皆さん、発酵食品クイズです。
「この中で発酵食品はどれ?日本酒、ザワークラウト、ピクルス、チョコレート、ナタデココ、アンチョビ、豆板醤、紅茶、くず餅、サラミ」
今日はそんなクイズを題材に、微生物が関係する食べ物である発酵食品についてお話します。

なおこの記事は、前回、そして今回と、二部構成でお話させて頂いています。
(こちら②はその後編となります)

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えいたします。

この中で発酵食品はどれ

(こちらは二部構成の「後編」になりますので、もし以下の「前編」をお読みでなければそちらを最初に読んでいただくと理解がより深まります)

というわけで、前回のクイズの回答編ですね。
もう一回題目を挙げておきましょうか。

「この中で発酵食品はどれでしょうか。」

どれが発酵食品?
  1. 日本酒(清酒)
  2. ザワークラウト
  3. ピクルス
  4. チョコレート
  5. ナタデココ
  6. アンチョビ
  7. 豆板醤
  8. 紅茶
  9. 久寿餅(くず餅)
  10. サラミ

 

前回では、「発酵」の解説をしながら、その一番の基礎である「酒」についてのお話をさせて頂きました。
つまり、1問目の「日本酒(清酒)」は、当然ながら発酵食品です。

では、残り9問はどうでしょうか。
それでは答え合わせ、行ってみましょう!

ザワークラウトは発酵食品?

ドイツの名物、ザワークラウト。
よく向こうのソーセージなどに付けあわせなどで出てくる、酸味のあるキャベツですね。
あれは、実はいわゆる漬物の一種です。
実はその一番の基本的な作り方は、キャベツと塩、以上。
千切りのキャベツを1ヶ月くらいかけて塩で漬け込んで、乳酸菌によって乳酸発酵させたもののことです。
つまりは立派な漬物なのです。

今回の中では、このザワークラウトと、次のピクルスが「漬物枠」の代表として選ばれていますが、一般的に「漬物」はポピュラーな発酵食品の一種です。
糠漬けやたくあん、奈良漬け、松前漬けなどといった日本各地の数々のお漬物、それから世界に目を向ければキムチ、メンマ、ザーサイなどなど、多くの漬物がありますが、これらは皆、発酵食品です。

とはいえ、漬物は大きく2つに分けられます。
それは、このように発酵食品であるものと、ただ漬汁に漬けただけのものです。
特に後者は、本来は発酵食品だったものが、美味しく食べることが優先された結果、無発酵になったものが見受けられます。
かたや多くの漬物というのは、発酵によって味の深みを増すとともに栄養成分をも高める効果があります。
また漬物には、どれをとっても独特の香りや酸味があります。これらは乳酸菌によって乳酸発酵された結果生じるものです。

今回のザワークラウトは、キャベツを原料としていますが、他の漬物も製造方法は基本的に同じです。
原料の野菜を塩に漬け込みます。
すると乳酸菌によって発酵(乳酸発酵)が行われます。
乳酸菌は糖類を食べて乳酸に変えてしまいます。

乳酸菌の話をするとそれだけでまた終わりかねないのですが、もう少しだけ触れておきましょう。

前回で少しばかり乳酸菌についてお話しました。
繰り返すと、実は乳酸菌というのが存在するわけではない。乳酸菌というのは生物学上の区分ではなくて、乳酸発酵するのが乳酸菌と呼ばれているのだ。だから乳酸菌というのは一杯いるんだ、と。
確かにそうなのですが、一応ながら乳酸菌の条件というのがあります。
ウィキペディアにも書いてあるので、ちょっと引用しますね。

乳酸菌の条件
  • グラム陽性
  • 桿菌・球菌
  • 芽胞=なし
  • 運動性=なし
  • 消費ブドウ糖に対して50%以上の乳酸を生成
  • ナイアシン(B3)を必須要求

 

つまりこれらをクリアすれば皆乳酸菌です。
とはいえ、ある程度の分類はあります。
一番判りやすいのは、これも便宜上での分類でしかないのですが、生息場所によるものです。
発酵の話をするならこれが好都合です。

乳酸菌の生息場所による分類
  • 腸管性乳酸菌
  • 動物性乳酸菌
  • 植物性乳酸菌
  • 海洋乳酸菌

 

