最新の食品業界ニュースからピックアップし、食品衛生管理のプロの目線から分析・コメントさせていただきます。
今回の話題は、先日、埼玉県八潮市の小中学校で起こった集団食中毒について考えていくとともに、夏の集団食中毒について考察していきましょう。

(注意:この記事は食中毒事故が発生して間もない翌日~翌々日に書いたものです。
よって、その後究明され発表された事実とは異なりますので、ご注意ください)

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

なお、今回のニュースはこちらになります。

本日の時事食品ニュース

 

埼玉県の小中学校にて集団食中毒が発生

まずはもう一度、ニュース紹介からしておきましょう。

先日、埼玉県八潮市の小中学校で、377人もの給食による食中毒が発生しました。

以下、ニュースを引用します。

ライブドアニュース
400人近くが食中毒の疑い 給食センターなど調べる - ライブドアニュース
https://news.livedoor.com/article/detail/18499054/
小中学校の児童生徒ら400人近くが体調不良を訴えて欠席しました。埼玉県八潮市は公立の15すべての小中学校の児童生徒合わせて377人が29日に腹痛や下痢などの体調不良のため欠席したと発表しました。30日は281人

埼玉県八潮市は公立の15すべての小中学校の児童生徒合わせて377人が29日に腹痛や下痢などの体調不良のため欠席したと発表しました。
30日は281人が欠席しました。
教師も29日は15人、30日は5人が欠席しました。

保健所は食中毒の疑いもあるとみて、小中学校に給食を提供している東部給食センターなどを調べています。
八潮市は当面の間、給食を停止するということです。

 

患者数、なんと400人近く!
この世界に身を置いている人や、日々食中毒の情報をチェックしている人なら、この食中毒がどれだけの大規模か、お分かりかと思います。

※追記:先にも書いたとおり、この記事は食中毒事故が発生して間もない翌日~翌々日に書いたものです。
よって、その後究明され発表された事実とは異なりますので、ご注意ください。
なお、そちらについては当記事をもとに後日、別の考察記事を書いておりますので下をご参照ください。

 

食中毒が例年より劇的に少ない2020年夏

梅雨明けをもう少し前にしての、この時期に起きた、ちょっと規模の大きな食中毒。
実はですね、いやすごくイイことだと思うのですが、今年は食中毒事故がメチャクチャ少ないんですよ。

ぼくも商売柄、食中毒情報は長年毎日チェックしています。
毎朝起きて一番に、或いはお昼ご飯食べながら、或いは夜に晩酌しながらだって、ほぼ必ず、情報チェックを怠りません。
そういう生活が根付いてます。

いや、ぼくのことは全然どうでもいいんですけど、そういう身からしてこの2020年の夏をどう見るかというと。
いつもだったら、ここらでボコボコとこの手の食中毒の話が沸き上がっていくのが、毎年の通りなんです。
ところが今年は、かなり少ない。
確か4月、5月は、昨年比で1/5とかそんなんじゃなかったかな。いや、もっと低いかもしれない。
これ、もう少しして夏本番とかになったら改めて実数調べて記事に書こうと思っていたのですが、実際問題、例年より食中毒事故が激減しているんです。

なので、今回のこれなんて久しぶりの「キタコレ」ですよ。
そのくらい、少ないんですわ。

理由はもう、明確ですよね。
そう、
コロナウイルス騒動、です。

コロナウイルス騒動でどうなるか。
まず絶対数として、飲食店への出入りが減りますよね。
自粛下では、どうしたって当たり前ですが、飲食店の食中毒が減ります。
後の話にもつながりますが、小粒の食中毒、例えばカンピロバクターとかですね。こういうのは大概、飲食店由来なんですよ。
まず、それがない。

