農林水産省による、HACCPの導入についての状況実態調査。
その結果が発表されたのですが、その結果がなかなか興味深い。
そこで今回は、その結果やそれらについての考察を、まとめていくとしましょう。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
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食料産業局とHACCPの導入状況実情調査

ちょっとだけTwitterで取り上げたんですが、先月の6月26日。
農林水産省の内部部局の一つである「食料産業局」から、ちょっと興味深い調査結果が発表されました。
それが、この「食品製造業におけるHACCPに沿った衛生管理の導入状況実態調査」というものです。

 

少しばかりこの「食料産業局」というものを説明しておきましょうか。
「食料産業局」とは、2011年、農林水産省下にあった旧「総合食料局」を再編して設置した機関です。
そこでは主に食品産業政策、例えば品種登録やバイオマス、その他、地域ブランド、地産地消、輸出促進などに関わる行政業務を行っています。
…て言われても正直あまりよく判らないんですけど、まあどうも要は「食」における行政のうち、どちらかといえば「産業サイド」にまつわる、農林水産省お抱えの行政機関の一つ、みたいです。

 

で。
その食料産業局がですね、ここしばらく「HACCP」というものについて、定期的に行っている行政調査が、この「食品製造業におけるHACCPに沿った衛生管理の導入状況実態調査」なのです。
って名前クッソ長いな例によって!

より正確に言うと、この「HACCP調査」(以下勝手に略します)は、そもそも2000年、2006年と、なんとなく単発的に行われたのが始まりです。
で、その後になって2010年以降、この10年間毎年実施されるようになった。
そしてその10年目にあたる2020年度の結果が、今回出されたこちら、というワケです。

この調査は基本、年に1回実施されます。
そしてそれらは、昨年秋の時点でHACCPについてどのような状況かというのを翌年初頭に調査する、というものです。
つまり今回出されている結果は、昨年2019年の秋時点においてどうだったかを、今年2020年の1月から2月にかけて、これまで同様に調査された結果である、ということです。

ただし、一つだけ注意が必要です。
これらの調査項目や細かな区分、調査対象は、その時期時期によって時代を反映したものとして幾度となく変えられています。
よって過去のデータと単純にそれらを比べて短絡的に語るというのは、ちょっと危険です。
例えば、食品衛生法の改正によってHACCP制度化が決まってそれが進んでいるここ数年と、HACCP導入の現実が大手や輸出メーカー主体だった数年前をですね、調査項目も調査対象企業も違うデータをただ純粋に比較してもそれほど意味がない。

まあ、そういった前提をある程度踏まえながら、以降、今年の報告データを実際に見ていきたいと思います。

2020年度の調査結果は?

それでは、調査結果を見ていくのですが、もう一度強調しておきますが、あくまでこれらは、昨年10月時点での状況を調査したものです。
まあ言ってみれば、俗にいう「ビフォアコロナ」の実情調査です。
あれから食品業界やそれを取り巻く事情も、ここ数ヶ月で、それこそガラッと変わりました。
飲食店は喉元に刃を突きつけられ、食品製造関連業には転換や今後の対応というリアリティに向かわされ、場合によってはかなりシビアに予算を絞られ、今に至ってます。いや、現在進行形で進んでいるのが実情でしょう。
そういう前のデータであって、今とそれはややながら事情が違うということなども含めて、見ていったほうがいいかと思います。

では、ここから結果報告。
まずは、食品業界としての全体像から見ていきましょう。

 

2020年度HACCP調査結果
  • HACCP導入済み:22.5%
  • HACCP導入途中:18.0%
  • HACCP導入を検討している:21.0%
  • HACCP導入については未定:18.9% 
  • HACCPに沿った衛生管理をよく知らない:19.7%

 

 

うーん。
数字やパーセンテージだけ言われても、ちょっとピンとこない。そういう人も多いかもしれませんね。
そこで一つ、補助線を引いてみましょうか。
昨年の調査結果と比べてみましょう。
つまり、食品衛生法改正直後の食品業界からどのように業界全体が変わっているか、それをもうちょっとだけマクロの変化として捉えてみましょうか。

 

2019年度HACCP調査結果
  • HACCP導入済み:19.6%
  • HACCP導入途中:14.9%
  • HACCP導入を検討している:23.3%
  • HACCP導入については未定:25.9%
  • HACCPに沿った衛生管理をよく知らない:16.3%

