皆さん、発酵食品クイズです。
「この中で発酵食品はどれ?日本酒、ザワークラウト、ピクルス、チョコレート、ナタデココ、アンチョビ、豆板醤、紅茶、くず餅、サラミ」
今日はそんなクイズを題材に、微生物が関係する食べ物である発酵食品についてお話します。

なおこの記事は、今回、そして次回と、二部構成でお話させて頂いています。
(こちら①はその前編となります)

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えいたします。

この中で発酵食品はどれ

(こちらは二部構成の「前編」になりますので、もし「後編」から来られた方は、まずはこちらを最初に読んでください。)

はい、突然ですが、またまたいきなりのクイズです。

「この中で発酵食品はどれでしょうか。」

どれが発酵食品?
  1. 日本酒(清酒)
  2. ザワークラウト
  3. ピクルス
  4. チョコレート
  5. ナタデココ
  6. アンチョビ
  7. 豆板醤
  8. 紅茶
  9. 久寿餅(くず餅)
  10. サラミ

 

さあ、答えは何番だと思いますか?

出てきた答えは?

折角なので、これまた今回も先にFacebookで友人に聞いてみました。
ちなみに皆、一般の、食品衛生については素人な人ばかりです。

 

facebookでの反応例
  • 1.7.8.。
    2.ザワークラウトって何?
  • んじゃ俺も1.7.8で
  • 1・2・4・5・7、かなあ。
  • 1、7‥あとなんだろう。
  • 1と8?
    麹と茶葉…
  • 全部!
  • 1、2、5、7、10でオナシャス!

 

うん、これもこれで正解、ってのもちょいちょいありますね。
では一つずつ解答していきましょうか。

「発酵」とは何か

さて、答えを発表する前に、「発酵」についてのお話をしておきましょう。

最近、何かと話題な「発酵食品」。
細菌だけに、というしょうもないスベッスベの返しはさておいて、先月もぼくは「醸すフェス」なるオンラインイベントに参加させていただいたばかりです。

さてこの「発酵食品」というのもまた、腐敗変敗や食中毒などと同様、微生物に関わる食品技術であることは言うまでもないことでしょう。
つまりぼくらの食品衛生においても、発酵というのは微生物というものを扱う上においてプラス・マイナスの関係性だけでしかないのです。

では、そもそも「発酵」とは何でしょうか。

一言で言うなら、発酵というのは、微生物が生きるためのはたらきによる科学反応の結果に生成される副産物です。
同じ様なはたらきによる食品の物質変化なのですが、人間が食べられるようになる有益なはたらきが「発酵」であって、食べられなくなってしまう有害なはたらきが「腐敗変敗」です。
もう少し具体的に言うと、微生物が食品の中の糖類を分解し、乳酸や各種有機酸、アルコールなどを生成すると発酵食品となり、またタンパク質を分解してアンモニアや脂肪酸、腐敗臭などが作られると腐敗になります。

発酵には「カビ」、「酵母」、「細菌」が関わりますが、これらを総じて「発酵菌」と呼びます。
この3つの関わりは、発酵食品において非常に重要です。

発酵菌
  • カビ(麹菌、アオカビなど)
  • 酵母(パン酵母、ビール酵母など)
  • 細菌(乳酸菌、酢酸菌、納豆菌など)

 

まず、発酵の主役といったら「カビ」です。
カビといっても色々ありますが、一般的に発酵界(なんだそれ)においての主役といったら「麹菌」です。
日本の発酵食品において最も重要な役目を果たしているのが、この麹菌(アスペルギルス属)の一種である「アスペルギルス・オリゼー」というものです。
日本酒も醤油も味噌も、この「アスペルギルス・オリゼー」のおかげで作られているため、日本の「国菌」ともされています。


(「もやしもん」より)

ちなみにアスペルギルス属の中には、この「アスペルギルス・オリゼー」にめっちゃよく似た「アスペルギルス・フラバス」というものもあります。
そっくりの親戚のようなものに近いのですが、しかしこいつが作る「アフラトキシン」は猛毒であり、迷惑な存在として知られています。

おっと、話を発酵に戻しますね。

麹菌は、「酵素」を持っています。
この酵素が、米や麦などのデンプンやタンパク質を分解し、糖分やアミノ酸を作り出します。
こうして麹菌が酵素によってブドウ糖を作り出すことを「糖化」といいます。