やっと緊急事態宣言が解除されたけど、店のほうも必至です。
この時点で衛生管理まともにしていない飲食店なんて、ありえません。
今や、これが最前提です。やって当然のレベルに、ようやく世の飲食店が近づいたのです。
大体、どの飲食店もカツカツなこの時世に、食中毒なんて出してご覧なさいよ。泣きっ面にスズメバチですよ?
当たり前ですけど、どの飲食店も生き延びるために、衛生管理を死ぬほど強化しているんです。何せ死活問題ですから。

で、それもあってですが、手洗いの重要性が滅茶苦茶高まっている
アルコールの手指殺菌も同様です。
これらはすごく重要です。
要は、手洗い一つで、色々な事故のトリガーを押さえられるからです。
結局そこなんですよね。基本のキの字なんです。

にも拘わらず、これまでその徹底が本当に難しかった。
マジでこんな時代、今までなかったですからね、本当に。
ぼくらからすれば、ようやくここに至ったかといった感すらあります。
だって前にも書きましが、つい数ヶ月前のコロナまでは、飲食店や食品工場の衛生担当が、どうやって手洗いの重要性を従事者に教えるかを皆悩んでいたんですよ?

 

おっと、話を戻しましょう。
とにかく、そんな「衛生管理死ぬほど大切」ウィズコロナ時代に、いきなりぽんと出た集団食中毒。
しかも、ようやく始まった小中学生の学校生活の、給食に、です。
いきなり何やってんの?という話ですが、だからこそ取り扱う意味がある
そこで衛生管理屋の専門家であるぼくが、これについて分析していくとしましょう。
悪いですけど、ぼくはプロです。
そこらのアフィリ目的でニュース紹介してるような輩とは、知識の次元が違いますからね。

給食のスタイルは何だったのか

さて、まずはニュース情報から伝わる、基礎情報のチェックです。
ものすごく当たり前ですが、前提が違うと、結果が全く変わります。
「こういう情報を前提で話をします。だからそれ以外のファクターを後出しされて、違うじゃないかと言われてもも困ります」
という、まず最低限の事前情報です。

まず。
今回の対象となっている学校は、埼玉県八潮市内にある小中学校計15校、ということ。
それなりに、広域です。

ということは、割と大型の地域内給食センターで作った給食がその原因となった、ということです。

ここで少しだけ、「給食」についての解説をします。

今の給食は、今回もそうだったように、「給食センター」というセントラルキッチンでの調理がもはや主流となっています。
つまり自治体単位で給食センターを建てて、でそこで多量に調理したものをそれぞれの学校に給食として配送するという方式ですね。
「共同調理場方式」、とも言われるときもあります。

ぼくが子供の昭和時代は、小学校や中学校自体に給食室があって、給食のおばちゃん達が給食を作ってくれていたものですし、今でもそうした学校は少なくはありません。

こうした自前での「自校式」のメリットは、出来たての料理を提供出来るということ。
一方でデメリットは、給食室は学校施設となりますのでその維持管理を学校側がもち、またそのぶんだけ専属の職員を雇う必要が生じます。
それを考えると、一番多い調理人数とコストが高く必要になります。

 

これに対し、先の「センター方式」ではセンター一括なので、学校側に給食室を作ったり専属職員を雇う必要はなく、また多量生産できるのでコストが安くすむ、というメリットがあります。
栄養管理や異物対策などの衛生管理、アレルギー管理なども全て任せることが出来るのでラクで低コスト、つまり給食費も安くなるため、学校側にも人気があります。

デメリットは、配送コストがかかり、また何よりも当然製造から提供まで時間がかかること(2時間以内とされている)。
その分、製造の時間を短縮させないといけないし、自ずと加工食品が増えることになります。
食中毒も考えたら、そりゃ美味しいものを作ることがなかなか難しくなります。

…と、ここまでが基礎知識。
今回の問題も「センター方式」で生じたことであり、間違いなく原因はこの「給食センター」にあります。
じゃないと、ここまで広域化、集団化がなされません。

給食の献立は何だったのか

そして、もう一つ基礎情報を整理しましょう。
これなくして、分析ができません。

というのは、
「今回問題となった給食の献立は何だったのか」ということです。
これに一つでもオプションがついたり、その内容の把握が間違っていたら、話は全部変わってきます。

