Twitterで話題の「30分チキン」をご存知ですか?
フライパンで鶏肉をごく弱火で30分加熱する料理で、これが殊更美味しいと目下評判です。
でもこの加熱で食中毒は防げるのでしょうか。
食品衛生のプロが実際に作りながら、前回、そして今回と、二部構成で実際に作って検証していきましょう。
ちなみにぼくは、食品衛生に関してはプロですが、料理に関してはドシロウト、白帯。
さあ、失敗記にならないといいのですが…。ってフリかこれは!?フリなのかーっ!?
(今回はその後編となります)
改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

目 次
30分チキンの料理法で食中毒菌を不活化できるのか
(こちらは二部構成の「後編」になりますので、もし以下の「前編」をお読みでなければそちらを最初に読んでいただくと理解がより深まります)
さて、皆さん。
このところTwitterで話題となっている「30分チキン」をご存知でしょうか。
弱火で鶏の胸肉をじっくり30分加熱する、という「イナダシュンスケ」さん発案の神レシピ。
にも関わらず、メチャクチャ美味いと殊の外評判で、今やリツイート数4万超、いいね!18万以上という、まーえらいバズりようです。
- フライパンに冷たいままの鶏ムネ肉をフライパンに乗せる
- 塩コショウをふる
- 弱火にかけて30分放置する。蓋をしない、鶏肉を動かさないのがポイント
- 30分後ひっくり返し、3秒数えて火を止め、その状態で10分放置する
- 好きなソースを作って出来上がり
何もしないで、触れないで、蓋もしないで、30分。
それで、鶏のムネ肉がメチャクチャうまくなる。
まじっすか!?
確かに素晴らしい料理だと思うんです。
安価なぶんだけパサつきがちな鶏ムネ肉。
それを30分放置というシンプルで簡単な料理方法で、劇的に美味しくしてしまう。
あまりにキャッチーにして、あまりに料理欲をそそる。
そんなレシピです。
ぼく自身、めっちゃそそられてしまい、実はこれを書いている現在で5回ほど試しています。
ですが、ですが、唯一!
これはもうぼくの商売柄なのですが、一つだけ「どうなのだろうか」という心残りがあるのです。
それは、
この料理法で食中毒菌を完全に失活させることはできるのか、ということです。
いや、勿論レシピ考案者の方は、百戦錬磨に研鑽されつくされた一流のプロ中のプロ。そんなことは勿論、百も承知なのでしょう。
でもレシピを見る一般の方々、例えばぼくのようなドシロウトのニワカ初心者料理男子がそのレシピに言われたまんまに作って、果たしてそれで菌を完全に不活化できるのでしょうか。
鶏肉というものを考えたときに、特に危険性が考えられる食中毒菌。
そしてそれを加熱殺菌できる条件。
それは、前回に出したとおりです。
要するに、調理上において、これを満たされていればいい。
- カンピロバクター:60℃、0.25分で死滅
- サルモネラ:60℃、7.32分で死滅
- 病原性大腸菌:60℃、3.35分で死滅
- 黄色ブドウ球菌:60℃、6.67分で死滅
ではこれが実際になされているのか、それを温度計を使ってこれから試していきましょう。
うわっ、
もうぼく、めっちゃ楽しくなってるんですけど!
ちなみに。
冒頭でも言ったように、ぼくは衛生管理においてはプロですが、料理に関しては完全なるド素人です。
土日にはうちで家族に料理をちょっと振る舞う程度の、しがない(?)弱小料理男子。
そんな程度がこの30分チキンを、作ることができるのでしょうか。
失敗記にならないのでしょうか。
なんかもうのっけから、不穏なムードが濃厚です。
30分チキンを実際に作ってみよう
さあ、気を入れ直して「30分チキン」の安全性を実際に証明していきましょう。
この料理法で、食中毒菌を不活化し、安全だと言い切れるのか。
この後編では、実際にその「30分チキン」を作りながら、つまりは鶏ムネ肉をフライパンで焼きながら、温度計で肉の温度を測っていくとしましょう。
では最初に、準備からです。
といっても、別段そんなに大したものは必要ありません。
まず必要なのは、鶏の胸肉。
これがなくては、始まりません。
そこでぼくも結構大きめのものをスーパーで買ってきました。
以上。
あとはフライパンがあれば十分です。

