自然界の天然毒の中で一番高い毒性をもっているもの、それは何だかご存知ですか?
それが「アフラトキシン(AFT)」、つまりカビが作り出す毒のことです。
ではそんな「カビが作る最強の毒」について、今回、そして次回と、二部構成でお話させていただきます。
(今回はその前編となります)

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

人間と細菌との戦いにおける大きな一歩、ペニシリン

(こちらは二部構成の「前編」になりますので、もし「後編」から来られた方は、まずはこちらを最初に読んでください。)

1942年、アメリカはボストン。
とあるナイトクラブで大きな火災が発生しました。
死者、なんと500人。
さらには、数百人が大きな火傷を負うことになってしまいました。
この当時、大きな火傷というのは致命傷でした。
というのもやがて焼けた皮膚からの細菌感染により敗血症になるのを避けられず、亡くなってしまうような時代だったのです。
当時はまだそれに対する治療薬もなく、またその感染を防ぐのも非常に難しかったのです。

かくて数百名の命が運命にさらされていた、このとき。
ほぼ試験的ではありましたが、しかし。
ようやく工場での生産が始まった抗生物質、「ペニシリン」がここに導入され、多くの命を救うことになりました。
これこそが「ペニシリン」が世に出たいわばデビュー戦であり、そして人類史上長く続いてきた細菌との戦いの中で、人間が大きな勝利の一歩を進めた瞬間でした。
今からまだ80年たらず前のお話です。

そもそもこの「ペニシリン」というのは1920年代、イギリスの細菌学者、アレクサンダー・フレミング博士によって発見されたものでした。
博士は、実験中にアオカビの働きが病原菌の生育を抑えることを偶然にも発見。
しかしそれは最初、本当にただの「偶然」からの発見でした。
別の細菌を培養する培地に生えたアオカビ。それがたまたま、他の細菌の培養を抑えたのです。
普通なら直ちに排気していしまうそこに、フレミング博士は「待てよ?」と気づいたのです。
これは人類最大の気付きだった、といったら些か大げさでしょうか。

そして博士は研究を重ねます。
やがて届いたその抗生物質に対し、アオカビ属のペニシリウム・クリソゲヌムからその名をとって「ペニシリン」として博士は学会に発表します。
それがやがてはアメリカで500人以上の命を救い、またあるときには肺炎にかかったチャーチル首相の命を救い、その後何度も命を細菌から奪回していきます。

そう、人類の細菌との戦いの大きな一歩は、「カビ」によってもたらされたのです。


(アレクサンダー・フレミング博士)Wikipedia

自然界最強の発がん毒、アフラトキシン

そのようにカビは人間に大きな恩恵を与える一方で、様々な悪影響をも与えてきました。
例えば、水虫は最も身近なカビによる健康被害でしょう。
水虫、タムシ、シラクモ、インキンタムシ、爪水虫…。
これらはいずれもカビの一種である爪白癬、いわゆる水虫菌が皮膚感染することで発生する皮膚炎です。

その他、様々な肺炎、アレルギーを起こすことも、以前の記事で触れていますので詳しくはそちらを読んでみてください。

 

いずれにせよ、これらは皆、カビが体内に取り込まれたり、あるいは触れることで生じる問題です。
でも、ある種のカビについては、カビ自体が毒素を作る、そんなこともあるのです。
つまりカビ自体を取り込むことで病気になるのではなく、カビが作り出した毒を取り込むことで病気になる。
こういうことも起こり得る、ということです。

カビは育ち、増え、広がっていく間に、多くの化学物質を作り出し、カビの体内から外に出し分泌します。
その一つがカビ臭で、もう一つがこのようなカビ毒なのです。
しかもこれはかなり強力な毒だったりもするのです。

さて、
ここで先の話からもう少しだけ時間のネジを進めてみましょうか。
ぐるぐるぐるー。

 

先のペニシリンの華々しいデビューから20年近く後の話、今から60年ほど前の話。
1960年はイギリス、イングランド地方。
彼の地にて、わずか数ヶ月で10万羽以上もの七面鳥のひな鳥が、多量に死んでいくという、なんとも不気味な事件が発生したのです。

発生当初、その理由は全く解明されませんでした。
結果、この奇怪な病気に付いた名は、「七面鳥X病」
謎の「ターキーX(Turkey X disease)」と呼ばれ、人々に恐れられていたのです。

しかし、やがて調査分析をすすめる中。
その「ターキーX」の謎が、少しずつ解明されていきました。

まず、手がかりになったのは、「餌」です。
というのも死んだ七面鳥は、みなブラジル産のピーナッツ・ミールを飼料としたのです。
ということは、つまりこのピーナッツ・ミールを食べたこと、食中毒が死因だったのか。

