2021年1月1日、元旦。
いよいよ新たな年を迎えました。
この2021年は食品業界・食品衛生においてどんな年になるのか。
この1年を、ぼくたちはどう生きていくのだろうか。
そしてどんな変革がそこに待っているのか。
新年のご挨拶に変えて、そんな年始を飾るにふさわしいテーマについて話をしていこうかと思います。

なおこの記事は、今回、そして次回、次々回と、三部構成でお話させて頂いています。
(こちら①はその前編となります)

改めまして、皆様、あけましておめでとうございます。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、この2021年はできるだけ毎日、皆様にお教えしていきますのでよろしくお願いします。

2021年元旦に衛生管理屋が想うこと

(こちらは三部構成の「前編」になりますので、もし「中編」「後編」から来られた方は、まずはこちらを最初に読んでください。)

えー、今回の記事をアップするのは、三が日も終わる2020年1月3日の予定です。
しかし今現在、この下書きを書いているのは、実は2021年元旦の朝だったりするのです。

というのも先程、美しい初日の出が見事に上がるのを自宅のベランダにあるベンチで、寒風を浴びながらmofuaのブランケットをかぶり、熱いひきたての初コーヒーを横にノートパソコンのキーを叩きながら眺めていたばかりです。
(AM8:00現在)

というわけで、2021年。
いよいよ新たな年の幕開けです。
皆さん、この新たな年に何を想っているでしょうか。

振り返ってみれば、昨2020年というのはコロナで始まり、コロナで終わった一年でした。
大変な苦労をした人、どうなるかわからない不安を抱えていた人、などなど様々であったかと思います。

しかし。
(この下書き段階の元旦である)昨日でもう2020年は終わりました。
これからの2021年をどう生きていくか。
今日からはそれを探っていかなければいけません。
しかも、実はこの食品業界の変革というのは、もうすぐそこにまで来ているという。

では、この新たに迎えた2021年は、食品業界においてどのような年になるのか。
元旦の朝からそんなことを、ぼくはここ数時間、ずうっと考えています。
何故なら食品製造の業界の変化は、それそのまま食品衛生においても大きく関わってくるからです。

思えば先の2020年というのは、食品業界における制度改革の大きな変革の年でした。
改正食品衛生法を実際に施工し、HACCPを工場の衛生管理に落とし込み、進めていく。
そしてその流れはそのままこの2021年へと継がれ、6月にはいよいよ本格的に制度化が始まります。

しかも、そんな折に押し寄せたのが、まさかの新型コロナウイルスでした。
前回、2020年の食品業界事情について書きましたが、食品業界における昨年の打撃たるや非常に大きなものであったことは言うまでもありません。
言うまでもなく、その要因はその新型コロナウイルスの感染拡大です。
昨日も触れたように、昨年の食品業界の業績は完全に二極化しています。
コロナ禍によって高まった中食、内食の需要にうまいこと乗って、大きく増益を得られた企業がある一方で、外食や給食などの業務用食品は大きくダメージを受けてしまった。

加えて、この新型コロナウイルスによって、人々の健康意識や常識、活動面においてこれまでとは全く新たな生活様式が推し進められました。
いわゆる「ニューノーマル」、というものですね。
当然ながらそれは日々の「食」に対する影響も多大なものを与えています。
オンラインによる通販や、デリバリー、テイクアウト需要の高まり、家庭料理の機会の増加、等等。
それらは、食の提供の場であるレストランなどの外食産業のみならず、その川上である食品製造産業にも及びました。

そんなこともあって、昨今その需要の上からも大きく意気が高まっているのが食の「デジタルトランスフォーメーション(DX)」というものです。

今更説明もいらないかもしれませんが、「デジタルトランスフォーメーション(以下DX)」というのは、乱暴に言うならIT技術をはじめとした最新デジタル・テクノロジーによるビジネス変革のことです。

