先日、東京の大田区大井ふ頭で多量のヒアリが発見されたと報じられました。
では、ヒアリの生息の実態はどのようなものなのでしょうか。またその対応はどのようになっているのでしょうか。
防虫対策の専門家が、それについてお答えしましょう。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

なお、今回のニュースはこちらになります。

本日の時事食品ニュース

 


NHK

東京に多量のヒアリが上陸!?

先日、東京の大田区にある大井ふ頭にて多量のヒアリの生息が確認される、というニュースが報じられました。

NHKニュース
 
東京港 大井ふ頭 ヒアリ 約1500匹見つかる | NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200714/k10012515141000.html
【NHK】東京港の大井ふ頭でヒアリがおよそ1500匹見つかり、環境省や東京都が駆除を進めています。

環境省では全国の港湾を対象にヒアリの定期調査を行っていて、今月10日、大井ふ頭のコンテナヤードでおよそ1500匹のアリが路面にいるのが見つかり、土の中にも出入りしていました。

専門家が分析した結果、ヒアリと確認され、環境省や東京都は殺虫剤入りの餌などを置いて駆除を進めています


NHK

都内埠頭でヒアリがなんと、1500匹。
これまで神奈川県の横浜や千葉、京都、名古屋などで1000匹を超える多量の生息は確認されてきましたし、東京においても江東区の埠頭などではもう数百匹単位で生息が確認されています。
しかし東京都内で一度にこれだけ多量に発見されることは、確か初めてなのではないでしょうか。

しかも、ここでポイントなのは、これらだけがすべてではない、ということです。
つまり、今回発見された1500匹のヒアリの中には、巣の中心であるべき女王アリもおらず、また巣そのものすら見つかっていない。
ということは、これからだけだと状況が判りませんが、それなりの規模のヒアリの巣があり、場合によってはそれが今後拡大する可能性だって多分にある、ということです。

実は、昨年の年末近くまで、この大田区や品川区でのヒアリの生息はさほどでもないだろう、と思われていました。
確かに品川区の一部埠頭でのヒアリの営巣発見はこれまでもあったものの、昨年何度か行われた調査では発見が見られなかった。
よって江東区での生息拡散に比べると、こちらはまだ至ってなさそうだ、といった見解でした。
ところが、今回の発見はそれを大きく覆すものです。
少なくとも、ヒアリが持ち込まれて生息を定着させ、繁殖し、この規模になるまでには、それなりの月日が必要です。
つまり今回のことは、大田区の湾岸でも実は水面下でヒアリの生息が進んでいたことを明かすものとなった。

え、ちょっとまって。
江東区ではヒアリの生息が進んでいるの?
そう、進んでいるんです、実は。
昨年2019年の秋には数百匹近い生息が何度も確認されていますし、今年に入ってもそれを示すように、先月6月18日、青海ふ頭で200匹のヒアリが生息確認されています。

NHKニュース
 
東京 青海ふ頭 ヒアリ200匹以上見つかる | NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200619/k10012477021000.html
【NHK】18日、東京 江東区の青海ふ頭でヒアリ200匹以上が見つかり、環境省や東京都が駆除を進めています。

 

そもそも、どうして埠頭でこんなものが多量に見つかるのか。
それは、海外から到着する大型貨物船から、コンテナが下ろされるからです。
海外からの外来種の昆虫は、大概、海外からの大型の輸入物やコンテナなどに付着し、持ち込まれます。
なので、外国の大型船が到着するような港湾のコンテナヤードや倉庫、敷地内が、真っ先にこうした問題の発症地となります。
そしてこれがもう一段階進むと、やがてその付近、例えば近くの公園や空き地、その他で生息が始まり、定着化し、増加し、問題になります。
だから東京都内ではこのように、江東区や大田区などの港湾エリアの敷地内などで問題が起こっているのです。

ちなみに、こうしたところで問題になるのは、何もヒアリだけではありません。
例えば、江東区や大田区の湾岸では、未だににセアカゴケグモの生息が密かに問題になっています。
これらもまた、同様の原因によって起こっている問題です。
豊洲市場内にセアカゴケグモが生息しているなんて、そこで働く人なら皆知っている割と有名な話です。

更には昨今、ヒアリほど毒性は高くはないものの、やはり刺されると激痛や腫れなどの症状をともなう、同じ特定外来生物「アカカミアリ」も、港湾などでこのところ多量に生息が確認されています。
ちなみに以下のは、東京ではありませんが、最近報じられていたニュースです。
しかも生息数、なんと6000匹!

