先日の埼玉県八潮市の小中学校での集団食中毒について、事故報道の当日に衛生管理のプロであるぼくが出した原因究明のプロファイル。
それが前回の記事でしたが、今回はそれについての検証・反省・考察を行いたく思います。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

なお、今回のニュースはこちらになります。

本日の時事食品ニュース

 

埼玉県で3500人近くの集団食中毒発生

梅雨ですねえ。
実はこの数日、この天候や低気圧もあってかすっかり体長を崩してしまい、おとなしく養生していたぼくです。
でも今日(7月7日)からようやく復帰。
皆さんも梅雨の間の体調管理には、くれぐれもお気をつけください。
(そのせいで、タイムリーな内容だったのに、ブログ更新も空いてしまいました。残念!)

さて。
梅雨といえば、問題になってくるのが食中毒です。
前回も書きましたが、今年の5、6月は例年に比べてメチャクチャ食中毒が少ない。
それは外食の自粛に加えて、手洗い&アルコール殺菌の徹底がなされているからでしょう。

しかし、そんな中に遂に出てしまいました。
なんと、いきなりの三千人超えの集団食中毒です。

以下、ニュースを引用します。

毎日新聞
 
小中学校給食で食中毒、3453人症状 埼玉・八潮のセンターに営業停止命令 - 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20200702/k00/00m/040/275000c
 埼玉県八潮市の市立小中学校で起きた下痢や腹痛の集団発生で、県は2日、給食が原因の病原大腸菌による集団食中毒と断定し、協同組合東部給食センター(同市)が運営する「四季亭八潮工場」に対して3日間の営業停止命令を出した。県食品安全課によると、市内全児童...

埼玉県八潮市の市立小中学校で起きた下痢や腹痛の集団発生で、県は2日、給食が原因の病原大腸菌による集団食中毒と断定し、協同組合東部給食センター(同市)が運営する「四季亭八潮工場」に対して3日間の営業停止命令を出した。
県食品安全課によると、市内全児童・生徒と教員の約半数に当たる計3453人が症状を訴え、いずれも軽症という。

 同課によると、6月26日に提供された給食(鶏唐揚げ、ツナじゃが、海藻サラダ、米飯、みそ汁)が原因で、患者17人中12人の便から病原大腸菌が検出された。
工場は同29日以降、給食の提供を取りやめている。

 

患者数、なんと3500人近く!
ぼくが報道を聞いて当日だか翌日だかにアップした前回記事の時点では400位(それでも十分に多いですが)だったのですが、その翌日か2日くらいで3000人超えるまでに倍増しました。

で。

前回の記事で、ぼくは衛生管理のプロとしての身なりにあれこれ原因究明の予想を発表しています。
後出しジャンケンになると嫌なので、こちらは記事訂正などしていません。
(後で書きますが、これはこれで我ながらプロとして正しい論の道筋だったと思いますね)

 

では、今回はこの予想結果について、話していくとしましょう。

プロファイル結果への指摘評価は、「残念!でも惜しい!」

さて、結果はどうだったでしょうか。

これについては、もうこの数日後早々に「病原大腸菌」であるということが判りました。
タイミングからして、恐らくは患者の検便結果から共通して出たのでしょう。

さて。
ぼくは次のような可能性を、前回にあげています。
もし、このくらいの集団食中毒(この時点ではまだ400人規模でしたが)となると、可能性は次の通りのどれかだと。

大規模な集団食中毒に発展しやすい要因微生物
  • ノロウイルス
  • ウェルシュ菌
  • 病原大腸菌

 

まあ、このくらいならプロとしてざざっと目星が付けられなかったらダメですね。
このあたりから、状況を探っていくことになります。

まず症状とその軽度、時期などなどから、ノロの可能性は高くない。
そこで、「ノロウイルス」を候補から外しました。
ここまでは、まあ当然の帰結です。

で、献立が次の鍵になる。
さて、今回の給食の献立は何だったのか。

問題となった給食の献立
  • 主食:ごはん
  • おかず:鶏の唐揚げ、ツナじゃが、海藻サラダ
  • スープ:味噌汁

 