「ピーナッツ・ミール」というのは、落花生から油を絞った、その後の脱脂カスです。
その残りカスを当時、家畜の餌にしていました。
これがどうも怪しい、となった。
そこで調べてみると、ここに毒素があることが判明しました。

そして。
ついに、これらの中毒死の原因が、「ターキーX」の正体が明かされるときがきます。
それはズバリ、「アフラトキシン」
つまり、ピーナッツに発生したコウジカビ属の「アスペルギルス・フラバス」というカビが作った毒素であったことが解明されたのです。

そう、
このカビ毒こそが、今回のお話のメインとなるカビ毒の中でも最も強い毒性を備えている、「アフラトキシン」にほかなりません。

そしてその後、この「アフラトキシン」は哺乳類、つまり人間においても高い毒性と、発がん性があることがわかったのです。
というのも、この「アフラトキシン」をラットに毎日少量(0.2マイクログラム)与える実験をした。
すると、なんと500日内に全ラットが肝臓ガンになるという、驚くべき結果となったのです。

これらのことによって「アフラトキシン(アフラトキシンB1)」は、自然界最強の発がん物質という座が確定し、同時に世界が結構ざわつきました。
というのも当時、割と多くのところでこのピーナッツミールが家畜の餌として使われていたからです。

では、家畜がそれを食べるとどうなるか。
わかりやすさ重視でやや乱暴めに書きますが、例えば、乳牛がアフラトキシン(B1)の付着した餌を食べるとします。
すると体内の肝臓内でそれがカビ毒、「アフラトキシン(M1)」となって、牛乳として外に出てきます。
つまり、牛乳がカビ毒で汚染されている、ということになるのです。
そしてこれはもう加熱では無毒化出来ません。
よってそれを加工すれば、カビ毒の残った粉ミルクやチーズが出来上がります。(下画像参照)

マジかよ、アフラトキシン、めっちゃやべーやん。
世界がざわつくのも分かる話です。


大阪安全基盤研究所

カビ毒(マイコトキシン)とは

さて。
その自然界最強毒アフラトキシンをも含めたカビの「二次代謝物」、つまりカビの様々な働きのなかで作られる毒のことを、総じて「カビ毒」、つまり「マイコトキシン」と呼びます。
マイコトキシンというのは、カビ毒をひっくるめた、いわば総称です。

現在、「マイコトキシン」として括られている毒素は300以上の種類がありますが、そのうち食品衛生上において問題になるものは約20種ほどと言われています。
その代表的なものといえば、先にあげた「アフラトキシン」の他、パツリン、デオキシニバレノール、オクラトキシン、ステリグマトシスチン、オキシニバレノールなどでしょうか。


東京顕微鏡院

なお、これらのマイコトキシンを作るカビは大概、畑の土壌に生息しています。
そこで収穫の際に、農作物を汚染します。
そしてそれらが出荷され、輸送、保管されている間、温湿度などの条件があった場合、増加し、そしてマイコトキシンを作ります。
だからマイコトキシンが問題になるケースは、その多くが保管状況が劣悪だった、例えば湿気が多くてカビが発育しやすい状況だった、なんてことが多くあります。

しかも一般的にこのマイコトキシンの多くは熱に強く、例えば煮たり茹でたり、炒めるなどといった加熱による調理を行ったとしても、完全に毒性がなくなりません。

事実、東京都福祉保健所も公に次のように伝えています。

ゆでた場合では、食品に50から80%のカビ毒が残り、ゆで水には10から15%ほどが検出されます。
この事からゆでることによってはカビ毒はほとんど分解しないことがわかります。
同じように、油で炒めたり、米を炊飯してもカビ毒はほとんど減りません。

 


東京都福祉保健局

この表を見れば、沸騰したお湯でそばを茹でたとしても84%以上が残っている、という結果となっているのがわかるでしょう。
更には都が出している別の検査データでは、ミートソースを100度で120分も煮込んでもアフラトキシンの90%が残存した上、チキンソテーを150度で20分加熱しても全く減ることはなかった(残存率100%)と結果報告をしています。

要するに、一旦マイコトキシンに汚染されたらもう現実的に除去ができない、ということです。
つまり、工場や店舗にそれが持ち込まれてしまえば、除去は現実不可能になります。
(まあ、ナッツなどは見かけの選別で多少ながらの選別は出来なくはないですが)
したがって、マイコトキシンの防止策というのは、これらが食品に含まれていないようにしなくてはならない、そういう資材を持ち込まない、使わない、ということになります。