なおこれ、ちょっと色が悪いのは画像のせいです。
買ったばかりなので、新鮮さに問題はありません。
それから、あとはソースになるものを各自用意します。
このソースはもう自由。
でも、実を言うとぼくは実は何度かこれを造っているのですが、やっぱりなんだかんだでガリバタ醤油レモンが一番美味しかったですね。
ちなみに、その場合は、次のようなものを用意するといいでしょう。
このレシピも、後で紹介しますね。
- 醤油:大さじ1
- 酒:大さじ1
- みりん:大さじ1
- バター:10g
- ニンニク:1片みじん切り(チューブでも代用可)
- レモン:(ポッカレモンでも代用可)
なおこれ以外に、もし完成した料理をサレオツに見せたい人は、葉野菜やプチトマトがあるとインスタ映えするかと思います。
って出たな、美味しいお店やおしゃれスポットで多量発生するコバエの一種、インスタバエ!
おっと!
そんなことより、一番大事なものを忘れるところでした。
分量外の、ビール!

これこれ。
これを忘れてはいけません。
さて、こちらの料理の発案者「イナダシュンスケ」さんによると、水分を閉じ込めるため肉の重量があまり変わらないのがこの料理の素晴らしいところ、との話。
ではぼくも予め、重量を測っておくとしましょう。

426g。
結構、大モノのほうじゃないすかね。
それでは、こいつを30分ほど焼いていくことにしましょう。
鶏ムネ肉を焼いていこう
さあ、それでは楽しい料理の始まりです。
ではまず最初に、ビールを開封します。
そしてコップに注いだものを飲んで、ぼくを程よくほろ酔いにしていきます!
っておいそれ完全にバズレシピのリュウジさんやで。

そんじゃ、ぷしゅ。
乾杯―!
さあて、だんだん楽しくなってきたぞ!
と余興はそのへんにして、さあ、いい加減始めましょう。
まず用意したフライパン。
さて。ここに少量のオリーブオイルをたらします。
で、後で知ったのですが、油は使わないほうが良かったらしいです。
え、もう違ってんの!?
すでに最初から、間違えてます。
最初から不安要素が一杯です。
寧ろ不安要素しかありません。
急激にあやしいフラグの登場です。

そして鶏の胸肉を冷たいまま、フライパンに皮目を下に乗せます。
さっき冷蔵庫から出したばかりだから、結構冷たいです。
ここでのポイントは、発案者「イケダシュウト」さんいわく、フライパンに密着させること、とのこと。
そして動かさないこと。
何度かやってみて判りましたが、この際、このようにしっかりと鶏の皮を開いておくのが吉、です。
これで皮がパリッパリになって美味しくなります。

そもそも、この料理のキモはズバリ、「パリッパリの香ばしい鶏皮」と「しっとりジューシーで柔らかい肉」とのコンボ、です。
発案者の「イケダシュウト」さんもおっしゃっています。
「パサつきがちなムネ肉をジューシーに仕上げる方法はいろいろありますが、皮のパリパリを同時に叶える方法はほかにあまり無いと思います」と。
そう、
なかなか両立することが難しいそれらをともにフライパンで最大に引き出して、ダブルで取りに行く。
しかもシンプルに。
それがこの30分チキンだというわけです。
簡単なようで奥深いな、これ考えた人。天才かよ!?
さあ、それでは最初の温度確認です。
はい、上は18℃。
側面は12℃。
まだ冷え冷えです。

ではこれから、フライパンに火をつけて、30分ばかり弱火でじっくりと焼いていきます。
そして5分ごとに、肉の温度がどのように変化するかを追っていくことにしましょう。

