自然界の天然毒の中で一番高い毒性をもっているもの、それは何だかご存知ですか?
それが「アフラトキシン」、つまりカビが作り出す毒のことです。
ではそんな「カビが作る最強の毒」について、前回、そして今回と、二部構成でお話させていただきます。
(今回はその後編となります)
後編の今回は、そのアフラトキシンの規制はどうなっているのか、についてです。
そして衝撃(?)の事実を。
ええーっ!?輸入食品におけるアフラトキシン汚染の検出最多国は、意外にも「あの国」だったー!?

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
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アフラトキシンの国際規制

(こちらは二部構成の「後編」になりますので、もし以下の「前編」をお読みでなければそちらを最初に読んでいただくと理解がより深まります)

 

さて。
前回、今回と二回に分けて、カビの作る自然界最強の発がん物質「アフラトキシン」について、お話していきます。

前回も書いたようにアフラトキシンというのは、主に「アスペルギルス・フラバス」というコウジカビの一種が作りだす、強力な毒性を備えた発がん性の毒です。
アフラトキシンの脅威の始まりは、かつて何万匹もの七面鳥を大量死させたことでした。
このように急性毒性でもある一方、しかし少量でも継続して長期にわたって摂取すると発がん性を発揮する毒でもあります。

そんな自然界一の天然毒、アフラトキシン。
なかでも、幾多あるともされる(16種な)アフラトキシン界の中でも最強を極めし、アフラトキシンB1、B2、G1、G2。
彼らはアフラトキ四天王と称され人々に畏怖されており、うち「B1」においてはもはや「アフラトキ神」とすら呼ばれる最強覇者なのだとかそうじゃないのだとか…。

(注:嘘です)

…と、ここまでが前回の話。
今回の話のメインは、ここからになります。

このようにヤバいカビ毒は、当然ながら各国で国際的な規制対象となっています。
アフラトキシンもさることながら、幾つかのカビ毒がその対象とされています。
「パツリン」や「デオキニシバレノール」などがそうです。

 

例えば、脳や肺浮腫、あるいは消化器障害などを引き起こすと言われている「バツリン」というマイコトキシンは、果物、とくにリンゴやりんごジュースから出るものです。

例えば、リンゴが熟して落下します。
で、その際にその傷んだ箇所や虫食い箇所から、土壌にいるアオカビの一種であり果実を腐らせるカビである「ペニシリウム・エクスパンサム」が生えて、その際に「パツリン」を作ったりします。
傷んだリンゴはそのまま販売が難しいため、ジュースなどの加工食品に回されがちです。
そして前回も話をした通り、カビ毒は熱によってなくなることはありません。
そこでリンゴジュースからの検出がされることがある、というわけです。

おっと、話をアフラトキシンに戻しましょう。

当然ながらアフラトキシンについては、各国厳しい規制を取っているところばかりです。
日本でも国際規制の流れを受け、今では食品全般に対し、「総アフラトキシン10ppb」という規制値が設けられています。
ちなみにこの「総アフラトキシン」というのは、アフラトキシン内でも重要なB1、B2、G1、G2の合計です。

実は2011年まで、日本の規制値は、かの「アフラトキ神」こと(おい)「アフラトキシンB1」のみを規制していました。
というのも「アスペルギルス・フラバス」が作るのはアフラトキシンB1とB2のみだと思われていたからです。
んじゃ最強毒性のB1を規制すればいんじゃない?となっていたわけです。

これは長らくずっと続けていたため、今でもやもすればアフラトキシンB1のみの規制をしていると思っている人もいるかもしれません。
しかし近年になって国際的な流れを受け、またそれ以外のアフラトキシンG1、G2などを作るカビによる汚染件数が増加してきたということもあって、規制が強化されるようになったのです。

またここにはありませんが、牛乳におけるアフラトキシンM1についても近年、規制の対象と定められるようになりました。(0.5ppb)

三笠フーズの事故米転売事件

さて、今から遡ること12年ほど前のこと。
2008年、9月上旬。
ここ日本でも、国内最大ともいえるアフラトキシンの騒動が発生します。

当時、日本の農水省が、ベトナムからの輸入米からアフラトキシンが検出され、しかもそれがすでに市場に出回っている、といったむねを発表しました。
つまり、この自然界最強毒であるアフラトキシンに汚染された米が、すでに日本国内の市場に出回っている、と政府が発表したのです。
しかもこれらはすでにアサヒビールなどで焼酎に使われてしまっており、もう誰かが飲んでしまった可能性も否定できない、となった。

当然ながらこれは当時、かなり話題になりました。
いわゆる「事故米不正転売事件」、ライスロンダリング、米の偽装転用、というやつです。
アフラトキシンのみならず、残留農薬検出もあったため(あの当時は、世間一般にはこのアフラトキシンの説明が難しいため、こっちのほうがメディアによく出ていた記憶があるんですが)「汚染米」などとも言われて大きく騒がれたので、覚えている方も多いことでしょう。

