最新の食品業界ニュースからピックアップし、食品衛生管理のプロの目線から分析・コメントさせていただきます。
今回の話題は、先日の埼玉に続いてまたもや集団食中毒が続いて発生。
今度は滋賀県の刑務所で発生した食中毒について、考察していきましょう。
改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。
なお、今回のニュースはこちらになります。
- 滋賀刑務所で120人集団食中毒 受刑者が調理の給食原因(2020年7月10日)
今度は滋賀県の刑務所で集団食中毒発生
まずはもう一度、ニュース紹介からしておきましょう。
滋賀県大津市の滋賀刑務所にて、給食による食中毒が発生。
受刑者のうち120名が、下痢や腹痛、発熱などを訴えた、とのこと。
以下、ニュースを引用します。
大津市保健所は10日、滋賀刑務所(同市大平1丁目)で食中毒が発生したと発表した。所内で調理された給食を食べた受刑者120人が4日午後から5日にかけて下痢や腹痛、発熱などを訴えた。(略)
市保健所などによると、4日に給食を食べた受刑者は計523人。
発症者に共通した食事が給食以外にないため、給食が原因の食中毒と断定した。
こないだの埼玉の食中毒に連続して、またもや出ました集団食中毒。
しかもこちらは刑務所。
でも、実は結構多いんですよ、刑務所での食中毒って。
そこで、今回はちょっとチャレンジャブルなお話。
お題はなんと、
「刑務所と食中毒」
です。
ええー!?
まじっすか。
自分で決めておいて、いやこれ、まじっすか?
まじやるんすか!?
正直…というか正直も何も、ぼくはそもそも刑務所なんてよう知らんです。
大体、入ったこともないし、刑務所の実情なんて知らない。
せいぜいYoutubeで「懲役太郎」の動画を晩酌がてらに眺めるくらいですわ。
まあ、でも食中毒に関しては、ぼくの領域。テリトリー。
なので、ここから語れることのみを武器に、ちょっとチャレンジャブルにやってみるとしましょう。
いやあ、無謀な企画だなあ、我ながら(笑)。