まず「腸管性乳酸菌」というのは、人間の腸の中にいるものです。
ウィキペディア曰く、「ヒトの糞便中1 gあたりの菌数は、ビフィズス菌が100億個、ビフィズス菌以外の乳酸菌が10-100万個であるといわれている」だそうです。

それから「動物性乳酸菌」というのは、動物質に由来するものです。
主にチーズ、ヨーグルトなど、乳を発酵させる乳酸菌です。

今回のザワークラウト、漬物で関わっているのが、次の「植物性乳酸菌」。
これは植物質に由来する乳酸菌です。漬物のほか、味噌や醤油、パンなどの発酵にも関わります。

そして最後の「海洋乳酸菌」というのは比較的新しく、2009年に提唱されました。
海洋環境から分離した乳酸菌のことです。

ピクルスは発酵食品?

さあ、ちょっと時間をかけてしまいました。
キリがないので、こっからはもうサクサク行くとしましょう。
次、ピクルスはどうか。

本来、ピクルスというはキュウリやパプリカ、人参などの野菜を食塩水に漬けて乳酸発酵したものです。
つまりは漬物。
ですから発酵食品です。

ですが、一般的に家庭で作られたり店で販売されているものの中には、ただピクルス液に漬けただけの酢漬けのものも、少なくはありません。
よってそれをもって発酵食品ではない、というのもあながち間違いではないかもしれませんね。

チョコレートは発酵食品?

これ、結構意外かもしれませんね。
チョコレートも、実は広義の意味では発酵食品です。

チョコレートの原料はカカオの実です。
カカオの実は、ちょっとしたラグビーボールくらいのもので(下画像参照)、ここにカカオ豆が20から30個ほど、果肉(パルプ)の中に入っています。

ではどうやって作るのか。
まずカカオの実を収穫し、硬い殻(カカオポッド)を割ります。
するとその中に、果肉に包まれて水分を含んだカカオ豆がたくさん入っています。
このカカオ豆をバナナの葉などにくるんで酵母によって発酵させると、やがてそれが分解され、乳酸菌が増えていきます。(今では木箱などで発酵させているようです)
この過程によってチョコレートは本来の渋みや苦味を軽くし、同時にまろやかさを得ていきます。

勿論ここから乾燥、ローストなどの過程を経ることによってチョコレートの美味しさというのは作られていくのですが、しかしチョコレートならではの独特の香りや味(プレアロマ)は、このカカオ豆の発酵工程が鍵を握っているのです。

ナナデココは発酵食品?

これも結構意外かもしれませんが、ナタデココは発酵食品です。
そもそもあの独特のコリコリとした、食感。
実はあれは酢酸菌の発酵によって生まれるものなんです。

「ナタデココ」は、スペイン語が語源です。
「ココ」は原料であるココナッツのことで、ナタデココとはつまり「ココナッツに浮かぶもの」の意です。

ではなぜ「浮かぶもの」なのか。
「アセトバクター・キシリナム」という酢酸菌があります。別名、「ナタ菌」です。
ココナッツにこのナタ菌を付着させると酢酸発酵が行われます。そのさいに上澄みが固まって硬い膜状のものができます。
つまり、ココナッツ液に膜が浮かぶ、というわけです。
これを切ってシロップ漬けにしたものがいわゆるナタデココなのです。

日本でも昔流行したことがあるスイーツなので、あまりイメージがないかもしれませんが、元をたどるとフィリピンの伝統的な発酵食品だったのです。

アンチョビは発酵食品?

パスタなどのイタリア料理によく使われるアンチョビ。
あれは発酵食品でしょうか。

実はアンチョビは、カタクチイワシやウルメイワシなどの小型のイワシを塩漬けにして発酵させたものをオリーブオイルに漬け込んだ発酵食品です。
日本のイカの塩辛やカツオの酒盗などとほとんど同じ原理の、塩蔵食品です。

