2021年、いよいよ新たな年を迎えました。
この2021年は食品業界・食品衛生においてどんな年になるのか。
この1年を、ぼくたちはどう生きていくのだろうか。
そしてどんな変革がそこに待っているのか。
新年のご挨拶に変えて、そんな年始を飾るにふさわしいテーマについて話をしていこうかと思います。

なおこの記事は、前々回、前回、そして今回と、三部構成でお話させて頂いています。
(こちら③はその後編となります)

改めまして、皆様、あけましておめでとうございます。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、この2021年はできるだけ毎日、皆様にお教えしていきますのでよろしくお願いします。

フードテックによる食品安全のイノベーションはあるのか

(こちらは三部構成の「後編」になりますので、もしここから来られた方は、まずはこちら↓の「前編」「中編」を最初に読んでください。)

さて皆さん、新年早々にごめんなさい。
微妙にやらかしかかっております高薙です。

実は今回のこのお話、本来ですと、さらっと1回だけの正月の挨拶程度にしようかと思っていました。
それがですね、もう筆がとまらない、とまらない。あ、タイピングか。
というのもぼく、元旦の朝から、実はこれ半日以上くらいかけて下書き書いてます。

初日の出を見るのに、ベランダで暖かくしながらコーヒー飲んでまして。
で、日が上がるまで時間が空いたので、「お正月の挨拶に何を書こうかなー」なんてぼんやり考えてまして。
で、今ちょっと密かに注目している、フードテックなんかよくない?なんて思いはじめまして。
で、ちょっとまだ時間あっから、なんつってノートパソコンも持ち出しまして。
で、そっからですわ。
いきなりスイッチ入っちゃって。
気がついたらもう日上がってるよ、みたいな。
あれ、元旦終わってるよ、みたいな。
で、この有様です…。

そんなわけで、気がついたら三部作になってました。
まあ、まだ新年開けてゆっくりオンに入るという、今日くらいはまだ忙しくなる前のタイミングでしょう。
もしかしたらまだお休みだ、なんて人も多いかもしれませんね。
どうぞ、ゆっくりと読み進めてください。

というわけでそろそろ本題行きます。改めまして。
今回のお話は、食品産業全体を見渡しながら2021年を語ってみよう、という新年のご挨拶に変えての割と広範囲的なお話でした。
まずは前々回、そして前回までのおさらいです。
このたびの新型コロナウイルスの猛威、そして「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の波を受けて、食品業界はどのように変わっていっているのか、についてのお話を前回は事例などを幾つか挙げながらお話してきました。

前編のまとめ
  • 食品製造産業にも「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の波が押し寄せている
  • それをも含めた最新テクノロジーによる変革(フードテック)が食品製造業界にも起きようとしている
  • さらに新型コロナウイルスによる生活の変化が、その需要を急速に推し進め、早くも実現化しつつある
  • そのテクノロジー変革(フードテック)の幾つかの目的の一つが、実は新時代向けた「食品安全」である

 

で。
前回ではそれを受けて、「フードテック」についてのお話をしました。
実は食産業というのは、広範囲に渡るため、潜在的に巨大な世界市場規模です。
その食産業に対し、先進のテクノロジー、科学技術によってイノベーションを起こそうというのが、「フードテック」でした。

しかし、この「フードテック」というのはフードチェーンというのがあまりに広範囲過ぎて、掴みづらい話しでもあります。
だって遺伝子農業革命みたいなものと「Uber Eats」を合わせて話をしているのだから、無理もありません。
そこで、こういう補助線を引きました。

フードテックが食品衛生に与えるイノベーション段階
  1. どんな領域の
  2. どんな問題に対し
  3. どんなテクノロジーを提供できるのか

 

こうすると、よくわからなかった「フードテック」が俄然わかりやすくなるでしょう。
例えば「Uber Eats」だったら、①物流領域の、②消費者の「外出出来ないど外食が食べたい」、販売店の「店にこれない人にも商品を提供したい」という双方の問題に対し、③新しい流通プラットフォームによるマッチングサービスを提供した、というようにです。

