最新の食品業界ニュースからピックアップし、食品衛生管理のプロの目線から分析・コメントさせていただきます。
今回の話題は、「なとり」のおつまみがカビの原因で自主回収になったという件について、食品衛生の専門家が「なとり」のおつまみを実際に買って一杯やりながら、前回、そして今回と、二部構成でお話させていただきます。
(今回はその後編となります)

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

なお、今回のニュースはこちらになります。

本日の時事食品ニュース

 


なとり

なとりのおつまみがカビ懸念で回収

(こちらは二部構成の「後編」になりますので、もしこちらから来られた方は、まずは前回を最初に読んでください。)

 

ということで、後編です。
お酒のおつまみ、乾き物で知られる「なとり」さんの商品が、脱酸素剤の不具合でカビの危険があるとされ、自主回収となりました。
以下、ニュースサイトから引用します。

商品に使用している三菱ガス化学(株)製造の一部の脱酸素剤において不具合があり、該当する脱酸素剤を使用している商品にカビや変質が発生する可能性があることが判明したため、自主回収する。現在まで健康被害の申し出はない。


なとり

今回の問題は、商品の中の脱酸素剤、三菱ガスさんの「エージレス」に問題があった、ということが判明しています。
つまり、商品の包装内で脱酸素剤がうまく機能せず、その結果、包装内の酸素が残ってしまうため、カビが発育してしまう可能性がある、ということです。

脱酸素剤というものについて、そしてそもそもどうして商品の包装内の酸素をなくさなければいけないのか、については前編にてお話させていただいた次第です。

ここ後編ではその続き、脱酸素剤とカビとの関わりあいについてお話していくとしましょう。
おっと、今回はお話がおつまみですので、こちらもお酒をグビりながら進めています。
まずはご了承ください、てことで、んじゃ改めて仕切り直しを。

では再度、乾杯ー!

一発勝負の脱酸素剤

ぷはー…と、さて。
どこから行こうか、とそのまえにまずは少しだけ、おさらいです。
カビを防ぐのに、その生育要因である「水分」も「栄養」も「温度」も管理するのが難しい。
そこで残る最後の一手、「酸素」を使う。
これによって、カビの胞子をなくすことはできないけれど、でも活動停止状態にさせ、育成させないようには、することはできる。

そこで、この「脱酸素剤」なのだ、というお話でした。

しかし、ここで一つ、注意が必要です。
というのも、脱酸素剤の効き目には限りがある、ということです。

先にも触れたように、脱酸素剤というのは鉄の酸化を利用し、その周囲の酸素を吸収するためのものです。
食品の包装内に脱酸素剤を入れる。
すると脱酸素剤は包装内の酸素を吸収します。これによって包装内の酸素がなくなり、カビの胞子は活動を停止します。
以上、これで脱酸素剤の役目は終わりです。
ずーっと効果を発揮し続けているようなものではありません。

つまり、脱酸素剤によって酸素がない状況というのは、その包装がしっかり密閉されており、以後、外から酸素が入りこまない、というのが必要条件だ、ということです。
しかしこれが実は意外と難しい。

例えば、その包装に小さな穴が開いてしまうとどうなるか。
そこから酸素が入ってしまいます。そして、それらを脱酸素剤が吸収し続けることは出来ません。
その脱酸素剤の限界量を超えた酸素は、当然ですが吸収できません。
結果、食品に付着しているカビの胞子はまた活動を再開させ、発芽します。
つまり、食品にカビが生える、という状況が生じてしまうのです。

包装された食品にカビがはえる、ということ

ということは、商品の包装に何らかのかたちで少しでも穴や隙間が空いてしまったら、脱酸素剤の効果はなくなり、商品はカビてしまう。
そう、その通りです。
そして、実はこういうケースは結構あります。
あなたが想像している以上に、結構あります。

というか正直な話、工場であるロット数の商品を作り、それを包装し、そこに脱酸素剤を入れると、それなりの割合程度に、こうしたことが生じるものです。

例えばこういうニュースもありました。
無限のネット界の中でもこの手の回収騒動にここまで細かく書いているところはウチ以外に余り見ないので、結構面白いかと思います。

 

他にも、商品にカビが生えた、なんてケースはままあります。
しかもこれを書いている今(2020年9月2日現在)、セブン&アイグループで販売した「セブンカフェ ふわふわバウムクーヘン」「セブンプレミアム ゴールド 金のしっとりバウムクーヘン」の二種がカビ発生の危険があるため、自主回収が報じられたばかりです。

