いよいよ夏本番!
しかし夏になると、色々といや~な虫も活動が本格化しますよね。
これから3回にかけて、そのいや~な夏の虫の一つである「蚊」について、虫のプロがじっくりとお話をしていきましょう。
まず1回目は、「世界中に疫病を運ぶ虫の病王」としての「蚊」のお話です。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

夏、そして蚊のシーズン到来!

さあ、長かった今年の梅雨もようやく終了。
こちら関東地方では、8月の到来とともに梅雨明けが発表され、ここ数日はこれまでが嘘のようにギラッギラの太陽が輝きまくる真夏日が続いています。

夏本番。
そんな浮足立つようなワクワク感が起こると同時に、しかし一方ではいや~な虫たちも活動が本格化する時期でもあります。
今回からその、いや~な虫のなかでも、いや~でかゆ~い虫の筆頭、「蚊」のお話をすることにしましょう。

蚊と人間の長くていや~な付き合い

蚊と人間のお付き合いは実は非常に長く、そして疎ましいものでもあります。
既に人間が地球上で活動することには、蚊は存在していたというのだから、それはもう何とも長い付き合いです。

しかも蚊は人の血を吸い、痒さや不快さを与えるだけに終わりません。
それによって様々な病気を運ぶ、なんとも厄介な存在でもあります。
というのも実は「蚊」は、人間に疫病を運ぶ虫のトップランカーなのです。
人類の歴史とは蚊の運ぶ疫病との戦いの歴史だった、と言うとややながら大げさですが、しかし随所随所で人の歴史を大きく変えている、というのは揺るがない事実でしょう。

J.L.クラウズリー・トンプソンという人が、昆虫学の立場から人間の歴史をとらえた、「歴史を変えた昆虫たち」という非常に面白い本を書いているんですが、ここにも当然のように蚊が登場します。
なんでも彼の話によれば、古代ギリシャ、ローマ帝国が蚊によって滅亡したというのです。
確かにゲルマン民族の移動というトリガーがあったのは事実ですが、すでに帝国内は蚊の疫病が蔓延し、崩壊してもおかしくない状況だった。
ちなみにその後、これらの蚊は返す刀でゲルマン民族をも滅ぼしています。

更にこの著書では1800年代には、パナマ運が建設に際し、数万人ものパナマ熱(黄熱病)が蚊によって起こされ、結果、工事を諦めざるを得なくなったことが書かれています。
うわ、面白ぇー!蚊、やべぇー!

そして昨今。
ここ日本でもデング熱の発症が、近年、問題化しています。
これも「ヒトスジシマカ」(下画像)という蚊によって引き起こされている病気です。
デング熱はもともと熱帯地方において問題になっていたウイルス性の感染症です。
我が国では、第二次世界大戦期から70年もたった2014年に国内感染が確認され、話題となりました。


(ヒトスジシマカ)国立感染症研究所

デング熱と蚊のいや~な関係

そんなわけで、夏のいや~な「蚊」の話。
まずは、ここ日本でも近年問題化している「デング熱」についてから始めてみるとしましょう。

そもそもこの「デング熱」というのは、デングウイルスによって発生する感染症のことです。
何でも(まあ多くの蚊に由来する病気がそうなのですが)熱帯アジアなどでは古くから知られている病気だったようです。
後でも触れますが、黄熱病の媒介蚊で知られる「ネッタイシマカ」が、そのウイルスを媒介していました。
「ネッタイシマカ」は広く熱帯地に生息し、屋内に侵入しては人を刺す蚊です。
どちらかといえば都会型で多くの熱帯地方の都市に生息し、昼間から人を刺します。


(ネッタイシマカ)Wikipedia

さて。
このデング熱が日本で問題になったのは、第二次世界大戦期のこと。
戦地となった熱帯のアジア地域からの帰還兵を中心に広まって流行し、その当時は患者数は100万人にもおよんだという話です。

しかし「ネッタイシマカ」は熱帯にしか生息しません。つまり、元来日本にはいないとされていた
だから当時、熱帯から船などで突発的に熱帯の戦地から持ち込まれたネッタイシマカが引き起こしていたものだ、と思われていました。