ただし、これについてぼくは何も知りません。
そこで、インターネット上から拾った情報をここに挙げておきます。
正誤については全くもって定かではありませんし、その詳細もよく分からないのですが、一応、これ以降の話は次の情報に基づいて考えていくとします。

問題となった給食の献立
  • 主食:ごはん
  • おかず:鶏の唐揚げ、ツナじゃが、海藻サラダ
  • スープ:味噌汁

 

ハイ、これを一応の、話のベースとしますね。

でも、ここに加わっている材料が何一つ判りません。
例えば海藻サラダには何が入っているのか。
味噌汁の具は何なのか。
鶏のから揚げに付け合わせはあるのか、ないのか、など。
それらが変わるだけで、話が根本から変わります。

てゆーか、「ツナじゃが」って何すか?
「肉じゃが」ならぬ、もっとヘルシーな「ツナとジャガイモの煮込み」で合ってる?

あと「海藻サラダ」って何が入ってるの?
うーん、よくわからない。

とまあ、そんなところをあくまで話のベースとしますので、基礎情報が違っていれば話は全く変わってくる、というのを再前提にしておきます。

で、その上でプロとしての見解をしていくとしましょうか。

考えられる原因にはどんなものがあるのか

まず、300人超えの食中毒だ、とします。
このくらいの規模の食中毒になる、というとそれなりに「相場」というものが決まってきます。
目星、ってやつです。

大規模な集団食中毒に発展しやすい要因微生物
  • ノロウイルス
  • ウェルシュ菌
  • 病原大腸菌

 

まあ、ざざっと最初に挙がるのが、およそこんなところでしょう。
逆に言うなら、これら以外の食中毒菌は今回の候補から概ね外れます。
この食中毒事故の条件を満たさないからです。

例えば、今時期の初夏や梅雨の食中毒菌、大規模食中毒といえば、最初に浮かぶカンピロバクター。
夏の食中毒の、鉄板にして定番です。

ですが、カンピロバクターで数百人単位の患者数の食中毒が出るというのは、ないわけではありませんが近年では結構まれです。
たまに給食での食中毒が起こることがありますが、それでも数十名といったところ。まず数百は、ない…とまでは言いませんが結構まれですし、今回は違うでしょう。

何故かというと、その原因が「資材由来」「二次汚染」だからです。

例えば、その肉が、あかんかった。これが「資材由来」というものです。
でもそんな肉は、そんなにいっぱいあるわけじゃない。
だから患者数が数十まではあるかもしれないが、そんなに肉があるわけでもないから数百人単位までいかない。
だって患者数数百だったら、「そんくらいのクソ肉をあえて集めている」わけですよ?このコロナ開けの給食で。
常識でありえないでしょ?

もう一つ。
あかん肉に付着した手や器具で、食品に触れた。これが「二次汚染」です。
確かに起こり得る。
でもそれで患者数が数百に至ることは、そりゃ科学的にはゼロじゃないですが、でも可能性はかなり低下します。
触れただけで広がるのはわかるれけど、ある程度真っ当な小中学校の給食施設で(この献立だとして)そこまで無尽蔵に広まるかよ、そんなペタペタ触るかよ、という単純な話です。

そもそもカンピロバクターの食中毒というのは、飲食店などを原因施設とした小規模事例の占める割合が圧倒的です。
もしそれを超えて数百人規模の食中毒になるといったら、自体は深刻だと思っていいでしょう。なので、もっと今回以前に何度も問題を生じさせています。
だからこれは、ない。

ましてや今回の献立は「唐揚げ」です。
だって、揚げるんですよ?
油、何℃ですか?

