最新の食品業界ニュースから気になった話題を定期的にピックアップし、食品衛生管理のプロの目線からコメントさせていただきます。
今回の話題は、54人ものサルモネラ食中毒を起こした岐阜県の保育園の給食についてお話します。

本日の時事食品ニュース

 


CBCテレビ

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

岐阜の保育園でサルモネラ食中毒発生

岐阜県の保育園で、給食によるサルモネラ食中毒が発生、というニュースがあがっています。

 


CBCテレビ

岐阜県は24日、郡上市八幡町初音の妙高保育園で調理された給食を食べた同園や併設幼稚園の1~6歳の男女54人の幼児が、下痢や発熱など食中毒症状を訴え、5人が入院したと発表した。
いずれも快方に向かっている。
県によると、同園の園児ら205人が10日、給食のごはんやグラタン、きんぴらごぼうなどを食べ、54人が12日から23日にかけて発症。
関保健所郡上センターは給食残品からサルモネラ属菌が検出されたことから、食中毒と断定。食品衛生法に基づき、妙高保育園を24日から業務禁止処分にした。

 

ではこれについて、プロの衛生管理屋として少しばかり考えてみたいと思います。

今回の食中毒の基礎情報

体力の弱い小さな子どもが大量に食中毒、というのが気になるところですが、まあいずれも軽症だということで、何よりです。

さて、この食中毒に関してはすでに岐阜県が情報をまとめており、概ねのことがすでに公開されています。
なので、おおよそのことはこちらを見ればもう十分でしょう。

何故サルモネラ食中毒が保育園で連続発生するのか

それにしても今年は、例年になく食中毒が少なめです。
その理由は、コロナウイルスです。
コロナウイルス対策のため、手洗いやアルコールによる手指消毒、除菌活動などが進んだことは皆さんもご周知の通り。
さらにはコロナで大きな打撃を受けた飲食店なども、ここで問題を起こしてしまっては死活問題。
そこで衛生管理には、どこもこれまでにない位に気配りしている。
その結果、今年は大きく食中毒が減った、というわけです。

でもたまにこのように、ぽろっと大きめの食中毒が発生したりしています。
この食中毒が発生するちょっと前に、静岡県の幼稚園でウェルシュ菌による集団食中毒が発生。
こっちはウェルシュ菌ということで、高校生を含む95人という、そこそこ大きめの規模の食中毒となりました。

 

では今回のようなサルモネラによる集団食中毒はどうか。
その一ヶ月ちょい前、8月上旬には愛知県岩倉市の保育園で、やはり給食によって発生。

 

さらにその前月7月には、これまた同県小牧市の幼稚園の給食で、やはりサルモネラの食中毒が発生。
愛知県、連続すぎるぞ。

 

さて。
これを見て、あれ?と思いませんか。
そう、今年これまで発生したサルモネラ食中毒は、皆、保育園や幼稚園の給食で発生しているのです。
これは何故でしょうか。

保育園や幼稚園の給食施設に、衛生管理上の問題が多いから?
そんなわけがありません。

実は今年に限らず、サルモネラによる集団食中毒は、しばしば保育園や、あるいは介護施設などの給食によって発生することが比較的、あくまで比較的ですが、多いのです。
コロナウイルス対策による手洗いやアルコール消毒の強化などによって他の集団食中毒が減ったため、それが目立ってきたわけです。

となると、比較的食中毒が起こりやすいところで発生する、ということになります。
さて、サルモネラによる食中毒というのは、一般的には数十万個などの多量のサルモネラ菌を体内に取り込むことで生じます。
しかしサルモネラ・エンテリティデイス(以下SE)においては、数十個という少数で発症します。
ですがこれに対し、健康な一般の大人であれば、強い胃酸による殺菌や腸の免疫細胞でそれらの活動を抑えることも可能です。
そのため、サルモネラの食中毒にもなりづらく、また症状も軽症ですむことが多いです。

しかしこれに対し、抵抗力の弱い幼児や高齢者はかかりやすい。
とくに幼児はまだそうした消化器の免疫が未発達なため、胃酸による殺菌力が弱かったり、腸での免疫システムが働ききれなかったりする。
そのため、保育園や介護施設などでしばしばサルモネラの集団食中毒が発生する、というわけです。

また、幼児や高齢者などのサルモネラによる食中毒では、一般の大人に対し重病化する可能性が高いとも言われています。
というのも、免疫力の高い一般の大人であれば胃腸炎の症状に過ぎないような場合でも、幼児などにおいてはそこからはじまって体内に菌が広がり菌血症を起こしやすいからです。
高齢者においては、感染性動脈瘤の合併症も高まる、ともいわれています。

つまり、サルモネラ(SE)は少数の菌数でも発症する。
特に抵抗力の低い幼児はそれに弱い。
しかも夏場で、さらに体力が低下気味になっていた。
一方でサルモネラも増加しやすい時期だった。
これらが揃って、このようなサルモネラの食中毒が発生したのではないでしょうか。


