最新の食品業界ニュースから気になった話題を定期的にピックアップし、食品衛生管理のプロの目線からコメントさせていただきます。
今回は2020年10月16日、雪印メグミルクの「液体ミルクすこやかM1」に包装用フィルムの混入の可能性があるとして、商品約40万缶を自主回収すると発表した、こちらのニュースを取り扱います。

しかもこれ、よく見てみると結構面白い回収事件だったりもするのです。
そこで今回は液体ミルクの解禁の流れから、その後の乳業メーカーの動向についてまでを追いながら、今回、そして次回と二部構成で取り上げてみたいと思います。
(今回はその前編となります)

本日の時事食品ニュース

 

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
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NHK

雪印ミグメルクの液体ミルクに異物混入・自主回収

(こちらは二部構成の「前編」になりますので、もし「後編」から来られた方は、まずはこちらを最初に読んでください。)

雪印ミグメルクの液体ミルク「ビーンスターク液体ミルク すこやかM1」に包装用フィルムの混入の可能性がある、として計40万感が自主回収の対象になる、というニュースが先日報じられていました。

 

乳業メーカー大手の「雪印メグミルク」は、子会社が販売している「液体ミルク すこやかM1」に缶のコーティングの一部が混入している可能性があるとして、およそ40万缶を自主回収すると発表しました。
「雪印ビーンスターク」が自主回収するのは、賞味期限が来年9月16日以前の缶入りの液体ミルク「液体ミルク すこやかM1」です。
製造を委託している工場で行われた出荷前の検査で、商品に缶の表面のコーティングの一部が混入している可能性があることが分かり、ことし4月以降に発売したおよそ40万缶を自主回収することにしました。
会社によりますと、安全性に問題はなく、今のところ健康被害の訴えは寄せられていないということです。

ではこれについて、プロの衛生管理屋として少しばかり考えてみたいと思います。

国内液体ミルク初の異物混入事故か

先の通り、雪印ミグメルクの液体ミルク「ビーンスターク液体ミルク すこやかM1」に包装用フィルムの混入の可能性がある、として計40万感が自主回収の対象になる、というニュースが先日報じられていました。


MINKABU PRESS

報道によると、異物混入の発見がなされたのは、どうも出荷前とのこと。
検品によって包装フィルム片が混入したことが判明したということですが、そもそもその工程上、このような缶入りの飲料というのはそもそも異物混入の可能性は稀薄です。
とはいえ混入の可能性は否定できないので、同ロットについても自主回収の対象にしよう、というのが今回の話のようです。

液体ミルクに異物混入、そして自主回収というのは、おそらくこれが国内初なのではないでしょうか。
というのもご存じの通り、液体ミルク自体、国内製造・販売が解禁されたのは2018年8月以降。
そこから手早いメーカーはすでにそこに向かって着々と進めていたとはいえ、商品開発し、実際に商品化するとなると、それなりの時間がかかるものです。
しかも商品化までいったとしても、解禁後に厚生労働省に対し原料の種類や配合などについての認可取得を進めなければいけないし、またそれが認可されたら今度は「特別用途食品」として消費者庁に申請を出す必要がある。
で、その許可が下ってやっと、それに基づいた表示がなされた包装を企画デザインし、実際に包装資材として準備し…となると結構タイトなスケジュールです。

実際、液体ミルクの国内第1号商品となった江崎グリコの「アイスクレオ赤ちゃんミルク」が世に出されたのが、解禁されてから半年以上経った、翌2019年の3月のこと。
これが恐らくは最速のタイミングだったのでしょう。
江崎グリコは、業界最初の一手としてかなり狙って水面下で進めていたのだと思います。
そしてそこから続く、他メーカーによる後続の数種。

で。
そこからわずか1年半強で起きたのが、今回のその「他メーカーによる後続の数種」が起こしたのが、この混入事故です。
これを見て各社ともに、さぞかし他人事では片付けられない、ただならない緊張を抱いていることでしょう。

自主回収へと踏み切った理由

にしても回収対象、40万缶ですからね。
これだけの規模の自主回収に踏み切ったのは、やはりそれなりの理由があろうというもの。
ではその背景に何があるのか、見ていくとしましょう。