セブン&アイ・ホールディングスは1日、グループの店で販売したバウムクーヘン2種類、計約174万個を自主回収すると発表した。
一部の商品にカビが生えていた。健康被害の申し出はないという。

 

詳細は全く書かれてませんが、恐らくこれも包装工程上のミスだと思います。
対象の製品数は、174万個。
これまた結構な規模ですね。
これら全てが回収されることは当然ありませんが、しかし資材を購入し、機械と人を使って製造し、物流コストをかけて市場に出回らせたものを再度買い集め、本来は売れていたはずの174万個の売上がパーになる上、消費者には500円程度のクオカードを大量に送付しないといけません。
メーカーの大損害たるや推して知るべし、といったところでしょう。

勿論、回収した食品は全て廃棄です。
当たり前ですが、何も知らない人が勝手に言うように「そんなものを安く売ろう」なんてことは絶対に、絶対に、絶対に!ありえません。
それでカビが生え、食中毒になった、なんて言われたら(まずほぼないでしょうが)メーカーはそれこそ泣きっ面に蜂、さらなる大きな痛手を受けるからです。

いや、実はこうやって報じられるケースは、実は氷山のほんの一角中の一角です。
ここではまた横道に逸れてしまうので余り語りませんが、それくらい、起こりうる話なのです。

エージレス側の不具合!?

包装工程をしくじって、あるいは物流段階にちょっと危ういことをして、包装商品にカビが生えてしまった。
こんな話は、正直、珍しい話ではありません。

でも今回のなとりの回収騒動で面白いのは(と言ってしまうのもちょっと不謹慎かもですが)、エージレス側の不具合だということです。

そう、
この手のカビ騒動は、普通はほぼほぼ包装工程の失敗ってのがお決まりです。
包装時の圧着(ヒートシール)を失敗した。
こういうのが多いです。

食品の包装は色々と種類がありますが、その多くは包装資材をくるっとまるめて食品を覆い、その端を高温で圧着(ヒートシール)し、カットする、というのが一般的です。
しかしこの圧着というのが、ぼくはその専門ではないので詳しくまでは知らないのですが、意外と奥深いのだという。

ヒートシールの温度は、包装資材によって変わりますし、それこそその部屋の温度や湿度、場合によっては気候や天気でも変わるとすら言われています。
だからその微調整が、難しい、という。
いずれにせよ、圧着温度が高すぎてももろくなり、弱すぎても破れてしまう。
なので、この資材にはこの温度でこのくらいに、というその調整が難しい、という。

そもそも食品包装は、ただ単に密閉度が高くて強度が高ければいいというものではないようです。
あまりにも強度が高いと、今度は消費者から「開けづらい」と嫌厭されてしまう。
だから「開けやすく、かつ密閉度が高い」という相反するニーズを満たさなければいけなくなります。

また仮にヒートシールが適切だったとしても、その後の工程や、あるいはさらには物流や陳列時のちょっとした刺激にもさらされます。
例えば、ピンホール。
包装資材に小さな穴が開いてしまう、そんなこともあります。

製造され包装された後に、運ばれたり並ばれたり買われたり保存されたり、という中で、その食品が開封するまで包装資材は様々な衝撃を受けることになります。
包装された中で、商品が揺れ、包材と何度も何度も何度も、ぶつかる。
商品ならまだしも、そこに敷かれた硬い紙や樹脂の受け皿だったりが、包材と何度も何度もぶつかる。こすれ合う。
あるいは、他の商品とすれあう。
このようなことが、作られて以降、消費者がそれを開封するまで何百回となく繰り返されます。
こうした中で、摩擦や衝撃から包装にほんの小さな穴が開いてしまう。
そんなことだってあるでしょう。
すると、そこから酸素が入りこみ、商品にカビが発生してしまいます。
こういうことは別段珍しくはない話です。

でも、なとりの今回の話は、そうじゃない。
エージレス、脱酸素剤がその機能を発揮できない危険性がある、そこで製品回収をするのだということ。
これは比較的珍しいケースです。

回収しているのが「なとり」分のエージレスだけなので、恐らくはあるロットにのみ、製造上の問題が生じたのでしょう。
残念ながら、ぼくは衛生管理にかかわる食品製造においてはこのように専門家ですが、しかしエージレスの製造自体をよく知りません。
よって今回、エージレスにどんな問題が起きたのかはわかりません。
ですが、このように食品製造ではなくエージレス側に原因がある、ということもあるのだ、という興味深い話ではありました。