「事故米」というのは、カビ、あるいはその他の理由によって食用に適さないお米を「非食用米」として、工業用や建設資材などの食用以外の使用目的のために安値で販売されているものです。
これを当時、大阪の「三笠フーズ株式会社」が安く購入し、わかっていながら食用に転売していたのです。

結果、ここから出た事故米が様々なものとして加工され、様々なかたちで市場に出回りました。
先に言ったように焼酎を作るさいの米麹だったり、お菓子の米粉、更には子供たちや病院の給食、コンビニのおにぎりなどに使われるなど、把握が現実的に不可能な状況となったのです。

回収で数億もかけざるをえなくなった取引業者。
二重帳簿や、複雑な取引過程などを駆使しての、悪意に満ちた明らかな故意。
叩き値の安価な米を、高値で不法販売していたこと。
あまりにずさんだった行政のザルザルな監査体制。
そして、何より消費者の食に対する不安の高まり、などなど…。

どれもこれもがマスコミにとってヨダレじゅるじゅるなネタであったため、あのころはかなり大きく取り上げられていたことを思い出します。

アフラトキシンの検査はどうなっているか

ただし、収去検査などでのアフラトキシンの検出は、国内産製品からはほとんど検出されていません。
まあゼロではないですが、かなり少量に限られています。
なので、国内製品においてそれを心配することはそれほどないでしょう。

また前回も書きましたが、日本の土壌中のカビを検査した結果、アフラトキシンを作る「アスペルギルス・フラバス」や「アスペルギルス・パラシティカス」はあまり分布していないことが確認されています。
むしろ、検出されるのは、そのほとんどが輸入食品、輸入食材からです。

では日本では、輸入食品についてのアフラトキシンの検査をどのように行って、どんな結果となっているのでしょうか。
日本への輸入食品の検査を行っているのは、厚生労働省の検疫所です。
ここで、多くの輸入食品に対して、相応の検査が行われているのです。

そもそも、アフラトキシンは輸入農産物への汚染が懸念されています。
例えば、ピ-ナッツやピスタチオ、アーモンド、落花生などのナッツ類、トウモロコシや小麦粉などの穀類やそれらの加工品。
ナツメグ、トウガラシなどの香辛料。
あるいは、汚染された農産物を食べた牛の乳から作ったナチュラルチーズなど。
ここらへんが、アフラトキシン汚染の要チェック対象でしょう。

別に詳しく解説する予定なのですが、検疫所では日々、輸入食品への検査が行われています。
危険性の低い一般の食品については、「モニタリング検査」が、そして危険性の高いと思われる輸入食品には「検査命令」が出されます。
現在、アフラトキシンについては、全輸出国に対し、ナッツ類や落花生、チリペッパー、スパイスなどについての検査を「検査命令」対象として指定しています。
またその他、国や輸入品目を指定してアフラトキシンの検査を行っていることもあります。
例えば、中国には蓮やひまわりの種子について、イタリアにはアーモンド加工品について、といったようにです。

そして、実は毎日、とまではいかずともかなりな頻度で、検疫によって若干数の輸入品が引っかかっては廃棄処分が命じられています。
てゆーか、実を言うとアフラトキシン検出もまた結構な頻度で、何がしかの輸入食品が引っかかっています。

ではその実態はどうなっているでしょうか。

実はAFT検出最多国は、あの国だった!?

ほぼ毎日、とはいいませんが、輸入食品ではかなりな頻度で何かしらの違反が発見されることがあります。
そしてそのうち、アフラトキシンの検出もそこには散見されています。

別に危機感を煽るつもりもカケラもないですし、日本の総輸入量からすればほんのごくごく僅かでしかないのでしょうが、しかしそれでも割とちょいちょい引っかかっているのは事実です。
行政によって公開がしっかりなされているので、見てみればすぐ判ります。

ほうらみろ、やっぱり中国産だ!

食の安全への不安症やネトウヨ気質の人は、そう穿って見たくなるかもしれません。
週刊誌もこうした人達の俗情を煽り、そう思ってもらいたいので、果てしなくしょうもないゴミのようなクソ記事を書きたがります。

やれ、中国産の落花生が危ない。
やれ、中国産の香辛料が危ない。
「その違反事例の42件中、最多の10件がアフラトキシンだあああ!」

はいはい、そうですか。

で、専門家いわく、「アフラトキシンは、カビ毒であり、急性肝臓障害や発がん性が指摘されている。
特に発がん性に関しては研究機関のリスク評価でも、最も高い危険性のグループに分類された。
しかもやっかいにも、高温で加熱調理しても毒性は消えません」とくる。

