衛生管理というのは何事にも重要です。もし衛生管理をしていない加湿器を使ったら、あるいは温泉に入ったら、人が死ぬかもしれないのです。
って、ええっ!?そんな奇妙で怖いことがあるのでしょうか。
実は、あります。
その犯人は、レジオネラ菌という細菌です。
ご存知の人もいるかもしれませんが、今回はそんな冬の怖いレジオネラ菌の話を、ぐぐっと深めに掘っていきたいと思います。

なおこの記事は、今回、そして次回、次々回と、三部構成でお話させて頂いています。
(こちら①はその前編となります)

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

加湿器を使ったら、温泉に入ったら、死ぬかも!?

(こちらは三部構成の「前編」になりますので、もし「中編」「後編」から来られた方は、まずはこちらを最初に読んでください。)

さて、1月もそろそろ後半戦。
かなり寒くなってきましたね。

そしてこれを書いている本日2021年1月20日は、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が出されてからそろそろ2週間が経とうとしています。
ちなみに昨19日においては5321人が感染し、死亡者は104人とついに1日100人を超えてしまいました…。

さて、新型コロナウイルスも、そしてインフルエンザなどもそうですが、一般的に感染症の予防には湿度を高めるのが効果的です。
というのも湿度の高い環境では、ウイルスを含んだ飛沫が落下しやすくなりますし、一方で乾燥した環境ではその粒子が小さくなるため、拡散しやすくなる、と言われています。
まあこれらは「言われている」というだけですので、詳しくはどうぞ各自調べてみてください。

で、今回の話はここからです。
さあ、冬の湿度対策で重宝するものといったら、「加湿器」です。

ぼく自身、この時期においては自分の部屋でも加湿器の使用は事欠かせません。
ですがしかし。
加湿器というのは、ちょっとばかり衛生管理において注意が必要なのです。
では、もし加湿器の衛生管理をおろそかして使ってしまうと、どうなってしまうのか。

答え。
最悪で、

 

「死にます。」

マジかよ!
マジです。
お前はもう死んでいるかもしれません。

さあ、そしてもう一つ。

寒い冬といったら温泉ですよね。
こちらもまた冬の楽しみ。
さすがに今は緊急事態宣言の真っ只中。そうそう行くわけにはいかないでしょう。
ですが、2月にもしそれが明けたら、ちょっと足をのばして、なんて人もいることでしょう。

でもこの温泉にも、少しばかり注意が必要だったりします。
勿論、各温泉事業者は色々と気をつけているかとも思います。
ですが、時と場合によって事業者が衛生管理を怠っている入浴施設に入ってしまったらどうなるのか。

答え。
これも最悪で、

「死にます。」

ちーん。

マジかよ!
これもマジです。

まあ今回の話は割と有名な話なので、ここまでは「それ知ってる」という人も多いでしょう。
この犯人は、「レジオネラ菌」というものです。
ですが、このレジオネラ菌については、もう少し突っ込んだ話までは知らない人も多いかとも思います。
そこで、今回はこのレジオネラ菌について、話をしていくことにしましょう。
大丈夫、そんな難しい話をするつもりはありません。
基本、判りやすさ重視でお話しますから。

では、いきましょう。

米在郷軍人を襲った謎の奇病

今から遡ること40と余年。1976年のことです。
アメリカはペンシルバニア州、フィラデルフィアにあるベルビュー・ホテルにて、在郷軍人会の年次総会が大々的に開催されることになりました。
今や4.5つ星を取るこの高級ホテルですが、ここに全米から4,000人以上もの在郷軍人たちが集まった。


The Bellevue Hotel

ちなみに「在郷軍人」というのは、ぼくはこれを書くまでただの退役軍人だとばかり思っていたのですが、必ずしもそういうわけではないようです。
辞書によれば、「平時は民間で生業に就いているが、戦時には必要に応じて召集され国防の任に就く予備役・後備役などの軍人」とあります。
アメリカではこの在郷軍人会というのは最大の圧力団体の一つであり、政治的な力もかなり大きいようです。そういえば、そんな話を前にどこかで聞いたことあったっけ。一つ賢くなりました。

おっと、そんなことはさておくとして。
さて、滞りなく年次総会は行われたように思われたのですが、しかし。
総会が終え、参加者の皆が会場を出て帰宅した後。
しばらくすると、この総会に参加した者の中から体調の悪化を訴えるものが、次々と出始めたのです。

しかも悪寒を覚えた者のみならず、高熱を出す者、極度の衰弱に至る者も出始め、さらには命に差し障るような謎の肺炎にかかった者さえ出始めました。
死に関わる謎の重度の肺炎、というと今この時代にはちょっとただならぬものを想像しますよね。

