最新の食品業界ニュースから気になった話題を定期的にピックアップし、食品衛生管理のプロの目線からコメントさせていただきます。
今回は、無印良品で新商品のパンにカビが発生し、回収となった件についてお話をしていきたいと思います。

なおこの記事は、今回、そして次回と、二部構成でお話させて頂いています。
(こちら①はその前編となります)

本日の時事食品ニュース

 


無印良品

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

(アイキャッチ画:食糧産業新聞社

無印良品のパンにカビが発生し回収に

(こちらは二部構成の「前編」になりますので、もし「後編」から来られた方は、まずはこちらを最初に読んでください。)

先日、無印良品のパンにカビが発生し、1万点の自主回収が発表されました。

対象になっているのは、「糖質10g以下のパン 塩バター」。
昨年のクリスマス、12月24日から今年の1月11日までに販売されたものがその対象である、ということ。

弊社が2020年12月24日から2021年1月11日までに販売いたしました「糖質10g以下のパン 塩バター」の在庫の一部から、カビが発生したと思われる商品が見つかりました。
つきましては、該当する賞味期限の商品を回収させていただきます。

実はこの「糖質10g以下のパン 塩バター」。
確かこれ、昨年の秋に発売されたパンなんですが、実は実際に店頭で見たことがあってメチャクチャ買うのをソソられたことがあります。
まあ最近は色々と低糖質のパンも出てきてはいますが、やっぱりメタボ世代としては気になるところ。

そんなわけで、実際に無印良品に行って商品を買って食べながら、「パンとカビ」についての話をしていきたいと思います。

どうしてパンにカビが生えていたのか

さて、今回のお話ですが、なんでも無印良品のパンの在庫から、カビが発生しているものが見つかり、回収になったということです。
「在庫で見つけた」、というのだから、当然ながら開封はしていないのでしょう。
で、それに応じてやむなく同ロット品を回収し、廃棄処分にする、と報じられています。

後の話にも関わることなので読み進めていただければいずれか判ると思うのですが、このカビというは、そもそもパンを焼き上げた後、工場内のどこかのタイミング、まあ普通に考えるとその後の「冷却」か更にその後の「包装」のいずれかの段階で、パンに付着したカビの胞子が生長したものです。
つまりこれは、このパンを製造した工場の製造環境上の問題があった可能性がある、ということです。

しかしカビの胞子なんてものは、はっきり言って空気中にある程度は存在するもの。
そりゃあ多いか少ないかによって、程度の差はあるのですが、じゃあ工場のこれらのエリアをカビの胞子が存在できないほどに無菌化なんて出来ません。

となると、もう一つ考えられる理由。
それは、このパンはまだ発売してから数ヶ月ほどしか経過していません。
そのため、パンの商品企画上において、カビの対策に対して少々見込みが甘かった。
そんな可能性や事情ももしかしたらあるのかもしれませんが、まあ、ここらへんはぼくにはわかりません。

ですがいずれにせよ、それはパンの「製造環境上の問題」なのか、それとも「製造方法上の問題」なのか。そのどちらかなのは、確かです。
というか、そもそもとしてこの「パンのカビの問題」というのは、そのいずれかなのです。
(で、得てして後者です)
今回は、そんな話をこれから前編・後編の二部構成でしていこうかと思ってます。

んー、でもちょっと今回「あまり語りたくない」こともあって、ちょっと語彙が強かったらすみませんです。

あまり話したくない「パンとカビの話」

さて、皆さん。
自宅で、食べようとした食パンにカビが生えていた。
これって、誰でも経験したことのある話だと思います。

そのせいもあるのか、ネット上でも「パン カビ」と検索すると山ほど色々なものに出くわします。
まあ、その多くは素人の素人による素人のための解説ばかりです。これが99%以上です。
カビを取れば食べられるのか、それとも食べられないのか、食べてしまったらどうするんだ…などなど。

あー…。
ええと。一言だけ、言わせてもらってよかですかね。

薄っぺれぇーっ!
どーでもいいーっ!

あ、つい2言言っちゃった。
まあ真面目に答えるなら、んなパンはすでにカビの菌糸まみれだから常識的に食べるな。以上です。
少なくともぼくの家族が食べようとしてたら問答無用でバカおいやめろと止めますが、それはとにかくとして。
そんなわけで既に最早「パンとカビ」の話はあちこちで書かれているので、ここで今更ぼくが書くというのもあんまり気が進まないのが正直なところ。

でも、科学的知識もさることながら、多くのパン工場での現場経験、相談経験を持つ身として、ぼくらだけが知っているようなこともそれなりに持っています。
なのでここでは、「食べてもいいんですか」みたいな「生活の知恵」みたいな話ではなく、そもそもパン工場で製造上どうしてパンにカビが生えるのかというような、そんな話をメインにしていきたいと思ってます。

