よく、ある種の虫に対して「害虫」という言い方がされます。
ですが、じゃあ「害虫って何?」と言われても、今ひとつ曖昧だったりするものです。
そこで今回はこの「害虫」について、どのようなものがあって、どう区分されているのかを詳しく追ってみたいと思います。
今回、そして次回と、二部構成でこれらについてお話させていただきます。
(今回はその前編となります)

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

そもそも「害虫」って何?

(こちらは二部構成の「前編」になりますので、もし「後編」から来られた方は、まずはこちらを最初に読んでください。)

さて、のっけから質問です。
そもそも「害虫」って何でしょうか。

 

え、「害虫」?
そりゃあ人間に有害な虫に決まっているだろ。
即座に、そう答える人が多いことでしょう。
実際、ウィキペディアにも、「人間(ヒト)や家畜・ペット・農産物・財産などにとって有害な作用をもたらす虫」だと書かれています。
広辞苑での「害虫」の扱いも、まあそんな似たようなもんです。

 

そもそも「害虫」とは、人間の立場から見たときの考え方です。
そして一重に「害」といっても、様々あります。
そしてどこまでがどう「害」であって、それはどう区分されるかということについては、実は余り知られていません。

人に健康的な害を与える。
病気を媒介する蚊もいますし、スズメバチのように強烈な痛みを与えるものもいます。
これは明らかに「害虫」といえるでしょう。
んじゃ、スズメバチは害虫だけど、ハチミツを作るミツバチは?
ミツバチだって人を刺しますよね。こっちは害虫ですか?

また同じ害虫でも、シロアリのように人に重要な家を食べてしまう。
あるいは、畑の作物を食い荒らすような虫は?
これも「害虫」かもしれませんが、先程とは少し意味が変わってきますよね。
では、花のみつを運ぶモンシロチョウは?
その幼虫は野菜を食べます。ですがそれがなくては、成虫にはなれません。
これも結構矛盾してません?

また、「害虫」の代表とえいば「ゴキブリ」。
でもゴキブリ自体は、そこまで病気の媒介となるわけではありません。
ではどうしてゴキブリが「害虫」とされるかといえば、「不潔なイメージがあるから」です。
あるいは、「心理的にキモい」からです。
だからゴキブリは「不快害虫」という括りに入っていることが多い。
でも「不快」ってのも、めっちゃ曖昧ですよね。
しかも害があるわけではないのに、不快だから害虫だという。
お前は不快だから害虫だ、ってよくよく考えてみると割と乱暴な考えじゃないですかね。

そもそもゴキブリという名は、江戸時代、ゴキブリが食器にかぶりついているように見えたことから「御器かぶり」と呼ばれたことが語源です。
つまり江戸時代からゴキブリは存在、認識されていた。
しかしそれが「害虫」に指定されたのは、戦後。
殺虫剤に対しての法律が明確化され、その中でやっと害虫であることが決定づけられた。
だから、それまで害虫ではなかったわけです。

いやそれどころか、ですよ。
かつて群馬県ではチャバネゴキブリのことを、「コガネムシ」と呼んでいた風習が残っています。
そう、あの「コガネムシは金持ちだ」っていうそれは、実はゴキブリのことだったのですよ!?
つまりこの社会では、「ゴキブリ」は害虫ではなく、裕福さの象徴だったということです。

このように、一重に害虫と言っても案外と大雑把だったりするのです。
そこで今回は「害虫」というものについて、改めて整理していきたいと思います。

「害虫」の定義は存在しない?

