いよいよ夏本番!
しかし夏になると、色々といや~な虫も活動が本格化しますよね。
そこで、その「いや~な夏の虫」の代表格である「蚊」について、虫のプロが3回に渡ってお話しいたします。
3回目は、余り知られていないであろう、蚊の行政対策についてその実態をお話するとしましょう。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

蚊の行政対策はどうなっているのか

さあ、夏が始まりました!
日本の夏といえば、蚊の季節。
というわけで、前々回、前回、そして今回と三回にかけて「蚊」のお話をしていこうかと思います。

まず前々回、1回目は、「蚊」と人間、という大きな括りで見た「蚊」という存在について、書いてみました。
続いて前回、2回目は「蚊」の代表種を教えるとともに、防虫対策の専門家の目線から、「蚊」の駆除方法や刺されないための防御方法などについて書かせていただきました。

 

さて、3回目ともなる今回は、日本での行政は蚊にどのような対策をとっているのかについて書いていきたく思っています。

だって皆さん、蚊の対策を行政が、国や都道府県がどのように、そして何を行っているか、知ってます?
恐らくは、多くの皆さんが知りませんよね?
ですが、これまでからもわかるように蚊というのは最も疾病を運ぶ虫です。身近の害虫でありながら、しかし実はやもすれば、刺された、痒い、じゃすまなくなるのが蚊だということです。
でも、じゃあそれに対して行政が何をしてくれているのかというと、これが意外にも、というかほっとんど知られていない。
別に隠すような話でもないし、いやそれどころかこれ、もっと知られて然るべきことでしょう。
そこで、プロの防虫屋が実際にどのように行われているか、その実情や報告結果などを、皆さんにお伝えしようかと思います。

蚊の対策は各自治体で行われている

現在、蚊の行政対策というのは、各自治体で行われています。
しかしすべての自治体が一様に動いているわけではありません。

なかでも本格的、積極的にどこよりも動いているのは、やはり東京都でしょう。
圧倒的な人口密度をほこり、また昨今は新型コロナウイルスの影響があるにせよ、日本で一番多くの外国人が行き交い、外国からの帰国邦人が多いであろう東京都は、当然ながら日本国内で最も蚊による感染症への対応を必要とされる都市なのです。

とくにウストナイル熱が話題になってきた2010年代半ばくらいから都は蚊の生息調査を始めているのですが、それがより本格的、大々的となったのはやはり2014年、代々木公園にてデング熱への感染が70年ぶりに発見されてからのことです。
それ以降、都は毎年夏が近づくとデング熱は勿論のこと、マラリア、チクングニア熱までをも調査対象に加え、監視強化をはかるようになりました。

各区ごとに行われている東京都での蚊対策

さて、蚊による疾病の感染が危惧されている東京都では、具体的にどのような対策が行われているかご存じですか?

東京都は、夏季になると、一斉に都内全域で蚊対策を行っています。
とはいっても、東京都自身が「これをこうやれ」と事細かく各区に命じているわけではありません。
東京都での蚊の対策は、都のおおよその方針のもと、実は各区単位でそれぞれ具体的な対策を立案して、各々行われているようです。
ただしあくまで区単位で行われていることなので、各区とも行っている対策はまちまちです。
ですが、そうはいってもどこもやっていることの大筋は、それほど変わりません。
では、どんなことをどのように行っているのでしょうか。
今回はそれを細かくお伝えしたいと思います。

ちなみに日本の各都市でどのようなことが行われているかについては、ぼくはそこまで知りません。
これはあくまでぼく自身一番深く関係をもっている東京都に関してのお話です。

蚊の行政対策はどうやって行われるのか

さて、大概こうした行政からの仕事を請け負い、取り仕切っているのは、害虫駆除の業界団体です。
ここが、区ごとに区内の蚊対策の依頼を受け、それを団体所属である近隣の駆除業者に振り分けます。
依頼を受けた業者は、区と業界団体で設計した管理仕様に基づき、作業を行います。
といっても多くの区で行われているのは皆同じで、蚊の生息調査(サーベイランス調査)と、駆除施工の二つです。

東京都の蚊の行政対策
  • 生息調査(サーベイランス調査)
  • 駆除施工

 

蚊の生息調査のやり方

多くの区では、蚊対策のため、まず管轄域内の蚊の生息調査(サーベイランス調査)を行って実情の把握に努めています。
調査期間は、6月から10月までの夏場を中心とした蚊の活動期5か月。これはどの区でも同様のようです。

さて、蚊の生息調査を行うためには、多量に蚊を捕まえる必要があります。
この方法は、主に二つの方法があります。
それは、「捕獲器によるもの」と「人力によるもの」です。

蚊の捕獲器は、電池式のファン付きライトトラップです。
しかし蚊はそもそもあまり光に誘引されることがないので(注意:種類によります)、違う何らかの方法で誘引し、蚊をおびき出せて捕まえなければなりません。
そこで二酸化炭素を使うのです。

蚊は、餌の血を持つ人間や動物の吐き出す二酸化炭素に誘引されます。つまり、蚊を捕らえるためには、二酸化炭素が必要となります。
つまり蚊の捕獲器の横に、ドライアイスを置いておくのです。
そしてドライアイスを開放する。するとドライアイスが昇華し、二酸化炭素ガスを発生させる。
これで蚊をおびき出すのです。

主に使われる捕獲器は、このようなものですね。

 