さあ、今回の話はここからです。
「食品衛生」というテーマも、どうやら「フードテック」には含まれるようだ。
「②どんな問題に対し」、においての「食の安全」というのがそれです。
で、「①どんな領域の」、つまりフードチェーンにおいてどの分野なのか、となればこれはやはり「製造過程」の話がメインになるだろう。
そりゃ流通過程の温度管理などもあるかもしれないが、メインステージはやはり製造工場でしょう。
で、「③どんなテクノロジーを提供できるのか」においては、前編でも話したようなスマート工場化というのがなんとなく見えそうだ。
つまり、「AI化やIoT化、ロボット化などによる、省人化・無人化や効率化」というのがそれをしてくれそうだ。
こんなところがつながってくるでしょう。
で、そんなものも少しずつ確かに出てきています。

ですが、でも。
ここでちょっと今一つ「んで?」ってならないか、と。
で、何をどうすんの、と。
フワっとしていて、よく判らなくないですか。
これが、食品衛生、食品安全においてのフードテックが今ひとつ微妙で、あまり注目されていない所以です。

キューピーのAI不良検出システムに食品安全の未来を見る

とまあ事程左様に、フードテックにおいて食品安全はそれほど注目度が高いわけではありません。
ありませんが、しかし前編にもいくつか挙げた事例の中には、DXの最新テクノロジーによって食品工場のスマート化をはかり、商品の品質管理を高める事例が出ていたことを思い出せば、決して関わりがないものでもないことがわかるでしょう。
それではもう少し、より「食の安全」に深く関わる新たな試み、これぞフードテックによる食品安全のイノベーションだ!、という事例を挙げるとしましょう。

勿論、それを言うなら前編でのマルハニチロの事例もそうでした。
ここでの事例は工場の作業の一元化、可視化によって作業ミスによる食品安全の事故を減らす、というのがその目的である、と触れましたね。

しかしそれ以上に顕著な、いい例が実はあるのです。
つまり、フードテックが食品安全の未来を変えるかもしれない、いやその可能性は低くない、という将来有望な事例です。
それは、マヨネーズなどの調味料で知られる大手食品メーカー「キューピー」での試みです。


キューピー

マヨネーズなどの調味料で知られる大手食品メーカー「キューピー」は、AIを用いて原材料であるじゃがいものダイスポテトにある一定数入っているという不良品を除去する技術を独自開発し、すでに数年前から工場の生産に導入済みであると言っています。
しかもこの新技術によってキューピーは、政府(内閣府)の主催する2019年の「第2回 日本オープンイノベーション大賞」において、他の産業ジャンルに並んで「農林水産大臣賞」を受賞したのです。
しかもまた、この内容がまた、非常に興味深い!


内閣府

この話は今後の食品衛生を考える上で非常に興味深く、また示唆に富んでいるので、サンプルとして紹介してみるとしましょう。

ダイスポテトとは、ジャガイモの皮をむいて1センチ角の大きさに切ったものだ。
残念なことだがその中に含まれる不良品は、ジャガイモの生育状況により安定しない。
その中からベビーフードに使える「良品」を選別することは、かなり繊細な仕事だ。
キューピーは、これをAIにより選別することで、コストと品質を安定させようとしているのだ。


キューピー

元来、このキューピーでの不良品検品工程というのは、30~40名の作業員によってマンパワーによる人海戦術型の目視検査を行われていました。
まあ、よく見る光景ですよね。
しかし人件費問題、人材不足に加えて、人間による検査の限界というものもありました。
この対策として一時は海外製の検品設備の導入も考えたようなのですが、しかし従来の検品装置は最新式のものであってもウン千万円もする高額な割には精度70%以下と高くないため、導入の効果が希薄でした。

そこでキューピーは、「グーグル」のAI学習システムを用い、そしてデータの分析・活用に長けた「ブレインパッド」と共同開発によって、AIによる不良検出システムを作ったのです。


