飲食店、あるいはコンビニなどの食材の中に、プラスチック・合成樹脂が混入していた。
そんな場合は、一体何が原因で、どんなものが混入し、そしてそれについてどうすればいいのでしょうか。
食品衛生、異物混入対策のプロが、その原因や対策法を教えます。
今回、そして次回と二部構成で、プラスチック・合成樹脂の異物混入についてお話させていただきます。
(今回はその前編となります)

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

合成樹脂の異物混入クレームについて

プロがこっそり教える、正しい異物クレームの付け方。
めっちゃ久々なのですが、第一弾のゴキブリに続いては「プラスチック・合成樹脂」を扱ってみましょう。

 

で、上でも書いたことですが「異物混入のクレーム対応の仕方」をググってみると、まあ大概出てくるのが法律事務所の弁護士さんだかが書くようなものばかりです。
これ、結構な確率で「いやそれどーなの?」って内容であることが、多い。

そもそもこの人達は、法律の専門家です。
法律の専門家なので、これが違法だ云々に通じているスペシャリストであることは紛れない。そこに関しては、まさにプロフェッショナルなのでしょう。
ですが、しかし食品衛生に関しては何も知らないド素人であり、異物混入がどういうものか、食品衛生とはどういうものか、食品企業とはどういうものか、については何一つ、それこそカケラすら知りません。

結果、雑な解答がはびこります。

そこで、今回はこの「プラスチック・合成樹脂」の異物混入について、食品衛生、異物混入対策の専門家の立場から、前編・後編の二部構成でお話していきたく思います。
なお、こちらは二部構成の「前編」になりますので、もし「後編」から来られた方は、まずはこちらを最初に読んでください。

合成樹脂の異物混入事故例

さて。
今回これを書こうと思ったのは、給食への異物混入のニュースを目にしたことがきっかけです。
先月6月末、神奈川県海老名市の幼稚園での給食に、ビニール片が混入していたと報じられました。

Yahoo!ニュース
保育園給食にビニール片 再発防止マニュアル実行されず(カナロコ by 神奈川新聞...
https://news.yahoo.co.jp/articles/75e676ff6c6d291d572c09ceff9091be11f6f0d1
 神奈川県海老名市は23日、市立上河内保育園(同市上河内)で同日提供された給食の「ミートボールのケチャップ和(あ)え」にビニール片が混入していた、と発表した。3歳児が食べ終わった皿にビニール片がある

 

上の報道によると、これは「豚ひき肉の袋の一部」だということです。

実は、こうした包装資材、外装の破片の混入というのは、割とある話です。
ハサミやカッターでジョキンと切ると、その際にビニール片が生じるときがあります。それが混入してしまう。
ニュースには全く書かれていませんが、恐らくは「ポリエチレン」、あるいは「ポリプロピレン」
恐らくは、ここらへんの合成樹脂が異物分析として上がってきていることでしょう。
まあ、要するに「ポリ袋」の一種。紛れもない合成樹脂異物です。

この世界では、このような柔らかな混入異物のことを、「軟質異物」と呼びます。
例えば、毛髪混入や紙片、繊維などの混入。
虫、ゴキブリの混入なども、それに入ります。
そして、今回のケースのような包装資材片やビニール片の混入も同様に「軟質異物」の扱いとなります。

実を言うと、このような「軟質異物」である合成樹脂の異物混入原因のトップは、この「包装資材」「手袋」の双璧です。
お客様からビニール片のようなものが混入してしまった、と異物事故の相談がくると、まあそのどちらかが原因であるケースが非常に多いです。
ですからその場合、場内で使われているそれらを一緒に比較分析すれば、何が原因だかがわかります。材質が一致した、と分析結果が出るからです。

いずれにせよ、こうした軟質異物としての樹脂混入というのは、そのほとんどが製造・調理の作業中に何かが裂け、それが混入してしまった、というのが原因です。
今回のこの給食の件も、同様でしょう。
そこで対応策として「食材の外装は切れ目から手で裂く」とマニュアル化されていた、しかし現場ではそれが守られていなかった、というのが今回の報道に書かれています。
一見、給食作ったところがけしからん、と向かいがちな書き方になっています。
まあ、確かによくはないんです。全然よかあないんですけど、でもこの書き方には行政側、ていうか(食品衛生にはド素人である)教育委員会側の「俺達、ちゃんと通達文で『資材包装は手で裂け』と出してるからな!こっちゃ指導面での責任はないからな!」という本音が見え隠れしている…なんていうとちょっと意地悪ですかね。(笑)

なお、ニュースには「給食前に園長が試食した時に異常は見つからなかった」と書かれているのですが、そりゃあ当たり前の話です。
だって、そりゃただ園長の試食に入らなかっただけでしょ、という全くもって何の意味もない、無駄な一文です。
で、そんな何の意味もない無駄な文章が書かれているかというと、これは園側から「ちゃんとマニュアル通り、試食による確認はしてるんです!」と主張したいだけの、ただの言い訳です。