 

 

成程、導入に動いている事業者が(導入済み+導入途中)34.5%から40.5%と、大きく伸びている
まずは、ここがポイントでしょう。
つまりは多くの事業者が、この1年でHACCPにガチで取り組むようになった。
それが数字データとして、現れているわけです。
恐らくこんなデータは他にはないので、この1年でHACCPの導入が大きく進んだことに対するかなり有力な論拠、エビデンスになることでしょう。

しかし一方で。
よくよく見てみると、HACCP導入未定事業者が、18.9%から25.9%にも増えている
つまり、HACCP制度化が進んでいて、まあ昨年秋の段階ですから、来年の6月にはHACCP制度化が本格的に始まるというのに、導入が未定だという事業者が増えている、というわけです。

更に言うならば。
「HACCPに沿った衛生管理をよく知らない」という事業者においては、16.3%からなんと19.7%に増えています。
まあ未定者に比べれば割合は少なめですが、それだって増えている。

これはどういうことだろうか。
まさか一旦知った事業者が判らないとなるわけではないでしょう。
だからおそらくこれは単純に、といってもぼくは細かい事情はよく判りませんが、恐らくですが調査の分母、それもなかんずく小規模事業者の対象が増えた、ということなのではないか。

ちなみに。
この調査が継続的に始まった、10年前である2010年の調査結果を振り返ってみましょうか。

なんと。
HACCP導入に動いている事業者、つまり導入済み+導入途中の事業者は、18.8%です。

でもこれ、ぶっちゃけ現場のぼくの皮膚感覚では、それでもかなり、いや相当多めです。
恐らくこの段階での調査対象というのは、それ相応に規模のある事業者にしかしていないのではないか。
だって実際のところ、10年前である2010年には、まだ大手食品メーカーや海外輸出などでの必要性のある一部事業者しかHACCP認証を取得していませんでしたからね。
いや、確かに認証取得業者は、ここ10年でものすごく増えてます。
それ自体は疑う余地すらない事実です。ISO22000も、FSSCなどの国際規格もどんどん出てきた時代でしたからね。
でも、こと中小企業が多いこの食品業界においては、業界全体として見ればそれほどまでに広く進んでいたわけではなかったのが実情です。

となると、今年の調査結果である「HACCP導入企業が40%を超えている」という実情は、それから見ればものすごい広がりといえるでしょう。
この世界に関わる人にだって、10年後にこうなると思っていた人はそういなかったと思います。
いやはや、時代というのは常に移ろい変わるものなのです。

大規模事業者では9割が既に導入済み

実を言うなら、HACCPの導入状況は、当然ながら事業者の規模によって大きな差があります。
簡単に言うなら、大手ほどHACCPの導入率が高く、そして中小ほど低い、ということです。
シビアですがリアルな、現実の実態です。

まあそんなことはぼくら現場に生きる人間においてはよく判っていることなんですけど、でも実際にデータとして見てみると、一目瞭然。
この調査結果では、売り上げ規模が100億円以上の事業者はすでに9割以上がHACCPを導入済みとしていることがわかります。

ところが、です。
一方で、それ以下の規模の事業者では、なんとHACCP導入事業者は1割程度だというではないか。
まあこんなものだと思います。それが実態でしょうし、寧ろ1割もあるのか!といった感すら、ある。

要は大手メーカーではHACCP導入が常識というか最低条件になっているけれど、かたや中小メーカーではまだまだこれからだという。
そしてこの食品業界というのは、ほぼほぼが中小企業の集まりです。

どういうことか。
ごく一部である大手と、しかし大半である中小とは、HACCP導入においてそれだけの差が生じてしまっているという現実がここに見える、ということです。
まとめるなら、食品業界において大手と中小との格差がますます大きくなってんぞ、ということです。

ただし、断っておきますが、これは直ちにそれイコール「衛生レベル格差」では実はありません。
これは、大手:中小における「リスクに対する管理システム構築の格差」です。
だってそれがHACCPの本質なんですから。

いずれにしたって、今後のHACCP導入というのは、いかに中小対応が大きなカギとなっていくであろう、ということがここから見てわかります。

HACCP導入ができない理由とは

HACCP導入にあたって、どんな問題があるのか。
これについては、なぜHACCPを導入できていないのかという理由についての調査結果が結論づけています。

 