今回の集団食中毒をプロファイルする
はい、まずは。
今回の集団食中毒を、食品衛生のプロがプロファイルします。
て、
おい、やめろ!
絶対にやめろ!
あのな、
マジでやめろ!
こちとらこないだ、赤っ恥かいたトラウマからまだ一週間くらいしか経ってないんだよ!
ドヤ顔で「これウェルシュ一択ですね」って言ったら病原大腸菌だった事件から、まだトラウマがカサブタだからね!
もうそれひっぺがすの、マジでやめろ!
痛い、痛い!
しかも。
今回は刑務所というだけあって、情報が全く出てきてない。
刑務所の食中毒って、クローズドな環境だけに結構原因究明が難しかったりするんですよ。
そんな情報もないのに、当てずっぽうで何も言えないから、マジでやめろ!
大体、世にはわからないことだって一杯あるんですよ。
だからマジでやめろ!
まず。
そもそもこの手の集団食中毒というのは、ある程度目星が決まってます。
その過去記事にも書きました。
まあ、普通に、あくまで一般論でしかありませんが、しかも今回は情報がメチャクチャ少ないですが、それでもこれらの状況を鑑みて、おおよそここらへんだろう、という程度の目星は付けられる。
- カンピロバクター
- ウェルシュ菌
- 病原大腸菌
このどれかってのが、今時期での大概のパターンです。
…とか進めていくやつ、マジでやめろ!
ノロというのもないわけではありませんが、この場合は違いそうだ。
だったらもっと嘔吐しまくってます。
んじゃ、カンピロか。
前にも書きましたが、加熱の多い献立でカンピロといのは、それほど集団化することはない。
…ように思う。
いや、思うだけです。
想像は誰にも許された自由なのです。
さて、やっぱり一番怪しいのは、ウェルシュ菌でしょう。
ええ、またー!?
またやるのー!?
やらないよ!
「まず、真っ先にこういう場合にあげられる容疑者が、ウェルシュ菌ですよ」ってことです。
おっと、決めつけはまだ早い。
同じ失敗は繰り返さない、二の轍は踏まない。大人の基本です。
もっと物事は多面的に見ていこう。
何せ今回はもっと慎重ですからね!
大体、刑務所で起こる集団食中毒というのは、大概がスープとかシチューとかカレーとかパスタだとか何だとか、一杯作りやすいのを大量に作って、で常温放置によるケースが多い。
で、その場合の犯人がウェルシュ菌です。
ウェルシュ菌というのはどこにでもある菌なのですが、そのうちある種だけが問題になります。
それらが食材として汚染されたまま調理に使われることで、問題が起こります。
まずこのウェルシュ菌は「偏性嫌気性」といって、空気を嫌い、スープやカレーなどの中に潜り込みます。
逆に言うなら、空気に触れやすい食品ではさほど問題になりづらい。
(炒めものとかでもなることもありますが、メニューや場合によります)
さて、このウェルシュ菌は熱に強く、加熱され、煮込まれたりすると耐熱性の芽胞を作ってその頑丈な殻の中にこもります。
いうてみれば、自家製バリアです。
すると100℃で数時間の加熱にも耐える、という、まあ普通の調理では殺すことができなくなるのです。
つまり、ウェルシュ菌の食中毒は加熱されても起こりうるのです。
さて加熱された食品をすぐ食べればいいのですが、急速冷却や高温保存などをせず常温で放置すると、その間にゆっくりと冷めていく間に生き残ったウェルシュ菌が増殖する。
そして食品を汚染します。
しかもこの続食の速度が思いの他に早かったりします。2、3時間で食中毒が可能なレベルにまで増殖し、汚染されるのです。
つまりウェルシュ菌の集団食中毒というのは、大量に調理した食品をそのまま常温で放置したことで起こることが多い。
しかもこいつは、タンパク質を分解しないので食べても味がわからない。
「あれ?傷んでる?味がおかしい?やめとく?」とかがないわけです。
さて、刑務所となると、大量に作って常温冷却などザラなのではないか。
温蔵などはしないのではないか。
…と思います。
いやマジでここらの事情は正直知りません。
で、常温に放置した場合、ましてや夏だとなかなか冷却しづらくなり、そのぶんだけ、ウェルシュ菌の増殖がしやすくなる。
実際、刑務所の食中毒ではウェルシュ菌であることが何度も繰り返されているので、またウェルシュかな…と一見そう思います。
…いや、思うだけですから。
つーか、マジでやめろ。
しかも、報道を見る限りでは潜伏期間も短く、その日のうちに一斉に食中毒の症状を訴えている。
そして更に症状を見ると、腹痛、下痢であり、みんな軽症のまま短期間に回復している。
このように、ウェルシュ菌による食中毒は集団化しやすいけれど、回復も早く1日程度で収まってしまうような軽症のことが多い。
なので、ああ、こりゃやっぱりウェルシュだよね。…って思う。
…いや、思うだけだっつーの!
ところが、です。
患者の症状を見ると「発熱」ってのがあるんですね。
どのくらいか知らないですが、でも、ある。
ここがちょっと引っかかる。
というのも、ウェルシュ菌の食中毒で嘔吐や発熱を伴うことは、余り多くないはず。
…だったように思う。
いや、だから思うだけだからマジでやめろ!
ということは、病原大腸菌か。
これも、多分にありえる話です。
見てみると潜伏期間も、んー、確かに少しウェルシュにしちゃ今回は少しばかり長めだ。
小菌数で発生する病原大腸菌の場合、このようなムラの多いケースは少なくない。
それに病原大腸菌も、集団食中毒の大常連です。
こないだの埼玉の給食がいい例でしょう。
ここでは結果的に4000人近くが食中毒になった。
それに実際、刑務所での病原大腸菌による集団食中毒例って、これもこれで意外と、いやかなり多い。
ということは、こっちの線も…
て、
おいマジでやめろ!(涙目
お願い、かさぶた、めくらんといたげてー!