最初は、肺炎球菌による肺炎が疑われました。
しかしその場合であれば、ペニシリン系の一般の抗生剤治療で治すことができます。
ところがこの肺炎に、それは効かなかった。

そうこうしているうちに、229人が重症の肺炎に疾病し、死亡者は34人にまで至ったのです。
様々な検査を行ったものの、原因は不明。
抗生物質での治療が効かないため、未知のウイルスではないかとも言われ始め、また先の通り在郷軍人会というそれなりの政治力を持つ団体だっただけに、まことしやかにバイオ兵器説、陰謀説までも噂されるようになりました。

かくも謎につつまれたこの肺炎ですが、米国疾病予防センター(CDC)による調査の結果、その患者から発見された菌がようやく発見されることで、やっと。その原因が、ある細菌によるものであったことが解明されるようになったのです。

なんと、この細菌の正体は、自然界の土中や淡水などにどこにでもいる土壌菌だったのです。

その細菌は、本来それほど増殖しないものなので普通であれば、それほど問題にはなりません。
しかしここでは、ホテルの冷却塔の水の中で増殖していたのです。

冷却塔水というのは別に人が飲んだりするわけでもないので、それほど水を取り替えずにぐるぐると循環していることがあります。
そこで、その循環水の中では多量のアメーバが増殖していました。
そしてこの問題の細菌は、そんな水中にいるアメーバを宿主として生息していおり、それらの中で多量に増えることによって巡回水の中で大増殖していた。

しかも冷却塔水の温度は、この菌が最も繁殖に適した20℃から41℃の間だった。
かくして増加した細菌をたっぷりと含んだ水が、冷却塔の周辺で水飛沫として飛んでいたのです。

で、これがまた運悪いことに、ホテルのエアコンの室外機の空気取り入れ口の近くにあったのです。
そこで細菌を含んだ空気がエアコン内に取り込まれ、室内の送風口から吹き出されていたことがわかりました。
つまり、エアコンから細菌を含んだ空気、つまりエアロゾルを吐き出し、集会をしている室内に充満させていたのです。
こうして会場に菌が広がり、参加者はエアロゾル感染してしまったのでした。

この感染症は「在郷軍人病」と呼ばれ、またそれを引き起こしたこの病原細菌は「在郷軍人病菌」、つまり「レジオネラ菌」と呼ばれるようになったのです。
これがレジオネラ菌が世界の脚光を集めた最初の事件でした。


日本冷凍空調学会

レジオネラ菌とは

先にも書いた通り、レジオネラ菌というのは本来、土壌、あるいは河川や湖沼などに普通に生息している環境常在菌です。
「環境常在菌」というのは、どこにでもいる、という意味です。

しかしレジオネラ菌は一般的には菌数も少ないうえ、増殖のスピードが遅いことで知られています。
レジオネラ菌は、例えば大腸菌などと同様に細菌ですので、当然ながら細胞分裂によって増殖します。

しかし、そのスピードがかなりゆっくりです。
例に挙げた大腸菌が大体細胞分裂するのにかかる時間が20分くらいであるのに対し、レジオネラ菌は4時間以上もかかるのです。
では、そんなレジオネラ菌がどうしてそんなに増殖してしまうことがあるのか。

まずひとつは、先のアメリカでの話のような冷却塔や、あるいは大衆浴場などのような循環式浴槽など、同じ水がぐるぐると繰り返し、繰り返し、循環するような施設だと、そのような時間が稼げてしまうのです。

加えて、こうした循環水には温水が使用されることが多く、さらに菌の繁殖条件がよくなります。

「バイオフィルム」、というのをご存じでしょうか。
日本語でいうと「菌膜(きんまく)」というものなんですが、微生物によって作られる、ネットリとした粘質のものです。
台所のシンクやお風呂場の排水口に出来る、ヌメリ。あれもバイオフィルムです。
勿論、自然界にもあります。よく川の中の石の裏などに、ヌメっとした膜みたいなものが付いていることがありますよね。
あれってなんだろ、キモッ!と思うことも多いかもしれませんが、それがバイオフィルムです。
身近なところでいうと、歯に付着する歯垢(プラーク)。実はこれも歯茎と歯の表面に作られたバイオフィルムの一種です。
これらはいずれも、さまざまな微生物が集合して作った生物膜なのです。

で、このバイオフィルムがですね、循環水内にできてしまう。
そりゃ同じぬるい温水を使っていながら循環させ続けていれば、ヌメリがどっかにできてもおかしくないな、と感覚的にも思うでしょ?
これらの中にはもう微生物が大量に増殖してしまっているのです。

で、このバイオフィルムの中にはレジオネラ菌がいるときもあります。
元々菌数の少ない菌であり、また細胞分裂にも時間のかかる菌ではあるのですが、しかしこうした中にもしレジオネラ菌が生存していた場合、どうなるか。

