飲食店、あるいはコンビニなどの食材の中に、プラスチック・合成樹脂が混入していた。
そんな場合は、一体何が原因で、どんなものが混入し、そしてそれについてどうすればいいのでしょうか。
食品衛生、異物混入対策のプロが、その原因や対策法を教えます。
前回、そして今回と二部構成で、プラスチック・合成樹脂の異物混入についてお話させていただきます。
(今回はその後編となります)

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

多岐に及ぶ合成樹脂異物

プラスチック・合成樹脂の異物混入ということについて、まずはその基礎的な捉え方、そもそも合成樹脂とは、といった基本のお話を前回ではさせていただきました。
これからはそれを踏まえた上で、合成樹脂の異物には具体的にどのようなものがあり、またそれに対応するにはどうすればいいかについて、これから話していくことにします。

なお、こちらは二部構成の「後編」になりますので、もし以下の「前編」をお読みでなければそちらを最初に読んでいただくと理解がより深まります。

 

さて、そんなわけで合成樹脂の異物混入ですが、前回にもおは話した通り、合成樹脂というのはとにかく種類が多い。
一言で「合成樹脂・プラスチック」といっても、ビニールからシリコン、エポキシのタグ位までメチャクチャ用途の幅が広い。
そもそも、合成樹脂というのは、金属やガラスなどに比べ、軽量で加工しやすく、また水や薬品にも強く、大量生産が安くできる、というのがそのメリットです。
また種類も多いため、様々な用途に適したものを作りやすい。

合成樹脂・プラスチックの特徴
  • 安価で大量に生産しやすい
  • 軽量である
  • 薬品に比較的強い
  • 耐久性が高く、腐敗しない

 

 

結果、我々の生きる現代生活はありとあらゆる合成樹脂・プラスチックに囲まれています。

例えば今、ぼくはパソコンに向かってこうやってこの下書きを書いているわけですが、こうやって触っているキーボードからそのケーブル、マウス、モニターの枠、スピーカー、横にあるスマホのカバーやフィルムにペン、果ては座っている椅子のパーツや飲んでいるお茶のペットボトルに、ぼくが今着ているシャツのボタンなどなどなどなど、考えてみると合成樹脂・プラスチックに完全に囲まれまくっており、それなしの生活というものは全くもって送れません。

工場や厨房だって勿論、同じこと。
当然そうなれば、時として異物要因となりやすくなります。
そこで、様々な合成樹脂・プラスチックの異物が世に出ることになるのです。

どんな合成樹脂の異物混入があるのか

では、どのような合成樹脂の異物混入があるのでしょうか。
或いは、あなたが遭遇した合成樹脂の異物は、元々なんだったのでしょうか。
その代表的なものをいくつか挙げてみましょう。

合成樹脂・プラスチック異物の代表例
  • 包装資材片
  • 手袋片
  • テープ類
  • 清掃用具片、ブラシ類の脱毛
  • 調理器具の破片
  • 容器・コンテナの破片
  • 文具の破片、パーツ類
  • 施設の破損部

 

うーん、例を挙げていったらキリがないですね。
代表的なところを解説していきます。

包装資材片

まず、一番多いのは資材の包装袋を切って開封したときに生じる、切り口の破片です。
前回の最初に挙げたニュースの、給食への混入もそうでしたね。
このケースは本当に多いんです。

Yahoo!ニュース
保育園給食にビニール片 再発防止マニュアル実行されず(カナロコ by 神奈川新聞...
https://news.yahoo.co.jp/articles/75e676ff6c6d291d572c09ceff9091be11f6f0d1
 神奈川県海老名市は23日、市立上河内保育園(同市上河内)で同日提供された給食の「ミートボールのケチャップ和(あ)え」にビニール片が混入していた、と発表した。3歳児が食べ終わった皿にビニール片がある

 

これと、次に挙げる使い捨て手袋の破片というのが、合成樹脂異物の2トップです。

食品工場や厨房では、日々、様々な多くの資材を扱います。
そうした資材は多くがポリエチレンなどで出来た合成樹脂製の袋に詰められており、それを切って開封することで使用します。
まあ、ご家庭でもそうだと思いますけど。
でそうした際、チョッキンと切った切り口を食材内に落下させてしまうことがあります。
これが合成樹脂で最も多い異物混入例です。