実はこの「すこやかM1」というのは、雪印メグミルクが今年の4月下旬から発売を始めた、雪印メグミルクにおいては初となる、そして日本においては3品目となる国産液体ミルク商品なのです。

2018年、様々な議論の末、日本国内でやあっと「液体ミルク」の販売ができるようになったことは記憶に新しいことかと思います。
既にご存じの通り、2018年まで日本国内では液体ミルクというのは製造販売が出来ませんでした。
これまで海外ではとっくに出回っており、日本以外の各国ではスーパーなどでも普通に売られていたにも関わらず、です。

どうしてこんな状況が放置されていたのかは次の後編で触れるとして、とにかく。
そんな2018年の法改正によって製造販売が許された液体ミルクを、いち早く製品化させ、最初に市場に商品として送り出したのは、先にも書いたように「江崎グリコ」なのです。


グリコダイレクトショップ

ひとえに乳製品といっても、牛乳はもちろんのこと、チーズやヨーグルト、乳飲料と幅広いのですが、ちょっと乱暴に言ってしまいます。
現在の日本の大手乳製品メーカーといえば、明治乳業、森永乳業、雪印メグミルクが首位を走るトップ3企業です。
四天王ならぬ三天王ですが、なかでも頭一つ抜けている日本の乳製品市場の王者といえば、やはり明治でしょう。
紆余曲折の乳業の歩みのなか、その下を森永乳業、雪印メグミルクが追随。
で、そこに乳製品という意味で、ヤクルト、あるいは先にも名の出た江崎グリコ、などが続くといった状況となっています。

さてその中で、まず最初に液体ミルクを市場開発して先陣を切ったのは、トップ3メーカーではなく、なんと後続の江崎グリコでした。
ぼくの専門は食品衛生であって、別に食品市場の詳細なウォッチャーではないので細かいことまでは判りません。しかしはっきり言って、明治をトップに森永乳業、雪印メグミルクがその下の牙城をドーンと築いているこの日本の乳業界において、乳製品という意味では、江崎グリコはそこから少々ランクの劣る企業という位置づけです。
そんな江崎グリコのこれは、かなり果敢な挑戦といえたのではないでしょうか。


VIEW POINT

そんなわけで江崎グリコは、翌年2019年3月からいちはやく他に先駆けて「アイスクレオ赤ちゃんミルク」を発表します。
しかし他メーカーも当然ながら、指をくわえて黙っては見ていません。
トップ企業である明治もすぐにそれを追って、その翌月4月に「明治ほほえみ らくらくミルク」をリリース。1か月と間を置くことなく、江崎グリコに続きました。
実は明治の事業はかなり幅広く、菓子や加工食品、そして医薬品、さらには乳児用食品なども手掛けており、それが明治のメーカーとしての強みとなっているのです。
しかもその明治は、かなり早い段階からこの液体ミルクの開発に着手していた、ともいわれています。
まあ、なんつっても乳業界のドン、ですからね。
それなりの力も意地もあるのでしょう。


フードウィークリー

さて、そこから遅れること少々。
ようやく雪印メグミルクが液体ミルクを発表したのは、2019年の6月のこと。
実際に販売が始まったのは先の通り、乳業トップメーカーである明治から1年遅れの今年4月でした。

絶対に許されない異物混入による健康被害

雪印メグミルク、という立場からすれば、正直なところ、この1年の差というのは遅れをとってしまった、というものではないでしょうか。
まずの先手を江崎グリコにとられ、そして王者明治がすぐ後に出している。
この件に関しては、ライバルの森永は立場的にもかなり慎重に構えているようですが(これについては次回触れます)、しかし。いずれにしたって、ここで雪印メグミルクはしくじりが許せない立場に置かれています。
さあ、次は雪印メグミルクだぞ、という誰も言わないけれど暗黙の空気が業界内にできていた。

つまり今回問題となった液体ミルク「すこやかM1」は、雪印メグミルクからすればかなり力の入っていた新商品であった、ともいえるでしょう。
しかももともと雪印メグミルクというのは、牛乳自体は他トップ2社に劣るものの、しかし乳加工品に強いメーカーでもあります。
それが新たな市場である液体ミルクに打って出た最初の商品がこれだったわけです。
そりゃあそこに異物混入でもしようものなら、社内で首が何個も飛んでもおかしくない話。

