夏、そしてとくに秋にかけて気をつけるべき、危険な虫というのがあります。
毒を持ったり、あるいは人を刺したりなど、やもすれば大きな被害や病気、最悪な場合は死にすら繋がりかねない。
そんな、秋の危ない虫について、前回、そして今回と、二部構成でお話させていただきます。
(今回はその後編となります)
改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

目 次
「吸血昆虫」と「有毒昆虫」
(こちらは二部構成の「後編」になりますので、もし以下の「前編」をお読みでなければそちらを最初に読んでいただくと理解がより深まります)
さて、夏から秋にかけて、危険な昆虫というのが存在する、というお話をいたしました。
しかもこれらは、やもすれば夏よりも秋のほうが危険度が高かったりします。
- スズメバチ
- アシナガバチ
- ムカデ
- マダニ
- ツツガムシ
- ヤマビル
- ブユ
- ドクガ・チャドクガ
- 蚊(ヤブカ、イエカ)
- カミキリモドキ
例えば、繁殖の時期だったり、暑すぎる夏より活発になったり。
あるいは発育ステージ上の関係だったり、人間側の都合などなど、いずれにせよ夏よりも秋に寧ろ問題が多く起こりうる、あるいは夏とほぼ同様に秋にも問題が起こりやすい、そんな秋に危険な虫がこれらです。
そして、それをもう少し区分したのがこちらです。
- 吸血昆虫:血を吸う虫(疫病の媒介、出血やかゆみなど)
- 有毒昆虫:毒のある虫(刺咬による痛みや腫れ、皮膚炎、アレルギーなど)

では、それらにどのような虫が含まれるのか。
またそれらに刺されたり触れたり噛まれたりすると、どのようになってしまうのか。
それに対処するにはどうすればいいのか。
それを後編では解説していくことにしましょう。

「吸血昆虫」とは
ではそれぞれ、どんな虫がいて、どのような害を与えるのかを追っていくとしましょう。
まずは「血を吸う虫」、「吸血昆虫」です。
カ

血を吸う虫にはどんなものがあるのでしょうか。
蚊、ネコノミ、トコジラミ、イエダニ、マダニ、ヤマビル、ブユなどがそれにあたります。
うち、なかでも蚊は代表的な「血を吸う虫」です。
日本に生息するほとんどの蚊は吸血性です。しかもその中には伝染病を媒介するものすらいます。
イエカ、ヤブカ、クロヤブカ、ハマダラカ。
これらが最も注意すべき蚊とされています。
蚊の種類によって住む環境や人の血を吸う時間などが異なります。
夜にぷーんと家の中に入ってきて刺された。それはイエカです。
また日中、茂みなどのそばで刺された。であればヤブカだと思っていいでしょう。
また蚊はデング熱などの病気をも運ぶ虫です。
歴史上、人間を最も殺してきた最大の虫が、蚊です。
実は日本でも昨年2019年に、デング熱の国内発生が2件、報じられています。
いずれも報告されたのは秋になってからです。
いや、正確には、1件は8月下旬の海外渡航が原因とされていますが、しかしもう1件が報告されたのは10月のことです。
ちなみに東京都内でも蚊の調査は行っていますが、現在のところ保有する蚊の発見には至っていません。
なお蚊については以前、たっぷりと3回に分けてお話をしたので、詳しくはそちらをご覧ください。
マダニ
山などにハイキングやキャンプなどに行って刺されることがあるのが、マダニです。
家屋害虫として知られるイエダニに対し、マダニは草むらや公園などの野外に住む吸血昆虫です。
マダニは地上1メートルくらいの植物にこっそり隠れて待ち伏せし、人に付着します。
そして肌の比較的柔らかなところを噛み付いて、そのまましっかりと口を刺して固め、吸血をはじめます。
マダニに刺されると最初はかゆみは少ないものの、皮膚に炎症を起こします。
そしてそれがやがてマダニが大きくなり、見つかる、なんてことが多くあります。
またよくあるのが、マダニを見つけて慌てて除去しようとした結果、マダニの口が皮膚内に残ってしまう、ということです。
マダニの口は構造上もさることながら、しっかりと人間の肌に食い込みやすいようになっており、結果的にそのようになりやすいのです。
すると細菌による二次汚染や、違う皮膚病に進みかねません。できるだけ最寄りの皮膚科や外科を受診し、除去してもらいましょう。
しかもマダニは、日本紅斑熱やライム病、ダニ媒介性脳炎、さらには重症熱性血小板減少症候群(SFTS)といった病気を媒介することでも知られています。
このうち、SFTSとは2011年にウイルス感染症として報告されたものです。
このウイルスを保有したマダニに噛まれると、6日から2週間程度で発熱および消化器症状が現れます。
しかもまだワクチンや治療法が確立されていないため、重症化した場合、死に至ることも少なくありません。
(勿論、全てのマダニが病原体を保有してはいませんので、噛まれた皆が感染症になるわけではありません)
ツツガムシ
森林や草むら、河川敷、すすきが生えているような荒れ地などで刺されるのが、ツツガムシです。
ツツガムシというのは、ダニの一種です。
ツツガムシは、昔から日本の風土病、「恙虫病(つつがむしびょう)」を起こすことで知られていました。
しかもこの恙虫病、昔は致死率が40%以上だったとも言われています。
その他、伊豆七島に伝わる「七島熱」、千葉に伝わる「二十日熱」、高知に伝わる「ほっぱん」。
それら、日本各地におこるとされていた原因不明の風土病もまた、ツツガムシによるものだったと判明されていきます。
そんなの昔の話でしょ?
もしかしたら、そう思うかもしれません。
ですが、そうでもないんです。
確かに昔の恙虫病の原因だったアカツツガムシは今では生息していないと言われています。
だから上のような病気は「古典型」となされています。
しかし。戦後それ以外のツツガムシによる「新型恙虫病」は今なお健在です。
しかも80年代以降、被害者は増えており、およそ数百人が毎年かかっている上、時折死亡報告もあがっていたりします。
しかもこれは晩秋が一番多くでている、というデータもあるのです。
ヤマビル