ネットで「唐揚げ説」があるようですが、そりゃありえないでしょう。
いっくら加熱不足だったといえ、それでこの規模は完全にナンセンスです。
一方、腸炎ビブリオやサルモネラなども、時として集団食中毒を起こす事例もあるかもしれませんが、同様の理由で、ありえません。
可能性は限りなく低いです。
もし仮に結果がそう出たら、最低の給食センターだと思っていいでしょう。

ノロウイルスの可能性が高いとかいう素人意見

この食中毒情報を調べるなかで、「原因は、ノロウイルス一択ダー!」「ノロウイルスナノダー!」とか言っているブログを見かけました。
お疲れ様です。
いやそこそこ突いてはいますが、でも残念、詰めが甘い。

で、読んでみたら、根拠がめっちゃ薄っぺらでした。
いや、確かに薄っぺらなんですけど、そう言ってしまうのはちと可哀そうですね。

その人が出していたのは、著名な「親子丼刻み海苔でのノロ」例でした。
うん、知ってますそれ。痛いほどに、よーく!知ってます。
何せ、この業界のベタなので。

でもそういう場合、被害はこの市内に留まりません。
要するに、資材汚染です。
その場合は、こんなものではすみません。埼玉の一地方都市内なんてことはありません。
もっともっと、広がっています。

つまり、話は広域ではありながらも、しかしもっと「給食センター」という施設限定的な話なのです。

じゃあ、給食センターの施設で調理にあたっていた人がノロウイルスの保持者だったのか。
このケースは、集団感染の意味からは、確かにゼロではない。あり得ないわけではない。

でもね、大事なことを見落としています。
それは、その場合、症状に「嘔吐」が出る、ということです。

勿論、ノロの症状としてそれが出ないケースだってあります。ゼロじゃないでしょう。
が、しかしこの規模の患者数が出ているのにも関わらず「嘔吐」が症状として出ていないのは、あまりに不自然です。
(それにこんな軽症で終わることはありません)

それから、もう一点。
これはその後の病原大腸菌にもかかわるのですが、食品を通してのノロウイルスの汚染は、手指による汚染、つまり手洗い不足が圧倒的です。
ですが、このコロナウイルス騒動の中、調理者が手洗いを怠った、なんてありますかね。
ぼくは、なかなか少ないと思います。
ぼくは毎日食品製造や調理の現場をまわってますが、手洗いに対する敏感さはどこに行ってもムチャクチャ高まってます。
手指洗浄に対するおよそ病的なくらいの現場の危機感は、はっきり言ってぼくの20年以上の経験の中のダントツレベルです。
今これで起こる食中毒は、ほとんどないといっていいんじゃないかな。
(だから実際データでも減っているわけです)

あと、加えていうなら、時期も少し外しています。
そりゃ夏季だってノロウイルスの食中毒はないわけではありませんよ?
でも、それだって数える程度ですからね。
梅雨の中、これだけの集団食中毒には早々なりません。
だってノロウイルスって湿度に滅法弱いんですよ!?

以上のことから、はっきり言ってノロウイルスの可能性というのは、実はそれほど高くありません。
いずれにせよ、これについてはおそらくこの後、施設の人はノロウイルスの検便を行うでしょうから、是非が特定されるはずです。
まずはそれを待ちましょう。ノロの検便結果なら数日で出ますから。

病原大腸菌の可能性

病原大腸菌による食中毒だった、という可能性。
これは、なくはないけれど、ノロよりか少し高い程度じゃないですかね。
症状の報告としては、割と近い。でもそれだけで、これだというには少々ムリ線だ。

いや、たしかに大規模食中毒の定番ですよ。
でも今回は…違うんじゃないかなあ、というのがぼくの見立てです。

ちなみに、病原大腸菌ってお分かりですかね?
少しだけ、以下説明します。

まず、「大腸菌」というのは、糞便系大腸菌群のことです。
一般的には、「E.coli」(「イーコリ」。Escherichia coliの略)と呼ばれることもあります。
食品の中にこれらが存在すると、ひとや動物の糞便汚染の危険性が高まります。
まあ自然界にも広く存在するので必ずしも、というわけではありませんが、いずれにせよ食品の大腸菌による汚染は糞便由来の汚染を推測させるものであって、あまり好ましいものではありません。