最初の10分は、ほぼ生肉
さて、それでは鶏肉に軽く塩胡椒を降って、そしてフライパンに弱火をかけます。
この料理は、フライパンの蓋をしてはいけません。
実はぼくは最初にこの30分チキンを作ったとき、ちゃんとレシピを確認せず、フライパンに蓋をしてしまったのです。
これでは普通に、普通のグリルチキンです。
これもまあ美味しかったのですが、30分チキンのような感動を得ることはできませんでした。
なので、それ以降はその失敗を生かして、蓋をしません。
完全にオープンです。
おっと、ここでありがたいレシピ発案者様「イケダシュウト」さんの言葉を引用させていただきます。
余計なことをしないのが一番です。
フライパンを予熱したり油をひいたりせず、鶏肉を室温に戻す必要も特にありません。
ただただ皮が折り重ならないようにしっかり広げて、それをフライパンに密着させてください。
火を入れはじめたら鶏肉は絶対に動かさず「焦げるかも?」と心配になってもグッと堪えてください。
(まいどなニュース)
あ、あかん。ワイ、すでに少し間違えとる…。
まあ、仕方ない。
先に進みましょう。
さあ、肉を眺めながらしばらくビールを煽っていると、だんだんと油の音がし始めます。
肉の色自体はほとんど変わらないけれど、でも早くも皮目が小さく、しかし確実に、パチパチと音を出し始めるのです。
と、そうなる頃合いで、ちょうど5分経過。
温度をはかる時間です。
上、19℃。
側面、18℃。

6℃上昇しましたが、ゆうてみれば、まだその程度。
まだまだ冷たい生肉の類。
でも大丈夫、まだまだ時間はある。
んじゃ、おつまみでも出そうか。
そんな感じでビールを再び煽っていると、はい、10分経過。
結構忙しいな!
でその加熱後10分経過が、こちら。
やはり全体的に色は変わらず、まだ生肉感しかありませんが、しかし皮目では油のパチパチ音がかなり広がっています。
焼き始めに比べると結構、パチパチと賑やかしい。
そう、これはもうアレですよ。
ムネ肉がパチパチするほど騒ぐ元気玉ですよ。
解けた氷の中に恐竜がいたら玉乗り仕込みたいやつですよ。

20分かけてやっと40℃に
そんなしょうもないことを考えながらも、さらに様子を見ながら弱火で焼き続けます。
この料理のいいところは、焼いている間完全に放置してもいいことです。
逆にこの料理の唯一の欠点は、焼いている間にやることがないことです。
仕方ないので、ビールに専念しましょう。
仕方ないよね、がぶがぶ。
おっと15分経過。
すでに30分チキンの半分の時間になってしまいました。15分チキンな状態です。
そして油の音はより大きくなるとともに、音が細かくなっていている。
パチパチではなく、今やパチパチパチパチー、パチパチパチパチーって感じ。
そして10分前までは赤かったお肉でしたが、おおやっと!
やっと、下のほうが段々と白くなってきています。
これはタンパク質の熱変性、
要するに肉に熱が入ってきつつある証拠です。
でも15分でこれかあ。
いい加減、弱火の火加減が弱すぎたことに、さすがに気付きます。
それと、ムネ肉を少し平らにすべきだった。
基礎的なところにも、気付きます。
まあ、いい。もうこれでいこう。いくしかない。
では温度を。
上、23℃。
側面、29℃。