山の地域ではやったら問題になっている、そんな虫がいます。
ヤマビルです。
世間には余り知られていませんが、山の多い地域のホームセンターでは、このヤマビル用の駆除剤がメチャクチャ売れまくっており、専門コーナーすら置く店もあるほどだったりします。
ヤマビルは、普段は落葉の下、あるいは樹木などに潜伏しているのですが、動物や人間が来ると活動し、吸血するためにまとわりついてきます。
この際、痛みはそれほど感じないことも多いのですが、厄介なことに一度吸血されるとなかなか出血が止まりません。
一旦止まっても再度出血したり、体質によっては長期の治療が必要になる場合すらあります。
そんなこともあって、山の多い地方ではヤマビル対策が重要となるのです。
なお、ヒルに吸血されると驚いて、無理やりに引っ剥がそうとしがちです。
しかしそうしてしまうと、一層傷口を広げてしまい、出血量が増えたりしかねませんので注意が必要です。
アブ

日本の吸血昆虫の中でも最も大型の虫がアブです。
アブにはヒメアブのように血を吸わないものと、吸うタイプがいます。
また最初は血を吸わないものの、やがて血を吸うようになるアブというのもいます。
ちなみに上の画像は、アカウシアブ。
ぱっと見た感じ、スズメバチにそっくりです。
これは敵に襲われないための擬態でしょう。ハチアブとも呼ばれます。
また益虫で知られるハナアブ、あるいはミズアブなどはしばしば混合されますが、分類上それらはイエバエのようなものに近く、これらとは別種です。
アブは主に川原や水田などに生息しています。
夏場から秋にかけ、レジャーなどで観光客が被害にあったりすることがあります。
アブに刺されるとかなりの痛みを伴います。
というのも、アブは顎で人の肌を傷つけ、流れる血を吸うという吸血の仕方をします。
そのため、出血、かゆみ、痛みが数週間続くことになります。
しかも大量に発生する場合もあるので注意が必要です。
なお、刺された場合、抗ヒスタミン含有のステロイド軟膏を塗布するのがよいでしょう。
ブユ
これもまたハエの仲間で、外観も割と似ていますが、こっちは人を刺します。
特にブユは朝と夕方に人を吸血すると言われています。
しかもブユに刺されると、アブほどではないにせよ、蚊とは比べ物にならないほどに腫れ上がり、痒くなるようです。
ぼくは刺されたことはないのですが、体質によっては水疱すら生じるとも言われています。
ちなみに、昔の農家が田畑仕事のときに使っていた手甲や脚絆、さらには馬の馬簾などは、元々ブユよけ、アブよけだったともされています。
「毒のある虫」とは
一方、毒を持っている虫とはどんなものがあるでしょうか。
スズメバチ・アシナガバチ