もう少しだけ説明しておきましょう。まあ、ここら辺はググれば幾らでも出てくるので、飛ばしてしまってもかまいません。

そもそもDXというのは、2004年にスウェーデンの大学にてエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念が始まりです。
それは、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」というものでした。
しかしその後DXがビジネスシーンにおいて独自の意味を孕んでいきます。
一般的に今、DXといえば、2018年に経済産業省が作った「DX推進ガイドライン」(正式名は、「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」において定義したものをほぼほぼ意味します。
それは、こういうものです。

経済産業省によるDXの定義

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

 

ま、要するに先に書いたことの繰り返しになりますが、一般的に「DX」というのはつまるところ「IT技術をはじめとした最新デジタル・テクノロジーによるビジネス変革」だというわけです。

ではもう少し具体的に、DXと言ったらどんな技術を指しているのか、考えてみましょう。
AI化、IoT化、オンライン化、無人化、ロボット化…。
出てくるのは恐らく、こんなところでしょうか。
そして。
こうした「DX」をも含めた新たな技術、最先端テクノロジーがぼくらの関わる食品産業(それもかなり広い意味で)に与えるもの、つまりは食品産業との最新テクノロジーとの結びつきによるイノベーション、技術革新のことを、~これは後編でより詳しく解説しますが~「フードテック」と言うのです。

さあ、そこで。
新年一発目ともなる今回の更新では、立場上、割とミクロの話が多いウチではありますが、今回はもっとマクロ的な視点に立ってみるとしましょう。
つまり、「ウィズコロナ」となるであろう2021年の食品業界について、いつもとは少し違った、より大きな「食品業界とその技術革新」という広い目線に沿って、色々と考えて追っていきたいと思います。

おお、なんとも新年一発目にはふさわしい話じゃないですか!
しかもこれはですね、まあ後編でじっくり話していきますが、この2021年という時代を生きていく上での非常に重要なテーマとなってくるものなのです…。

食品業界のDX化とスマート工場化の現状

さて。
ご存知の通り、コロナ禍を受けてあらゆる業種において、変革の波が急速に押し寄せました。
当然ながら食品製造業界においても、それは例外ではないでしょう。
とくにデジタル化、オンライン化、IT化、というのはよもや必須というレベルにまで至っています。

例えば、取引先や仕入先との商談のオンライ化、Web上でのサービス展開、製造工程のIoT化、検品工程のAI化、トレサビリティーのIT化…。
これらは別に昨日今日ぽっと出てきたものではなく、元々開発が水面下で進んでいた技術でもありました。
しかし、その必要性や需要が、コロナによっていきなり急増した。
これは皆の目からも明らかだと思います。

例えば、直接の対面を避けての、リモートウォーク。
オンラインでの展示会やセミナー、コンサルティング、契約締結の会合。
離れた場所からのシステム管理、など。

言うまでもない話しですが、こうした「デジタルトランスフォーメーション(DX)」は今後さらに進んでいくことが予測されることでしょう。
そしてこのDX化は食品製造業界にも、当然ながら大きく及んでいる状況です。

ここで少しばかり、その顕著な例を挙げてみましょう。
大掛かりですが、「これぞザ・DX、ドーン!」というものばかりです。

まずは、2020年4月。
コロナウイルスが猛威を奮っていた最中に、大手調味料メーカーであるあの「味の素エンジニアリング」は、なんと工場をまるごとデジタルスキャンし、データ化してクラウド上に3D工場を作り上げる、という「PLANTAXIS®」を開発・発表しました。
これによってデジタル上で現実の工場を管理しよう、というわけです。
ちなみに、こういうDXによる最新技術で管理された向上のことを、「スマート工場」といいます。
その意味で、「味の素」は自社工場を最新のスマート工場にしたのです。