単一乾電池で電球を光らせ、光でおびき寄せる。
それだけでは蚊は集まらないので、保冷バッグの蓋を開けて、ドライアイスを使って二酸化炭素ガスを放ち、それによって付近の蚊を誘引する。
そうやって寄ってきた蚊を、モーターで回すファンの気流によって吸い込み、ネットの中に捕獲する。
一見、チャチなようですが、しかしこれが結構効果がある。
付近に蚊の生息がある場合には1日あたり百匹以上が捕まるようです。

これを、あらかじめ決めていた各区内の公園に2台ワンセットで一日設置します。
設置個所は主に、公園内の樹木の枝、高さおよそ1mの箇所です。
付近に水場がある、木陰になる、風当りが比較的ある、こうした条件から場所を選定し、日中に設置。
およその区では、翌日にそれを回収する、というようなことを行っています。
こうした取り組みを、東京都内の各区は月に1~2回、行っています。

人おとり法とかいう人柱

とまあ、このようなことを多くの区では行っているのですが、さて。
最初にぼくは、蚊の捕獲方法は二種類ある、とお話しました。
それが先述のような捕獲器を使う方法と、それからもう一つ、「人力で捕獲する方法」です。
つまり、虫取り網を決められた回数だけぶんぶん振り回して、蚊を捕まえる、というやり方です。

これは一般的には「スウィーピング法」とも言われる割とポピュラーな昆虫の捕獲法の一つなのですが、でも蚊の場合には、一つだけポイントがあります。
それは、蚊を捕まえる人自身が、蚊の誘因源になる、ということです。
これが古来からの蚊の捕獲法である、「人おとり法」というやつです。
その名の通り、捕獲する業者の人が自らおとりになって蚊のいそうなところに立ち、自ら蚊の餌となって自身で蚊をおびき寄せ、そして寄ってきた蚊をバサバサと網で捕獲するのです。

まさに蚊の供養物、人柱。
マジかよ!と思うかもしれませんが、割と普通に行われています。
(勿論、実際には捕獲者は、蚊に刺されないようにそれなりにしっかりと全身防御して行うのですが)


江戸川区

蚊の回収と分析

さて、蚊を捕まえたら今度は分析です。
捕獲した蚊を分析し、どのような種類の蚊が生息しているのか、また感染症のウイルスに汚染されていないかを検査します。

尤も都内の公園の木陰に日中からトラップを設置すれば、普通に捕獲される蚊といえば、ヒトスジシマカか、じゃなければあるいはアカイエカのほぼどちらかでしょう。
どうも報告としては、ほぼ6~8割近くがヒトスジシマカであり、その残りのほとんどがアカイエカ、ごくごくまれにハマダラカが年に数匹程度捕獲される、と言われています。
ちなみに熱帯地方でデング熱の媒介蚊となっているネッタイシマカが捕獲されたことは、調査開始以来ない、とのことです。

都内でしたら、屋外でそれほど活動しないチカイエカも、真夏の夜間や場所次第ではたまーに捕獲されるかもしれませんが、アカイエカと酷似しているのでそこまで分類はされていないでしょう。
おそらくは「アカイエカ類」、みたいな感じにそこに含ませているところがほとんどなんじゃないかな、と思います。

さて、ここからは各区によって事情がどうも若干異なるようですが、捕獲された蚊について、病原体遺伝子検査を行います。
少なくとも多くの区では、ヒトスジシマカに対してはデング熱とウエストナイル熱の、アカイエカについてもウエストナイル熱のウイルス保持がされているかを検査しているようです。
その他、チクングニア熱、ジカウイルスなどについて調べている区もあります。

 

ただしこれらに関しても、2020年現在において、東京都内で捕獲されたあらゆる蚊について、デング熱、およびマラリア、チクングニア病の遺伝子検査において結果は陰性、つまり保持されていなかった、と報告されています。

蚊の駆除施工はどのようにされているのか

生息状況が判ったら、次は駆除施工です。
これはすべての区で行われているかはわかりませんが、ある区においては予算をしっかり確保し、業者に依頼して行っているところもあります。

作業はもういたってシンプルなローラー作戦で、数日かけて管轄内のドブや雨水桝などに薬剤を投入していきます。

散布する薬剤は、多くの場合蚊の幼虫に非常に効果の高い脱皮阻害剤(昆虫成長抑制剤)を使います。
粉状や固形の錠剤を、排水内にポチャンと投薬するのです。
するとそれに触れた蚊の幼虫は、脱皮することができなくなり、成虫の蚊になれず死んでいきます。
これはかなり効果の高い駆除方法なので、自宅や店舗の周辺の排水からの発生が気になる方は試してみるといいでしょう。

まとめ

夏にいや~な、蚊の話。
前々回、前回、そして今回と、産回に分けて扱わさせていただきました。

蚊は古くから人間に疫病を運ぶ存在として忌み嫌われ、また恐れられてきました。
マラリア、デング熱、日本脳炎、そしてウエストナイル熱など、現代においても蚊が運ぶ疫病は人間にとっての脅威です。それはこの日本でも変わりません。

 

そこで二回目には、どのような蚊がどこに存在し、そしてどのように蚊を防ぎ、駆除すればいいか、についてのお話をしました。

 

そして今回は、どのようにそうした蚊を日本の行政では対応しているのか。
余り世間に知られていない蚊の行政対策について、その実態を伝えました。

 

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

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