例えば。
ネット上で、とある医学の専門家が「某食パン工場の製造工程は清潔だからパンにカビは生えないのである」と言っています。
なるほど、これは一面では確かでもあるし、実際、ネット上でみたこのお医者さんの話は素晴らしいほどに非常に科学的知見にめちゃ富んでいました。
その点は大きく頷かせていただきます。

でもこのひと、んじゃどのくらい工場内が日々、清潔に維持されいているかを全く知らないわけです。
「それはAIBで管理しているからだ」だというけれど、んじゃ「AIB」って実際に具体的にはどういう管理をするんですか、と聞いても全く知らないわけです。
「AIBじゃなくちゃ駄目ですか?」と懐かしいネタで返しても、返ってこないわけです。
「マネジメントシステム的な観点からみて、AIBはどういう特性があるんですか?」と尋ねると、口笛吹いてそっぽ向いちゃうわけです。(あ、ちょっとかわいい笑)
そして実際のところ、本当は「そこじゃない」ということも知らないわけです。
でもしょうがない、だってそれは専門が違うんだから。
医学と食品衛生は、重なるところもあるけれどやっぱりそこは全くの別分野なんです。

いや、AIBだって勿論素晴らしいんですよ。
でもね、あんな年1に監査員が来て、でその前日に工場長さまの号令一下、課長クラスが自分の部署で引っかかることにビクつきながら、人海戦術で大掃除して、ペストコントロールの業者呼んで一斉駆除とトラップ交換やらせて、で当日は監査員の足を先回りして大急ぎでチェックし、監査中にネズミが出たりつかまってそこではいシリアス出たこれ一発ゲームオーバー、とならないことを何食わぬ顔の裏で祈りながら、何とか無事に点数取ってマイナーイシュー止まりで今年も終わった、ふうと、監査員が接待役の工場長と一緒に門(←ここも重要)から出ていったのを横目で見終えて場内皆で胸なでおろして更新するものより重要なことがあるわけなんですよ。

…って、おーい!
いやね、こういう裏の事情ぽろぽろ出そうになるのも含めて、だからあまり話したくないんですよー。(笑)

そんなわけで、あまりしたくない「パンとカビの話」をしていきますね。
うーん、気がのらないなあ…(笑)。

「パンとカビ」ならこれを読め

というわけで、ですねえ。
「パンとカビ」の話、来てしまいましたか…。

気が重いのにも、実は理由があるんです。
というのもですね、実は10年以上前の話ですが、昔、「ヤマザキパンはなぜカビないか―誰も書かない食品&添加物の秘密」という本がこの界隈で話題になったことがあります。
著者は渡辺雄二なる御仁。
ぶっちゃけぼかあこの本以降、この著者の本に1円のお金を払いたくもなければ費やす時間も勿体ないので今はよくわかりません。
しかし、少なくともこの本についてはあまりにも拙く酷すぎるエセ科学本でした。

あまりにしょうもない本なので画像も省略しますがね、まずどうでしょう、この悪意しか見えないタイトル。
これを目にしただけで、未だに「え、ちょっと待って、ヤマザキパンってカビないのか!」となり「カビないってどういうこと?危険な薬剤でも使っているの?」となり、「ヤマザキパンってヤバくない?」と発想が進みがちな人も少なくないかと思います。
ご安心ください、ただの不安煽り狙い本でした。
実際この本には、(今は知りませんがこの当時の)著者の歪んだ食品添加物への非科学的な思い込みとともに、山崎製パンでは発ガン性物質の臭素酸カリを使用しているからカビないのだという非科学的トンデモ論によって、あたかも大手食品メーカーが利益重視のために消費者の健康をないがしろにしているかの極左妄想てんこ盛りになっているのですが、当たり前ですけど、んなこたありません。
本当のことをいうとぼく自身、この本が出た当時、ちょうど仕事で山崎製パンさんとかなり関わっていたので結構知っています。
あのなあ、山パンなめんなよ。

あ、こんなのググる価値も時間も勿体ないので、いいですよ、そこまでしなくて。
本当にぼくが言いたいのは、寧ろここからです。

さあ、そんな当たり屋みたいな言いがかりを受けた山崎パンさん。
まあこの程度の素人チンピラにさほど動じもしなかったんですが、確かに臭素酸カリの後回解消の件もあって、結構ガチに自社製品を筆頭とした「パンとカビ」の研究結果を自社ホームページに乗せることにしたのです。
つまり、あの食パンシェア率トップにしてパン業界に燦然君臨する覇王、天下の山パンさんが、ですね。ガチ本気になって「パンとカビ」について、消費者にわかりやすく実験結果を伝えようとしているのです。

で。
要は何が言いたいのかというと、「パンとカビ」の話はもう、山崎製パンさんのここ↓を読めば他はもういらないんじゃないかな、ということです。

というわけで、今回もまた前編後編と二部に分けて色々書いていこうと思いましたが、なんかもう、これだけで済んでしまいました。
あとは↑をぜひ読んでみてください。
以上。このようにこのブログでは食品衛生の最新情報や…

…とね。
まあしたいくらいなのですが、でもそういうわけにもいかんので(笑)、ウチではそこに書かれていないことなども含めて、もう少しばかり頑張ってみるとしましょう…!