工場から遠く離れた画面上で現場調査や測量が行えるほか、点検情報の確認、工事計画の立案、見積もり依頼ができるため、設備管理の効率化、経費削減、管理ノウハウの継承が可能になる。
コロナ禍のように拠点間の移動がままならい状況でも、リモート操作で作業が行える利点がある。

こうした「スマート工場」化は、当然ながら味の素だけでは限りません。
というよりも今、ほとんどの大手食品企業がこぞってそうした向きを進めています。

もう少し例を挙げてみましょう。
一方で水産加工事業大手である「マルハニチロ」もまた、キヤノンITソリューションズの支援を得ることによって、このスマート工場化へと大々的に着手を進めました。

マルハニチロでは、直営の7工場における業務プロセスが統一されておらず、生産管理業務は紙やホワイトボード、エクセルなど多くが手作業で行われていた。
頻繁に行るトラブルを分析した結果、生産計画立案、原料購買、在庫管理、製造実行、品質管理、損益管理、設備管理という7つの業務で発生していたことが判明、AIやIoTの導入による生産効率の向上や省人化を目指す中、スマートファクトリー化に踏み切った。

つまり「マルハニチロ」は、自社各工場における製造を含めた全業務をシステム統一させて、一元的に標準化、可視化することによって人作業ミス防止の仕組みをDXによって構築しようとしたのです。

食品工場というのは、結構アナログな作業ばかりです。
というか、アナログがベースになっているがゆえに、こうしたDX化に他製造業に比べて遅れがちです。
結果、食品メーカーには名もしれてるそこそこな大手なのに、アナログな会社だというところが多いものです。ていうか割とほとんどだったりします。(ね?)

しかし(いや、それ故にかもしれませんが)大手になればなるほど、それはそれで、各部署や工場の情報共有がマチマチだったり属人分野が強かったりもするものです。
それを一元化し、システム化する、というのがこのマルハニチロによるこのDXです。

このスマート工場化に対し、マルハニチロの担当者の発言が興味深いので、以下引用します。

「製造業の中でも食品加工は比較的にIT化が遅れていた。
しかし製造現場の業務を標準化して効率性を高める必要性が急速に高まっており、作業現場の状況を可視化して改善を図り、商品の安全性に対するブランド力を高めたいという目的が掲げられている。」

ここで一つ抑えておきたいのは、「商品の安全性に対するブランド力の強化」という点です。
つまり、効率化やコスト削減などといった目に見えやすい目的だけではなく、自社商品の「食の安全」というブランド力強化のためにDXによるシステム化をはかった、というのがここでの目的の一つだった。
これが世では余り言われていないが、しかしぼくらの世界においては非常に重要な、「食品安全」「品質管理」のためのDXなのです。
ここ、後編で本題としてより深堀りしますので、忘れなきように。

更に事例を出してみます。
カレーや香辛料などで知られる「エスビー食品」は、3工場でIoTによって全生産設備と検査機器をリアルタイムに把握する、という対応を進めています。
これもその目的は「マルハニチロ」と同じく、生産性の効率化とともに、製品の安全性を高めることだ、と語っています。
ここ、重要です。
(詳細はリンク先をお読みください)

これら以外にも、例えば即席麺大手「日清」が数年前に稼働させた関西工場は、無人化、自動化、ロボット化といち早くDX化を進めた最先端のスマート工場として知られています。
これもまた大規模なDX事業展開例であるといえることでしょう。

着実に進んでいる食品業界のDX化

勿論、こうした莫大な設備投資を要する派手で大掛かりな大手メーカーの取り組みは、食品産業におけるDX化のほんの一例でしかありません。
と同時にそのことは、これほどに大掛かりではないにせよ、DX化、つまり食品製造に新たなデジタル技術を導入することで効率面やコスト面、そして品質面において大きな効果を出しているケースというのは、規模に関わらず近年それこそ枚挙にいとまがないことを意味します。