しかもこれら大腸菌の中には、食中毒を起こし、ひとの健康を害するものも存在します。
それらを「病原大腸菌」と呼びます。

「病原大腸菌」は、その食中毒の原因や症状から5種類に分けられます。
先の韓国で問題になったのは、「大腸菌」の中の「病原大腸菌」である、「腸管出血性大腸菌(EHEC)」が原因です。
悪名高きO157も、この「腸管出血性大腸菌(EHEC)」の一つです。

病原大腸菌
  • 腸管病原性大腸菌(EPEC)
  • 腸管組織侵入性大腸菌(EIEC)
  • 腸管毒素原性大腸菌(ETEC)
  • 腸管出血性大腸菌(ベロ毒素産生性大腸菌)(EHEC)
  • 腸管凝集接着性大腸菌(EAggEC)

 


Wikipedia

…と、ここまでがベーシックな話。
詳細は、過去記事を読んでみてください。

 

で。
別に「病原大腸菌」というのは、O157だけではありません。
実は、上のように、色々な「病原大腸菌」があります。
で、多くの「病原大腸菌」による食中毒は、O157ほどに症状が重くありません。

しかも、病原大腸菌での食中毒は、思いのほかに大規模化します。
何百人規模で出すことも、しょっちゅうです。
しますが、これもカンピロ同様、「資材由来」か「交差汚染」です。

それに、病原大腸菌というのは、70度1分で死滅が可能です。
つまり、熱に弱い。
「熱に弱い」ということは、この献立の中で「唐揚げ」や「ツナじゃが(煮物)」、「みそ汁」、「ごはん」などではまず集団食中毒にはならない、ということです。

んじゃどんなもので、病原大腸菌の食中毒が起こるのか。
例えば、漬物、あるいはサラダです。
何故なら、あまり加熱しないからです。
時折、ポテトサラダをはじめ、生野菜のサラダで問題が生じます。

お、待てよ?
献立に「海藻サラダ」があるじゃないか!
そう思います?
でも、それで数百人の患者数規模に発展するか、と言われたら結構「いやいや、そこまでは…」となるのが、この病原大腸菌による食中毒です。
前提のレベルで意外な盲点があったらなりえますけど、でも一般的にはそこまではといった感じです。

先にもいいましたが、コロナ騒動期で手洗いには皆が慎重になっている。
つまり、一番多いであろう手指汚染の可能性って、少ないのではないかなとぼくは思います。
だってこのご時世ですよ?
不衛生さが由来なんて、あるのかなあ。

それに、病原大腸菌による食中毒には、「肉」がよく関わります。
肉の加熱不足とか、交叉汚染とかですね。
で、この場合、多くは牛や豚です。
今回は鶏肉です。しかもそれを高温で揚げてますから、ちょっと違うような気がしますね。

一番怪しいウェルシュ菌

このように考えていくと、一番最後に残るのがウェルシュです。
しかもこのウェルシュ菌による食中毒って、マイナーなくせに患者数だけメッチャ多くなるです。
そういう食中毒菌なのです。

しかも、給食でよく問題になる。
そこで付けられたのが通称、「給食病」。
さもありなん。

どういうことか。
ウェルシュ菌について、少し解説しましょう。

さて、
一般的に「食中毒が多い」という場合、次の二つのデータからそれを評価します。

食中毒の「多さ」の見方:食中毒の状況別分類
  • 事件数:食中毒が発生した件数
  • 患者数:食中毒になった人の数

 

「事件数」とは、食中毒が発生した件数のこと。
「患者数」とは、食中毒になった患者の数のこと。
これら双方から、「食中毒の多さ」を判断します。

それでは、その双方から平成30年の食中毒データを見てみましょう。

 

「ウェルシュ菌」を見てください。

ほら、「事件数」はそう対して多くはないくせに、「患者数」が多いじゃないですか。
これは、一回の事件で発症する患者数が多いからなのです。

(逆にアニサキスなんかは、事件数は多いけれど、魚を食べるのは1人か少人数なので、患者数は少ないですよね?)