一般の食品工場では、開封カッターを使って開ける際、完全に切らずにすることで切り落としを抑止したりなど、様々な工夫をしてその混入防止につとめています。
が、なかなかこれという決定打がないのもこの袋の切り口の異物混入問題の難しいところです。

手袋片

これも次いで多い事例ですね。

食品工場や厨房内では皆、使い捨ての手袋をつけて作業を行います。
人間の手には多くの微生物が付着しており、場合によっては黄色ブドウ球菌など、食中毒すら起こしかねない菌を持っている場合だって少なくありません。
こうしたものを製品に付着させないため、作業時には手袋をするのです。

それだけではありません。
作業中にはどうしたって、様々なものが手に触れることになります。
何かを持つ。触る。握る。掴む。つまむ。
そうしたときに、それらが汚染されていれば、その手を介してこれまた製品を汚染することになります。
それを防ぐために、何度か手袋を交換することになります。
結果、一日に何度か手袋を交換することになるため、使い捨ての合成樹脂製の手袋を多用するのです。

が、しかしこれが何か作業中にひっかけてしまうこともないわけではありません。
勿論、手袋メーカーも開発に力を入れているため、そうそう敗れることのない耐久性の強い手袋が最近は出回っています。
多少引っ張ったり、力を加えたくらいでは破れないものが大半です。
ですが、それでもやはり鋭利なものに引っ掛けてしまえば、敗れることだってある。
その結果、手袋が破れてしまい、その破片が混入する、といったことが起こる場合があります。

ところで全く関係のない話ですが、5月くらいかな、一時期、コロナウイルスの影響で、陰ながらこの手袋が市場に出回らず、不足したことがあります。
ちょっと油断していたので、ぼくも少しだけ被害にあってしまいました。

テープ類

場内でのセロハンテープなどの使用を禁止、使用制限している食品工場は多いことでしょう。
貼ったこと、ものへの定数管理ができず、「なくなってもわからない」状況となってしまうからです。
異物混入の発見が遅れるのは、異物が「なくなってもわからない」からです。
工場内、厨房内には様々なものがあります。
これらが「なくなったらすぐにわかる」ようにする。定数定位置管理というのは、そのための工夫です。
そのため、工場内の補修や書類の掲示、固定にテープ類を使用することは、原則的にあまり進められるものではありません。

ですがそれでも作業によってはやはり使わざるをえない、などという場合もあるかもしれません。
こういう場合、剥離したテープが食品内に混入する危険性が生じることをしっかりと把握することが必要です。
補修で使うのであれば、あくまで一時的な仮補修のみとする。
なぜなら、やがて経年劣化し、剥離してしまうことも考えられるからです。

ブラシの脱毛

清掃用具や調理器具として、ブラシを使うときがあります。
この場合、ブラシからの脱毛が食品内に混ざってしまい、異物となることがあります。

こうならないよう、食品工場ではブラシの毛の色を製品の色と全く異ならせ、脱毛がわかりやすくしているところもあります。

文具類の破片、パーツなど

キャップ式のボールペンなどを場内で使っていると、そのキャップがなくなってもわからなかったりします。
そんな場合、それらも異物要因となることがあります。

ちなみにこうしたことが発生しないよう、工場内ではキャップ式ではなくノック式のペン類をよく使用されます。
マジックなどでも今や工場内での使用はノック式となってきています。

食品内から合成樹脂が出てきたらどうすべきか

さて。
ここからは、もし合成樹脂の異物混入事故が起こった場合、どうするか、そしてそれがその後どのような流れとなるのか、をお話したいと思います。

もしあなたが食べている食品の中から合成樹脂が出てきたらどうすべきか。
日々、異物対策に関わっている専門家がお教えします。

これはどの異物混入でも同じですが、まずそれが自分の要因であるか否かを、できる限り確認します。
というのも実は少なくないのですよ、開封後に発生した異物混入に対し、明らかに自分に原因があるにも関わらずメーカーにクレームをつけるお客さんというのは。