では、どうしてここ日本において製造業におけるDX化が求められているのでしょうか。

よく言われるように、日本の産業界の労働生産性は欧米諸外国に比べて低い、とよく問題視されていました。
その中においても、特に低いものの一つがこの食品製造業である、ということは皆さんも知られていることでしょう。
その理由はやはり、人手依存度の高さ、です。

しかも近年、こうした産業の深刻な人手不足が叫ばれていることは現場に生きるぼくらであればよく知ることでしょう。
ましてや今後、少子高齢化が進むともなると労働人口も長期的には大きく減少に向かいます。
これをどう解決するかというのは、今後の食品産業の大きなテーマの一つだとも言える。
こうした食品産業のDXによってロボットやAIの導入が進めば、省人化、無人化といった対応が可能になり、人材不足の解決策にもなることでしょう。

例えば、セブンイレブンの弁当惣菜やおにぎりなどで知られる「武蔵野ホールディングス」。
こちらはお弁当の製造業界においていち早くロボット化を進めたという事例です。

コンビニ向け弁当製造など中食事業を手掛ける武蔵野ホールディングスは、自社の工場にロボットを導入した。
セブンイレブン向けに弁当を製造する子会社の武蔵野が関東地方にある工場など数拠点で、スキューズ製の5軸ロボットを相次いで導入した。
人手不足の解消を狙った。

一般的にコンビニのお弁当製造というのは、商品の製造切り替えも多く、とにかく手作業が多い。
しかも基本的に薄利多売ビジネスです。
そのため、なかなかロボット化というのが難しいであろう、というのは容易に想像が付きます。
それをロボット化するというのは、この業界においては一歩先んじた対応であるといえるでしょう。

新たな技術による食品安全の進化に注目

さて。
実は本当にぼくが言いたかったことは、この次からなのです。

というのも、これらのDX化によって何よりもぼくが着目していること。
それは、DXによるコスト面や人材面の革新のみならず、それによって行われる「食品安全技術の向上、進化」です。

幾つか事例を挙げましたが、先のマルハニチロの事例もそうでした。
ここでマルハニチロは、明確に「食品安全」の差別化について、言及しています。
何ならもう一度引用します。

「製造業の中でも食品加工は比較的にIT化が遅れていた。
しかし製造現場の業務を標準化して効率性を高める必要性が急速に高まっており、作業現場の状況を可視化して改善を図り、商品の安全性に対するブランド力を高めたいという目的が掲げられている。」

続いて事例として挙げたエスビー食品もそうでしたよね。
彼らがスマート工場化を進めているのは、人材不足対策や作業効率の向上もさることながら、工場の作業の一元化、可視化によって作業ミスによる食品安全の事故を減らす、というのがその目的だ、と触れましたね。

そう、
ここにこそ、実は新しい時代に向けた食品安全の道があるのではないか、というのが実は今回、ぼくが年初において一番考えてみたかったことなのです。

まとめ

おっと、いい加減ボリュームがマシマシになってきてしまいました。
もう文字数としては、2記事分にすらなっています。
にも関わらず本題にようやく手が届いたのがこの前項でした。

最後に、この前編で話したことと後編で触れる内容を少しばかり含んで、次に簡単にまとめておきます。

前編のまとめ
  • 食品製造産業にも「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の波が押し寄せている
  • それをも含めた最新テクノロジーによる変革(フードテック)が食品製造業界にも起きようとしている
  • さらに新型コロナウイルスによる生活の変化が、その需要を急速に推し進め、早くも実現化しつつある
  • そのテクノロジー変革(フードテック)の幾つかの目的の一つが、実は新時代向けた「食品安全」である

 

どうでしょう、
少しながら新たな時代の波が見えてきたでしょうか。

後編では、食品産業における「デジタルトランスフォーメーション(DX)」としての「フードテック」について、それらを細かに解説しながらも、実際の事例を出し詳細に追っていくことで、次世代の新たな食品安全テクノロジーというものを見ていくとしましょう。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

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