時々ネットなどでも見かけますが、「細菌」と「ウイルス」を一緒くたにしている人がいます。
でも「細菌」と「ウイルス」は違う生物です。
更に言えば、カビもまたそれらのいずれとも違う生物です。
では、これらは何がどう違うのでしょうか。今日は細菌とウイルス、そしてカビとの違いについてお話していきましょう。

なおこの記事は、前回、そして今回と、二部構成でお話させて頂いています。
(こちら②はその後編となります)

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えいたします。

前編のおさらい

(こちらは二部構成の「後編」になりますので、もしここから来られた方は、まずは前編を最初に読んでください。)

さて、後編です。
前編ではまず、「微生物」という総称のなかに、真菌(カビ)や細菌やウイルスが含まれている、ということ。
それから、細胞に核を持つ「真核生物」がカビなどの真菌である、ということ。
細胞に核がない「原核生物」が細菌である、ということ。
そもそも細胞自体を持たない非生物が「ウイルス」であること、についてまず解説させていただきました。

そして、真菌、とくにカビやキノコなどは菌糸をのばし「胞子」によって増殖することについても、お話いたしました。

では、ここからは「細菌とウイルスの違い」について、じっくりと見ていくとしましょう。
何せこの2つ、とかく間違われることが多いです。
というのも、人間が病気になる際に特に関わりを持つ微生物が、とくにこれらであることが多いからです。つまりいわゆる感染症の原因となる「病原微生物」といわれるものは、この細菌とウイルスをまとめて括っているからです。

一般の人たちはよく「バイキン」と言います。
汚染の原因になる微生物、腐敗の原因になる微生物、そして病気の原因になる微生物…。
これらに対してなんとなくそれらを素人目線で乱暴にひっくるめた存在が、この「バイキン」というものだと思うんですが。
そこには、「細菌」も「ウイルス」もごっちゃになっていることが多いように思います。

でも、実際にはそれらが全くの別物であるということは、既にお話してきた通りです。
ではどこがどう違うのか。
これから見ていくとしましょう。

おっと、悪い癖でまたのっけからの余談なんですが、この「バイキン」というのは漢字で「黴菌」と書きます。
この「黴」というのは、カビの意味です。
ちなみに「菌」とは元来、キノコを指すものでした。
ということは、「バイキン」というのは生物学的な見地はさておき、その言語だけからすれば「真菌」に分類されるようにも思えます。
昔の日本人は微生物に対し、目に見えるキノコやカビを見てそのように使っていたのかもしれないですね。
ところでアンパンマンの生物的分類は、有機体(発酵食品)なのか、それとも酵母(イースト菌)でやっぱり真菌なのか、それとも非実在…。


あんぱんまん

細菌とウイルスは何が違うの

おっと、いい加減本題に向かうとしましょう。
細菌とウイルス、病原微生物を語るうえで割とごっちゃにされがちなこれらの違いを見ていくとしましょう。

細菌とウイルスでは「感染症」が違う

先にも書いたように、「細菌」の中には人間を病気にさせるものがいます。
例えば、ここでもよく扱う食中毒菌がそれです。
病原性大腸菌や黄色ブドウ球菌、サルモネラ、カンピロバクター等等。
これらは細菌が増殖することで(あるいは毒素を作ることで)、それを人間が取り込み、健康上に悪さを起こす微生物です。
とくにぼくら食品衛生の世界においては、これらを取り扱うことが非常に多いのでここからの話になりがちです。

しかし、お医者さんや医薬の世界の人が話す「細菌とウイルス」では、どちらかといえばそれらは脇役です。商売柄、ぼくらとは切り口が大きく変わります。
何故なら、細菌やウイルスが引き起こす病気、感染症はそのほかにも深刻さからいって重要なものが山程あるからです。
例えば、肺炎球菌による肺炎や、結核菌による結核、溶連菌による咽頭炎などなど。
ぼくらが考えている以上に、細菌によって起こされる感染症は多かったりします。

細菌が原因となる感染症
  • 食中毒
  • マイコプラズマ肺炎
  • 結核
  • 百日咳
  • 梅毒
  • コレラ、赤痢
  • 溶連菌感染症 など

 

一方で、コロナウイルス、ノロウイルス、インフルエンザウイルスなど。
これらもまた、人間がそれを取り込み、増殖することで健康上に悪さを起こす微生物でもあることは皆さんもおわかりのことでしょう。

実は風邪もウイルスによって起こされます。
風邪は数種のウイルスが、鼻や喉などに感染することで起こる病気です。
ちなみにその大半が「ライノウイルス」の感染であるとされていますが、その次に多いのが実は「コロナウイルス」だって知ってます?
(今問題となっている新型コロナウイルスCOVID-19ではないですよ。実は関係があるのでは、という説もありますが…。)
いずれにせよ風邪のウイルスは数百とも言われており、感染したものに対する免疫はあるものの、未感染のウイルスが一杯あるために、ぼくらは何度も風邪をひくと言われています。