これも既に報じられている通りです。
ただし。
実はこれだけでは情報としては、かなり不足しています。
例えば海藻サラダには何が入っているのか。
味噌汁の具は何なのか。
鶏のから揚げに付け合わせはあるのか、ないのか、など。
それらが変わるだけで、話が根本から変わります。

で。
ぼくはこの時点で、ウェルシュ菌だと予測しました。

まあ、正直言うとこれ、プロなら普通に行き着く結論だと思います
だって、「軽症、腹痛や下痢の数百人規模の給食による食中毒」と聞いて、それなりに知識があるものならば、最初にウェルシュ菌が有力容疑者になりますからね。
まあ、言ってみれば、本命勝負です。
プロファイルだのと言ってますが、ぶっちゃけガチ本命の単勝狙いです。

ところが、結果としては「病原大腸菌」でした。
おお、そうきたか!
と、ぼくは思いましたね。

「海藻サラダだったか!」

とね。
これは競馬用語で言ってみれば、「単穴」。
いや、本命の対抗馬にすらならないけれど、でも展開次第では場合によっては、1着になると予想される馬のことを「単穴」というのですが、それです。

え、負け惜しみ?

まあ、ちょっとはありますね(笑)。
はい、素直に言います。
外しました、すみませんしたー!

でも、更に負け惜しみを許してくれと言うと、それなりに結構惜しかったと思いますよ。
ていうか、普通の思考回路をしていたら、病原大腸菌出てこないんじゃないなぁ!
←負けず嫌いハンパない

病原大腸菌とは

ところで、ニュースを見ても結構誤解されているケースをまま見ます。
記事を書いている人も、よく判っていません。
まあ素人が書いているので、仕方ないと言えばそこまでなのですが。

そこで、ここで簡単に病原大腸菌の解説をしておきます。
前回のものを既に読んだ、という人は、この項は飛ばしてしまって構いません。

まず、「大腸菌」というのは、糞便系大腸菌群のことです。
一般的には、「E.coli」(「イーコリ」。Escherichia coliの略)と呼ばれることもあります。
食品の中にこれらが存在すると、ひとや動物の糞便汚染の危険性が高まります。
まあ自然界にも広く存在するので必ずしも、というわけではありませんが、いずれにせよ食品の大腸菌による汚染は糞便由来の汚染を推測させるものであって、あまり好ましいものではありません。

しかもこれら大腸菌の中には、食中毒を起こし、ひとの健康を害するものも存在します。
それらを「病原大腸菌」と呼びます。

「病原大腸菌」は、その食中毒の原因や症状から5種類に分けられます。
先の韓国で問題になったのは、「大腸菌」の中の「病原大腸菌」である、「腸管出血性大腸菌(EHEC)」が原因です。
悪名高きO157も、この「腸管出血性大腸菌(EHEC)」の一つです。

病原大腸菌
  • 腸管病原性大腸菌(EPEC)
  • 腸管組織侵入性大腸菌(EIEC)
  • 腸管毒素原性大腸菌(ETEC)
  • 腸管出血性大腸菌(ベロ毒素産生性大腸菌)(EHEC)
  • 腸管凝集接着性大腸菌(EAggEC)

 


Wikipedia

…と、ここまでがベーシックな話。
より詳細については、以下過去記事を読んでみてください。

 

で。
別に「病原大腸菌」というのは、O157だけではありません。
実は、上のように、色々な「病原大腸菌」があります。
で、多くの「病原大腸菌」による食中毒は、O157ほどに症状が重くありません。

今回のケースも同様です。

手指汚染を見くびってはいけない

さて、ぼくがどうして「病原大腸菌ではない」としてしまったのか。
それは「献立のほとんどが加熱されていること」、つまり調理工程上、どう見たって病原大腸菌での食中毒はありえないことです。