そして、そのブドウ糖を「酵母」が食べることで「発酵」が行われ、アルコールが作られます。
めっちゃシンプルに言うと、これが「発酵(アルコール発酵)」によって日本酒(清酒)を作る原理です。

細菌もまた、ここにしばしば関わります。
例えば、健康にいいともよく言われる「乳酸菌」もその代表格ですね。
乳酸菌もまた、糖分を食べて「発酵(乳酸発酵)」を行い、乳酸を作ります。
例えばちょっと乱暴ながら、牛乳に乳酸菌を加えると発酵され、酸味を帯びてヨーグルトになります。

乳酸発酵の面白いところは、発酵で作られた乳酸によってpHが低下し、他の細菌が生きられなくなることです。
これによって食品の保存性が高まるのです。

しかし一重に「乳酸菌」と一言に言っても数百種以上もある、自然界はおろか人間の体内にもいる普通の菌のことです。
ではなんでそんなに数が多いのか。
意外にも思えるかもしれませんが、実は乳酸菌というのは学術的な分類はありません。
よく世間で乳酸菌がどのくらいとも言われますが、これが乳酸菌だとは厳密には言えないんですね。
乳酸菌というのは結果的に乳酸発酵をする菌のことであり、それによって腐敗を進ませない菌のことを指すものなのです。つまり乳酸菌というのは、要は総称です。

その他、お酒に酢酸菌を加えると、アルコールを元に酢酸菌が「酢(醸造酢)」を作ったりしますし(酢酸発酵)、大豆に枯草菌の一種である納豆菌が付着すれば発酵して納豆になります。
(納豆菌は稲ワラに多いため、納豆を作るときにかつては稲ワラに包んで作られていました。)

清酒は日本がほこる最古の発酵食品

さあ、ひとまず発酵とはどういうものか、理解できましたでしょうか。
それでは一つずつ、発酵食品か否かを追っていくとしましょう。

どれが発酵食品?
  1. 日本酒(清酒)
  2. ザワークラウト
  3. ピクルス
  4. チョコレート
  5. ナタデココ
  6. アンチョビ
  7. 豆板醤
  8. 紅茶
  9. 久寿餅(くず餅)
  10. サラミ

 

1つ目から行きましょう。
まずは「日本酒(清酒)」です。
この前編では、この日本酒(清酒)の話がメインとなります。

といってもですね、
これで間違う人は、余りいないかと思いますが、これはもう紛れもない発酵食品です。
どころか、日本最古の発酵食品であり、世界に誇れる高技術の発酵食品でもあります。

なお、清酒の他にも、ワイン、ビール、その他「酒」は発酵食品です。
人類にとって発酵食品は、酒と一緒に歩んできたといってもいいでしょう。

そして日本酒というのは日本古来の発酵の中でも重要な存在であり、また日本の伝統と文化とも言える存在。
何せ日本酒というのは縄文時代から弥生時代にかけて、稲作の始まりとともに始まったものなのです。

日本の酒造りの始まりは、米やヒエ、どんぐりなどを人の口の中で噛み砕く、「口噛み」からでした。

口噛み酒、って知ってますか。
そう、アニメ映画「君の名は。」でも出てきたやつです。
では、どうしてこんなことで酒が出来るのか。

巫女が米を口に含んで噛み砕き、それを保存ます。
すると人の唾液の中にある酵素(アミラーゼ)が米のデンプンを分解し、糖にします。
つまり、麹菌のかわりに人間のアミラーゼが糖化を促すわけです。

で、これを吐き出して保存しておくと、やがて空気中をただよう野生の酵母がその糖を食べてアルコール発酵させてくれ、酒にしてくれます。
これが最も原始的な日本の酒の作り方です。
つまり日本酒の始まりは、「神事」だったのです。

一方、麹菌を使っての酒造りについては、その後の奈良時代に書かれた「播磨国風土記」に記録が残っています。
ここには米に生えたカビによって発酵をうながし酒を作ったという記録が残っています。
そしてその後の平安時代には、すでに朝廷に捧げるお酒造りが出来上がっていたとも言われています。