そもそもパンはカビやすい

さ、
それでは気持ちを入れ直していきますね。

ではまず、基本的なお話からしていきましょうか。

まずね、パンには二大腐敗変敗があるんです。
なーんてそんな言い方をする人はいませんが、パンの微生物による汚染問題はといったら、大概はこのどっちかだよねっというものがあります。
それが、「カビ(真菌)」「ロープ現象(細菌)」です。

今回はそのうち真菌、「カビ」のほうを詳しくお話していますが、これに次ぐパンの腐敗問題として細菌、なかでも小麦に着いていた熱に強い細菌(バチルス属)が時々糸引きの腐敗を起こすことがあります。
これが「ロープ現象」というものです。
これはこれでまた別にお話する機会を作るかもなんですが、しかしこのロープ現象は、以前に比べると材料改良、製造環境や冷却技術の向上などで減っているのもまた事実だったりします。

で。
今回の主役は、もう一つの「カビ」です。
結局、パンの変敗問題といったらカビなんですわ。これはもう、しゃーない。

尤もパンのみならず、カビはしばしば、食品で問題になります。
ちなみにカビに関する食品クレームのトップといえば、これはもう断トツで「菓子類」です。
お菓子のカビクレームは、本当に多い。
これは割と知られていることなんですが、ある統計によるとこれだけで全体の40%以上、およそ1/2を占めてしまうのだというから、どれだけ多いかがわかるでしょう。
で、そのお菓子から次は、実はそんな大きくは変わらない、割合とどんぐりの背比べです。
2位、「フルーツ(果実類)」。3位、「ジュース(嗜好飲料類)」、そして4位が「パン」。ここまではほとんど同位。
と、そんなデータも世にはあります。これはぼくの大手検査屋時代、つってももう既に10年くらい前なんですけど、でもそのときの感覚論的にも大体そんな感じかなあ、とは思います。
ま、細かい数値はさておいたとしても、それだけ「パンとカビ」というものが食品クレームとして多く、またそれらが密接なのも伝わることでしょう。

では、どうしてパンはカビやすいのか。

カビには生育要因というのがあります。
こういうところでカビは育ちやすいよ、逆に言えばこれらがないとカビは育ちづらいよ、というものです。
勿論カビにも色々ありますので、正確にはこれだけでは全くないんですが、まあそれでもとりあえずのカビの話の基本的な目安にはなります。

カビの生育条件
  • 温度範囲は20~30℃
  • 水分活性(Aw)0.85~0.99
  • 酸素
  • 栄養分

 

つまり、これらの条件が揃うとカビが生えやすくなります。
で、先に触れた山崎製パンさんののページの冒頭には、こうあります。

食パンは、およそ38%前後の水分を含有しており、細菌が増殖しやすいかどうか判断する目安となっている水分活性値でみますと、食パンの水分活性値は0.96とカビの生えやすい食品といえます。

そう!
パンはこう見えてカビにおいては水分含有が思いの外に高いんですよ。
つまりパンは、表面は乾いているが、内部は水分がある。
でこういう場合、どちらかといえば細菌よりもカビが発生することになります。

ではパンで問題になりやすいカビには、どんなものがあるのか。
これはもう割と定番があります。なんといっても、アオカビ(ペニシリウム属)です。
次に、クロカワカビ、クロコウジカビ、あと場合によってはケカビあたりも問題になりやすいですかね。
ただしこれらはパンの種類や製法をはじめ、室温や季節、環境その他の要因によって大きく変わってきます。

なお、カビの種類の説明については、また別でお話するとしましょう。


Wikipedia

まとめ

ちょっとばかり字数が長くなってきてしまったので、前編はいい加減、ここらへんで終えることにしましょう。
とりあえず前編では、パンというのは意外とカビやすいものである、ということ。
そして、山崎製パンさんのページが秀逸であることと、あとぼく自身の気があまりのらない理由をついダラダラと話してしまいました。

…はいマジごめんなさい、字数取っちゃって。少しばかり反省します…。

さて、後編ではいよいよその「パンがカビる要因」について、そして今回の無印良品のパンについても、触れていきたいと思います。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

 

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