それからこっちが重要ですが、「さすがにこのコロナ時期は手洗いと殺菌を徹底してるだろ」と見くびってしまったことです。
これはちょっと反省しないといけませんね。

病原大腸菌というのは、70度1分で死滅が可能です。
つまり、熱に弱い。
「熱に弱い」ということは、この献立の中で「唐揚げ」や「ツナじゃが(煮物)」、「みそ汁」、「ごはん」などではまず集団食中毒にはならない、ということです。

んじゃどんなもので、病原大腸菌の食中毒が起こるのか。
例えば、サラダです。
何故なら、あまり加熱しないからです。
時折、ポテトサラダをはじめ、生野菜のサラダで問題が生じます。

お、待てよ?
献立に「海藻サラダ」があるじゃないか!
そう思います?
でも、それで数百人の患者数規模に発展するか、と言われたら結構「いやいや、そこまでは…」となるのが、この病原大腸菌による食中毒です。
前提のレベルで意外な盲点があったらなりえますけど、でも一般的にはそこまではといった感じです。

先にもいいましたが、コロナ騒動期で手洗いには皆が慎重になっている。
つまり、一番多いであろう手指汚染の可能性って、少ないのではないかなとぼくは思います。

 

まず。
上にも引用しているよう、病原大腸菌は70℃1分で死滅します。
ですから、この献立のほとんど、つまり「ごはん」「味噌汁」「ツナじゃが(煮物の場合)」「唐揚げ」を普通に作ったら、このような集団食中毒は発生しません。

ネット上で「唐揚げ説」があげられてましたし、それは子どもたちの発言、「中が赤かった」などというものがソースかもしれませんが、これは絶対に、ありえません。ただのたわいない子供の発言です。それを本気にしてはプロは務まりません。

んじゃ、どうして唐揚げではないのか。
混ぜ込んで作るような「鶏ひき肉」のフライならまだしも、一般的な唐揚げで病原大腸菌が唐揚げの内部にまで汚染し、この規模の食中毒を起こすなんて、まずありえないからです。

あのね、肉にもぐりこむのがうまいというカンピロバクターでさえ、唐揚げの温度には耐えられません。
つまり、ちょっと程度で汚染された鶏肉でも、唐揚げにされれば食中毒にならん、ということです。
ましてや、中がちょっと赤かった、なんてので少なくとも3000人超えの食中毒が引き起こされることは、ありえません。

そこまでは、正しかった。

しかし海藻サラダの可能性を、少し軽んじてしまった。
ぼく自身が読み直しても判りますが、他の分析はよく出来ていたけれど、この「海藻サラダの可能性」だけ、そうですね、ちょっと論が弱い。
具体的には、大規模化の可能性が薄い、というだけでたやすく候補から外してしまった。
ろくに資材や製造工程が予測できないのに、です。
プロとして、ここはちょっと「ダメ」でした。反省。

というのも、これはぼくの頭の中で「ウェルシュ菌説」に引っ張られてしまったゆえのミスです。
最初から「病原大腸菌」だと判っていれば…という負け惜しみと言い訳はやめておきましょう(笑)。

それともう一つ。
今回のぼくの最大の失敗はなにか。
それは、手指汚染の可能性を低く見積もっていることです。
さすがにコロナあけの給食で、手洗い&アルコール殺菌の徹底くらいはするだろう、と高をくくってしまっている。
うん、これは実に反省すべき点ですね。
これからは気をつけるようにしましょう。

病原大腸菌が集団化するにはワケがある

さて、ここで別の目線が必要になります。
「病原大腸菌」が原因なのはわかった。
では、なぜこれだけの規模に拡大したか、です。
だって、10人とかじゃないですよ、3000人ですよ!?
ここまでに広まった必然性は何なのか。
この「規模」に対する目線が求められます。

ではなぜか。
それはもう、「調理として広く汚染された食材が、そのまんま出されてしまった」からです。

実のところ、
今回の原因は「海藻サラダ」の「ワカメ」だということが有力視されています。

ニフティニュース
学校給食による3453人の大量食中毒発生 原因は海藻サラダの可能性|ニフティニュース
https://news.nifty.com/article/entame/showbizd/12189-20162362137/
(写真提供:東京都健康安全研究センター)埼玉県は八潮市の小中学校で給食を食べた児童・生徒らが病原大腸菌による食中毒になったと発表。しらべぇ取材班は、県、教委、給食センターから話を聞き、その原因を探った…