清酒はどうやって作るのか

酒の歴史の細かいところは他にまかせるとして、ここではもう少し日本酒(清酒)が微生物によってどのように作られるのかについて、もう少し見ていきましょう。

おっと、その前に。
ずうっとこれまで「日本酒(清酒)」と書いてきました。
ですが、「日本酒」と「清酒」は別物、というかそれを含む範疇が厳密には違います。
これはちょっと日本酒好きとしても、本来的にはスルーできません。

滅茶苦茶乱暴に言うと、いわゆる「日本酒」と一般的に認識されているのは「清酒」です。
かたや、「日本酒」というのは正確に言うのであれば、その「清酒」をも含んで、みりんなども含めた日本のお酒のことであり、やもすればドブロクから、焼酎、泡盛まで含んでしまいかねません。
今回は、一般層へのクイズの形式を取っているので、判りやすく「日本酒」としていますが、正確に言うならドブロクや焼酎を含まない「清酒」のことをテーマにしています。

さあ、そんなことを前提にして、一般的な意味での「日本酒=清酒」、以下「日本酒」の話をするとしましょう。

まず日本酒を作る、つまり日本酒の発酵にかかわる微生物は、次の3つです。

清酒の発酵に関わる微生物
  • 麹菌(アスペルギルス・オリゼー)
  • 酵母(サッカロミセス・セレビシエ)
  • 乳酸菌(ラクトバチルス・サケ)

 

そう、日本酒(清酒)は、まさに「発酵」の基本中の基本。
「発酵」を語る上でこれ以上にうってつけなものもそうありません。
だってぼくらの生活文化に馴染む存在でありながら、何せ発酵の三主役、「麹菌」と「酵母」と「細菌」が三役ここに歩み寄ることで生まれるからです。
日本酒を外して発酵は、少なくともぼくら日本人は語れないのです。

というわけで、「日本酒(=清酒)」の話、です。
基本的に日本酒は、米と麹菌と水によって作られます。

まず、最初にやることは米を炊くことです。
文明の始まり、中国では生米から酒を作りもするのですが、日本人はその経験から、米は炊いたほうが発酵しやすいことを古来から学んでいます。

で、この炊いた蒸米に麹を付着させ、米麹をつくります。
すると麹菌の酵素(アミラーゼ)が米のデンプンを糖分(ブドウ糖)に分解します。先にも触れた、「糖化」です。
この麹菌による酵素分解での糖化が、まず清酒の発酵の第一ステップです。
ちなみに先の「口噛み酒」では、この糖化を人間の唾液に含まれている酵素(アミラーゼ)で行ったわけです。

次にこれに酵母を加える。これがやがてお酒のもと、「酒母」になります。
で、こいつを水と一緒にタンクに入れて発酵を待ちます。これは酒の直接的な源となるもので、「醪(もろみ)」と呼ばれるものです。
やがて酵母がその糖分をアルコールと炭酸ガス(二酸化炭素)に分解する。
この酵母によるアルコール発酵が、清酒の発酵の第二ステップです。

さらに乳酸菌は乳酸発酵によって乳酸を作ることによって、雑菌の繁殖を抑える役目に使われます。
しかし乳酸菌はやがて高濃度のアルコールによって死滅されることになります。

さて、最初に言った日本酒の発酵の高度なところは、この麹と酵母の2つの発酵のステップを同時進行で行うところにあります。
いわゆる日本酒独特の発酵法である、「並行複発酵」というやつです。
これによって日本酒は、一般的にはアルコール度数の低い醸造酒でありながら、世界的でも最も高いアルコール度数のお酒となるのです。

まとめ

1問目の「日本酒」だけで結構手間取ってしまいました。
ですが、これも実は理由があります。
というのも、「日本酒こそが発酵食品たる基本」だからです。
ぼくらにとっては、ここが発酵食品のスタート地点。
これをイの一番にしないわけには、やっぱりいかないのです。

そんなわけで、第1問は、常識ながらも「発酵食品」でした。
米だけに餅の勿論、大怪獣モチロンですが、ここで間違う人は一人もいなかったですよね?
って頼むで、こいつは基本のキの字ゆえのサービス問題やからな!
次からは、いきなり「…え!?」ってなるやつばかりだぞ!?

さあ、そんなわけで以下9問のドキドキ解説については、後編で行っていくとしましょう。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

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