秋に獰猛になる、凶暴なハチ。
それがスズメバチです。
春、越冬したスズメバチの女王バチは、単独で巣を作ります。
やがて働きバチを10匹以上程度育て、産卵に向かいます。
一方、働きバチは初夏に成虫となり、ここからどんどんと活動が活発化していきます。
巣もどんどん大きくなり、数も増えます。
こうして最も数が多くなり、活動が活発化し、新たな女王蜂の誕生や繁殖の時期を迎えるのが、この秋です。
実はそれまではさほど攻撃的でなかったスズメバチですが、この頃になると巣を外的から守るため、周囲をパトロールするものが現れ、刺激を与えれば即反撃しかかってくるようになります。
だから秋はスズメバチの被害が最も多いのです。
一方、アシナガバチもほぼ同様です。
最初女王バチが巣を作り、働きバチを育てはじめます。
この間の攻撃性はあまりないのですが、しかし夏から秋にかけたあたりに最も攻撃性が、つまりは巣を守る習性が高まっていくようです。
なお、これらのハチに刺されると激しい痛みや腫れが生じます。
またそれどころか、アレルギーをもっているとアナフィラキシーショックをおこすこともあります。
危険なのは2回目以降であり、場合によっては死ぬことすらあるほどだったりします。

ムカデ

ムカデは、漢字で書くと「百足」ですが(「蜈蚣」もあります)、英語で言っても「centipede」(百の足)です。
ムカデは森林の落葉の下や土中にいる、土壌由来の虫です。
しかし時折、夜間に餌を求めて民家の中などにも侵入し、現れます。
昔の話ですが、ぼくが子供の頃、自宅の2階で寝ていた祖母が深夜、鼻をムカデに噛まれて大騒ぎになったことがありました。
あの当時ですから、窓を空けて夏、寝ていたのかもしれませんが、恐らくは民家の壁をよじ登って2階にまで侵入してきたのでしょう。
そして、ムカデに噛まれると激しい痛みに襲われます。
祖母もすぐに病院に運ばれ、その後、数日の発熱に至りました。
というのもムカデの顎には、毒があります。
ハチの毒と似たセロトニン、ヒスタミンなどの毒素があり、やもすればハチ同様、アナフィラキシーショックを起こす危険もあります。
ドクガ・チャドクガ
ガのなかには、触れることで人に害を与えるものがいます。
それが、ドクガやチャドクガ、モンシロドクガ、キドクガです。
これらのガは毒針毛を持っており、それに触れると皮膚炎を起こします。
また幼虫も同様に毒針を持っています。
これらに触れると、最初のうちは痛みはないのですが、しばらくするとやがて強いかゆみととともに紅斑が現れ、じんましんに発展し、それが数週間続くことになります。
チャドクガは年に2回卵から孵化します。
それが初夏と、秋です。
つまり秋は毒針を持った幼虫と、初夏に生まれて育った毒針を持った成虫の2つが生息していることになります。
そのため、この時期にこれらにふれると激痛を覚えることになります。

まとめ
以上、秋に注意すべき虫たちと、その生態や被害状況などについてお話いたしました。
いずれにせよ、こうした虫についてはしっかりとした知識に加えて、血を吸わせない、近づかないといった対策が必要になります。
- 「血を吸わせない」:長袖の着用、首タオルの着用、虫よけ剤の使用など
- 「近づかない」:ハチの巣から遠ざかる、むやみに触らない
秋のレジャーには、このようなことに注意して楽しむとよいかと思います。
以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

・どうやって防虫管理・衛生管理をすればいいか判らない
・今やっている防虫管理・衛生管理が正しいか判らない
・何か問題が発生したときの対応が判らない
・取引先や保健所の査察が不安だ
・でも余りコストもかけられない
だったら貴方が防虫・衛生管理のプロになればいいのです!
- 私達は、どんな工場、お店の方でも防虫管理・衛生管理のプロレベルに育成することが出来ます。
- 何故なら、防虫管理・衛生管理のプロとは、基礎知識に加えて「正しい管理の仕組み」を作れる能力を持つ者のことだからです。
この「管理の仕組み作り」を知るこそが、防虫管理・衛生管理のプロへの道なのです。 - そんな防虫管理・衛生管理のプロを育成し広めることで、日本の「食の安全安心」を、さらにより広く、より高くさせることが私たちの使命だと信じています
- どうですか?
そんな防虫管理・衛生管理のプロにあなたもなって、本当の「食の安全安心」を私達と一緒に広げていきませんか?