ところが、それらを覆すようなことが何度か発見されることになります。

第一に、日本国内にはいないと思われていたそのネッタイシマカの生息が、しかし1944年、熊本で起こったデング熱の流行の最中に発見されるのです。
これが現在に至るまでの、日本国内におけるネッタイシマカの最初にして最後の生息記録となります。
つまり、それはあくまで一時的・偶発的なものであり、事実、まもなく一部沖縄などを除いてネッタイシマカの生息は見られなくなりました。

え?
あれ?
と思うじゃないですか。

んじゃ、どうしてそれから70年もたった2010年のこの現代に、デング熱が問題化したのか。
そう。
実はネッタイシマカ以外にもデング熱を媒介する蚊がいたのです。
それが「ヒトスジシマカ」です。


(ヒトスジシマカ)国立感染症研究所

この「ヒトスジシマカ」というのは、ごくごく普通に日本に棲息する蚊の中の代表種でもあります。
竹やぶに入ったり、お墓参りに行ったりすると、足元を刺されたりするやつ。
定番のあれが、この蚊です。
普通に、どこにでもいます。

次回、もう少し細かくお話をしますが、ちょっと蚊を区別しておきます。
日本で問題になる蚊の代表は、大きく二つあります。
それが「イエカ(属)」「ヤブカ(属)」
これが日本の蚊の、二大巨頭です。

日本の代表的な蚊
  • イエカ(属):アカイエカ、チカイエカ、コガタアカイエカなど
  • ヤブカ(属):ヒトスジシマカなど

 

デング熱の媒介蚊であった「ネッタイシマカ」と、日本に普通によくいる蚊である「ヒトスジシマカ」は、同じヤブカの仲間同士です。
だから、ウイルスの媒介も可能だった。
つまり、日本のヤブカの代表であるヒトスジシマカは、デング熱を媒介できるようだ、となった。
いや、これ戦時中のデング熱流行にも、もしかしてヒトスジシマカが関わっていたんじゃね?とすらなった。

そして、現代になって2014年、東京は代々木公園でこのヒトスジシマカに刺され、100人以上がデング熱になったことで再び注目が集まった、というわけです。


(デングウイルス)国立感染症研究所

大疫病マラリアを運ぶ蚊

デング熱以外にも、マラリア、フィラリア、黄熱、脳炎など、蚊が媒介する疫病は様々あります。
何せ蚊というのは、虫の中でも最も疫病を媒介する存在、いわば「疫病を運ぶ虫の王」なのです。
病王。うわ、メチャクチャ厨二くせえーっ!
でもそのとおり、ざっくりとですがこうした多くの疾病の媒介となっているのが、「病王」蚊という虫なのです。

 

さて、そんな蚊による疫病の中でも、なんといっても一番有名なのは、人類最大最古の感染症「マラリア」です。
何せ紀元前400年頃、かのヒポクラテスでもマラリアの症状を記載に残していた、ということですから、その歴史には何とも驚きです。
更には先のように、ローマ帝国の滅亡の理由もマラリアであったというではないですか。

しかも、人とマラリアの戦いは、まだ終わったわけではありません。
世界の熱帯・亜熱帯地方、とくにアフリカ、インドなどを中心に、今なお年に数千万人から数億人が感染し、100万人以上が死亡しています。
それもあって、今でもマラリアはエイズ、結核と並んで「三大感染症」と称され、恐れられています。
しかも、やつは最弱でもツラ汚しでもないですからね?

