時々ネットなどでも見かけますが、「大腸菌群」と「大腸菌」を一緒くたにしている人がいます。
でも「大腸菌群」と「大腸菌」は違います。
では何が違うのでしょうか。今日はそれらの違いについてお話していきましょう。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えいたします。

大腸菌群は加熱殺菌の指標

先日、韓国で病原大腸菌による集団食中毒が発生しました。

 

夏近くになると、大概こうした病原大腸菌による食中毒が問題になるものです。

さて。
その一方で先日、ある牧場の牛乳から大腸菌群が検出されたことで、行政回収になるという小さなニュースが報じられています。

 

皆さんは、この牛乳を先の病原大腸菌による食中毒に引き寄せて、「大腸菌が入っているなんて、けしからん!だから回収されるんだ!」と思ったりしてませんか?

それ、認識が全く間違ってますからね。

まず、牧場の牛乳の中に含まれていたのは「大腸菌群」です。
「大腸菌群」は「大腸菌」とはちょっと違いますし、ましてや「病原大腸菌」とは全く違います。
なので、この牛乳を飲んで食中毒になるかと言われれば、全く完全にゼロかとまでは言いませんが、ほぼほぼなりません。
てゆーか、ならんでしょうね、まず。

んじゃ何で回収対象になっているんだ、といえば、食品衛生法にある「成分規格」に違反するからです。
法律にあるんですよ。
大腸菌群を含んだ牛乳は市場に出してはいけない、って。
正確には、食品衛生法に基づいて国が定めた「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」ってのがあるんですね。
通称、「乳等省令」。にゅーとーしょーれー。乳頭の奨励じゃないです。
でここに、世に出す牛乳は「細菌数5万以下(1ml中)、大腸菌群陰性」じゃないとあかんよ、と書かれているのです。

だから保健所が回収を命じたわけです。ただそれだけのことです。けしからんもヘチマも全くありません。
しかも健康被害も出てないのでそれほど大した話でもないのですが、まあ加熱をしくじった(あるいはその後に二次汚染した)んでしょうね。

牛乳(生乳)の殺菌方法は大きく2つあります。
65~75℃の比較的低温で時間をかけて殺菌する方法と、120℃くらいの高温で数秒で殺菌する方法です。
低温での殺菌のほうが美味しいと一般的に言われますが、一方で高温じゃないと殺菌出来ない芽胞形成菌の殺菌が出来ない、という欠点もあります。まあ牛乳ではほとんど問題にはなりませんが。
一般的にスーパーなどで販売されている牛乳は「超高温瞬間殺菌(UHT)」といって、生乳を120~130℃で2~3秒間程度で加熱殺菌する方法が用いられています。
これだと多少の味覚の劣化があるものの、殺菌という意味においては効果が高くなります。

一般的に牧場のおいしい牛乳というのは、低温で殺菌されることが多いかと思います。
しかし、何らかの問題で、加熱が弱かった。
こうなると、菌が死滅せず残ってしまう危険が出てきます。

このときに指標として用いられるのが、「大腸菌群」です。
大腸菌群は、75℃1分の加熱で確実に死滅します。
つまり大腸菌群が検出されていないということは、加熱殺菌されたことの証拠となるのです。
(あるいは殺菌後に何か汚染されていない、ということです)
食品衛生法では、そのようにしっかり加熱殺菌していない牛乳を世に出してはいけないよ、という意味から、大腸菌群を牛乳の衛生度の指標にしているというわけです。

そもそも「大腸菌群」なんて、普通に自然界にいくらでも存在してます。
だから未加熱食材からは普通に検出されます。仕方ないんです。そういうものです。

今から10年以上前のことですが、不二家が賞味期限切れの牛乳を使用して袋叩きになっていたとき。
生クリームから大腸菌群が検出され、TVやメディアからもぼろっかすに言われてました。
いやいや、待てやと。
お前らホントに判って話してんのか、と頭に来たことを思い出します。
当時はぼく自身、不二家さんに衛生管理として関わっていましたので、なおさらでした。