 

ヒアリについて

では、まず簡単にヒアリについての基礎知識をざっくりとお話しておきます。

もともとヒアリは南米が原産であり、そしてそこからアメリカ南部、さらには中国南部などの亜熱帯地域に生息が広がっていきます。
この日本も、今や亜熱帯地域です。
そこで、このようなアリが生息できるような環境となってきたわけです。

さて、ヒアリは体長2~6mm程度。
赤褐色ですが、しかし腹が黒みがかっているのが特徴。
食性は雑食、元来が亜熱帯性の昆虫なので、高温多雨の環境を好みます。
正確は獰猛で、攻撃的。
しかも毒を持っています。
その行動範囲は、半径400m程度、と言われています。

ヒアリの巣は、一般的な日本の黒アリとは違って、独特の「アリ塚」を作ります。
つまり、草原や土壌などに10~20センチ程度の、ちょっとこんもりと盛り上がったマウント状の巣をつくるのです。

ヒアリの特徴は、お腹に二つのコブがあることです。
それから腹の先にある毒針。これで人を刺します。

東京のヒアリ対応はどのようになっているのか

さて、東京都内でのヒアリの対応はどのようになっているのでしょうか。
このことを詳しく知っている一般の方は、そういないと思います。

まず、ヒアリ対策は、環境省の管轄です。
よって環境省のもと、実際には各自治体を主導に行われています。
各自治体は、地元の害虫駆除業者の業界団体に声をかけ、その業界団体に所属している業者に、具体的実務を割り振っています。

例えば東京都では、昨年2019年秋に連続してのヒアリ多量発見について、緊急対応が進められました。

 

で、その結果、害虫駆除業者の業界団体に声がかけられ、数業者によるヒアリ討伐チームを結成し、対応を行っています。
おお、「アベンジャーズ」か!?(それ全然違う)

 

まず、今回のように「ヒアリじゃないか?」というものが発見されると、都から直ちに連絡が入ります。
最初に動くのは、調査部隊です。
そこで、これが本当にヒアリなのか、現地に向かって生息調査を実施します。
おお、「調査兵団」か!?(それ全然違う)

 

では現場でどうするか。
各所に多数のアリ用捕獲トラップを設置し、ある一定期間の後にそれを回収する。
バグトラップというものですね。ここに場合によっては、誘引剤を付着して設置します。


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一定期間の後、それらに捕獲されたヒアリの状況を見ながら、どこまで生息が広がっているのかを調べていくのです。
これは工場内などでの虫に対する生息拡散調査と同じ原理ですね。

さて、ある程度の生息状況の目星がついたら、今度は討伐隊の出番です。そして現場に、駆除チームが投入されます。
何をするのか。
ここだ、と調査隊が絞り込んだエリアに、アリ用の毒餌、いわゆる「ベイト剤」を各所に仕掛けていくのです。

 

ですが。
実はアリというのは、実は嗜好性の違いが大きな昆虫でもあります。
この毒餌は食べるけれど、こっちは全然食べない。
こういうことも珍しくありません。
当たり前ですが、毒餌は食べないと効きません。
なので、その選定が腕の見せどころとなります。
また場合によっては、液剤などを併用して使う場合もあるでしょう。
よほど広範囲に広がる場合は、動力噴霧器などの使用もありえるかもしれません。

ですから今回もまたこのようなかたちで専門チームが、すでに動いているはずです。

ヒアリはどのくらい広がっているのか

では、ヒアリは実際のところ、どのくらい生息が進んでいるのでしょうか。

今回、生息が見つかったのは、大田区の大井ふ頭です。
で、ここからどのくらい周辺に広がっているのか。

これは半ばぼくの想像というか、ただの(それでも、それなりにアンテナ立てて情報を仕入れているプロの)予想ですが。
確かにこの捕獲数は、それなりに多いし、それなりに時間をかけて生息が進行している。
だけど、まだそれほど周辺にまでは広がっていない、かなり局所的、限定的な状況である、と思います。

何故か。
アリというのは、ある程度巣の規模が大きくなると、新な女王アリが誕生し、巣立ちます。
そうやってアリは拡散し、生息数を増やしていきます。
しかしそこまで育つには、ある程度の時間経過、数年単位が必要です。
そして、亜熱帯性のアリならば、時期差こそあれ基本的にそれが行われるのは、夏場です。
ですが、ヒアリが東京の港湾付近で問題になったのは、昨年の話です。