さて、一方で。
その同じ6月に、こちらは岐阜の中学校の給食にプラスチックの欠片が混入していたことが報じられています。

 

こっちは原因不明。
プラスチック片、としか書かれていません。
これだけでは、何とも解説しようがない。

ただ、どうも包装資材などの柔らかな合成樹脂ではなさそうだ。
ということは、実はこっちは「軟質異物」ではなくて硬いものの異物混入、つまりは「硬質異物」の扱いとなりかねません。
となると、金属片やガラス片などの異物混入と同様に分類されることになります。
(注意:場合によりますし、明確な区分がそこにあるわけではありません。→まとめ項参照)

つまり。
同じ給食への合成樹脂の異物混入なんだけど、どちらかといえば前者は「軟質異物」の混入事故であり、後者は「硬質異物」の混入事故となります。

そしてここで大きく双方の扱いが変わります。
というのも、異物混入というのはケースバイケースではあるものの、一般的に「軟質異物」よりも「硬質異物」のほうが、重特性の高い異物混入と扱われることになるからです。
ではそれはなぜでしょうか。

 

混入異物の区分
  • 軟質異物:虫、毛髪、紙片、ビニール片、繊維、植物編、カビ、ゴムなど
  • 硬質異物:金属、ガラス片、木片、骨片、プラスチック片など

 

軟質・硬質で大きく道が分かれる合成樹脂混入

同じ、給食に入っていたプラスチック・合成樹脂の異物なのに、双方の扱いは実は異なってくる。
これはどうしてでしょうか。
ズバリそれは、「硬質異物」の場合「やもすれば健康被害へと直結しかねない」からです。
(注意:あくまで状況によります)

どういうことか。

確かにこれらはともに、合成樹脂ということで括られる異物混入事故には変わりない。
でも、ここに大きな分かれ道があります。
それを食べて、口内を負傷した、口の中を切った。
あるいは、その可能性が十分に考えられるとなった場合に、これは「食品衛生法」の違法案件になるからです。

食品衛生の法的根拠は、「食品衛生法」です。
そしてこの食品衛生法では、「企業は不衛生な食品を作ってはいかんよ」と書かれています。
それが「食品衛生法第6条」です。

 

〔不衛生な食品又は添加物の販売等の禁止〕

第6条  次に掲げる食品又は添加物は、これを販売し(不特定又は多数の者に授与する販売以外の場合を含む。以下同じ。)、又は販売の用に供するために、採取し、製造し、輸入し、加工し、使用し、調理し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。

一  腐敗し、若しくは変敗したもの又は未熟であるもの。但し、一般に人の健康を損なうおそれがなく飲食に適すると認められているものは、この限りでない。

二  有毒な、若しくは有害な物質が含まれ、若しくは附着し、又はこれらの疑いがあるもの。但し、人の健康を損なうおそれがない場合として厚生労働大臣が定める場合においては、この限りでない。

三  病原微生物により汚染され、又はその疑があり、人の健康を損なうおそれがあるもの。

四  不潔、異物の混入又は添加その他の事由により、人の健康を損なうおそれがあるもの。

 

はい、これがいわゆる「食衛法第6条」、食品衛生をしないといけない法的理由です。

さて、ここには、「不潔、異物の混入又は添加その他の事由により、人の健康を損なうおそれがあるもの」は販売・製造してはいかんよ、とあります。
これが重要なのです。

つまり、「異物混入」自体が食品衛生法についての違法なのではありません
「異物混入によって、健康被害が発生する恐れがあるものを製造販売すること」が、食品衛生法上での違法となるのです。

逆に言うなら、それを食べても健康被害の可能性が非常に低い場合、必ずしも違法ではなくなります。
そして「軟質異物」は、虫も含めて、実は「健康被害を起こすおそれ」はかなり低いものです。
気持ち悪いか云々は別として、「軟質異物」で健康被害に直結するケースは、極めて稀ですし、疫学上の臨床データ自体が多くの場合存在せず、その因果関係を立証するのはかなり困難でしょう。

しかし「硬質異物」なら話は別です。
鋭利なプラスチック片で口の中を切った、怪我をした、歯が欠けた。
こうした健康被害が起きた場合、あるいは起きそうな場合には、これは「食品衛生法」の違法対象に、場合によってはなり得る。
これらの理由によって、同じプラスチック・合成樹脂の異物混入だとしても扱いが大きく変わってくる、というわけです。