「冷たい」から次第に「温かく」、そして実は菌が活性する温度帯に入ってきました。
だって15分で、まだこれよ!?
うーん、火が弱すぎたわ。反省。
さあ、そろそろ火にかけて20分が経過。
今や油の音は、パチパチからパチパチパチパチに。そしてこれに加えて、ジュクジュクジュクジュクが加わります。
また肉の側面も、ようやく40℃になりました。
でも上はまだ26℃。
まあ、いいんです、上はどうせ後でひっくり返してフライパンに熱されるのだから。
残り5分でトラブルが!?
さあ残るところ、あと10分。
これで鶏肉は加熱されるのでしょうか。
段々心配になってきています。
肉も大きかったものなあ。
ちょっと火加減が弱すぎたかしら。
ここらへんは何度かやってみて、火加減を覚えないとな。
料理がシンプルなぶんだけ、そういう調整がちと難しい。
そう考えているうちに、25分経過。
おっと、温度計で肉を…
ブスっ。
「ぎゃあああああーっ!!!!」
はい、残りトラブルが発生しました。
残り5分でトラブル発生です。
なんと、温度計で測ろうとしたら、手をすべらせて足元に落としてしまい、
温度計がぼくの足に刺さりました。
鶏肉の温度を測るはずが、ぼくの足の肉の温度を測ることになってしまいました。

みなさん、酔っての料理は危険ですので、くれぐれもご注意を。
油断禁物、そして、人間万事塞翁が馬。
まさか包丁も使わず、ただ放置するだけの料理で怪我するとは思ってみませんでした…。
おっと肉のほうはといえば25分経過段階で、
上、23℃。
側面は、ほぼ変わらず39℃~40℃。

これではまだ菌は加熱殺菌されていないでしょう。
ただし、外観的には少しずつじわじわと白みが浸透してきたように見えます。
5分延長して加熱することに
さあ、フライパンの上ではジュクジュク音はさらに小さく細かくなってきています。
結構皮は焼けているんじゃないかな。
この料理のコツは、肉を動かさないこと。
だからぼくも検温はしているけれど、基本、お肉を移動したりなどはしません。
ああ、でも裏見たい。
裏、めっちゃ見たい。
裏見たい欲求に、めっちゃかられる!
そうこうしているうちに、ついに30分が経ってしまいました。
現在、上は27℃。
側面は41℃。
余り温度は変わりません。
そこで5分ほど延長して加熱することにしました。
結構、油の跳ねも激しくなってきたので、フライパン回りをキッチンペーパーで囲む作戦に。
やがてジュクジュクとなっていた音が、今度はピチピチという音が聞こえてきます。
熟々から、ピチピチに。
若返りか!?
すでにお肉も1/3くらいは白くなってきています。
ここで35分経過、もうそろそろいいだろう!
上、30℃。
側面、43℃。
やっぱり40℃台前半です。

肉を裏返して10分
さあ、ここで肉を裏返します。
どうだ!
カリッカリか!?

見事な出来です。
これだ、これだよ!
そしてここからが重要。
肉をひっくり返したら、3秒後、火を止めます。
そして10分放置する。
弱火とはいえ、さっきまで火のついていたフライパン。
ひっくり返された側はそれで加熱されます。
それで10分も放置されていれば、フライパンの温度下降を加えたとしたって十分に食中毒菌を殺すことはできるでしょう。
しかし問題は、やはり側面。
先ほどの35分の加熱でも、42℃までしか上がっていません。
5分経過。
音はもはや完全に消えています。
色みも白さが下から今度は上がってきています。
側面の温度は、40℃。
うーん、変わらない。

10分経過。
42℃。
やっぱり肉が厚かったかな。
もう少しだけ待つか。
13分経過。
側面、40℃。
うーん、これで終わりかな。
肉をフライパンからあげるとしよう。

30分チキン、完成!しかしこれは…
さあ、完成しました、30分チキン。
まあ、実際には35分チキンなんですけどね。
でもぱっと見は、悪くない。
でも問題は側面。
これは加熱不足が否めない。
つーか、生…じゃね、これ!?

