最新の食品業界ニュースから気になった話題を定期的にピックアップし、食品衛生管理のプロの目線からコメントさせていただきます。
今回はこのカルビーのじゃがりこの異物混入&回収騒動について、折角なので回収されたじゃがりこ、そしてついでにじゃがりこ全種買い込んで、食べ比べしながら、前回、そして今回と、二部構成でお話させていただきます。
(今回はその前編となります)

本日の時事食品ニュース

 

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

カルビーのじゃがりこに異物混入

(こちらは二部構成の「後編」になりますので、もし以下の「前編」をお読みでなければそちらを最初に読んでいただくと理解がより深まります)

 

さて、そんなわけで、じゃがりこの異物混入に対するお話の後編です。
一応、以下簡単にニュースを引用しておきます。
どんなものが異物として混入したのか、それは何故なのかについては前編に触れましたので、前編を読んでみてください。

 

カルビーは2日、スナック菓子「じゃがりこサラダbits 38g」と「じゃがりこサラダbits4 56g」の計14万4千個を自主回収すると発表した。
工場の樹脂製コンベヤーベルトの一部が商品に混入した可能性があるため。
商品は岐阜県にあるカルビーの各務原工場で製造。

(東京新聞)

 

ではこれについて、以下。
どうしてコンベアの部品と判ったのか、
あるいは、自主回収したのはどういうことなのか、
などについて、プロの衛生管理屋として少しばかり考えてみたいと思います。

折角なので買ってきたじゃがりこを開けてみる

さて、前回でも触れましたが、今回この記事を書くにあたって、どんなものが異物混入したじゃがりこなのか、スーパーに行って買ってきました。
で、ついでにその売場にあったじゃがりこも全部買ってみました。

おっと、
全種買った、というのは余りにも煽りすぎでした、いや煽りどころかおごりとすらいっていい所業。
じゃがりこメイニアの方々、ごめんなさい。
はっきり言ってじゃがりこの種類はとんでもない。ちょっと調べただけでも、とてもじゃないがこんなものはごく一部であることがよくわかります。
無限に広がる果てしなきじゃがりこワールドのなかでは、こんなのは入り口もいいところ。
なので今回は、売り場にあった全種を買った、でどうぞご勘弁ください(汗)。

 

で、折角なのでこれを開封してみます。
まずはやっぱり混入した「じゃがりこサラダbits」からいきましょう。
後で知ったのですが、このbitsはコンビニ限定なのだということ。
道理でヤオコーにはないはずです。逆に置いていたマルエツ凄いな。

 

それでは、お皿にバラバラー。
いつもは余り気にしないぼくですが、今日はちょっと異物の存在があるかどうかに、つい目がいってしまいがちです。

 

カップのものに比べて少なめ。
まあ、そこがいいのでしょう。
ちょっと食べたい。そんな向きにはぴったりの容量です。

勿論ですが、この中に異物はありません。
だって製造工場が違います。
混入事故が起きたのは、岐阜県にある工場でのこと。
このぼくが食べようとしているじゃがりこbitsは、茨城県は下妻市にある工場で作られたものです。

それではこれをつまみながら、後編をすすめることにしましょう。

どうしてコンベアが原因だとわかったのか

さて、「じゃがりこ」くらいになるともう製造工程情報がネット上にちょいと調べれば出てくるくらいです。
さすがのカルビー。すげーな!

 

で、今回のこの混入事故は、この工程でいう6から7の間。
恐らくはここで発生した、ということになります。

でも、ちょっと「あれ?」と思いませんか。
混入したものが樹脂だということはわかった。
でも、どうしてコンベアの一部だと、それが判ったのでしょうか。
なぜコンベアベルトに原因があると判ったのか。
実はそれは、その異物がそうであるという検査結果が出たからです。
ではその、考えられる検査過程を追ってみましょう。

消費者から、異物が入っていたというクレームがメーカーの本部に入ります。
こういうのはカルビーさんくらいの市場規模になると日常茶飯事ですので、専門部署が請け負います。
そこで消費者さんにメーカーは謝罪とともに、異物を受け取ります。
そしてメーカーはこのような異物混入の検体を入手すると、付き合いのある検査機関にそれが一体何であるか、成分分析の検査依頼を行います。
そうだな、一検体あたり樹脂だから、ちょっとしたところに頼んでも3万円強程度じゃないでしょうか。
(今回おそらく比較検査が生じているので、プラス1万円程度でできる検査です)