現在までに原因として考えられているのが、海藻サラダに入っていたワカメだ。
乾燥ワカメを水で戻してサラダとして使用していた。
病原大腸菌は熱で死滅するが、この工場で、熱処理していないのは、ワカメと生野菜のみ

 

生野菜に何を使うかわからないですが、レタスとかカットされた大根みたいなものであれば、すでに次亜塩素酸ナトリウム液で洗浄殺菌されています。
勿論、これらをその後に、汚れた手指で取り扱えば、ここで微生物汚染が発生します。
しかしそれだけなら、3000人を超える食中毒にはなりません。

勿論、素手で食材を取り扱うことはないでしょうから、手袋をしています。
で、その手袋が一定期間だけ、汚染されていた、とします。
これで広く食中毒が起きるのも可能性としては、なくもないが数としては低くなります。

んじゃなぜ、こんな3000人超えになったのか。

例えば「乾燥ワカメを水で戻す」場合の、この水が何らかで汚染されてしまったらどうでしょう。
これはかなり大規模に問題が拡大します。
なぜなら、「ワカメを食べる全ての人に問題が広がる」可能性が考えられるからです。
これは「汚れた手」を遥か超える規模となるでしょう。

つまり、この水が汚染されていたことが一番有力な要因となります。
その汚染原因はわかりませんが、報道を見る限り「学校給食を担当する従業員からも菌は検出されなかった」とあるので、普通に考えれば洗浄不足による二次汚染が疑われます。

なお、保健所でこの施設の拭き取り調査を行ったようですが、それで大腸菌(および恐らくは大腸菌群)は陰性だった。
そりゃそうでしょう。
どのくらいの検査をしたか判りませんが、この程度の拭き取り検査で陽性が出るようでは、問題がもっと前から出ているはずです。

それからもうひとつ。
県教育局なるものが、「給食には乾物など以外、調達したものをすぐに食べる決まりがある。3カ月の休校期間が食中毒に関係したとは考えにくい」と言っていますが、これは最早素人が公式の場で意味不明の話をしているに過ぎません、

そもそも「県教育局」なんてのは教育機関であって、食品衛生のド素人ですから、そもそもとして出てきた書類を理解もせずに読んでいるだけの、何も判っていない役人です。
そして、出てきている書類も素っ頓狂。

大体、病原大腸菌の対策は「調達したものをすぐに食べる」ではなく、「しっかり加熱する」ことが重要です。逆に言えば「調達したものをすぐに食べ」ようが何だろうが、汚染されていればこのように食中毒になります。
というか、この自体がその典型です。

なので、「3カ月の休校期間が食中毒に関係したとは考えにくい」なんて、そんなことは全く関係ない「それがどうした」「つーか考えてない」という話です。
これは何も判っていない素人の親御さんから出た問いに向けた、「なんで数ヶ月ぶりの給食でこんなことが起きるんだ、コロナと関係あるのか、放置した食材でも使ったからなのか」と言われたことに対する素なりの人の回答なのでしょうが、余りに「何それ?」過ぎて、ぼくなんかは「は?」となってしまいました。(笑)

まとめ

今回の事故は、この施設ではかなり突発的だったものだったのでしょう。

いくら地方の保健所だって、三千人規模の食中毒が出た場合の監査は、当然厳しくなります。
正直彼らはそれほど、現場に精通したプロでもないことが多いですが、しかし工程管理や帳票、現場査察まで、それ相応に厳しく問われます。
であっても、それほど問題が指摘されていない。
まあこの位の問題があれば大騒ぎで、清掃徹底くらいはして準備するでしょうが、でもこの給食施設がある程度の衛生管理を徹底していたことは、間違いない。

ただし、いずれにせよ、それでも起きるときは起きるというもの。
そこが食中毒の怖さだったりするのです。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

 

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