いずれにせよウイルスの感染による病気は数多くあります。
その他にも、水ぼうそうやおたふくかぜ、麻疹などもウイルスによって起こされます。

ウイルスが原因となる感染症
  • 風邪
  • インフルエンザ
  • A型ウイルス性肝炎
  • 水疱瘡
  • おたふくかぜ
  • 麻疹
  • 風疹
  • デング熱 など

 

なるほど、細菌とウイルスでは感染する病気が違う。それは判った。
でもこう書くと、それでもなんだか同じような存在にも思えてきますよね。
でも、生物的には全く別のものだという。
では、具体的にどう違うのか。その違いについて、これから解説していくとしましょう。

細菌とウイルスは「大きさ」が違う

まず、細菌とウイルスの大きな違いの一つが、その大きさです。
カビに比べてより小さかった細菌ですが、ウイルスは更に、ずーーーーーっと小さい存在です。
ウイルスは細菌に比べて、1/50~1/100くらいしかありません。

なので、細菌は普通の顕微鏡(光学顕微鏡)でもギリで見れますが、でもウイルスは電子顕微鏡じゃないと見れません。
何せウイルスの大きさは20~1000ナノメートル(nm)ですから。

まずこれが最初です。
ちなむと、細菌とウイルスでは遺伝子構造も違います。(前回も少し話しましたね)
ウイルスはDNA、RNAのいずれかしか持っていませんが、細菌はいずれをも持っています。


厚生労働省

細菌とウイルスは「増え方」が違う①

ギリ生物だとしたって、ウイルスも微生物です。
一応生物である以上、増殖することで生物として生きています。
細菌も勿論そうです。増殖することで細菌は仲間を増やし、生命活動をしています。

カビを思い出してください。
お風呂の汚れと水分を餌に、カビは菌糸を育て、胞子をばらまき、増えていきます。
それがカビという生物の「生き方」です。
微生物は皆、「増殖して生きる」のです。

しかしそれらの「増え方」、つまりは生物としての「生き方」において、細菌とウイルスは決定的に別の生物であることがわかります。
実はここをよく間違う人が多いです。
では、同じ微生物でも、原核生物であり細胞を持っている細菌と、細胞を持たないウイルスは、どう「生き方」、つまりは「増え方」が違うのか。

細菌は、例えば食品などの自分の周りにある栄養をもとにして、体をぶよんと2つに分け、二分裂して「細胞分裂」で増殖します。
それは、細菌には細胞があるからこそできる技でもあります。

だから、細菌は食品の中でも、自力で増殖が可能です。
ここがウイルスと決定的に違うところです。
ウイルスは、仮に食品に付着しても増えることはありません。

例えばある食品を常温で放置していると、その食品の水分と栄養を使って、細菌が食品内に増殖します。
あるいはその増殖過程で毒素を作る細菌もいます。
これを人間が食べると、増殖した細菌やその毒素などを食べることになります。
細菌による食中毒は、こうして起こります。

一方、細胞を持たないウイルスはどう増殖するのか。
先にぼくはウイルスに対して、こう言いました。
「ウイルスとは、タンパク質で遺伝子をくるんで作ったコピーロボットのような存在だ」と。

ウイルスには細胞がありません。
だから他の生物の細胞に入り込んで、生きるのです。
体がめちゃくそに小さいのも、それを可能にしている特徴です。

例えばノロウイルスが何らかのかたちで、人間の体内に入ります。
ノロウイルスが人間の腸管内の細胞にまで到達すると、この腸管細胞の中に侵入します。
ウイルスは細胞はないけれど、自分がどんな生物なのか、その設計図である遺伝子(核酸)は持っています。
それに基づいて、人間の細胞に自分の遺伝子(核酸)コピーをどんどん複製させて作らせます。
元々構造がシンプルで最小限しかないので、一旦作り出されたら案外簡単に増えることが出来ます。
これがその細胞内でどんどん増えると、やがてその細胞から自分のコピーウイルスを外にばらまきます。
するとさらにそれらが別の細胞内で同じことを繰り返し、どんどん増殖していきます。


静岡新聞

これらがある程度進むと、やがて人間の健康上に様々な症状が現れます。
ノロウイルスだったら、嘔吐や下痢などですね。
これは、ウイルスが侵入し、複製され、ばらまかれることでその細胞が破壊されるからです。
破壊された細胞が一定レベルを超えた段階で、感染が成立し、症状が引き起こされます。