検査機関は、届いた検体に対しまずは実態顕微鏡で外観観察を行います。
要は、拡大して人工的なのかどうかを見るのです。
これによっておよそ樹脂であるとわかると、次にFT-IRで赤外分光分析スペクトルを測定します。
そこでどんな樹脂のスペクトルと類似しているかを調べるのです。

え、えふてぃー…何?
まあ、よく判らなくても大丈夫です、そういう検査方法があるんだと思ってください。
どっかでまた詳しく触れます。

で、この検査をすると、どんな樹脂なのか、例えばこれはやれポリエチレンだとかなんだとか、そういうのが判ります。
ただ一言、樹脂といっても種類は一杯あるのです。

さあ、どんな混入状況で、しかもこんな樹脂である、というのがわかればそれなりに目星もついてきます。
例えば製品に練りこまれず、表層に付着していたというのであれば、おおよその工程も絞られることでしょう。
そこで、目星のついた工場内の樹脂品との比較検査を行う。
それでもし同成分なら、ビンゴ、となります。

合成樹脂の混入とは

今回混入した合成樹脂は、軟質異物。
つまり、異物混入はあってはいけないことながら、しかし健康被害にはなりそうにもないし、重特性はそれほど高くはないよ、ということになります。

さて、合成樹脂には、加熱すると柔らかくなる「熱可塑性樹脂」と、加熱により硬さが増す「熱硬化性樹脂」があります。
ただし一般的に合成樹脂といったら、前者である「熱可塑性樹脂」のほうです。
一般的なプラスチックを熱するとぐにょぐにょになりますよね。
で、冷やすと固まる。これが「熱可塑性樹脂」です。

で、その「熱可塑性樹脂」において最も普段使っているのが、「汎用プラスチック(汎用樹脂)」というものです。
まあ、一般的に「プラスチック」「合成樹脂」と言ったら、その多くはこのことだと思っていいでしょう。
とにかく安くて使い勝手がいい、というのがその特徴です。
文具やバス・トイレ用品、食器など、我々の生活はこうしたプラスチック、合成樹脂を材料としたものにあふれています。

更には有料化した、レジ袋。
これも「ポリエチレン」や「ポリプロピレン」といった「汎用プラスチック」に分類される合成樹脂を材質としたものです。

 

このように合成樹脂は、様々な形態、用途として広く使われています。
そしてそれは、当然ながら食品工場や厨房などでも同様です。

では今回のコンベアベルトの一部は何だったのか。
これは実際に見たり、少なくとも写真などを参考にしなければ正確には判りません。
ですが、一般的にはポリプロピレン、ポリエチレンなどでしょう。

カルビーが行った自主回収について

ところで、今回の件で、消費者には健康被害は出ていません。
それに混入したのは樹脂の軟質異物です。
つまり、柔らかな樹脂だということ。
こんなものを食べても消化されませんし、硬い樹脂で口内を切ってしまうようなことも考えられないため、健康被害につながるような異物混入でもないということになります。
まあ、そこでさほどに注目度が低いのでしょう。そういうこともあるかもね、程度に。

しかし、となると法的にはこの食品メーカーになんら回収義務はありません。

世間で思いっくそ誤解されている感がありますが、そもそもとして、異物混入=回収義務ではありません。
どこの法律にそんなことが書いているのか。
ないんです、そんなものは。

食品衛生の根幹である「食品衛生法」にあるのは、健康に害するような食品を市場に出してはいけないよ、ということであって、行政によるリコールの要請が発生するのはその時のみなのです。

にも拘わらず、結構な頻度で日々、色々な食品メーカーが自主回収を行っている。
というか世で行われる食品の回収事例は、そのほとんどが「自主回収」、つまりメーカーの自主的な回収なのです。保健所もどこも、それをやれなんて言いません。

ではなぜやるのか。
別にやりたいからでも何でもありません。
その理由はただ、一つ。
社会的影響、要はSNSやネットで勝手気まま、無責任に放たれる「けしからん」が怖いからです。

だから、メーカーは本来、やる必要もやりたくもない自主回収を、大金を払ってやっているのですよ。
だって一回それを、自分ごととして考えてみてください。
折角原材料を買って人件費を使い、機械を使って、物流コストを払い、そうやって折角市場に出た商品のほとんどを、それほどリスクもないのにも関わらず、今度はまたお金を払ってかき集め、処分費を払って処分する。
最近話題のフードロスの完全な真逆行為もいいところです。
誰の得にもならないし、誰にもいいことはありません。