刑務所での食中毒
実は刑務所での食中毒事例というのは、それなりにあったりします。
例えば、2018年に京都の刑務所で、621人がウェルシュ菌によって食中毒に。
これはかなりな規模だったので、それなりに話題になりました。
この2018年に起こった食中毒の中では、患者数としてはこれが最大規模のものでした。
更にはその後、宮城県は仙台の刑務所でも249人の食中毒が発生。
こっちもウェルシュ菌でしたが、しかし同刑務所では、その一年前に「病原大腸菌O6」での集団食中毒が発生していたばかりだったということ。
ちなみに、ここにきてですが、病原大腸菌ってお分かりですかね?
少しだけ、以下説明します。
まず、「大腸菌」というのは、糞便系大腸菌群のことです。
一般的には、「E.coli」(「イーコリ」。Escherichia coliの略)と呼ばれることもあります。
食品の中にこれらが存在すると、ひとや動物の糞便汚染の危険性が高まります。
まあ自然界にも広く存在するので必ずしも、というわけではありませんが、いずれにせよ食品の大腸菌による汚染は糞便由来の汚染を推測させるものであって、あまり好ましいものではありません。
しかもこれら大腸菌の中には、食中毒を起こし、ひとの健康を害するものも存在します。
それらを「病原大腸菌」と呼びます。
「病原大腸菌」は、その食中毒の原因や症状から5種類に分けられます。
先の韓国で問題になったのは、「大腸菌」の中の「病原大腸菌」である、「腸管出血性大腸菌(EHEC)」が原因です。
悪名高きO157も、この「腸管出血性大腸菌(EHEC)」の一つです。
- 腸管病原性大腸菌(EPEC)
- 腸管組織侵入性大腸菌(EIEC)
- 腸管毒素原性大腸菌(ETEC)
- 腸管出血性大腸菌(ベロ毒素産生性大腸菌)(EHEC)
- 腸管凝集接着性大腸菌(EAggEC)
…と、ここまでがベーシックな話。
詳細は、過去記事を読んでみてください。
で。
別に「病原大腸菌」というのは、O157だけではありません。
実は、上のように、色々な「病原大腸菌」があります。
そしてこの「病原性大腸菌O6」というのは、この5種ある病原大腸菌のうちの「腸管毒素原性大腸菌(ETEC)」と呼ばれるものです。
この「腸管毒素原性大腸菌(ETEC)」はエンテロトキシン(毒素)を腸の中で作ることから、その名が付けられています。
比較的短い潜伏期間と回復期間(症状によっても違うこともあります)で、しかも大規模化しやすいというのが特徴なので、半日後に集団で大騒ぎになることが多い。
状況としては、今回のケースに結構近そうです。
ちなみにこの「ETEC」では、千葉の刑務所でも2005年とちょっと前になりますが、400名を超える大きな食中毒事故を起こしています。
情報がクローズドになりやすい刑務所での食中毒の割には原因食材まで特定されており、この場合では感染経路は不明ながらも献立のうち「白菜キムチ漬け」から腸管毒素原性大腸菌O6:16が検出された、との記録が残っています。
このように、加熱をしない漬物やサラダなどで問題になりやすいのが、病原大腸菌による大規模食中毒の特徴です。
刑務所ではありませんが、つい先日起こった先の埼玉での小中学校の給食による集団食中毒の原因も同様です。
揚げ物と加熱品ばかりの献立のなか、「海藻サラダ」だけが生物だった。
ワカメを戻すなどの過程で汚染が広がり、加熱しないまま出されたのでこのようなことが起こったのです。

刑務所の意外な?食事事情
さて。ここからは素人談義。
ぼくは刑務所事情に全くうといので、どういうことかよく判りません。
でも、どうも少し調べてみると、このような刑務所の食事というのは受刑者たちが自ら作っている、ということらしい。
確かに、このニュース記事にも、それらしいことが書かれています。
給食は普段、担当の受刑者が所内の給食施設で調理しており

そう。
「刑務所のご飯は、
受刑者自身が作っていたんだよ!」


…と驚くほどでもないんですけど、そうなんだ。
意外と知られていない事実。
あー、でもそういえば昔、そんな話を確かに聞いたことあるなあ。
いずれにせよ。
素人が作る、となると調理時の衛生管理も怪しいものだ、という話があがりかねない。
ここらへんの実情は、素人なぼくにはよくわからないのですが、でも確かにそう言われれば、加熱はまあされるとしたって、食材の取り扱いによる二次汚染や、冷却の失敗などはあったとしてもおかしくない、ような気もしなくもない。
まあ、このあたりの実情については、ぼくの専門外なので、そちら側に詳しい人達に任せるとしましょう。
ただし、個人的に、いや「あくまで個人的に」ですが、本当かどうか知りませんがちょっと面白かったのは、「こうして集団食中毒になると、薄味で質素な食事を作る刑務所内の厨房が業務停止処分となって閉鎖され、結果的にシャバの(刑務所の食事よりは)おかずたっぷりな美味い弁当が食べられるので受刑者がこっそりと喜ぶ」という、まことしやかな「ネタ」でした。
本当かどうかは全く判りませんけどね。

まとめ
今回は、刑務所で発生した集団食中毒についてお話をいたしました。
まあ、今回はあれかな、
献立も何も判りませんが、こうやって色々と見ていった結果、刑務所の中で衛生管理の知識もそれほど徹底されていない厨房で受刑者が作っているという環境を考えると…。
うーん、
病原大腸菌が本命、次点がウェルシュ菌…にしておこうかな…。
て、
おいマジでやめろ!(完全涙目
以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

・どうやって防虫管理・衛生管理をすればいいか判らない
・今やっている防虫管理・衛生管理が正しいか判らない
・何か問題が発生したときの対応が判らない
・取引先や保健所の査察が不安だ
・でも余りコストもかけられない
だったら貴方が防虫・衛生管理のプロになればいいのです!
- 私達は、どんな工場、お店の方でも防虫管理・衛生管理のプロレベルに育成することが出来ます。
- 何故なら、防虫管理・衛生管理のプロとは、基礎知識に加えて「正しい管理の仕組み」を作れる能力を持つ者のことだからです。
この「管理の仕組み作り」を知るこそが、防虫管理・衛生管理のプロへの道なのです。 - そんな防虫管理・衛生管理のプロを育成し広めることで、日本の「食の安全安心」を、さらにより広く、より高くさせることが私たちの使命だと信じています
- どうですか?
そんな防虫管理・衛生管理のプロにあなたもなって、本当の「食の安全安心」を私達と一緒に広げていきませんか?