アンチョビの源流は「コラトゥーラ」だと言われています。
さらにそこから遡れば、世界最古とも言われる古代ローマの調味料「ガルム」にもたどり着くかもしれません。

コラトゥーラも、さらにガルムも、ひっくるめて言うなら「魚醤」です。
魚醤とは、醤油の原型です。
世界、とくにアジア圏には、日本をも含めて多くの魚醤がみられます。
有名なのはタイのナンプラーですが、それ以外にも中国の蝦油(シャーユ)、ベトナムのニュクマム、マレーシアのブドゥーなど様々です。
日本でもハタハタを使った秋田のしょっつる、スルメイカを使った石川県のいしる、イカナゴを使った香川県のいかなご醤油などが有名ですが、大豆による現代の醤油以前は庶民的な調味料としてポピュラーだったようです。

世界中で魚醤がよく作られたのは、その作り方が割とシンプルだというのも恐らくあったのでしょう。
内蔵を残した魚を長期間かけて高濃度の塩付けにします。
すると魚の内蔵の酵素によって発酵が進みます。この酵素が魚の身のタンパク質を分解し、アミノ酸をつくり、うまみが作られていきます。
今の大豆を使った醤油もほとんど同じですが、こちらでは麹を使って酵素分解させるのが特徴です。

魚の保存食としてぼくら日本人が外せないのは、やはり「熟れ鮨(なれずし)」でしょう。
今でも滋賀県のふなずしや石川県のかぶら寿司などで見られますが、これがぼくらの大好きなお寿司の原点だと言われています。

ではどのように作るか。
昔は魚の腹の中にごはんを詰め込んでいました。(今もそうしているものもあります)
今残っている熟れ鮨は、麹を加えたご飯の上に生の魚を乗せています。
そして重しをして数ヶ月長期保存します。
するとごはんの乳酸発酵が進み、pHが下がって他の菌が抑制されていき、やがて魚のタンパク質が分解されることでアミノ酸がつくられていきます。

古くは縄文時代から作られていたともされていますが、まさに長期保存のための昔の日本人の知恵です。
今のお寿司は、乳酸発酵のかわりに酢を使って簡易化された「速鮨」というものでした。

…と話を広げているとマジでキリがないので、このへんにしておきましょう。

豆板醤は発酵食品?

うーむ、あとまだ4つもあるのか。
少しスピードあげていきましょう。

中国の、あの辛い調味料、豆板醤。
これはソラ豆に唐辛子や食塩を加えて発酵させた、中国の代表的な辛味噌です。
「辛味噌」、つまり味噌の一種です。
味噌枠で何か一つ出したくて、豆板醤を選びましたが、他の味噌も同様に発酵食品です。

はい、次の問題…と行きたいところなんですが、味噌が話題に出てきてしまった以上、やはり「味噌と発酵」について触れないわけにはいきません。
なにせ味噌、醤油というのは、まさに日本の発酵食品の象徴ですからね。

味噌も醤油も、ともに大豆から作られます。
実はこの大豆を作ることが出来るのは東アジアの限られた地域です。
そして日本の国菌である麹菌。これらが揃ったからこそ、このような発酵食品文化が生まれたのでしょう。
何せ味噌はかつて、肉を食べない日本人の貴重なタンパク源でした。というのも、味噌の大豆は麹菌によってアミノ酸やペプチドに分解され、吸収しやすい状態とされているのです。

尤も味噌というのは多種多様に存在するのですが、それらを大きく分けると、麹や製造方法によって3つに区分できます。

味噌の種類
  • 豆味噌:大豆のみを豆麹で発酵。八丁味噌など。熟成期間が長く、旨味が強い。
  • 米味噌:大豆と米を米麹で発酵。信州味噌、西京味噌、津軽味噌、仙台味噌など。甘みが強く、最も多く作られている。
  • 麦味噌:大豆と大麦・裸麦を麦麹で発酵。薩摩味噌など。比較的あっさりしている。

 

いずれにしてもこれらには麹菌が使われるのですが、ここでの麹菌の最大の役目は前回のお酒とは違って、酵素(ペプチダーゼ)による大豆のタンパク質の分解です。
これによって先にもあげたようにアミノ酸やペプチドに分解され、味噌のうまみを生成するのです。

そしてこの際、酒同様にアミラーゼによるデンプンの分解によって糖化がなされ、乳酸菌や酵母も増殖します。
とはいえ酒よりもはるかに食塩濃度が高いため、その環境でも耐えられる耐塩性の乳酸菌(テトラジェノコッカス・ハロフィルス)や酵母(チゴサッカロミセス・ルキシー)の出番となります。
これらが清酒のときと同様、乳酸を生成してpHを下げるとともに酵母の活性化を促し、そして酵母によってアルコールが生成され香りのもと(エステル)になるなどして、味噌は作られていきます。

紅茶は発酵食品?