なとりのおつまみ食べ比べ

さあ、お話も程よくまとまったところで。
そろそろ、お硬いお話はそのへんにして、なとりのおつまみで晩酌していくとしましょうか。

実際に買ってきたなとりのおつまみ。
乾きものメーカーとして知られる、なとりさんの商品を、スーパーに行って買ってきました。
今回は、自主回収や脱酸素剤のお話に加えて、これらを実際に実食していきたいと思います。

一度は食べていただきたいおいしいサラミ

さあ、一人で、なとり。
どんどん開封していってみましょう。

まずは、一度は食べていただきたいおいしいサラミ、ってことで、一度目ですがいただかせて頂きます。

 

見て、この輝かしい、ゴージャスな黄金色。
なとりのこの「一度は食べていただきたい」シリーズは、なんでも最高品質の素材を使ったなとり商品の中でもゴールドタイプと呼ばれるもの。

 

あれだ、言うてみれば、乾きもの界のゴールドセイント。
黄金聖闘士です。
そこらのブロンズつまみとは、ワケが違います。
今回のこのサラミに、次のチー鱈、そして更にもし同シリーズのあたりめが並んでいたら、そりゃもうアテナエクスクラメーションですよ。つまみ界のビッグバンですよ。
え、知らない?それは失礼。
んじゃご開封。

 

おお、乾燥しきらないようになのか、小袋に入れてあります。
中の小袋もピローではなく所謂、三方シールタイプ。
そしてその中にエージレスが入っている。

では小袋もご開封。
いただきまーす。

うん、
肉厚のサラミは歯ごたえが強めな一方、スパイシーさやニンニクなどもどちらかといえば、かなりマイルド。
黒胡椒とニンニク臭が強い安めなサラミに比べると、ナツメグなどの他の複合的なスパイスの香りがのぼる。
解説を読むと、13種のスパイスでデンマーク産ポークを味付けしたのがこだわりのご様子とか。

うーむ、これはビールに合わせたい。
もう一本、プシュっちゃおう。

と。
そう、楽しく食べているとふと手が熱い。
いや、サラミを袋から取ろうとした指先に、熱を感じた。
触れたものから明らかに熱を感じた。
一瞬、熱っ!てなった。

そう、エージレス。
つまり、開封して酸素が入りこんだので、それを吸ってエージレスが酸化した。だから熱が高まったのです。
先にも書いたように、エージレスというのは、鉄の酸化を利用して酸素を吸収します。そしてこの袋の中の酸素をなくすのが、エージレスの役目です。
で、エージレスは、酸化するとき、熱が高まるんです。
それが今、開封のときに起こった。
エージレス、あるある。
ときどきある現象です。
大丈夫、別にやけどをするほどでも、ましてや包装資材を熔解するほどでもありません。
あくまで軽めに驚くレベルです。

一度は食べていただきたい熟成チーズ鱈

さて、次は、同シリーズのチー鱈いきましょう。

 

なとりといったら、チー鱈。チー鱈といったら、なとり。
なとりの看板商品といえば、チー鱈でしょう。

その中でもこれは、その中でも割と高級なランクに入りそうな、そんなラグジュアリーなチー鱈です。

だってチー鱈つったら100円感あるやないですか。
でもこれはもうちょっとお高め。
熟成チェダーを60%以上使用したものです。
それだけでこの高級感。
お安く見ないでよね!そんな伝わるハイソ感。まさにリッチー鱈。

では開封。
そして、これも2袋が入っている。
サラミのときにも思ったけれど、この2袋ってのはええですね。
「今日はこの辺にしとこっかな」って止まれる。

 

さてこのチー鱈。
鱈自体は普通のものと、そんなに変わらない。
でもチーズが美味い。
濃厚で柔らか。ちょっと贅沢なチー鱈だ。
チーズが分厚くて多めなのも嬉しい。
ビールにもよく合う。

そこで今度は、秋味をプシュ。
うまいよねえ、コクがあって秋味は。

その他もつまんでみた

さあ、だんだん楽しくなってきたぞ。
んじゃ次は「いかなんこつ」いってみよう。

 

うーん、
これは悪くはないけれど、個人的にはちょっと酢が強いかな。

ついでにうちにあった、なとりの茎わかめも。
これ、いい。
クニクニとした歯ごたえも楽しいし、なんつっても、食べたいだけ食べてもたかが知れているローカロリーなヘルシーさが嬉しいよね。

うん、ビールも進むなあ。
暑いせいもあって、ガブガブいける。
いんだよ、休日なんだから。
全然いい。ありあり。あと次はハイボールいこかー。

…とまあ、そんなこんなで、高薙事務所のひとりなとりナイトはふけていくのでした…。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

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