加えて、貯蔵期間についても決まりはありません。
これに対し、新たな規定では「3年以上日本国内において貯蔵すること」と踏み込んでいます。
ちなみに米国では2年、スコットランドでは3年としています。よってスコットランドにならったものと思われます。

というかそもそも樽熟成についても規定がないので、極端な話が樽熟成をせずともにウイスキーが名乗れてしまいます。

海外のヘンテコなジャパニーズウイスキー

先の通り、昨今海外でもジャパニーズウイスキーについての注目度が高まっています。
しかしそんななか、この日本の法律上の不備さからこれに便乗し、ヘンテコなジャパニーズウイスキーが海外でも見られ始めていると言われています。

一般的に「ウイスキー」というのは原料に大麦を使い、その麦芽の酵素によって発酵・蒸留を行って製造します。
同じ大麦を原料とする麦焼酎との最大の違いは、そこで麹を使うかどうかです。
しかし海外ではなんと、麹を使った、つまりは中身が完全に焼酎であるものを「ジャパニーズウイスキー」と銘して販売されているところがある、という。

例えば米国においては、ウイスキーの定義が、穀物を原料として蒸留させ、樽で熟成すればウイスキーとなります。
日本国内では、酒税法により発芽した穀物を使ってはいけないと定められていますが、それは国内のみの話。それを輸出して海外でどう呼ぼうが、法的には定められていません。
かくして日本の焼酎を米国に輸出し、樽で熟成させると「ジャパニーズウイスキー」と呼んでも法律上の問題がなくなる、というわけです。
特にジャパニーズウイスキーの値段が跳ね上がっている米国では、なんでも米焼酎までもが「ジャパニーズライスウイスキー」として売られているらしいです…。

尤も、この話は別に焼酎が悪いわけでは全くありません。
そもそもを言うなら、原料や製法に関してどのようにすれば「ジャパニーズウイスキー」なのかが、法律上においても、また業界団体としても基準がなかったために、つまりは制度の不具合によって起こってきた混乱でした。
そこでこれらに対し、4年もの時間をかけて議論し、ようやく発表されたのがこの今回の業界団体基準、「ウイスキーにおけるジャパニーズウイスキーの表示に関する基準」なのです。

混ぜものウイスキーの実態

これらと並んで問われてきたのは、ウイスキーの法的定義のゆるさです。
というのも、日本では90%までブレンド用アルコールを混ぜてもウイスキーであることが認められてきたのです。

これに関しては今回の表示基準とはややながら外れるのですが、少し触れておきましょう。
先に触れた酒税法において、蒸留酒のウイスキーは次のように定められています。

次に掲げる酒類(イ又はロに掲げるものについては、3のロからニまでに掲げるものに該当するものを除く。)をいう。

イ 発芽させた穀類及び水を原料として糖化させて、発酵させたアルコール含有物を蒸留したもの(当該アルコール含有物の蒸留の際の留出時のアルコール分が95度未満のものに限る。)

ロ 発芽させた穀類及び水によつて穀類を糖化させて、発酵させたアルコール含有物を蒸留したもの(当該アルコール含有物の蒸留の際の留出時のアルコール分が95度未満のものに限る。)

ハ イ又はロに掲げる酒類にアルコール、スピリッツ、香味料、色素又は水を加えたもの(イ又はロに掲げる酒類のアルコール分の総量がアルコール、スピリッツ又は香味料を加えた後の酒類のアルコール分の総量の100分の10以上のものに限る。)

これら「イ」、「ロ」、「ハ」の三つのどれかに含まれれば、日本国内ではウイスキーを銘打つことが出来る、ということになります。

で、この上の2つ、「イ」、「ロ」、については、それぞれ大麦を原料に単一蒸留で製造する「モルトウイスキー」や、とうもろこしなどを原料にしたいわゆる「グレーンウイスキー」のことを指しています。
モルトウイスキー、グレーンウイスキーに関しては後編でもう少し詳しくお話しますが(ちなみにぼくが今頂いているのは、グレーンウイスキーです)、これらは普通にウイスキーを造るのに必要なので、置いておきましょう。

ここで問題なのは、3つ目の「ハ」。
ここではなんと、ウイスキー以外のものをブレンドしても、100分の10、つまり10%のウイスキーが入っていればウイスキーである、としています。

ちなみにイギリスでは100%原酒要件です。
米国では、ウイスキーはゆるいものの、バーボン・ウイスキーに関しては51%以上トウモロコシ由来のウイスキー原酒使用を法的に定めています。
方や日本では、たった10%。よって残りの90%までは醸造アルコールやスピリッツなどを混ぜてもいい、となってます。
つまりほとんどが混ぜ物であるものですら、ジャパニーズウイスキーとして販売が可能だったのです。その結果、低価格帯のウイスキーは諸外国ではウイスキーに満たないリキュール品が出回っているのが実情でした。

まとめ

今回は、前編、後編と二部にわたって「ジャパンウイスキーの表示基準」についてのお話をさせて頂いています。
そしてこちら前編では、ジャパンウイスキーの新たな表示基準内容と、これまでのジャパンウイスキーの実情について見ていきました。

次回の後編では、この表示基準が果たして妥当なのか、どう評価するか、などについてお話していくとともに、じっくりとジャパンウイスキーを味わい、その魅力についてもお伝えしていきたく思っています。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

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