次、紅茶は発酵食品でしょうか。

日本でよく飲まれている番茶や緑地などは発酵食品ではありません。
これらはお茶の葉を蒸すことで、微生物を殺菌するとともに酵素を失活させて作ります。

しかし、紅茶は違います。
紅茶はお茶の葉が乾燥しきらない前に揉み込んで作ります。
こうすることで、葉の細胞組織の中にある酸化酵素を外に出します。
するとどうなるか。
酸化酵素が酸素に触れて活性化し、カテキンやペクチンなどを「酸化発酵」させるのです。
これが紅茶の香りや色味、味をつくります。

つまり、紅茶は微生物は関与しないけれど、酵素による酸化発酵によって作られるのです。

折角紅茶が揚がったので、飲料ということでもう一つ挙げたいのがコーヒーです。
コーヒーは発酵食品でしょうか。

答えは、ちょっと違います。違いますが、でも実のところ微妙です。
というのも、その中には発酵食品といえそうなものもあるからです。

世界で最高級とも言われる「コピ・ルアク」ってコーヒーを知っていますか。
なんでも一杯で数千円するという超高級コーヒーです。
このコーヒーは、なんとコーヒーの果実を食べたジャコウネコのフンの中にあるコーヒー豆を集めて作るのです。
となるとこれは、ジャコウネコの腸内細菌によって発酵がなされた、とも言えなくもない。そんなちょっと変わったコーヒーです。


コーヒータウン

くず餅は発酵食品?

日本の和菓子の中んにも発酵食品であるものが幾つか存在します。
それが、実はこのくず餅です。

実はくず餅には、関西のものと関東のものがあります。
関西のくず餅は「葛餅(くずもち)」、つまり葛の根を原料にした葛粉をつかった和菓子です。こっちは発酵食品ではありません。
しかし関東のくず餅はこれとは違い、「久寿餅(くずもち)」です。

これには葛粉ではなく、浮き粉を使います。
浮き粉とは、要は小麦粉のでんぷんを乳酸発酵したものです。
久寿餅の老舗である「船橋屋」さんのサイトに詳しく解説されていますので、興味がある方はそちらをどうぞ。

とはいえ、ここに書かれているように「久寿餅が和菓子唯一の発酵食品か」どうかは、いや間違いではないかもしれないですが、もしかするとちょっとばかり微妙かもしれません。

例えば、酒まんじゅう。
これは酒のように麹と酵母(酒母)によってアルコール発酵をさせて作るものです。
また水飴にも発酵は大きく関わっていたりもします。

サラミは発酵食品?

みんな大好き、ハム・ソーセージ。
しかしそのハムやソーセージにも、発酵食品であるものとそうでないものがあります。
発酵によって作るハムが生ハムです。そして、発酵によって作るソーセージが、サラミに代表されるドライソーセージです。
つまり、サラミは発酵食品です。

サラミのような発酵ソーセージは、ミンチにしたひき肉に調味料や香辛料などを混ぜ、腸詰めにし、それを発酵させて作ります。
ちなみに発酵ソーセージには、数週間程度と熟成期間が比較的短い「セミドライソーセージ」と、サラミソーセージのように数ヶ月かけて熟成させる「ドライソーセージ」の二種類があります。

まとめ

発酵食品クイズの答え合わせ、いかがだったでしょうか。

つまり答えは、こちら、じゃん!
「どれも皆、発酵食品です。」

どれも発酵食品です!
  1. 日本酒(清酒)
  2. ザワークラウト
  3. ピクルス
  4. チョコレート
  5. ナタデココ
  6. アンチョビ
  7. 豆板醤
  8. 紅茶
  9. 久寿餅(くず餅)
  10. サラミ

 

これらの他にも発酵に関しては色々と話したいこともあります。
それらはゆくゆく、ここでもじっくりと取り上げていくことにしましょう。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
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