さて、結論から言うと。
実は「害虫」の定義、区分というものは、明確には存在しません。

いや、正確にいうと、後ほどに説明しますが、幾つかの虫については法律上「こいつらは害虫だ」と指定されているものがあります。
こういうものは、正しく「害虫」です。
実際にどう害があるかはさておき、法律という正当性で区分されているので、一応「これは害虫と公的に定められている」と言うことが出来ます。

しかしそれ以外は、「これがこういう害虫である」という揺るぎのない定義、区分などは存在しません。
だから各所でこの害虫について書く場合、結構なズレが存在します。
向こうではこう書いてあるが、こっちじゃこう言っている。
それは、先のとおり「害虫」というもの自体が生物学上の区分ではなく、ただ人間の都合で括っているのでその明確さが曖昧だからです。

だから冒頭のような問いが着ても、明確には答えることが出来ません。
強いて答えるなら、「決まっていない」です。
それぞれの昆虫が害虫かどうかという問いについても、「そうとも言える」としか答えようがないのです。

ただし、とはいえそれでも確かに「それらしいもの」は存在します。
よく使われ、確かにぼくらのようなプロからしても、納得のいくもの。
古くからそう考えられ、教わってきたもの。
その「それらしいもの」の中で、最も「それらしい」のが、このような考え方です。

「衛生害虫」と「経済害虫」

では、どんな害虫の考え方でしょうか。

まず、便宜上、防虫対策の観点から、害虫を大きく3つに区分します。
それが、「衛生害虫」「経済害虫」、そして「害獣」です。

害虫の区分
  • 衛生害虫:衛生的、心理的な害を人に与えるもの
  • 経済害虫:家屋、家具、食品、繊維、農作、産業などに経済的加害を与えるもの
  • 害獣:人に害を与える哺乳類、鳥類

 

まず「衛生害虫」とは、衛生的、あるいは心理的な害を人に与える虫です。
病気を媒介したり、あるいは人を刺したり吸血したり、といった健康被害を与えるような虫、それから悪臭や不潔さ、あるいはちょっとかわいそうな気もするのですが、精神的に「気持ち悪い」と思わせるものも、そこに入ります。

一方、「経済害虫」とは、家屋、家具、食品、繊維、農作などに経済的加害を与えるもの。
家を食べてしまうシロアリや、田畑の農産物を食べてしまう農業害虫と呼ばれるもの、そして食品衛生上問題となりやすい昆虫もここに入ります。

で、もう一つ。
ネズミだったり、ヘビやカラスなどといった、虫よりも大きい獣や鳥。
それらは、「害獣」です。
いやそれ害虫じゃねーじゃん、と思うかもでしょうが、英語で害虫というのは「Vermin」です。
この表現には、この害獣などもひとくくりにして含まれています。
そして、実際においても得てして一般的な防虫対策というなかには、これらの「害獣」についても含まれることが多いために、このように区分されているのです。
例えば、店舗などのネズミとゴキブリを駆除することを「鼠族昆虫類防除」なんて言ったりします。このように害虫と害獣の協会は割と駆除の現場においては地続きです。そこでこういう風にまとめられることが多いのです。
つまり「害虫=Vermin」とは、日本語にするなら「害虫獣」、もう少し専門的に言うなら「小型有害生物」といったところでしょうか。

ではこれらのうち、この前半では「衛生害虫」について、一つずつ解説していきます。

衛生害虫とは何か

「衛生害虫」とはなんでしょうか。
これも3つに区分されます。

衛生害虫とは
  • 媒介害虫(法規上指定された衛生害虫)
  • 有害害虫
  • 不快害虫

 

もう一度になりますが、衛生害虫というのは、「衛生的、あるいは心理的な害を人に与える虫」だという意味です。
ここには3種の害虫区分が存在します。
もう一回、先の表を見てください。
「媒介害虫」「有害害虫」「不快害虫」と、3つそこにあるのがわかります。

媒介害虫

媒介害虫というのは、疫病を媒介したりなど、社会的に重要な被害を与える虫の多くが含まれています。
で、要はそのために厚生労働省が薬機法(旧薬事法)で定めた虫のことです。
つまりは、日本の法律で公的に定められている「害虫」です。
そこで「衛生害虫」として書かれているのが、これらの虫たちです。

衛生害虫とは
  • ハエ
  • ゴキブリ
  • ノミ
  • トコジラミ(ナンキンムシ)
  • イエダニ
  • マダニ
  • シラミ
  • 屋内塵性ダニ類

 