ほぼほぼ40℃近くで約30分。
40℃といったら、菌の種類によってはやもすれば至適発育温度ですらある。
少なくとも、鶏肉を媒介する食中毒菌であるカンピロバクターや大腸菌の失活にはいたらない。
ていうか、一番分厚いところ、生々しくねっすか?
完全に失敗記臭いんですけど。
大丈夫かな。
恐る恐る、重量を測定する。

343g。
焼く前が426gでしたから、83g減っています。
考案者の「イナダシュンスケ」さんのTwitterによると、鶏肉は普通に焼いてしまうと70%から75%くらいに縮んでしまうといいます。
でもこれだとしっかり80%くらいを保っている。
つまりその差こそが、ジューシーな美味しさの増分だということ。
どれくらいジューシーかと言うと、この重量が物語っています。
今回の鶏肉は焼き前で350g弱。普通鶏肉を完全に焼くと、肉は70〜75%までちぢみます。つまり250g前後。
しかしこの焼き方だと、80%以上をキープしています。その差分がおいしさの増分なのです。 pic.twitter.com/v66pKPV3kj— イナダシュンスケ (@inadashunsuke) August 22, 2020
さて、肉をまな板の上に置いて、切ってみるとします。

おお、柔らかい。
柔らかいぞ!
しっとりしている、といった感じで包丁が入る。
それにこの、ほんのりとしたピンク色。
これ、これだよ!
この感触では、案外よくできたのではないか?
なお、さすがに側面の分厚い箇所はちょっと怖いので、後からフライパンで数分加熱しておきました。
うん、これで殺菌完了。
では盛って食べようじゃないか。

ソースは断固ガリバタ醤油レモン派
おっと、その前にソースだ。
鶏肉には塩コショウが少々なされているものの、それだけでは味が不足する。
それにフライパンに残っている、鶏の旨味が出た脂を捨ててしまうのは余りにもったいない。
これを使って、ソース作りをしようじゃないか。
実は30分チキンを作るのは、今回は2回目。
この記事を書いている現時点では、すでに5回目になる。
トマトソースやオニオンソースも作ったことがあるのだけど、やっぱりこのガリバタ醤油レモンソースが一番うまいし、うちの子供たちにも人気が高い。
作り方は簡単。
フライパンに残っている脂でみじん切りのニンニクを弱火で熱して香を出す。
チューブニンニクだっていい。その場合は醤油と酒とみりんを入れる、そのタイミングで入れればいい。
少し煮詰めたらバター投入、程よくなった時点でレモンを絞って(ポッカレモンなら数的垂らす)、ハイ、出来上がり。
ちなみにぼくの経験から言って、ソースは多めのほうが絶対に、美味い。
たっぷりとソースのついた肉のほうが全然ぼくは好きだし、なんだったら白いご飯にかけたって美味い。
なので少し多めに作ることを、あくまで個人的にはお勧めします。
- 醤油:大さじ1
- 酒:大さじ1
- みりん:大さじ1
- バター:10g
- ニンニク:1片みじん切り(チューブでも代用可)
- レモン:(ポッカレモンでも代用可)
実食してみよう
さあ、出来上がり。
早速頂いてみることにしましょう。