勿論、潜在的にすでに生息が進んでいた。
そうことも考えられるでしょう。

ではもう一つ、情報を出しましょう。
ちょっと冒頭でもお話しましたが、実は昨年まで、このふ頭を含めた大田区での生息はまだされていない、とされていたんですね。
ですが、しかし。
それが、ここにきて実はやっぱり生息がありました、というのが今回のニュースの内情です。
つまり、このニュースは「ないと思ってきたけど、やっぱ大田区の港湾部にもヒアリ生息しとったわ」と言っている。
これが、今回のニュースの、実はポイントその2です。

どういうことか。

先に、東京では昨年秋の江東区での連続しての多量のヒアリ生息確認をうけて、緊急対応が進められたと書きました。

これを受けてヒアリ調査隊は、昨年11月末、江東区と大田区の港湾近辺にてヒアリの一斉生息調査を行ったのです。
この結果については、普通に都も正式報告しています。
で、どうだったか。
江東区には500匹いました。
大田区では発見されませんでした、となった。

江東区、やばっ。
確かに港湾付近では、生息が進んでいた。
でも、同じような港湾エリアである大田区には、いなかった。
良かったわー。

いやいや。
ちょっと、いいですか?
11月末ですよ?
暖冬だったとはいえ、さすがにもう冬直前ですよ!?
だって相手、亜熱帯性のアリなんですよ?
そんなん、よっぽどいなければ捕まらないわけです。

そりゃ確かに、都での緊急対応が始まったのが秋、10月以降でしたから、時間もそれほどなかったのでしょう。
でも亜熱帯性のアリに対して11月末に生息調査を行う、というのはちょっと現状把握データにはそぐわない。

しかし逆に言うなら、それでも江東区では500匹ものヒアリが捕獲されたわけです。
もう、わかりますね。
そんだけ生息が進んでいた、と結果が語っている。

それらを合わせて考えてみると、今はまだかなり局所的であり、まだ女王アリが巣立って他に生息を飛び火していることは、「現状だけを考えると」まあ全くないとは言いませんが、そんなにないのではないかなあとは思います。

しかし、これはあくまで「現状」です。
1500匹が捕獲された。
他にもまだいそうだ。巣も女王アリも見つかってない。
そして、夏が来る。
活動が活性化する。
次に何が想定されるのか。

新たな女王の生誕と、それらによる巣立ちです。

少なくとも、今回は局所的だったかもしれないけれど、でも夏以降、それがそうじゃなくなるかどうかは今が正念場だ、というのは間違いないかと思います。

ヒアリに刺されたら死ぬのか

最後に一つ。
「ヒアリに刺されると、死ぬ?」という話が時折浮上します。
本当か。

確かに、海外では実例がないわけじゃない。
これはどういうことなのかというと、いわゆる「アナフィラキーショック」というやつです。

アナフィラキーというのは、要するにこれはアレルギー症状のことです。
このアナフィラキーによって血圧の低下や意識障害などが起こり、やもすれば死に至ってしまうのが、この「アナフィラキーショック」です。

んじゃやっぱりヒアリマジ怖ぇえ!ってなりかかるところでしょうが、ちょっと待ってと。
基本的に、ヒアリに刺されることで「アナフィラキーショック」を起こす確率は、極めて低い、とは言われています。
というか、そうそう簡単に死にかけませんし、死にません。
ちょっとこれは不安を煽りすぎだと思います。

一般的には、ヒアリに刺されて重度のアナフィラキーショックを起こす確率は、約1%。
更にそれが致死に至るには、0.001%程度だ、と言われています。

ですが、ヒアリに刺されると、そりゃ死にはしないけれど、でもハンパなく痛いし、ものすごい腫れるのも事実です。
ぼくは刺されたことがないので実際には知りませんが、結構大変そうです。

まとめ

今日は東京にあらわれたヒアリについて、その実情や対応についてのお話をいたしました。

各地でもヒアリの生息確認はちょいちょいされていますが、東京都内においても江東区の埠頭のみならず実は大田区や品川区などの埠頭でも生息が進んでいたのだ、というのが今回のお話です。

なお環境省では常にそれらの情報を開示していますので、もし興味のある方はそちらを御覧ください。

 

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

 

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