で。
そもそもマラリアは「プラスモジウム」という原虫が病原体であり、それを媒介するのが「ハマダラカ」という蚊です。(下画像)
つまりこの「ハマダラカ」という蚊が、マラリアの原虫を運んでいるわけです。
マラリアキャリ…いや、何でもないです、忘れてください。

ちなみにハマダラカは日本にも生息しています。
特に大正期までは、三日熱マラリアが流行し、それによって毎年推定20万人が感染し、数千人が死亡したともいわれています。

しかしながらその後、医療や農業の技術進化によって国内感染は見られなくなりました。
現在の日本でもマラリアの感染は年間100人程度が見られるのですが、それはマラリアに感染した人は海外で蚊に刺された帰国邦人や外国人ばかりです。


(ハマダラカ)Wikipedia

日本で発見された日本脳炎

日本で発見された感染症、日本脳炎。
若い人は知らないかもしれませんが、昭和を生きてきたご年配の人ならその病名をかつて聞いたことがあるでしょう。
この原因となっていたのが、日本でも生息している「コガタアカイエカ」です。(下画像)


(コガタアカイエカ)Weblio

日本脳炎は、ウイルスを持った豚の血を吸った蚊が人間を刺すことでウイルスを運び感染する、といわれています。
というのも、日本脳炎のウイルスは豚の血液中で繁殖しているのですが(豚は病気にならない)、その血を吸ったコガタアカイエカの体内で感染可能な状態となり、その蚊が吸った人に感染する、といった状況になります。

この日本脳炎の怖いところは、致死率が約30%と高いことです。
しかも特に子供や老人などが多かった。

そんな日本脳炎は、その豚の飼育の広がりとともに、戦後、かつては数千人レベルにまで大流行したのですが、しかし1970年頃から患者数は激減しており、今では年間10人程度の非常に少ないものとなっています。
昭和後期まで多かった日本脳炎が、どうして減少していったのか。
その理由は、ワクチンの開発と、豚の飼育技術や環境の変化、そして面白いことに媒介する蚊であるコガタアカイエカの減少ではないか、とも言われています。

ではコガタアカイエカ自体が減少した理由は何か。
元来、コガタアカイエカは水田で生きる蚊です。
なので、70年代以降、水田面積が大きく減ったこと。
それから農業技術ややり方が変化したこと、特に水田に散布される殺虫剤の変化などがそれに関わっている、と言われています。

その他蚊が運ぶ病気

蚊が運ぶ病気は、他にもあります。

キングオブ蚊の感染症がマラリアだとしたら、次に多いのは何だかわかりますか?
それは、かの世界のHideo Noguchi、すなわち野口英世が障害をかけてその病原体と戦い、しかし最後にはそれに感染し、皮肉にも死んでしまったということで名高い「黄熱病」です。

 

「黄熱病」は、このように死亡率が今でも高いことで知られています。なにせ致死率50%というのだから、相当なもの。
これもあって、その昔、この黄熱病が流行していたアフリカは「白人の墓場」とすら呼ばれていたという話です。

さて、この黄熱病を媒介しているのは、デング病同様、「ネッタイシマカ」だとされていました。
しかしやがてそれ以外の蚊でも感染することがわかるようになってきました。

また、蚊が媒介する病気として、糸状虫の寄生によって起こるフィラリア症というのも、あります。
これも今なお、1億人以上が世界中で感染しています。
人体内のリンパ系に寄生し、脚やタマキ…陰嚢を腫れ上がらせ、象皮病という症状を起こします。
すると脚やキンタ…陰嚢は大きく醜く膨れ上がり、変形します。
画像を下に載せておきますが、とにかくインパクトがハンパない。
昔、ネットによくあがっていたグロ画像系で結構多かった系です。っておっさん以外知りませんね、はい。

ちなみに、かつては日本でも流行したと言われています。
ですが、公衆衛生が進んだ今では見られなくなりました。

要注目の、ウエストナイル熱

近年、とくにアメリカで注目が高まっているのが、ウエストナイル熱です。

そもそもは1937年、ウガンダのウエストナイル地方での発症が最初の発見であり、その名がつけられました。
しかし注目が急激に高まったのは、2000年代のことです。

まず1999年、突如としてニューヨークで患者が発生。これが西半球最初の発症でした。
これはどうもイスラエルのガチョウからのものである、と言われています。

そして、その後4年足らずで、ウエストナイル熱はぼ全米にわたって感染が拡大します。
結果、2012年には5,000名を超える患者が発生し、280人以上が死亡。
さらに2018年までに、米国での患者数は5万人をこえ、死者は2,306人。
これはアメリカにおける、蚊による疫病史において最悪の記録となりました。

