年末年始あたりから急激に増加する、ノロウイルス。
そこでその年末年始に向けて、今から知っておきたいノロウイルスの正しい知識や最新の情報などについて、お話していきたいと思います。
なおこの記事は、今回、そして次回と、二部構成でお話させて頂いています。
(こちら①はその前編となります)

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

年末年始から急増するノロウイルス

(こちらは二部構成の「前編」になりますので、もし「後編」から来られた方は、まずはこちらを最初に読んでください。)

これを書いているのは2020年の12月29日。
そう、もう泣いても笑っても2020年はあともう三日しか残っていません。
いよいよ押し迫ってきた今日このごろ、すでに世も年末年始モードへと突入です。

さて、先日の「クリスマスと食品事故」の回でも触れましたが。
この時期、本格的に冬場を迎えて急激に寒さが進み、また会食や特別な食事の機会が増えると~まあ今年は新型コロナウイルスによるステイホームのため例年よりは遥かに少ないでしょうが~、急激に増加を示すという食中毒があります。
そう、
それがノロウイルスです。

 

実際に、この新型コロナウイルス対策による手洗いやアルコールでの手指除菌が習慣化しているにも関わらず、まあ確かに毎年よりは少なめであるとはいえ、ノロウイルスによる集団食中毒は発生しています。

例えば、上の記事でも例として挙げた、12月21日に発生した長崎県内の給食センターでの弁当によるノロウイルス食中毒。
こちらでは、5歳から67歳と幅広く老若男女70人が発症しています。

 

さらに山形県でも、クリスマスを挟んでその数日後12月26日、105人に渡るノロウイルス食中毒が発生。
こちらも仕出し弁当によって発症しており、複数市町村を跨いで広域に広がっています。

 

→(追記:2020年12月30日)
これを書いた当日のうちに、どうやらさらに拡散が増え、239人にまで及んだとのことです。

 


東京都感染症情報センター

ノロウイルスの特徴と最新統計

これらの事例からもよく判るように(上の記事でも書きましたが)、ノロウイルスの特徴として一回での患者数が大規模化しやすい、というのがあります。

ここでノロウイルスの特徴を考えてみるとしましょう。

ノロウイルスの特徴
  • 冬場に感染者が多い(12月~3月)
  • 少量(10個程度)でも感染する
  • 乾燥に強い
  • 低温ほど長期間生存し続け、凍結してもほとんど不活化しない
  • アルコールで効きづらい
  • 症状が治まった後でもウイルスを排出する
  • 無症状の人もいる
  • 人間の腸内でしか増えない(ヒトノロウイルス)
  • 種類が多い(多くの遺伝子型(株)がある)
  • 抵抗力の弱い人は重症化し、まれに死者が出る(吐瀉物を詰まらせるなども)

 

まあ、ここらへんはどこでも言われる話です。

まずノロウイルスの感染力は非常に高く、10個程度とかなり少数での感染が可能です。
しかもウイルス自体、非常に微小であるというのも特徴でしょう。

それから乾燥に非常に強い、というのも特徴です。
それはノロウイルスの形状(ノンエンべロープウイルス)にも関わることです。
そのため感染者が吐いた吐瀉物が乾燥してもノロウイルスは生存しており、風などで舞い上がってそれを吸い込んだ人が感染する、なんてこともありえる話です。

加えて、低温にも強いことが特徴です。
一般的な室温では10日間程度しか生存出来ませんが、気温10℃以下の環境では1ヶ月生存できるとも言われています。
つまり、日本の冬はノロウイルスにはうってつけの環境である、ということになります。
これらのことから、冬、とくに12月から3月が最もノロウイルスが発症しやすい時期であると言われているのです。

では、最低限まずはこれらの特徴を踏まえた上で、次からノロウイルスの最新統計を見ていくとしましょう。

ノロウイルスの最新統計に迫る

というわけで早速、厚生労働省の統計を見ていきたいのですが、おっとその前に。

食中毒の「多さ」を語るには、実は二つのデータが必要です。
それは「事件数」「患者数」です。

食中毒の「多さ」の見方:食中毒の状況別分類
  • 事件数:食中毒が発生した件数
  • 患者数:食中毒になった人の数

 

「事件数」とは、食中毒が発生した件数のこと。
「患者数」とは、食中毒になった患者の数のこと。
食中毒が「多い・少ない」、「増えた・減った」というのは、これら双方を合わせることで判断されるもの。
どちらかが欠けていてもナンセンスです。

 

では、これらをまず分けて見ていくとしましょう。
現在まだ2020年の統計が揃っていないので、最新データは昨年2019年となっています。

以下は、厚生労働省が統計した2019年のデータをもとに、ぼくが独自に作成したグラフです。
ソースはこちらをどうぞ。

まずは、2019年の年間の「事件数」から見ていくとしましょう。

2019年の食中毒「事件数」トップ3
  1. 寄生虫:347件
  2. カンピロバクター:286件
  3. ノロウイルス:212件

 

食中毒件数で一番多いのは、「寄生虫」。
これはもうほぼほぼ「アニサキス」一択で、他の寄生虫は十数件程度しかありません。
(アニサキスの年間件数は328件)

そして続くのが、カンピロバクター。
やはり多いですね。
で、次をノロウイルスが続いています。

では次に、2019年の年間「患者数」のデータを見てみましょう。

2019年の食中毒「患者数」トップ3
  1. ノロウイルス:6,889人
  2. カンピロバクター:1,937人
  3. ウェルシュ菌:1,166人

 