キューピー

しかもこのAI検出システムが画期的だったのは、従来の「不良品を検出する」という方式ではなく、「良品を検出する」という逆転の発想を採用したことです。
具体的には、100万個以上もの良品ダイスポテトの画像をAIに学習させ、それ以外を不良品とする方法を取ったのです。

つまりこの手法が白眉だったところは、数多もあり予測できない不良品のデータを学習させるのではなく、「これなら大丈夫だ」という良品のデータを学習させる手法を取った、というところです。
これによって大きな学習負担とともに、精度もアップ。
さらに従来の検知システムに比べると、なんと1/10程度のコストで導入が出来た、ということです。

このキューピーのAI検知システムは、極めて困難だとされていた検品システムにおいて世界初ともいうものでした。
ここには「絶対万全の食品安全」を求める日本の一流食品メーカーならではの考えが、それを実現させた、と言ってもいいのではないか。

しかも興味深い点は、この技術は応用が可能であるということ。
つまり、ポテトの原料検品のみならず他のものでも使えるという。
先の「農林水産大臣賞」においても、「今後は食材の内部に混入する「虫」の検出する装置にも開発に着手するなど広がりを見せる好事例」と評価されています。
これ、意味、判りますか?
原料由来の異物をなくす技術が近く開発されるかもしれない、ということです。

食品製造工場の異物混入事故において厄介なのは、「製造工程由来かどうかが判らない」というものです。
つまり、原材料由来だったらもうそれは本来、自分の手の範疇ではありません。
ですが、その証明や、そのリスク除去というのはそんな簡単ではない。どころか現実的には不可能に近い。
それを可能にする技術が、最新のAI技術によってそこまで近づいている、というのは結構凄いことではないかとぼくは思います。

検査分野などでは最新の技術が求められているわりにはアナログなところが多いぼくらの世界ですが、このような事例を見るに、とてもではないがうかうかしてはいられません。


内閣府

それと、もう一点。
このキューピーのAI検出システムの興味深いところは、他業種であるデータ集積・活用の専門企業と一緒に連携して新商品を作り出しているところでしょう。
それらはもともと食品メーカー企業にはない技術ですが、最新テクノロジーに長けているIT企業と共同でそれを作り出している。
日本の食品産業においてはこうした感覚はこれまでそれほどなかったのではないか。

また新鋭のスタートアップのベンチャー企業が最新技術を武器に異業種参入し、食品事業に乗り込んでいるケースもまま見られてきました。
食品産業というのは大手も多いですが、一方で中小企業も非常に多い。
そうした面ではベンチャーによる異業種参入がしやすい分野であるのかもしれませんね。


キューピー

HACCPとフードテック

このように食品衛生の世界においては、フードテックの影響は正直まだまだといったところです。
しかし、すでに先行的にその波が及んでいるところがあります。

現段階で、食品衛生にフードテックが一番導入されている分野、それがHACCPです。
IoTによって製造から物流、販売まで結び、温度管理を一元化する。
HACCP手順をプログラムし、デジタル端末で記録する。
そんなITやAIなどDXの新技術がHACCP制度化の機会に、結構出回り始めています。

ですがこれらのサービスはプロであるぼくらから見た感じ、どれもこれも現場を知らない食品衛生の素人のIT屋が表層だけをなぞったようなものばかりで、痒いところに手が届くようなものではないような印象しかありません。
しかしそんななかでもマクドナルドなどは独自に開発を進めるなど、少しずつ状況が変わりつつあるようです。

日本マクドナルドは、毎日店舗で実施している温度計測や衛生管理を「紙」ベースから、より正確で効率的なタブレット端末を使用した「デジタル」へと10月1日から順次移行していく。

従来、フードセーフティーの記録は、すべての項目を人が目視で確認し、手書きで記入していたが、独自に開発した新たなデジタルフードセーフティーシステムを導入。
HACCPの重要管理点に関わる食品の温度計測から、一般衛生管理として清潔な厨房環境の維持、調理手順、従業員の行動の確認など、多岐にわたるチェックポイントを簡単に操作できるタブレット端末やBluetooth対応温度計を導入し、効率的かつ正確に実施していく。


