皆さん、「E.coli」って何だかご存じですか。
「そんなの知っているよ」という方、ではその「E.coli」は「大腸菌群」や「大腸菌」とは何がどう違うのか、説明できるでしょうか。
今回は、みんな知っているようで意外と知らない、というか実はよくわからない「E.coli」とは何か、についてお話していくとしましょう。
これ、ホントに意外と知られていないし、結構「マジで?」という話だったりしますよ。

なおこの記事は、今回、そして次回と、二部構成でお話させて頂いています。
(こちら①はその前編となります)

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えいたします

「E.coli」ってなんだ?

(こちらは二部構成の「前編」になりますので、もし「後編」から来られた方は、まずはこちらを最初に読んでください。)

「E.coli(イーコリ)」。
少しでも食品衛生をかじった人なら、一度くらいは耳にしたことがあるでしょう。
そう、こりん星からきたりんごももか姫…って、メタクソ古いなおい!

さて、そんな「E.coli」なんですが、これが割と「あるある」な質問だったりして、で「結局のところ何なんですか」ということが高確率であったりします。
いや、一応解説するんですが、しても結局「……はあ???」となることが多い。

しかももっと多いのが、「E.coliのことを知っているつもりになっている」系です。
例えば、「E.coliって何?」と聞いてみると、ちょっと詳しい人であれば「ああ、それは大腸菌のことだよ」と自慢げに返ってくることでしょう。
ですが、じゃあ必ずしも大腸菌と一緒かというと、これが実のところそういうわけでもなかったりします。

そんな、判るようでよく判らないのが「E.coli」というものです。
それもそのはず、そうやって「定められている」からなんです。これはもう仕方ない、とすら言える。

では「E.coli」とは一体何なのでしょうか。
そしてそれは「大腸菌群」や「大腸菌」とは何が違っているのでしょうか。
今回はそれを詳しく、サルでもわかる…てのはただの煽りタイトルですが笑、ゆっくりじっくりと、これから解説していきたいと思います。

大腸菌とは

さて、これらの話をしていくためには、そもそも「大腸菌」とはなんだ、ということを今一度押さえなおさなくてはいけません。

「大腸菌」と言ったら、細菌分類学上での「大腸菌」のことを示します。

いや、そりゃそうだろ。他にあんのかよ。
ですよねー。いや判ります、そりゃあそうなんですよ。
確かに、今はまだ「そんなん当たり前だろ」と思うかもしれません。というか、思うことでしょう。
ですが、そうじゃないケースがあるからこそややこしくて、わざわざこうやって二回にも渡るこんな話をしているのだ、とちょっとだけ察してあげてください。
大丈夫、まあ、そのうち判ります。

正式な学名でいうと、「大腸菌」というのはEscherichia coli
こう書いて、「エスケリキア(エシェリキア)・コリ」と読みます。
これは発見したドイツの医学者、テオドール・エシェリヒに由来したものです。
いや、そんな顔も知らない昔のお医者さんは正直どうでもいいんですが、そんなことよりも字体↑をよく見てください。
この明記している字体が「イタリック体(斜体)」ですよね。

もっかい書きます。
Escherichia coli
ね?
斜に構えてますよね?(笑)

で、このイタリック体(斜体)であることは、後ほどに結構な差として出てくる話なので、ちょっとばかり念頭に置いておいていただきたいんです。
というのもですね、学会の論文などに書かれる正式な学名はイタリック体で書こうよ、という国際的なお約束は一応あるんです。

つまり、生物学的に正しいものはイタリック体(斜体)で書かれるお約束がある、ということです。
というわけで、以下からは学術的な分類についてはイタリック体で書いていくことにしますが、このEscherichia coliを短縮したものが、今回の題目として出されているE.coliだというわけです。

大腸菌と病原大腸菌

なんかもう「大腸菌(=E.coli)」のことを知っている体で話進めちゃっていますが、少しだけこの大腸菌について解説しておきましょう。

「大腸菌(=E.coli)」というのは、人間をはじめとする動物(鳥類、哺乳類)の腸管内に生息する細菌です。
特に人間の場合、大腸に生息しているため大腸菌と言われており、うんち1gにつき10億くらい存在していると思ってください。