で。
それらのカビ毒、「マイコトキシン」のなかでも最も強力な毒こそが、先からお話している「アフラトキシン」なのです。

アフラトキシンの種類

さあ、多量に摂取すればその場で急性中毒になり、そして長期的に摂取すればガンになる。
しかもそれを食べた家畜の乳も汚染されている。
熱にも恐ろしく強く、一度それに汚染されたら除去は不可能。

そんなかくも強力なカビの作る自然毒が、アフラトキシンです。

実はこのアフラトキシンにも、幾つか種類があります。
というのも全部で16種くらいあるのですが、中でもやばいものは以下の5つです。

代表的なアフラトキシン
  • アフラトキシンB1
  • アフラトキシンB2
  • アフラトキシンG1
  • アフラトキシンG2
  • アフラトキシンM1

 

ここらへんが、要注意アフラトキシンの代表格です。

ちなみにこのうち最後のM1というのは、先に挙げたように、アフラトキシンB1などを食べた牛などの家畜が、その肝臓で作られて牛乳として出ていくものです。
そのためB1などに比べると、若干発がん性などの毒素は低い(1/10程度)と言われています。勿論漫才の大会ではありません。
やつは五つの中では最弱、残る4つがよくアフラトキシンの話で言われます。
いわばB1、B2、G1、G2は、「アフラトキ四天王」です。(勝手に命名)

この「アフラトキ四天王」のなかでも、一番ヤバいのが「アフラトキシンB1」
そう、
今回のタイトルに書いた、「最強の発がん物質毒 AFT B1」。
こやつこそが、60年前のイギリスでは10万匹の七面鳥を急性中毒にし、また実験ではラットをすべて肝臓がんにしおったという、例の自然界最強の発がん物質にほかなりません。

このようにアフラトキシンB1は、多量に取れば急性中毒を、少しでも長期に渡って取れば肝臓障害をいずれも起こし、ガンにさせます。
つまり、同じ「アフラトキ四天王」だとしてもズバヌケた別格的存在、
例えるならスト2で言う四天王の、ベガ。あのレベルです。

 

実際、メチャクチャたまーにですが、アフラトキシンで人死にが出ます、しかも多量に。
例えば、1974年にはインドでアフラトキシンB1によって106名が死亡。
近年、といっても16年前になりますが、2004年にはケニアで大規模中毒が発生。
結果、125人が急性肝障害で死亡しました。
ちなみにこのときは、カビの発生しやすい悪質な環境で保管されていたトウモロコシがその原因でした。

アフラトキシンの大規模中毒事件というのは、このように滅多に起きませんし、ましてや現代先進国ではそうそう起こるものでもないのですが、しかし一回起きたらタチが悪い、そういうものです。

また先の通り、アフラトキシンは急性毒性のみならず、高い発がん性でも知られています。
その結果、世界保健機関(WHO)の一機関である「国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer)」(以下略称IARC)では、アフラトキシンを最も危険性の高いランクとして指定しているほどです。

 

勿論、このアフラトキシンを作るカビというのはある程度決まっています。
「アスペルギルス・フラバス」ってのが一番有名です。(下画像参照)
これは熱帯、あるいは亜熱帯にいるもので、これらの地域で作られる農産物がその汚染の可能性が考えられるところです。

なお、こうしたアフラトキシンの発見に対し、日本も他人事ではありませんでした。
何故なら、日本の食文化をこれまでずっと支えてきた醤油や味噌、酒などもまた同じコウジカビ属のものだったからです。
しかもその「アスペルギルス・フラバス」とよく似ているものだった。
しかし、日本のコウジカビはアフラトキシンを作らないことが判明。
いや、たしかにアフラトキシンを作る遺伝子は元来あったようなのですが、それがやがて発酵のためのものへと変わった、と言うのが現代の見解となっています。

なお現在、日本国内の土壌内のカビを調査した結果、日本にはアフラトキシンを作ることのできるカビはそれほど生息していないことがわかっています。
よって日本国内でアフラトキシン汚染が広がるような危険は、今のところ希薄だとされています。


(アスペルギルス・フラバス)東京都福祉保健局

まとめ

本日は自然界最強の発がん物質、アフラトキシンについて、まずはそのなんたるかについて話しました。

アフラトキシンとはカビが生成するカビ毒のなかでも、とくに毒性の強いものです。
それはしばしば「アスペルギルス・フラバス」というカビがもたらします。
このカビが作るカビ毒のなかでも、とくに「アフラトキシンB1」というのは、自然界で最も強い発がん物質と呼ばれているほどです。

ではこんなアフラトキシンをどのように規制しているのか、またどんな問題がこれまであったのか、などについて後編では探っていきたく思います。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

 

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