HACCPを導入できない理由
  1. 施設・設備の整備(初期投資)に係る資金:62.3% 
  2. HACCP導入までにかかる費用(コンサルタントや認証手数料など):47.0%
  3. HACCP導入後に係るモニタリングや記録管理コスト:35.4%
  4. 従業員に研修を受けさせる金銭的余裕がない:33.4%
  5. HACCPの管理手順が複雑:32.5%

 

 

これも、興味深い。
トップ5、つまりその大半がゼニの問題や、と言っている。
しかも興味深いことに、施設や設備といった目に見えるハード面への設備投資がきっつい、と言っています。
これ、現在進行形のリアリティを含んでいてちょっと面白い。

もう少し深堀りしながら、進めましょう。

まずは、1つ目。
結局、HACCP対応も「ハード」案件だ、という現実。
あるいは、そう認識されている、という現実。

本来「HACCPを導入する」というのは、あくまでそこでの管理に対するシステム構築です。
つまりは工場や飲食店を動かしている「仕組み」をどうこうしようという、いわば「ソフト」の話です。
それがまず第一に、HACCPやるには「設備」という「ハード」に払うお金がきっつい、と言っている。
ということは、これは「HACCPへの認識」が間違っているのか。
それとも、「HACCPへの現実」が間違っているのか。

で、実際にはどうかといえば。
実は、両方ありえます。というかその混合が現実だ、という話です。

一つは純粋に、HACCPへの理解不足だというケース。
であればこれは、ただの思い込み、あるいは言い訳です。
しかしそれ以上に多いのが、現実に設備が必要だというケース。
というのは、現実問題としてHACCP導入において何らかのその機能を補うのが、実際には設備や機械や施設といった「ハード」であることが多いからです。
例えば「じゃあそのCCPを管理するためにはこういう設備があったほうがいいに決まっている」、などとなることは日常茶飯事です。金属探知機や冷却システムがいい例でしょう。

勿論、それらがなければ全然だめだなんてことはない。
高額な設備投資をしないとHACCP導入は出来ない、というわけでは全くありません。
ですが、「それじゃあ全く何も設備への初期投資をせずに、どこでもHACCP導入ができるか」というと、これまた同じくらいにそういうわけでもない。

というか本質的な話、HACCPでも何でもそうですが、新たななにかを導入するのに「タダ」でできたら、世のビジネスは何一つ成り立っていません。
つまり「HACCP導入にゼニはいらない」は全くもってありえません。
だって、そんなことを言ったら教育や人件費だって、記入用紙だって、タダではないです。
行政支援?
それ、タダじゃないですよ、税金かかってます。

要するに、程度差は当然ながらあるにせよ、そりゃ何かをするためには初期投資がかかる。HACCPだって当然しかりだ。
だからここで一番重要なのは、その掛け方だということになる。
で、そのゼニの問題の比率、どこにかけるのが大変だと認識されているのかを、このデータが語っているということです。

さて、その目線でちょっとここで注目したいのは、2019年の調査結果から1位が入れ替わっている、ということです。
そう、昨年の1位は「HACCP導入までにかかる費用」だった。
要するに、コンサル屋に依頼するお金、だった。
ここが変わっているのは、これらを考える上でも面白いポイントかもしれませんね。

HACCP導入に役立つ行政支援策とは

最後に、HACCPの導入にあたって役立った行政支援策は何であるかを、導入業者に聞いてみました。

 

HACCP導入で役立った行政支援策
  1. 手引書(導入マニュアル)の整備・活用:50.2%
  2. 公的機関(保健所等)による指導:37.7%
  3. HACCP導入後に係るモニタリングや記録管理コスト:35.4%
  4. HACCP責任者・指導者の養成研修の開催:35.4% 

 

 

はい、厚生労働省やその他行政などが出している、オフィシャルな手引書の整備・活用。
これがずば抜けて一番となっています。

で一方、これに対し「低利の融資制度」は14.8%と、結構低い。
低利だとはいえ借金をするんじゃなくて、行政が出している手引書を使うのがいい、と皆言っている。

そしてついで、「公的機関の指導」だという。
あるいは、教育サポートなどが続いています。

まとめ

今回は、農林水産省が行ったHACCP制度化に向けての実態調査結果について、お話しました。
実際の業界の進捗の実態が、リアルな数字として覗けたのではないでしょうか。

また次に調査が行われたら、その結果について書いていきたく思います。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

 

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