大腸菌をもう少しだけ生物学的に詳しくみてみましょう。
大丈夫、判りやすさ重視で行きます。

大腸菌の特徴
  • グラム陰性菌である
  • 無芽胞性菌である
  • 通性嫌気性菌である
  • 桿菌である

 

さあ、こう書かれてもよく判らないですよね。
大丈夫、一つ一つ解説します。

まず、細菌を分類する代表的な手法に「グラム染色」というのがあります。
この染色法で染まったもの(陽性)と染まらなかったもの(陰性)によって細菌は二分されます。
で、大腸菌はビブリオなどと並ぶ代表格なのです。

これはもう百聞は一見にしかず。
下の画像を見てみてください。
紫に色濃く染まったものが「陽性」。丸い小さく連なっているのは、食中毒菌で知られるグラム陽性菌の黄色ブドウ球菌。
そして染まらずに赤になったものが「陰性」で、棒状(桿菌)のグラム陰性菌、今回の主役である大腸菌です。


Wikipedia

それから細菌には「芽胞」というバリアのような胞子を作るものもあります。
バリアですからこれを作る菌は加熱しても簡単に死なないものが多いのですが、しかし大腸菌は芽胞を作らないため、一般的な加熱工程(75℃1分)によって割とたやすく加熱で死滅させることができます。
これは食品衛生上、非常に重要なポイントです。
後でも出てきますから、ちょっと覚えていてください。
大腸菌(とそれに近い仲間)は、加熱すれば死ぬのです。

そして次の「通性嫌気性菌」。
これもよく判らないですよね。「性、カブるのかよ!」とか、「通性なのか嫌気性なのか」ってツッコミたくなりますよね。
はい、説明しますね。

細菌の中には、酸素がないと生きられないものと、実はそうじゃないものが存在します。
そこが菌の面白いところ。
で、前者の酸素がないと生きられないものが「好気性菌」であり、後者のそうでないものが「嫌気性菌」です。

そしてこの後者、「酸素がなくてもイケる組」である「嫌気性菌」の中でも、また二つに分けられるんです。
それは、ガチ酸素いらない組、てゆーか寧ろ酸素に弱くて大気中にいられないコミュ障「偏性嫌気性菌」と、器用にも酸素があってもなくてもそこそこいける「通性嫌気性菌」です。
そして大腸菌というのは、この酸素があってもなくても割と生きていけるコミュ強者組な「通性嫌気性菌」なのです。

勿論ながら、これは腸内の環境にも関係することです。
というのも人間の体内では、空気は口から入ってだんだんと奥に向かうほどに少なくなっていきます。
だから大腸においてはさらに減っていきます。
口は入り口ですが、お尻は出口。肛門から空気は屁で出ますが、入ることはありません。シモネタのようですが、本当なんです。
だから自ずと大腸に住む菌は、酸素がなくてもあってもいける大腸菌や、あるいはビフィズス菌のような嫌気性菌ばかりになるのです。

さあ、最後の「桿菌」。これはもう見てくれ。菌の形状のことです。
「桿菌」とはその字の通り、棒状の菌です。
これはもう大腸菌の写真↓を見れば一目瞭然です。
それ以外にも菌には、例えば「黄色ブドウ球菌」の名からわかるような「球菌」(上のグラム染色でも出ましたね)や、らせん状の「らせん菌」などが代表的です。


Wikipedia

さて、大腸菌の話をしたら、これに触れないわけにはいけません。
そう、ひとに害をなす大腸菌です。

先のような一般的な大腸菌の中の多くは、普通、人間に害を何らもたらしません。
ですが、そのごく一部には、人間に健康的な被害をもたらすものもいたりします。
O157などがその代表なんですが、このような種のもを「病原大腸菌」といいます。