実際、データからも判るようにウェルシュ菌は、事件数でいえば、かなり少ない。
だって、年間32件しかない。
同じ細菌性食中毒だって、先のカンピロバクターは年間300件越えしてるのに、です。

にも関わらず患者数が多いってことは、つまり大規模な集団食中毒が起こりやすいってことです。
何せウェルシュ菌は一発出ると、たやすく三桁レベルの集団食中毒になる。

結果、たった年間8件なのに、患者数がカンピロより多い2000人越えになっている。

これがウェルシュ菌です。
なお、この菌の詳しくはすでに記事を書いてますので、そちらをご覧ください。

 

ウェルシュ菌食中毒の可能性を考える

さあ、ここまで読んでいただければ、結構それなりに結論がついてくるのではないでしょうか。

んじゃ、問題の食材は何だったのか。
もしこの原因がウェルシュ菌だったとしたら、それはもう明白です。

というのも、ウェルシュ菌というのは、「偏性嫌気性菌」なのです。
あ、ごめんなさい、えっと簡単に解説します。
つまり、この菌は「空気がある環境」を嫌がるんです。
だから、汁ものとかの中で増える。
通常はカレーとか、シチューとかですね。
なので、炒め物やサラダなど、空気に触れるような食品では増えません。
いや実際には増えなくはない、とも言われていますが、だからといってそれほど問題にもならないことが多い。

となると、もう原因食材は、汁ものか煮物です。
つまり「味噌汁」です。
あるいは、これがどういう調理をするものかよく判らないんですけれど、「ツナじゃが」ってのも煮込み料理だとすればあるかもしれません。

いずれにせよ、この二つの食材のいずれかで増殖したとしたら、確かに3桁台はいくかもしれん、と思います。
だって、大鍋の味噌汁やツナじゃがが汚染されているのですから。

ウェルシュ菌というのは、普通に自然界や生活の中にどこにでもある菌です。
この菌は、しかしその仲間の中に悪さをする「厄介さん」がいる。
で、その「厄介さん」が食品に入ると、どうなるか。
ウェルシュ菌は、加熱じゃ死なないんですよ。
芽胞というバリアを作るのです。
高熱で煮込んでも、炒めても死なない。
それどころか、「エンテロトキシン」という毒素を腸のなかで作ります。
そうして食中毒が起こる。

ではどうして今回このようなことが起きたのか。
味噌汁の具にウェルシュ菌が付着していた。
で、それが増殖した。
つまり、恐らくは味噌汁を常温放置していた
その間にウェルシュ菌が増殖した。
要は、味噌汁の冷却の失敗です。
給食は調理後2時間以内に食べることが基本です。
でないと、冷めている間にウェルシュ菌が増殖するからです。
これが今回は何らかの結果、しくじったのではないか。

大鎌の味噌汁は広く給食として配られる。だから300人超が食中毒になった。
多分、これじゃないですかね。

とはいえ、です。
ウェルシュ菌による食中毒は、一発の数が多い割に、深刻な健康被害、例えば死人が出るようなことはありません。
割と軽症で済むことが多いです。
今回の食中毒も、規模の割には軽症の様子です。
こうした点からも、今回の状況にかなり近いのではないでしょうか。

まとめ

今回は、埼玉県で起こった食中毒事件に対し、食品衛生の専門家の立場から分析、そしてプロファイル?させていただきました。
以下、まとめます。

埼玉県で発生した食中毒事故
  • ノロウイルスとするには、症状と時期と状況が違う
  • 病原大腸菌とするには、加熱食材が多く、患者数も多い
  • ウェルシュならばある程度、合点がいくが、その場合の問題食材は「味噌汁」である

 

と、まあこんな感じでしょう。
さあ、これが正しいかどうか。
これからの究明調査結果を待つとしましょう。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

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