しかし、ウイルスは各々入り込める細胞に違いがあります。
例えば、目下巷で騒がれている鳥インフルエンザのウイルスは鳥の細胞に入り込むことが出来ますが、人間の細胞には入りこみません。
先に挙げたノロウイルスは、人間の細胞に入り込むことは出来ますが、犬や猫の細胞には入りこめません。
新型コロナウイルスは、どうやら人間と、それとコウモリだかの細胞に入り込めるようですが、それ以外の動物には現状では入り込めないともされているようです。
ウイルスが細胞内に入り込めない、ということは、遺伝子コピーによる増殖が出来ないということです。
増殖出来ないと、感染しないので、病気になりません。

このように、あるウイルスがその動物の細胞に入れるかどうかは、その動物の細胞に「受容体(リセプター)」があるかで決まります。
人間の細胞にはノロウイルス、新型コロナウイルスへの受容体(リセプター)があるので、病気になってしまうわけです。


愛知県衛生研究所

細菌とウイルスは増え方が違う②

さて、どうやら細菌とウイルスは増え方に決定的な生物としての違いがあるのだ、というのがおわかりにいただけましたでしょうか。

細菌は真核生物なので、細胞があります。
だから、自分のちからだけで「細胞分裂」して増えることが出来ます。
生物は、タンパク質で出来ています。
だから生物が増えるにはタンパク質が必要です。
細菌の場合、そのタンパク質を作るための仕組みを持っているので、栄養さえあれば遺伝子の設計図に基づいてタンパク質を作ることが出来ます。
細菌が食品の中でも、自分だけで増殖が得きるのはそのためです。

一方、ウイルスはその仕組を持っていません。
そこで他の動物の細胞に侵入することで、その細胞の仕組みを利用することでしか増殖が出来ません。
ノロウイルスでも新型コロナウイルスでも、食品にただ付着しただけではウイルスは増殖できません。
ウイルスが増えるためには、そのリセプターを持った細胞が不可欠なのです。
この点が、ウイルスが生物ではなく、非生物であることのポイントです。

細菌とウイルスでは治療方法が違う

さて、このように細菌とウイルスは別の生物であり、増え方が違う、というお話をしました。
ここから先はぼくの専門を少しばかり離れるのですが、新型コロナウイルスにも関わる話でもあるので、簡単であるとはいえ解説しておきたいと思います。

細菌とウイルスでは治療法も異なります。
細菌による健康上の問題には、細菌をやっつけるための薬が必要になります。
そこで必要なのは、抗生剤や抗生物質などの「抗菌薬」です。
抗菌薬は、細菌の構造を破壊する、あるいは増殖を食い止める効果をもたらしてくれます。
細菌は人間とは離れた個別の生物であるため、比較的ピンポイントで有効な薬が多い。

例えば、結核菌による結核などがそうであるように、これまで様々な抗菌薬が開発されているため、多くの細菌による感染症は克服しつつあります。
(その一方で抗菌薬が全く効かない薬剤耐性菌が現れている問題もあるのですが、今回は省きます)

しかし、ウイルスはどうか。
これらの抗菌剤は当然ながらウイルスには効果はありません。何故ならそれらは、あくまで細菌に効果のある薬であって、ウイルスには効果がないからです。
結果、副作用しか与えないことになりますし、やもすれば耐性菌の出現を促しかねません。
インフルエンザや風邪に抗菌薬(抗生物質など)を投与しても何も効果もいいことがないのはそのためです。

ウイルスによって起こされた感染症には、抗ウイルス薬が必要です。
ですが、抗ウイルス薬というのはごく少数のウイルスにしか開発されていないのが実情です。
というか、一部インフルエンザへのタミフルやHIVのための抗HIV薬などのみしか存在しません。

というのも、先に書いてあるようにウイルスというのは人間の細胞でそれを行わなければならないため、薬の開発が進みづらいようなのです。
例えば細菌は培地上で培養して増やすことが出来ます。食品関連の方ならおなじみですよね。
だから、新薬開発の際に、この培地での培養を阻止する薬剤を探せばいい。これまで様々な抗生物質が、このようにして開発されてきました。

しかし、ウイルスの増殖は人間の細胞を用います。
これが多くの障害となっている所以です。ウイルスへの効果がそのまま細胞に害を与えるような毒性の物質になりかねない。
さらにはその開発や効果を試すことが難しい場合もあります。
例えば、ノロウイルスがそうです。
ノロウイルスは人間の腸管細胞でしか増殖しないため、人体実験するわけにもいかず、また試験管などに疑似細胞を作る技術も難しいため、ワクチンや抗ウイルス薬の開発が進みませんでした。
(最近ようやく進みつつあることを以前の記事で書いてありますので、どうぞ参考に↓)

まとめ

今回は、前編、後編と二部にわたって「細菌・ウイルス・カビの違い」についてのお話をさせて頂きました。
そしてこちら後編では、前回を継いで「細菌とウイルスの違い」をメインにお話させていただきました。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
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