このような循環水の中には、レジオネラ菌を餌とするアメーバや繊毛虫などの原生動物がしばしば生息しています。
で、それらが餌であるレジオネラ菌を体内に取り込むことになります。
こうなると通常の細菌は当然ながら体内で消化されてしまうのですが、しかし。レジオネラ菌がたくましいのは、これで死滅することなく、それらの細胞内でむしろ増殖するのです。
そして、やがてその原生動物の細胞を壊して水中に拡散してしまう。


神奈川県衛生研究所

こうやってアメーバなどを使って、水中でレジオネラ菌はどんどん増殖していくのです。
こうなると、レジオネラの菌数は水100mlあたり、やもすると1000,000個以上になるともいわれています。

かくして増殖したレジオネラ菌を含んだ水を使うことによって、人間に感染することになります。

レジオネラ菌による肺炎が怖い

レジオネラ菌によっておこる病気は、二つあります。
一つは軽症の「ポンティアック熱」。もう一つが、重症化しやすい「レジオネラ肺炎」です。
「ポンティアック熱」というのは、発熱症状です。こっちはそれほど怖くもなく、死ぬこともありません。
およそ数日で回復します。

しかし、怖いのは「レジオネラ肺炎」です。
というのも、レジオネラ肺炎は、初期段階では他の肺炎と症状に変わりがない。
しかもたちが悪いことに、普通の検査では、レジオネラ菌は検出されなかったのです。(後編でもう少し詳しく触れます)
だから(今はそうでもないのですが)以前は、レジオネラ菌によるものだという原因が分かりづらかった。
となるとどうなるか。
先にも少し触れましたが、様々ある細菌による肺炎の中でもポピュラーなものは肺炎球菌による感染です。これには一般の抗生物質で治療することが出来ます。
しかしこれはレジオネラ菌には効果がないのです。

しかもレジオネラ肺炎の怖さは、病状の進行が速く、そしてその速さの分だけ治療が遅れがちになり、そして致死率が高まるのです。

うえー、マジで怖い!
と思うかもしれません。
ですが、少しだけご安心ください。
レジオネラ症というのは、健康な人であればそれほど感染するほどでもなく、また感染したとしても「ポンティアック熱」だったり無症状ですむということが多いものです。
ですが、糖尿病や腎不全末期のような基礎疾患を持っている人や、喫抵抗力の低い高齢者や新生児などが、このような肺炎になることがあるのです。


レジオテック

どんなところで発生するのか

ではレジオネラ菌による感染症は、どんなところが感染源となるのでしょうか。
大量に循環水を使用するような施設。それがレジオネラ菌による汚染水の最も疑わしいところです。

日本国内で最も多いのは、なんといってもやはり入浴施設でしょう。
なにせ我が国は、温泉大国です。
拾をいうなら温泉施設は、結構な高確率でレジオネラ菌が生存しているともいわれています。
ある調べでは、日本全国の温泉水にレジオネラ菌が生息しているともされています。

そのほか、土壌菌であることから、土木作業や園芸作業などでも問題になります。
またシャワーやホテルの噴水、農園用の噴水など、実は割とどんなところでも危険性があるのが、レジオネラ菌の怖いところだったりもします。

まとめ

今回は、前編、中編、後編と三部にわたって「レジオネラ菌」についてのお話をさせて頂いています。
そしてこちら前編では、レジオネラ菌の感染症の始まりから、レジオネラ菌とはどのようなものなのかについて紹介させていただきました。

次回の中編・後編では、日本でのレジオネラ菌の感染症の実例を挙げてみるとともに、加湿器がなぜ危ないのかについて、追ってみていきたいと思います。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

■□貴方の工場・店舗で悩んではいませんか■□
・どうやって防虫管理・衛生管理をすればいいか判らない
・今やっている防虫管理・衛生管理が正しいか判らない
・何か問題が発生したときの対応が判らない
・取引先や保健所の査察が不安だ
・でも余りコストもかけられない
だったら貴方が防虫・衛生管理のプロになればいいのです!

高薙食品衛生コンサルティング事務所にようこそ
  • 私達は、どんな工場、お店の方でも防虫管理・衛生管理のプロレベルに育成することが出来ます。
  • 何故なら、防虫管理・衛生管理のプロとは、基礎知識に加えて「正しい管理の仕組み」を作れる能力を持つ者のことだからです。
    この「管理の仕組み作り」を知るこそが、防虫管理・衛生管理のプロへの道なのです
  • そんな防虫管理・衛生管理のプロを育成し広めることで、日本の「食の安全安心」を、さらにより広く、より高くさせることが私たちの使命だと信じています
  • どうですか?
    そんな防虫管理・衛生管理のプロにあなたもなって、本当の「食の安全安心」を私達と一緒に広げていきませんか?