例えば、歯片などが代表というかわかりやすい例です。
食べていたら、製品から歯のようなものが出てきた。
商品を食べていたら、出てきた。なんだこれは、と。

こんな場合、99.9%は消費者由来、つまりは食べている人の歯です。
なんだこれも何も、そりゃお前の歯だろ。
工場はみんなマスクしているんだから、歯なんか入るわけがない。そう言いたいけれど、メーカーは一応謝罪します。
そんなのあるの、いやいや稀にしかないだろ、と思いますか?
恐らく想像以上に多いものですよ、これ。

 

ただし!
実は専門家であるぼく自身、それも、ちょっとだけ判らないでもない。
歯ならまだしも、毛髪やプラスチック片だの樹脂だのは、よく判らないときもあります。

というのも、実は昨年にぼく自身、缶チューハイの金属異物混入に出会ったことがあるからです。

 

正直、こんなぼくですら、いざ異物混入された側になってみると「ええ!?」となりました。
「この金属片、ぼく、入れた!?
いやいや、ないない!」
そうなりました。
だからよく分かるのです。

だって缶チューハイだよ!?
充填時のストレイナーのメッシュなんて、こんなもの絶対に通さへんで!?
うん、それよく知ってる。他ならぬぼくがよく知っている。
だってぼく自身、大手飲料メーカーの異物混入対策に関わりましたからね。
だから可能性メタクソ少ないだろうと思いながらも、それでも(半分は興味本位で)メーカーに連絡を入れました。
20年以上この業界で生きて、これほどの専門知識を持っているぼくでさえ、こうなのです。

なので気持ちはよく判るのですが、一応身の周りを見渡してみることでしょう。

健康被害の有無こそが一番重要

そして。
次に確認するのは、「健康被害」です。
プラスチック片で口内を切った、とか噛んで歯を痛めた、とかそういうことがあるのか、一応確認しましょう。

ここが一番重要なことなのですが、食品への異物混入において法律違反なのは「健康被害」ただそれだけです。
それはもう食品衛生法に書かれています。

前回に説明した通り、かなり多くの人が誤解していますが、食品衛生の基本である「食品衛生法」は、実は食品への「異物混入」自体を法律として禁じているわけではありません。
「健康を損なうおそれのある異物混入」の製造・販売を禁止しているのです。(食品衛生法6条4号)

だから異物混入それそのものが法律違反とするのは、正直、かなり難しいです。
そして、健康被害がなければ食品企業は「すみませんでしたね」以上、というのが普通です。
ですから、この健康被害の有無というのが、実は一番重要なのです。

合成樹脂異物への対応はどうなるのか

さて、健康被害もない。
一応、製造元の食品企業に連絡でもする。
すると、食品企業はとりあえずの最低限の謝罪を行い、その異物を回収します。

で、ここからは一般的な人が知らない世界になっていきます。
何をするのか。
それを教えるのが、今回の話の、実は一番のメインです。

さて、食品企業は異物を回収したら、品質管理部門にそれを回します。
すぐに品管さんは、取引のあるお抱えの検査屋さんにそれが一体何であるかの分析をお願いします。
もし、ある程度の目星が付いてあるのであれば、工場で使っている包材だったり、手袋だったり、そんなものを一緒に分析依頼し、同じものであるかどうかを見てもらいます。
もし同じだったら、それが原因だった、という証拠になります。

さて、合成樹脂であれば、一般的には実体顕微鏡による形態観察、そして次にそれがどんな合成樹脂であるかを赤外分光分析(FT-IR検査)によって成分分析し、それでおおよそが判明します。
その他にも比重を求めたり、熱を加えて燃焼状況をみる場合も、まあないわけではありません。

いずれにせよ、こうした1つ1つの検査自体を行う手間自体はさほどでもないのですが、でも実は意外と泥っぽいマンパワーが絶対に必要です。
少なくとも、現段階で、AIなんかではまず出来ません。
そしてこうした検査屋さんというのは結構立て込んでいたりするので、一般的には結果の報告書作成まで、検体到着から3~4営業日をもうけています。