にも拘わらず、こうして大規模に自主回収を行ったら、「やっぱりカルビーは消費者のことを考えていてえらい」などと言い出す輩も、どうせいるのでしょう。
そういう大衆のご機嫌に損ねないように、メーカーはやっているのです。

ですが。
ちょっと考えてみれば、実はそんな連中こそが、一番あやういということが判るでしょう。
何故なら、何もわかっていない彼らのその発言は、それは逆に言うなら「異物混入して自主回収しないメーカーがいたら、けしからん」と言うであろうことと、ほとんど同意だからです。
同意といって語弊があるなら(ないと思いますけどね)、たやすくいつそっちに転んでもおかしく存在が彼らだからです。
ここはちょっと注意が必要かなと、ぼくは思いますね。

じゃがりこを実際に食べ比べしてみた

おっと、お堅い話はここまで。
あとはこれから、「じゃがりこ」を実際に食べ比べしていくとしましょう。

 

買ってきたじゃがりこは、bitsを除いて5種。
さあ、どれが美味しいか、これからうちの家族全員で順位を付けていきます。
って何このYoutubeみたいな企画!?

んじゃどれからいこうか。そりゃもう決まっている。
安定の基本、何はさておき「サラダ」からだろう。

 

うん、基本のじゃがりこ。
どこらへんがサラダなのかはよく判らないけれど、あっさりしていてサクサク進みます。
でもちょっとした酸味があるかな、これがサラダか。
いずれにせよ、じゃがりこ、と言ったらこの味。食べ慣れている味だ。
でも実は、個人的には少し食べると、そのぶん食べ飽きちゃう。
この酸味が、ちょっといやになっちゃうんだよなあ。

 

さて、基本といえばこれもそうかな、「チーズ」。
いわゆるチーズ味スナックのような、臭みが強くなく、どちらかといえばマイルド。
チーズ味スナックのアレが苦手な人でも食べられそうだ。

 

「じゃがバター」。
うん、これが一番、あっさりしている。
寧ろ、これがプレーンって感じすらする。
ほんのり塩味で、クセがなくてさっぱりしているのがいい。
そのぶん、名前の通りのポテトとバターの風味が効いている。
飽きのこない味わいで、ずっと食べられるぞ。

「たらこバター」。
この基本じゃがりこの中では、ちょっとだけ異質か。
では。

 

う、うまい!
こ、これは美味い。
いや、マジでこれ、美味いぞ!
てか一番美味くないか!?

まず、なんといってもたらこの風味がしっかりと効いている。
しかもそれにマッチするバターの風味も、ちゃんと味わえる。
そのたらこバターと、じゃがいもの相性がめちゃくちゃ、いい。
それに、酒に合うのもいいな。
少なくともこの中ではダントツに酒に合うぞ。
これは美味いわ!
間違いない。

 

最後に、「大人のじゃがりこ」を。
「わさび醤油味」らしい。

まず、揚げかたが他と明らかに違う。
もっとカリカリに、しっかりと揚げられている。
そして、一口。
真っ先に広がる醤油の風味。
じゃがいもと醤油の相性の良さが伝わる。
で、どこがわさびなの?
そう思う刹那、ガッつーン!と後からくる、わさびの風味。
でもそれほど辛い、というわけではない。ツーンとはくるけれど、辛さは強烈というわけでもない。
寧ろ程よいくらいか。

「じゃがりこを食べる」という幸せ

さあ、結果発表ー。
どのじゃがりこが、一番美味しかったかー。

うーん。
この中だと、個人的には、断然「たらこバター」だな。
これはもう、圧勝と言ってすら、いい。
そりゃあもう、群を抜いての一人勝ち状態。

 

で、
それに次いでの2位が「じゃがバター」、
もしくはちょっと劣るかなで、「チーズ」。
そして、更に落ちて、「大人のわさび醤油」。
で、最後が「サラダ」かな。

って定番品がビリなのかよ!?
うん、ほんと食べ飽きるんだよなあ、個人的には。
意外なんだけど、サラダ味って「じゃがりこって言ったらこれだよね」って感じなんだけど、でも食べ比べると実はビリっていう結果。

ちなみに娘ちゃん小6はといえば、やっぱり「たらこバター」が一番で、次が「チーズ」、そして「サラダ」と「じゃがバター」が同位、という結果。
うん、わかる。
やっぱり美味しいよね、「たらこバター」。
んじゃ、この中で一番美味しいじゃがりこは「たらこバター」で決まりで、もういんじゃないかな。