こうなると、食品衛生法を破っているわけですから、時と場合によっては製品回収(リコール)などといったことも企業としては考えざるをえなくなります。
まあ、プラスチック片の混入程度で製品回収にまで動くかと言われたら、しない企業が多いんじゃないかな。くどいようですが、これに関してはケースバイケースでしょう。
というのも、次回事例をあげてお話しますが、一言で合成樹脂異物といっても様々なのです。
同じプラ片でも、ちょっとした小さなプラ片程度である場合と、破損した鋭利なコンテナ片や番重片などが混入するのだけでも、話が全く変わってきます。
ましてや合成樹脂の混入は、多岐に及ぶので、一概に「こうだ」とはくくりきらないのが現実です。

ちなみに言っておくと、こうした合成樹脂の異物混入において「軟質異物」である場合、あるいはよっぽど危険なプラ片の混入でない限り、それを企業などに訴えても「すみません」とQUOカードで大概話が終わります。
それ以上ごねるのであれば、これは合法であるものに対し過剰にケチをつけていることになりかねないので、クレーマー扱いとして企業側もそれ相応の対応になることでしょう。

少し話が外れるかもですが、時折ネットやSNSに出てくる、「どこそこの企業の異物クレーム対応がひどい」という話。
あれはそれを完全に勘違いしているケースであって、「ひでーのはおのれの対応じゃ!」というケースが99.9%(ていうか100%)です。
大体、リスクマネジメントが命のまともな一流食品企業のクレーム対応部署が、そんなバカなことをするはずがありません。
そりゃ企業にもよりますが、多くの一流食品企業であれば彼らは「謝罪」と「毅然さ」の線引をしっかりするよう訓練されているので、「ああそう来たな」となれば対応は急に厳しくなります。
だって、あの人達はそれでメシ食ってるんですからね?
そこらの無知なド素人モンスターがつける程度のケチなんて、いかようにもたやすく扱えてなんぼのプロばかりなのです。
あんまナメて甘く見てかからないほうがいいと思いますよ。

合成樹脂とは何か

おっと脱線しかけました、失礼しました。
ではちょっとここで、簡単に「プラスチック」「合成樹脂」について、少しだけ解説しておきます。

プラスチックも合成樹脂も、基本的には同じものです。
つまり、人工的に合成された樹脂のことをプラスチック、合成樹脂といいます。
(以下から総じて「合成樹脂」と呼びます)

合成樹脂には、加熱によって柔らかくなる「熱可塑性樹脂」と、加熱により硬さが増す「熱硬化性樹脂」があります。
しかし我々の生活のなかで多く日常的に使われるのは、前者である「熱可塑性樹脂」のほうです。
一般的なプラスチックを熱するとぐにょぐにょになりますよね。で、冷やすと固まる。これが「熱可塑性樹脂」です。

で、その「熱可塑性樹脂」において最も普段使っているのが、「汎用プラスチック(汎用樹脂)」というものです。
まあ、一般的に「プラスチック」「合成樹脂」と言ったら、その多くはこのことだと思っていいでしょう。
とにかく安くて使い勝手がいい、というのがその特徴です。
文具やバス・トイレ用品、食器など、我々の生活はこうしたプラスチック、合成樹脂を材料としたものにあふれています。

更には今月からなぜか有料化した、レジ袋。
これも「ポリエチレン」や「ポリプロピレン」といった「汎用プラスチック」に分類される合成樹脂を材質としたものです。

 

このように合成樹脂は、様々な形態、用途として広く使われています。
そしてそれは、当然ながら食品工場や厨房などでも同様です。
その結果、合成樹脂の異物混入というものが、時として発生しうるのです。

まとめ

今回は、合成樹脂・プラスチックの異物混入について、その基礎的な話をさせていただきました。

合成樹脂・プラスチックの混入異物というのは多岐に及ぶのですが、大きくそれらは二つに別れます。
それがビニール片や包装資材片、手袋片のような「軟質異物」であるのか、硬いプラスチックの破片のような「硬質異物」です。

 

合成樹脂の混入異物
  • 軟質異物:包装資材片、手袋片、フィルム片など
  • 硬質異物:プラスチックの破片など

 

ただし。
断っておくと、これらにおける大きさや形状、材質などにおける具体的な区分基準などは全くありません。
基準となるのは、あくまで曖昧な「健康被害になりうるかどうか」という線引だけです。
よってこれらの区分は、あくまで「異物混入対策上における便宜上の区分」でしかなく、法的基準でも学術上の区分でも全くないですし、本当にケースバイケースです。
さらには硬質異物だから皆すべて健康被害に直結するか、といえばそれもまた微妙だったりしますし、軟質異物だって深刻な場合だって多分にあるでしょう。
というかそもそも異物混入が発生している段階で、大きな問題なのですから。

では、これらの基礎を踏まえながら、次回はどのような合成樹脂の混入要因があるのか、また合成樹脂の異物混入が起こった場合に、どう対応されるのかについて、後編ではお話していきましょう。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

 

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