つまり、異物混入だ!とメーカーに伝えてから、その異物が何かという報告が出るまで10日から2週間くらいはかかることになります。

そして消費者に出されるのは、ペライチの文章ということがほとんどです。
こういう理由だと思われる、すみませんでした、以上。
そんなお手紙です。

先の分析屋から来た報告書をそのまま消費者に出すところは、余りないと思います。
理由は、原因を隠しているとかではなく、「そんなものを渡してもどうせ消費者は判らないから」です。
だって、専門用語の羅列されてる分析報告書を見て、「そうか!スペクトル検査の結果、ポリエチレンとポリプロピレンの化合物と判明したのか!ということは硬質なコンテナの破片なのかな?」なんてならないでしょ?笑

そして、申し訳程度のQUOカードが同封されて、以上おしまい。一件落着、以上です。
メーカーは絶対に口にはしませんが、もしこれらに不満があるなら、どうぞテキトーなそこいらのネットにある弁護士サイトが焚きつけるように告訴でも何でもご自由にしてください、ただしウチらもバカじゃないのでそれ相応にリスクマネジメントという名目の下で、絶対そんなのに負けない現実的な対応マニュアルの通りに対応してますから、となります。

食品企業の「弁慶の泣き所」はここだ!

ただし。
一つだけプロの目線から、消費者クレームとして食品企業が「それをつかれたらメチャクチャ痛いわー!」という点を、こっそり教えておきましょう。

言ってみれば、唯一の「弁慶の泣き所」が、ここです。

それは。
もしこれが製造由来だったとなった場合、「んで、原因は何だったのか」「んで、そもそも何でそれを止められなかったのか」ということです。

確かに、正攻法、正論。
だけど、だからこそ、効きます。だからこそ、言い返せません。

つまり、食品企業が「ぐぬぬ」となるのは、実は「これでひどい目にあったから金をくれ」では全くありません。
これまで書いてあるよう、そんなものはモンスター対応クレームとして完全攻略されきっています。
なのでそんなものを正直、SNSで広められてもそりゃウザいという意味で迷惑ではあるでしょうが、正直別にそれほど痛くはない。響かない。
何なら一緒に法廷いきまっか?おたくさん、それ恐喝ですぜ?となる。
ではなく、純粋にこうグサリと、真っ向から言われたときです。

「異物として混入したものがそれなのは、成程、わかった。
で、再発防止策だというけれどさあ、
それ、実際に最初からやってないから起きたんだよね?
じゃなきゃこれ、起きないよね?
つまりおたくの工場・厨房は、そもそもの管理に決定的な間違いがあったわけですよね?
だって、これが実際にその帰結だよね?」

これSNSで真っ向突かれたら、結構、ぐうの音も出ないと思いますね。
だって、言い返せないもの。

更に言うと、前回のニュースで挙げた「プラスチック片」の混入。
ぼくは調理やさんやメーカーさんの大変さを知っているので、仮に遭遇しても絶対にしませんが(まあ実際に子供が食べて洒落にならん大怪我したとかなれば話は別でしょうけど)、もしここで、敢えてすごく意地悪にプロであるぼくが詰めるとしたら、こう対応するでしょうね。

え、それが何かの原因すらも判らないのですか?
分析検査でその合成樹脂成分が判っても、見当すらつかないのですか?
つまり、おたくはそういう「何が混入するか判らない」「混入しても何が入ったかも判らない」管理をしているわけですね?
それって、本当に再発防止の改善活動ができるんですか?
だって、原因も何も判らない、って言ってますよね?
原因も何ひとつ判らないで、何をどう直すんですか?それ意味あります?

これを言われると、皆「ぐぬぬ!」となります。
その通りですからね。

尤も。
ということは、一般の食品企業、厨房では、そう言われないような管理を構築することが必要だ、と要するに言いたいわけです。

まとめ

前回、今回と、合成樹脂異物に対するお話をしてきました。

実は、合成樹脂異物というのは、本当に多いです。
しかも多い上に、その性質上、要因が多岐に渡りまくるし、その範囲が広い。
それも合成樹脂・プラスチックというものの特徴ゆえになのでしょう。

合成樹脂・プラスチックの特徴
  • 安価で大量に生産しやすい
  • 軽量である
  • 薬品に比較的強い
  • 耐久性が高く、腐敗しない

 

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

 

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