…と。
そんなパパと娘ちゃんとで出した結論に、息子高1が一人。

「意義あり!」

はい、発言を認めます。

 

以下、高1息子の言い分を。

確かにたらこバターはこの中でも美味しいかもしれない。それは判る。同意する。
インパクトも、パンチもあるだろう。
でも、それじゃあ果てこれを食べて「ああ、じゃがりこ食べたなあ」と思えるのだろうか。
否。
自分はそうは思わない。
そりゃ、こうやって数種を同列に並べてさあ食べ比べようとなれば、一番美味しいのはもしかしたら「たらこバター」になるのかもしれない。
でも日頃、例えばゲームをしながらだったり、あるいは漫画を読みながらだったり。そんなときに、何気なくつまんで食べたいと思うのは果たしてこれなのか。
「ちょっとじゃがりこ食べたい」というときに、果たしてこれを欲するだろうか。
それによって、「じゃがりこ」を食べたという満足度を得られるだろうか。

どういうことか。
それは、食品の純粋な「美味しさ」と、それを食べることで得る「幸せ」や「満足度」は、必ずしも一致するわけではない、ということだ。
日常によりそう。それが、本来のじゃがりこではないのか。
そもそも、スナック菓子、駄菓子って本来、そういうものではなかったのか。

「どれが一番美味しいか、が一番大事なんだ」、という価値観があるのも、うん、判る。
それも、食べ物の魅力のものさしの、紛れもない一つに違いないだろう。
だが、しかし。
その一方で、「どれがじゃがりこに求めている美味しさなのかが大事だ」、という価値観もあるのではないか。
その価値観を否定して、「どれが一番美味しいか」を競えるのか。競う意味があるのか。
すなわち、「どのじゃがりこが一番美味しいか」を競うのに、「何をじゃがりこに求めているのか」を無視して語り得るものなのか。
言い方を少し変えるなら、では「たらこバター」を食べて、このなかで一番「じゃがりこを食べている満足度」を味わえるだろうか。
ぼくらが求めている「じゃがりこを食べることの幸せ」は、本当にそこにあるのだろうか。
ぼくらが求めている「じゃがりこを食べることの幸せ」は、ただ美味しい「じゃがりこ」の種類を食べることにあるのだろうか。

 

…。

………………。

はい。

たった今、高校1年生に説き伏せられました。完全に論破されました。
たった今、高校1年生に「じゃがりこ」の何たるかを、「じゃがりこ」の真髄を、真実を、教わりました。
たった今、高校1年生に、御免なさい確かに「じゃがりこ」とは、「スナック菓子」の魅力とはおっしゃる通りのものでした、とぐうの音すら出ないほどに知らされました。

そうだ。
そうだった。
そうでございました。
「じゃがりこ」とは、「じゃがりこ」なのだ。
そこに順位なんか付けられない。
色々あって、それでいい。
じゃがりこは、色々あって、それでじゃがりこなんだ。
なんだかそんな気にすらなってきました。

…あれ、これって元々こんな話だったっけ!?!?

まとめ

今回は、カルビーのじゃがりこの異物混入について、じゃがりこの食べ比べなどを交えながらお話いたしました。
しかも最後はなんだか変な方向にまで向かってしまいました!(笑)

ちなみに、今月10月23日は「じゃがりこの日」だそうです。
というのも、1995年、10月23日に初めてじゃがりこが発売されたから、ということです。
それを受けて「一般社団法人日本記念日協会」がそれを認定し、10月23日を「じゃがりこの日」と決めたそうです。
って、「日本記念日協会」って何だよ!
あ、それとじゃがりこは今年2020年で25周年記念だそうです。
おっと完全な余談でした、ハイ。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

■□貴方の工場・店舗で悩んではいませんか■□
・どうやって防虫管理・衛生管理をすればいいか判らない
・今やっている防虫管理・衛生管理が正しいか判らない
・何か問題が発生したときの対応が判らない
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・でも余りコストもかけられない
だったら貴方が防虫・衛生管理のプロになればいいのです!

高薙食品衛生コンサルティング事務所にようこそ
  • 私達は、どんな工場、お店の方でも防虫管理・衛生管理のプロレベルに育成することが出来ます。
  • 何故なら、防虫管理・衛生管理のプロとは、基礎知識に加えて「正しい管理の仕組み」を作れる能力を持つ者のことだからです。
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