マクドナルド

IoT化が進むなかで、衛生管理、品質管理などに関わる帳票のデジタル化は、昨今の大きな流れの一つです。
そこであちらこちらのメーカーが日々商品開発を進めているところなのですが、まあぼくから見ると玉石混交、といったところじゃないでしょうか。

そんななか、マクドナルドにおいても独自のシステムの構築を目下手探りで進めている、という状況が見えてとれます。
このようなシステムによって、「重要管理点(CCP)」となる商品の過熱温度管理、例えばビーフパティの中心温度をBluetooth付きのデジタル温度計で測定し、それを記録としてデータ化していく。

こうしたデジタル化は、まだライバルであるケンタッキーやモスバーガー、バーガーキングなどをはじめとした日本のファーストフード業界ではそこまで本格的にはなされていない。まさにマクドナルドは業界の先陣を切っての導入、といったところでしょうか。

2020年はフードテック元年だった

さてそんなフードテックについて、世界にも目を向けながら現状を見ていきましょう。

実はこのフードテックというのは、2010年代には既に欧米で着々と進んでいた動きであったと言われています。
例えば、ITの聖地シリコンバレーでは既にこの頃から食品産業市場に多くのベンチャー企業が参入してきたという話。
彼らが狙うのは、その食品産業市場のポテンシャリティです。
何せ世界のフードテック市場というのは、2025年までに700兆円規模に達するとも言われるほど。

一方、ここ日本ではどうかというと、実はこれまでなかなかフードテックの熱が高まることはありませんでした。
しかしそんな遅れを取っていた日本でも10年代終わりには欧米に差を空けられながらも、ここ日本でもその動きが顕著化。
昨2020年4月には農林水産省が「フードテック研究会」を設立。
緊急事態宣言下でコロナ禍が広がるなか、オンライン上で6回もの会議が開催されました。
この会議のまとめ↓は今後の食品産業を見通すためにも非常に参考になりますので、目を通しておいたほうがいいでしょう。

いずれにせよ、こうして昨2020年はここ日本にとっての「フードテック元年」となったのです。
そして来たるこの2021年は、ここからさらにそれが進む年となっていくのでしょう。

まとめ

コロナとフードテック。
年始一発目の企画としては、非常に重要にして興味深いテーマだったと思います。

このようなフードテックの最先端、DXの現状を見るに、つくづく時代は先に進んでいるのだ、ということがわかります。
そしてフードテックの波は、当然ながらも食品衛生にも及んでいます。
それはキューピーの事例などを見れば一目瞭然です。
まもなく、こうした波は一部大手企業のみならず、広く波及していくことでしょう。
それは恐らくこの2021年において大きく進むのではないか。
食品衛生に生きる者としても、考えさせられることしきりです。

このような他分野のテクノロジーによる食分野のイノベーションが、この食品産業においてもうすぐにやって来る、いやもう既に来ているのだ、という認識は今、最もこの世界に求められているものでしょう。
時代に遅れないためにも、ぼくらは今一度改めてこうした食品産業の技術革新について注目していくべきでしょう。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

■□貴方の工場・店舗で悩んではいませんか■□
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だったら貴方が防虫・衛生管理のプロになればいいのです!

高薙食品衛生コンサルティング事務所にようこそ
  • 私達は、どんな工場、お店の方でも防虫管理・衛生管理のプロレベルに育成することが出来ます。
  • 何故なら、防虫管理・衛生管理のプロとは、基礎知識に加えて「正しい管理の仕組み」を作れる能力を持つ者のことだからです。
    この「管理の仕組み作り」を知るこそが、防虫管理・衛生管理のプロへの道なのです
  • そんな防虫管理・衛生管理のプロを育成し広めることで、日本の「食の安全安心」を、さらにより広く、より高くさせることが私たちの使命だと信じています
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