薬機法というのは、正式名を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と、クソみたいに長い名前の法律の略称です。
これはその正式名の通り、日本国内の薬品の品質などについて取り決められている法律です。
ここで、「衛生害虫」として取り決められているのが、この虫たちです。
なんで、こんな法律で害虫が指定されているのかというと、要は「殺虫剤」です。
これらに使う薬剤は、「第2類医薬品」あるいは「防除用医薬部外品」ですよ、という殺虫剤の規定のために、挙げられているのです。
とはいえ、「法で害虫として定めている」のだから、これは正しく害虫といえるでしょう。

しばしば、これらの虫のみを「衛生害虫」とくくることもあります。
それは勿論、間違ってはいません。
というか、公的に「衛生害虫」とされているのは、この虫たちです。

有害害虫

疫病以外の健康的危害を与える危険な虫が、ここに加わります。
具体的には、次のような症状を人間に与えるものです。

有害害虫が与える健康的危害
  • 吸血:ブユ、アブ、ヌカカ、サシバエなど
  • 刺咬:ハチ、アリ、クモ、ムカデ、ヒルなど
  • 皮膚炎:ドクガ、アオバアリガタハネカクシなど
  • アレルギー:チリダニ、ユスリカ、ツメダニなど

 

これらは人間に危害を与える、非常に危険な昆虫です。
吸血する、あるいは人を刺す。
あるいは触れることで皮膚炎を起こす、など。
これらに関しては、近くまた別に詳しく記事を書きたいと思っています。

またアレルギーを起こす虫というのも存在します。
虫のアレルギーには、「吸引性アレルギー」「皮膚炎」「全身アレルギー」の3つがあります。

「吸引性アレルギー」というのは、昆虫やその死骸、抜け殻や糞などを吸い込んで起こるものです。
室内で起こるチリダニのアレルギーなどが有名ですね。
「皮膚炎」にはドクガなどのほか、チリダニによるアトピー性皮膚炎もその一つとされています。
全身アレルギーというのは、スズメバチによるアナフィラキシーショックが有名です。

不快害虫

特に具体的な害を人間に与えるわけでもない。
でも人が見て不快だという害虫。それが「不快害虫」です。

これって結構区分が難しいのですが、実際に一般になされている区分です。
虫なんてみんな不快じゃないか、と言われたらそこまでですが、一応「そういうこと」になっています。
近代化、都市化によって人間が自然から離れることによってこれが大きく進んでいるのが事実です。

不快害虫
  • 不潔感を与える害虫:ハエ、ゴキブリ、チョウバエ、ノミバエなど
  • 悪臭を与える害虫:カメムシなど
  • 視覚的不快感を与える害虫:ヤスデ、ゲジ、ダンゴムシなど
  • 集団で生息する害虫:ユスリカ、ダンゴムシ、ワラジムシ、テントウムシなど

 

まとめ

この前半では、「害虫」というものの定義について、まずは「衛生害虫」という区分についての解説を行いました。
この「衛生害虫」には、法律(薬機法)で指定されている害虫であり、疫病などを運ぶ「媒介害虫」、そして人間に健康的危害を咥える「有害害虫」、そして別段害はないもののただ純粋に気持ち悪いという「不快害虫」が含まれます。

ただし何度かの繰り返しになりますが、そもそも「害虫の区分」というのは曖昧なので、「これ」というものは世に存在しません。
これらはある程度使われている中で、「それらしい」というだけに過ぎません。
ただし、その数ある区分の中でも最も「それらしい」ので、知っておいて損のないものではあります。

一つだけ再度、強調しておくと。
「衛生害虫」という区分はあるのです。
それが法規上にかかれているこれらの虫です。

衛生害虫とは
  • ハエ
  • ゴキブリ
  • ノミ
  • トコジラミ(ナンキンムシ)
  • イエダニ
  • マダニ
  • シラミ
  • 屋内塵性ダニ類

 

これらは正しく、「衛生害虫」です。
ただし、現代ではその「衛生害虫」の幅が広がって、様々な害虫をそこに含んでいる、という意味です。
その含まれているものが、「有害害虫」や「不快害虫」だ、ということです。

では後半では、もう一つの害虫である「経済害虫」というものについて、それらがどのように害となるかに触れながら解説を進めていきたく思います。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

 

 

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