うん、そう。まさにそのとおりです。
前回の記事にもぼくも、そう書きました。間違いないです。

いや、それはそうなんですが、んじゃ中国からの輸入品が本当に多いのか。

確かに少ないほうではありません。
ですが、一番じゃないです。
少なくともダントツに一番アフラトキシンで引っかかっている国というのが存在するのです。

そう、
その確かに自然界きっての最強毒である「アフラトキシン」が、よく検出されて引っかかる輸出国。
それは、意外にもアメリカだったりします。

どこぞのしょうもないWEB記事で「この2020年に10件も中国産輸入食品からアフラトキシンが検出された」と書いていましたが、現8月段階でアメリカ輸入食品からのアフラトキシン検出は30件を超えています。
これ、別に今年だけじゃないです。

 

現在、厚生労働省から公式発表されている最新データは平成30年のものです。
これを実際に見てみましょう。
中国からの輸入品でのアフラトキシン違反は、落花生やチョコレートなどから検出された、年間28件。
それに対し、アメリカからの輸入品でのものでは、その3倍を超える88件です。

これは一体どうしてなのでしょうか。

米国輸入食品にアフラトキシン汚染が多い理由

中国産が危ない!
そんなフワっとした危機感を刺激したい輩が、中国の輸入食品からこんなにアフラトキシンが検出されている、と吹聴している。

何より厄介なのは、こういう輩の話がまるっきりのウソではないことだったりする。
中国産の食品は、たしかにその程度は、アフラトキシン汚染が見られた。
これ自体はウソじゃない。
でもそれを恣意的な方向に、つまりは自分が煽りたい危機感の方向に向けて書いている。
こういうことは実際あちこちで見られることなので、気をつけて読むことが必要ですな。

…と、そんなことは置いておくとして。
輸入食品におけるアフラトキシン汚染率が一番多いのは、実はアメリカだ。
これは確かな事実です。

んじゃアメリカ産の輸入食品は危ないのか。
いや、そんな短絡的なことを言いたいわけでは決してありません。
ぼくはそもそも、そんなしょうもない危機感を煽る目的など全くありません。

ではどうしてアメリカからの輸入食品にアフラトキシン汚染が多いのか。
それはやはり純粋に、アメリカからの輸入食品にはアフラトキシンに汚染されやすいものが多い、ということかと思います。
トウモロコシやナッツ、アーモンド。
こうしたものを多量に輸入しているために、自ずとそういう結果になってしまうのではないでしょうか。

ちなみに平成30年データを見ると、アフラトキシンの検査命令対象(「こりゃ危なそうだからしっかり検査しとけ」、と検疫があたったもの)となったアメリカ産食品の検査件数は、3,325件。
これに対し、中国産食品は54件です。
つまりそれだけアメリカからの輸入食品は多く、そしてアフラトキシンに汚染されやすいものが多い、ということになります。

ではどんなものが多いのか。
厚生労働省は、そのアメリカ産の検査対象食品として、乾燥なつめやし、トウモロコシ、ビスタチオナッツなどをあげています。
要はこういう農作物を、日本はアメリカからの輸入に多く頼っている、ということでしょう。

まとめ

日本のアフラトキシンの規制値は、「総アフラトキシン10ppb」
つまり輸入食品からこれを超えるアフラトキシンが検出されると、ただちに廃棄対象となります。

そしてそれらは常に検疫所で検査されており(モニタリング検査)、なかには「ここの国の、この食品は要注意だからしっかり検査しろ」というものもあります。(検査命令)

そうしたなかで、輸入食品のアフラトキシン汚染が最も多く検出されている輸出国は、実は中国ではなくアメリカだったりします。
それは輸入食品の性質だったり、輸入量なども多分に関係しているものと推測されます。

ただし。
一応強調しておきますが、ぼくはあくまで食品衛生の専門家として、アフラトキシンの検出が一番多いのは中国ではなくて、ダントツでアメリカからの輸入品だ、という別に隠されてもなんでもない統計結果だけを、そして考えてみれば割とそりゃそうかもな、と思える事実を伝えているに過ぎません。
ですから、ぼくは別にここで「アメリカ産は危ない、食べてはいけない」などと言う気は毛頭ないです。
ましてやここで、やれアメリカの農作物は投機商品だから長期保管するしかなく、それでアフラトキシンに汚染されるのだ云々といったような、因果関係のわからないような眉唾インボー論をする気も全くありません。

実際、客観的に言ってアメリカ産の輸入食品はアフラトキシン汚染は他国より多いものの、その他の微生物汚染や規定違反はかなり低いものとなっています。
一方で、中国産の輸入食品について言うなら、そりゃ確かにアフラトキシン汚染件数はアメリカに比べてそれほどでもない数です。
しかし一方で、こっちはこっちで食中毒菌の汚染や農薬汚染など、他の国を大きく抜かすカずだったりします。
このように、やれ危ないだなんだと煽られる前に、何がどうなっているのか、自分でしっかりとデータや実態を見て判断することが重要でしょう。

…って、あれ?
今回の記事の落としどこって、そもそも、そこだったっけ!?

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