とまあ、このようにノロウイルスが群を抜いて突出する結果となります。
このように、ノロウイルスの患者数は他食中毒をはるかに超えるものとなりがちです。

しかもこの結果は、毎年そう大きく変わりません。
というか、その前年2018年ではノロウイルスの患者数は8,000人を超えていたので、むしろ差は大きくなっていたくらいです。

ついでなので、ちょっと他データも簡単に補足しておくとしますね。

まずやっぱり数が多くて患者数も多いのが、安定のカンピロバクター。これはもう定番です。ってやだなそんな定番。

それと、患者数統計になるといきなり入るのがウェルシュ菌。
何せ事件数は少ないものの、一発の事件数で100人超えをたやすくクリアするのがウェルシュ菌なのです。
昨年データでも、事件数は、たった22件で、患者数が1000人超え。
でも、これも毎度のことです。
ていうか前2018年では8件で2,000人を超えていましたからね。
これでも少なくなっています(笑)。っていや(笑)じゃねーよ!いいことだよ!

 

一方で、寄生虫(アニサキス)はというと、534人(中アニサキスは336人)。
思いの外少なめですよね。
でもこれも毎度のことです。
アニサキスは、「年間事件数」プラス数人程度が、年間患者数となりがちです。
これはどうしてか。

簡単です。
アニサキスは魚を食べることで起こる食中毒ですが、1匹の魚を大勢で食べることは稀です。
しかもその中のアニサキスにあたるのはごくわずか。
つまり患者数が極端に減るわけです。

それからもうひとつだけ、別のデータを見てみましょう。
今度はなんと、2019年食中毒の「死者数」です。

2019年の食中毒「死者数」トップ3
  1. 自然毒:3人
  2. ノロウイルス:1人

 

そう、ノロウイルスでの死者がいるのです。
先の特徴にも書きましたが、ノロウイルスは老人や幼児など、抵抗力の低い患者の場合、重症化することがあります。
さらには激しい嘔吐を起こすため、喉に吐瀉物を詰まらせることもないわけではありません。
結果、このように時折ですが死者を出すことがあります。
尤もこれは結構稀なことなのですが。

やはり死者を出す食中毒といったら自然毒の独壇場です。
例えばコルヒチンという毒を含有するイヌサフランを、ヤマイモやギョウジャニンニクなどと間違えて誤食し、死者を出す食中毒を起こすことがあります。
あとは時折、O157などの腸管出血性大腸菌や、ごくごく稀にボツリヌスなんかがポロっと死者を出すことがあります。

 

本当にノロウイルスは冬に多いのか

えーと、すんません。
なんか、統計を見ていたらぼく自身、もうだんだん、いやめっちゃ楽しくなってきてテンションが上がってきてしまいました。(笑)
なのでこれはやるつもりもなかったのですが、折角なのでこれも検証してみるとしましょう。

上のノロウイルスの特徴にも書きました。
一般的に、ノロウイルスは冬に多い。
しかも、とくに12月から3月にかけてがピークだとされています。
これはもうなんだろ、普通にどこでも言われることだったりします。通説、ってやつ?ん、ちょっと違う?
ぼく自身もそれを鵜呑みに、冒頭や前記事などで書いているのですが、それを実際にデータで裏付けしているところなんて、まあほとんどありません。
あともうひとつ、例えば「夏でも発症することがある」なんてのもよく言われますよね。
あ、これもさっき上で書いたっけ(笑)。

でも、こう思いません?
本当なのかよと。
んじゃ、どんだけなんだよと。

調べてきましたよ!
調子こいて統計データ独自に集計してきましたよ(笑)。
2017年から2019年までの、最新3年分のノロウイルスの月度別事件数と患者数を洗い出し、グラフにしてみました。
こんなの他でないだろ!どんだけテンション高まってんだよ!(笑)

それではまず、過去3年分のノロウイルスの月度推移を見てみましょう。
まずは「事件数」から。

はい、このようになっています。
で、次は「患者数」です。

このように並べてみると、毎年、それほど双方に月度差がないことが判ります。
まあ、当たり前といえば当たり前なのですが、事件数と患者数は常にほぼ比例している。

でもここから幾つかの面白いことが見えてきます。

2019年度月度別ノロウイルスデータから見えること
  • 1~3月がノロウイルスのピークである
  • 11~12月からいきなり急激に増えだす
  • 7月~10月は少ないが、しかしゼロにはならない
  • 6月までは意外と多い

 

なるほど!

まず、年間の月度ピーク。
これは年度によって異なるし、1月が多い年も2月が多い年も、3月になってどーんと増える年もある。
でも、まあ1~3月にピークが生じるのは、ほぼ間違いなさそうだ。

それからやはり俄然増えだすのは12月。
でも昨年2019年以外は、すでに11月で結構高まっている。

それから夏場は、たしかに少ない。
とくに7月から9月にかけてはかなり推移が低い。
でも、ゼロにはならない。
2018年なんて、夏場の割には高いですもんね。

それから6月までは、思いの外に多いのも判ります。
ていうか5月、6月、侮れないな!
このあたりから、カンピロバクターだとかの細菌系の食中毒も増えます。
それらに加え、ノロウイルスも油断してはいけないことが見えてきますね。

まとめ

今回は、前編、後編と二部にわたってノロウイルスについてのお話をさせていただきました。
そしてこちら前編では、ノロウイルスの最新の事例とともにデータを用いてどのくらい増加しているのかを見ていきました。

…が、思いの外熱が入ってしまいました(笑)。

後編では、更に最新のノロウイルス情報についても更におっていきたいと思います。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

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