「病原大腸菌」は、その食中毒の原因や症状から5種類に分けられます。
今回説明ははぶきますが、このようなものがあると思ってください。

病原大腸菌
  • 腸管病原性大腸菌(EPEC)
  • 腸管組織侵入性大腸菌(EIEC)
  • 腸管毒素原性大腸菌(ETEC)
  • 腸管出血性大腸菌(ベロ毒素産生性大腸菌)(EHEC)
  • 腸管凝集接着性大腸菌(EAggEC)

 

「”学”の目」と「”政”の目」

さあ、皆さんいいですかね。
どうやら「大腸菌(=E.coli)」という腸内細菌がいて、でそのごく一部には人間に害を与えるものもいる、それが「病原大腸菌」だ。
ここまではわかりましたね。

そして、この「病原大腸菌」を含む「大腸菌(=E.coli)」とはまた別に、「大腸菌群」というのも存在するのです。

「大腸菌群」。
前にも以前記事を書きました。
ありがちな、「大腸菌」と「大腸菌群」の混合を区別するための記事です。
いやほんとよくあるんですね、この「大腸菌」と「大腸菌群」は何が違うんだ問題。

しかし、です。
実は昨年このようなものを書いたのですが、ちょっと説明が欠けていてよく判らなかった、という声も実のところ聞いています。
ごめんなさい。

んじゃあ、今回改めてそれを、どうやってわかりやすく説明するか。
ぼくも考えましたよ。
そこで今回は、これまで専門知識ばかりを話してきて狭まってきてしまった視線を、少しばかり広げるための、補助線をですね、どん、と加えてみようと思います。

これはもう大腸菌やら微生物やらどころか、広くさまざまなこと、社会のすべてのことについて「世の中そんなもんだよね」という話にもなるものです。
だからいったん、やれ大腸菌がどうの通性嫌気でグラム陰性がどうのとかいうのを、ちょっとばかり、置いてみましょう。

さあ、準備はできましたか。

いいですかね、
世にはその立場からの視線というのものがあります。
で、少なくとも、ここにもそんな大きく二つの視線があるものだと思ってください。

まず一つは、科学的、医学的、学術的な「”学”の目」
つまり、その微生物が生物学的にどんな存在なのか。
そしてどんな健康的な被害を起こすのか。
そんな、より細菌学的な専門知としての「”学”の目」です。

そしてもう一つは、政治行政、「まつりごと」としての「”政”の目」
つまり、食品をはじめとする公衆衛生上、それら微生物をどう規制していけばいいかという実生活的な「”政”の目」です。

ここで補助線を引いてみよう
  • “学”の目
  • “政”の目

 

つまりは、細菌学の厳密性を絶対とする、「学の目」。
現実社会の安全維持を絶対とする、「政の目」。

これらの立場が定める道は、勿論ながら向かう方向としては一緒です。
ですから同じほうを向きながら、しかしまま少々の祖語やブレ、やもすると諸々の都合上や現実対応において道の違いなんかがそこに生じることがあります。
そして、ぼくらのこの食品衛生というのは、その双方にどうしたって多々影響されながら、結局はそれらが設けた道を走るような存在なのだともいえるかもしれません。

まとめ

今回は、前編、後編と二部にわたって「E.coli」についてのお話をさせて頂いています。
そしてこちら前編では、大腸菌とは何であるのかの解説を行いました。
もっかい、大腸菌とはどういうものかを、まとめておきます。
実はこれ、次回にも関わることです。

大腸菌の特徴
  • グラム陰性菌である
  • 無芽胞性菌である
  • 通性嫌気性菌である
  • 桿菌である

 

それから、大事なもう一つ。
これを説明するための補助線としての、ここだけのオジリナルの解釈である、「学の目」「政の目」を解説しました。

ここで補助線を引いてみよう
  • “学”の目
  • “政”の目

 

「大腸菌」と「E.coli」の何が違うのか。
これをしっかりと判るように説明するためには、実は結構な準備が必要です。
でもこれで、その準備のおよそ2/3はできました。
次回の後編で、ようやくその真理に迫りたいと思います。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

 

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