ましてや雪印メグミルクというのは、現在の社風として、こうしたことにことさら厳しい企業です。
何せ、その過去には2000年初頭の集団食中毒や牛肉産地偽装によって企業を解体させてきた、という暗黒歴史がぬぐい切れません。
異物混入や食中毒、といった日本じゅうの「食の安全」を大きく揺るがせ、それによって経営を一度は危ぶませた、という黒歴史。
結果、日本ミルクコミュニティとの経営統合するかたちで現在の雪印メグミルクになっただけに、その経営の根幹にはこれらの不祥事を忘れてはいけない、という強い企業理念がある。
あの暗黒史を忘れるな、キモに命じて経営を行え。
そういうこともあって、雪印ミグメルクはこの異物混入において、これほどに徹底した対応を貫いているのでしょう。

尤も今回は出荷前の検品での発見ということ。
社内クレームとして見つかるのと、末端消費者からクレームとしてあがるのでは、ワケが全く違います。
ましてや肝いりの新商品を赤ちゃんが飲んで、フィルムが出てきたとなったら、洒落になりません。
そういう最悪の事態を想定するとするなら、まあこれは、ある意味ではギリギリセーフと言えなくもない。
ぶっちゃけ関係者は、さぞかし生きた心地がしなかったことでしょう。

液体ミルクとは何か

さて、ここまで話してきて、なのですが。
そもそも「液体ミルク」とはどういうものでしょうか。
そしてそれは、どうしてこれまで製造販売が出来なかったのでしょうか。

まず、幼児用「液体ミルク」って何だかご存じですか。
勿論、食品衛生の世界に身を置いている方なら、そんなの知っているに決まっている、と答えるところでしょう。
しかし、ごく普通の一般の方、とくに男性がまずこのニュースを見ると「え、液体ミルクって何!?」と思う方も、もしかしたらいるかもしれません。
特に子育てにあまり詳しくない男性などは、ちょっと馴染みがない場合もあるのではないか。
そこでここでは、さらりとこの液体ミルクについて、簡単に解説しておきましょう。

一言で言うなら、「液体ミルク」というのは、赤ちゃん、乳児が飲むための液体状のミルクのことです。
粉ミルクと違って、すでに調整済みの赤ちゃん用ミルクがペットボトルや缶などの容器に充填されています。
実はこの液体ミルクは数年前にやっと製造販売ができるようになった日本と違って、世界各国ではとっくに普及しており、ポピュラーな幼児用ミルクとしてスーパーなどで売られていたようなのです。

そんなこともあって日本では解禁されてもなお、「母乳の代わりのミルク」と言ったら粉ミルクを想像する人が未だに多いかもしれません。

しかし粉ミルクはお湯で溶かす、という手間がどうしたって必要になります。
というか正確に言うのであれば、まず哺乳瓶を洗浄し、煮沸殺菌します。
そしてそこに適量の粉ミルクを入れ、お湯で溶かしてから、赤ちゃんが飲める人肌の温度になるまで冷まさないといけません。
ここまで数分から10分くらいかかります。
しかも作り置きはできません。

そう、粉ミルクって意外と手間がかかるんです。
そういや、そんなこともウチにもあったっけなあ…(遠い目

おっと、そんなわけで一見便利にも見える粉ミルクも、それなりに実は大変なのです。
その間に赤ちゃんがギャン泣きすることもあるでしょうし、そうなると作るのだってままなりません。
いつ欲しがるか判らないミルクを、都度作るわけです。
何より出先だったり、あるいは災害時、もし停電や断水などになってしまったら、さらに大変です。

その点、液体ミルクというのは、めちゃくちゃ便利です。
何せ哺乳瓶に注いだり、あるいはミルクの容器の口に吸い口を付けるだけ。授乳まで数秒しかかからない、というメタくそ便利なものだという話です。
しかも常温保存ができ、ストックにも便利ということで、非常に注目と期待の集まっているのがこの幼児用ミルクなのです。

まとめ

少し長くなりそうなので、前編はここまでとするとしましょう。
前編では、液体ミルクをめぐる乳業業界の状況と、液体ミルクの解説を行いました。

続く後編では、液体ミルクの国内製造・販売が解禁されるまでの流れと、どうして今になって解禁になったのか、あるいはどうして今まで解禁されなかったのか、などについても迫っていきたく思います。

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