一般財団法人顕微鏡院

サルモネラの原因を探る

では、どうしてサルモネラの食中毒が発生したのでしょうか。

そもそもサルモネラの主な媒介食品といったら、まず生卵です。
それから食肉、乳、その他野菜などとなります。が、まあ大概の場合はほぼ、鶏由来です。
他にも色々あるけれど、ダントツで、まずは鶏です。

天下の財団法人、顕微鏡院さんのとこの資料をお借りします。
少し古めの資料ですが、いまでも実状はそう変わらんでしょう。


一般財団法人顕微鏡院

ほらこのように、圧倒差をつけてダントツで鶏になっています。

それと、「サルモネラ」は割と多くの動物の腸内にいます。
鶏意外にも、豚や牛、ペットにもいます。
上の表を見てください、豚由来もこのように結構ある。

それと、「サルモネラ」は乾燥には滅法強いので、低温度で調理してから乾燥によって水分活性で菌対策、なんて製品には時折食中毒が出ます。
イカの乾製品、イカ菓子や珍味みたいなもの。
これでも時々起こります。
付近の海が鶏や動物の糞便で汚染されていて発生、というケースです。

ただし。
サルモネラは比較的加熱に弱い菌でもあります。

このように65℃で3分。
70℃だと1分で死滅します。
それほど加熱条件が厳しいわけではありません。
O157やカンピロバクターより、熱に弱い。

つまりまともに調理すれば、付着していた「サルモネラ」はほぼ死滅する、というわけです。

サルモネラ食中毒の原因は何か

では、今回の食中毒の原因は何だったのでしょうか。
まず、今回の給食の献立を見てみましょう。

給食メニュー
  • ごはん
  • ミネストローネ
  • グラタン
  • サラダ
  • きんぴらごぼう

 

洗米して炊き上げられるごはんは、論外です。
ミネストローネ、グラタンを指摘している意見をどこかで見ましたが、いやあ、ぼくはこれはないと思うなあ。
もう一度言います。
サルモネラの死滅条件は63℃3分です。
まずミネストローネなんて、もう沸騰して、終わり。
グラタンだって高熱で焼き上げるのです。
サルモネラの原因は、加熱不十分で調理後の長時間常温放置?うん、それは確かです。
でも、じゃあ煮込んで焼き上げて作るグラタンが、いやいくら再加熱の調理だったとして、63℃3分も満たせない加熱不十分でこれだけの規模のサルモネラ食中毒を起こす危険性ってどんくらいあるんですか、と聞きたい。

では他のメニューはどうか。
確かにサルモネラが野菜に付着していることはあります。
でも同様の理由で、きんぴらごぼうもないと思います。
窯の中で100℃以上で炙られればサルモネラだってひとたまりもない。
とにかくサルモネラ対策は、加熱の一択なのです。
まあでも加熱不足だった、ということも…ないよなあ。

となると、サラダが一番怪しいといえば、怪しい。
意外と野菜にもサルモネラは付着しているから、野菜の洗浄殺菌次第では残らなくもない。
ましてや多量に食中毒が発生しているとなると、サラダの撹拌などで汚染が広がる危険性も十分ありえます。
実際、愛知で起こったサルモネラの集団食中毒でも、マカロニサラダからの検出がなされました。

ただし。
一応触れておきますが、調理器具の洗浄不足によって汚染が広がる、ということもあります。
例えば生卵や生肉を使ったり触れた調理器具を温水で洗い損ねた、などの交差汚染です。
これらは上の情報からは全く見えないため、しっかり現場を精査してみないと表面上からはわからないことなので、何とも言えないところではありますが、しかし一応そういう可能性も捨てきれません。
というか、情報がないからわからないだけで、実はこういうケースは結構あったりします。

典型的なのが、これ。
2011年に北海道で起こった、1500人にもなるサルモネラ(SE)の大量食中毒。
近年のサルモネラの食中毒としてはかなり大規模なものだったため、究明調査が入りました。
その結果、この食中毒では、ブロッコリーからサルモネラが検出されました。

 

ではこの食中毒は、ブロッコリーの加熱不足だったのか?
違います。
ブロッコリーその他の野菜はいずれも95℃で湯がかれたので、問題はありませんでした。

しかしその後、茹でたブロッコリーやその他を撹拌させるための窯のシャフトが原因だったことが後から判明しました。
まず、このシャフトの温水洗浄が甘かった。しかも52℃の温水で流すだけだったことがわかります。
52℃ではサルモネラは死滅できません。

更にその後には、その調理中に付近で鶏の生肉を扱っていたことが、やがて確認されるようになります。
もし鶏の生肉を触った手でシャフトに触れたり、あるいは生肉をおいたところにシャフトが触れたら、確かに加熱しないサラダに菌は拡散されたことでしょう。

このように、集団での食中毒はメニューの食材を介して、ということもさることながら、器具や機械などの何かの交差汚染によって生じることが多いものです。
尤も、それはもはや現場でしかわからないことなので、我々の想像が及ばないケースが多いのです。

まとめ

今回は岐阜県の保育園でのサルモネラ食中毒について、お話をしました。
もう秋になったとはいえ、まだ食中毒の油断は出来ません。
これからも引き続き、ご注意を。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

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