 

このウエストナイル熱のウイルスは、日本脳炎ウイルスに極めて近い、と言われています。
ですが日本脳炎は豚に深くかかわっていたのに対し、ウエストナイルは野鳥に深くかかわっています。
つまり、野鳥を刺した蚊が人を刺すことで感染する感染症だということです。

さて、日本脳炎と近い、ということは、媒介蚊としてイエカが危険視されるところですが、どうやらヒトスジシマカにも媒介の能力はあるようです。
日本脳炎では豚と人間との感染サイクルが問題となっていたため農村など郊外での感染が特にみられていたのですが、こちらは鳥。しかもカラスやハト、カモメなども問題となるうえ、ヤブカなども媒介蚊となるため、都市で広がってしまったのです。

ウエストナイル熱は今やアメリカやカナダのみならず、アフリカ、中東、ヨーロッパ、オーストラリアにも広がり、深刻化が増しつつあります。
しかも未だにウエストナイルウイルスへのワクチンは開発、実用化されていません。

幸いながら、今まで日本での感染例は確認されていません。確かに2005年に帰国邦人が発症しましたが、国内での蚊による感染はないものと言われています。
が、しかしこれらのことからも油断はできないでしょう。

ヒトスジシマカ、アメリカデビューを果たす!?

日本でデング病のデングウイルスを運んでいる「ヒトスジシマカ」。(下画像)
先の通り、ウエストナイル熱の媒介も可能な蚊でもあります。


(ヒトスジシマカ)国立感染症研究所

で、この日本の「ヒトスジシマカ」が、太平洋を遠く渡ったアメリカで問題になっている、って知っていますか?

実はこの問題の発端は、80年代初頭のこと。
1983年に、アメリカはテネシー州で、それが発見されました。
しかも調べてみれば、どうやら日本の「ヒトスジシマカ」に近い。いや、多分そうだ!となったのです。

そしてその後、瞬く間にこのヒトスジシマカの生息が、アメリカ本土に広がっていきました。
というのも、ヒトスジシマカは小さな水で発生します。
例えば日本では墓地の花の水や石のくぼみ、あるいは空き缶、竹の切株、その他人口容器など、小規模で多量にたやすく発生するのです。
つまり、あちらこちらに生息が、簡単に飛び火する。だから完全駆除が難しい。

そのため、現在でもその生息は完全に定着化され、アメリカ国土の東を中心に生息が進行中です。

では、そのことの発端の原因は何だったのか。
どうも日本から輸出された古タイヤに卵が付着したのではないか、という意見が有力視されるようになります。

先にも触れた通り、そもそもヒトスジシマカなどのヤブカは、人口容器などの小さなものに溜まる水が大好きです。
なかでも屋外に置かれているような古タイヤは、恰好のヤブカの生息場所となります。
しかもその卵は、非常に乾燥に強い。だから輸出され、乾燥しても海の向こうで孵化できたのでしょう。
事実、同時期の1985年には、九州の古タイヤの集積場で大発生し、問題となったこともあります。

ちなみにかつて我が国にて戦時中、先に書いたようにネッタイシマカやヒトスジシマカなどのヤブカがデング熱を披露目させたのも、この時期ほとんどの人家に多数防火用水槽を置いてあったからであり、そこに蚊が大量生息したために感染が広がったのではないか、と言われています。

まとめ

夏にいや~な、蚊の話。
第一弾は、虫の疫病王としての蚊を取り上げてみました。

このように、蚊は様々な疫病を運ぶ存在でもあります。
ではそんな蚊をどう駆除すればいいのか。
次回、それを詳しく追っていきたいと思います。

まずは、「蚊」の恐ろしさを知るとともに、駆除すべき日本の代表的な蚊にはどんなものがあるかを、押さえてみるようにしてください。

日本の代表的な蚊
  • イエカ(属):アカイエカ、チカイエカ、コガタアカイエカなど
  • ヤブカ(属):ヒトスジシマカなど

 

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