まず30分チキンの最大の醍醐味といえば、パリっとよく焼けた香ばしい皮。
これがたまらない。
パリッパリの歯ごたえがたまらない。
そして、ソースをたっぷりつけたジューシーで柔らかい肉。
成程、確かに胸肉とは思えない柔らかさだ。
いつもはあんなパッサパサの胸肉が、水分を含んでいるせいか、実にしっとりと柔らかい。
懸念していた生焼けも、後で少し焼きを加えたおかげで、全くそれを感じさせない。
レシピを考案したイナダシュンスケさんがTwitterで語られている通り、ムネ肉をしっとりとさせながら、同時に皮パリをも実現させる。
なんという、美味しどころどりの完璧さ。なんという、シンプルな美味さ。
これは成功といってもいいんじゃないかな!?
家族受けも非常によく、あっという間にたいらげてしまいました。
30分チキン、マジうめえ!マジヤバい!
総括:30分チキンの安全性を検証しよう
さて、実験の結果をまとめてみましょう。
まず、鶏肉を媒介する食中毒菌とその失活条件は次の通りです。
- カンピロバクター:60℃、0.25分で死滅
- サルモネラ:60℃、7.32分で死滅
- 病原性大腸菌:60℃、3.35分で死滅
- 黄色ブドウ球菌:60℃、6.67分で死滅
要は60度をある程度超えれば、いいだろう、ということ。
前回触れたように、鶏肉の生肉は中心部は無菌であるため、別に中心温度でこれらの条件を満たさなくても問題ではない。
しかし少なくとも肉の表面については、この温度条件を満たす必要があります。
この点からすると、正直なところ、今回ぼくが作った30分チキンは、それらをすべて失活させるような加熱方法ではなかったことになります。
少なくとも40℃台前半程度の加熱では、しばしば鶏肉で問題となるようなカンピロバクターやサルモネラ、病原性大腸菌などは、発育自体は多少程度なら押さえられるかもしれませんが、しかし完全に失活させることは難しいでしょう。
つまり、肉に残存していた菌による食中毒のリスクを防ぐことまで出来ていません。
勿論、これはぼくの、ミスです。
明らかに加熱の温度が低かった。
或いは最後にひっくり返したときに側面をフライパンに触れさせればよかった。
分厚い肉だったら、開けばよかった。
多分それで問題は、全然普通に解決していたことでしょう。
これはレシピではなく、ぼくの技量不足、何も考えていない料理センスのなさ以外の何者でもありません。
さっき知りましたが、ちゃんと発案者の「イケダシュウト」さんもこう言ってるではないですか。
Twitterに書いた時間はあくまで目安なので、肉の厚さや火力によって変わります。
それを見極めて完全に火を通してください。
火は完全に通ってるがうっすらピンク、というのが理想の仕上がりですが、料理に慣れていない人がそれを目指すのは危険なので、まずはしっかり焼く事を目指してください。
(まいどなニュース)
ぐううう、
いや、
ぐうの音すら出ねえ…。反省…。
で、実はこのあと3回ほど30分チキンを作ってみたのですが、それでやっとこのドシロウトにも火の加減次第と時間調整などで60℃以上にまで肉の表面(側面)をあげることが出来ました。
こんな感じにね。
60℃以上にまで加熱すれば、上の表のように食中毒菌を失活させることができます。
それなら何ら問題もないでしょう。

まとめ
以上、「イケダシュウト」さん考案の30分チキンを実際に作りながら、その安全性の検証に挑んでみました。
が、
申し訳ありません!
不甲斐ないぼくの失敗、料理スキルのなさでそれを検証するに至りませんでした…。
ええと、ぼくなりに失敗点をも踏まえた今回の結果を、まとめておきましょう。
まず、鶏肉を安全に食べるためには、表面60℃数分という調理が必要です。
ただムネ肉というのは、結構、いやかなり立体的です。
ステーキ肉なんかとと違って、凹凸も厚みのムラある。
ですが、お湯で茹でるなどの調理と違ってフライパンの場合、そこにムネ肉を置いて加熱するだけではなかなか全面までそれを満たすのは結構難しい。いや、少なくともドシロウトには難しい。
シンプルで優れたレシピである30分チキンの、唯一(少なくともドシロウトにとっては)難しいのがこの温度調整です。
なのでその場合は、30分チキンとはいうものの、そこは時間を調節してみたり、最後に少しフライパンに熱を入れて加熱不足のところを再度焼く(今回ぼくはそうしてます)、あるいは予め分厚い部分を開いて肉を平らめにする、などの工夫を加える必要があります。
ちなみに60℃数分加熱、というと弱めの中火で1から2分程度、といった感じでしょうか。
少なくともぼくのようなやり方、40℃前半では肉の表面にも赤いところは残ります。
中はまだしも、表面がこれだと、ちょっと焼いたほうがいいかな、とは思います。
さあ、そんな30分チキン。
ぼくの失敗を人柱にしながら、皆さんも是非とも美味しく試してみてください。
以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

・どうやって防虫管理・衛生管理をすればいいか判らない
・今やっている防虫管理・衛生管理が正しいか判らない
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だったら貴方が防虫・衛生管理のプロになればいいのです!
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