大腸菌とは何か

「大腸菌群」とは何か。
それを話すには、まず「大腸菌」とは何か、から始める必要があります。

「大腸菌」というのは、糞便系大腸菌群のことです。
一般的には、「E.coli」(「イーコリ」。Escherichia coliの略)と呼ばれることもあります。
食品の中にこれらが存在すると、ひとや動物の糞便汚染の危険性が高まります。
まあ自然界にも広く存在するので必ずしも、というわけではありませんが、いずれにせよ食品の大腸菌による汚染は糞便由来の汚染を推測させるものであって、あまり好ましいものではありません。

しかもこれら大腸菌の中には、食中毒を起こし、ひとの健康を害するものも存在します。
それらを「病原大腸菌」と呼びます。

「病原大腸菌」は、その食中毒の原因や症状から5種類に分けられます。
先の韓国で問題になったのは、「大腸菌」の中の「病原大腸菌」である、「腸管出血性大腸菌(EHEC)」が原因です。
悪名高きO157も、この「腸管出血性大腸菌(EHEC)」の一つです。

病原大腸菌
  • 腸管病原性大腸菌(EPEC)
  • 腸管組織侵入性大腸菌(EIEC)
  • 腸管毒素原性大腸菌(ETEC)
  • 腸管出血性大腸菌(ベロ毒素産生性大腸菌)(EHEC)
  • 腸管凝集接着性大腸菌(EAggEC)

 


Wikipedia

大腸菌群とは何か

それでは「大腸菌群」とは何でしょうか。

そもそも「大腸菌群」という学術上の分類はありません。
少なくとも医学細菌額としてそのようなものはなく、これは食品衛生の世界でのみ使われる用語です。

まず「大腸菌」というものがあって、それに似たような仲間の菌があります。
やれ「グラム陰性の無芽胞桿菌で乳糖を分解して酸とガスを産出する好気性または通性嫌気性…」だのと細かい専門的な説明もあるのですが、まあとにかく、似た仲間の菌があります。
クレブシエラ、シトロバクターとかが代表的ですが、糞便に全く関係ない菌も多くあります。
これらをひっくるめて、「大腸菌群」としているのです。

要するに「大腸菌群」とは、「ひとや動物の糞便由来の菌(大腸菌)+普通に自然界に広くいる菌(糞便とは関係ない菌)」です。

なので当然ですが、「大腸菌」=「大腸菌群」ではありません。
なので当然ですが、「大腸菌群」が存在していたからといって、それすなわち糞便汚染がされた、というわけでは全くありません
勿論、「大腸菌」をも含むので、その可能性は残りますが。
でもまんまそれを糞便汚染だというのには、さすがに無理があります。
というのも、この「大腸菌群」というのは、それこそ土壌や水、空気中など自然界のそこらじゅうに広く存在しているからです。

んじゃなんでそんな「大腸菌群」なんてくくりをするのか。
最初にもちょろっと触れましたが、「大腸菌群」は70度1分の加熱で死滅します。
だからこれらが検出されれば、加熱が不足していたことの指標になります。

あるいは、そこらじゅうに存在しているので、加熱殺菌のあとに、微生物汚染があったかどうかの指標にもなります。
例えば、生肉をまな板の上で切った。そのまな板に焼いた肉を置けば、生肉に付着していた大腸菌群がその焼いた肉にも付着します。
二次汚染が生じるわけですね。
こうした菌の汚染を調べるのに、便利だからです。

つまり大腸菌群は、加熱の適切さや、食品の取り扱いや保存の適切さなどといった衛生管理上の指標となるものであって、食中毒などの食品安全の指標となるものではない、というわけです。

なお、この大腸菌群というのは、そもそも飲料水の衛生の適切性を示す指標として分類されたものだ、という説があります。
水の衛生は非常に重要だ、だから大腸菌よりも広く指標となるだろう、ということです。
そのため長く水道水は大腸菌陰性が基準となっていたのですが、それもどうなの?乱暴じゃね?という話になって、2004年以降、大腸菌に変わりました。

まとめ

「大腸菌」と「大腸菌群」の違いが判っていただけましたでしょうか。

まとめると、
大腸菌群>大腸菌>病原大腸菌
というわけです。

また大腸菌群の中には普通に自然界に存在する菌も多く含まれているため、大腸菌群が検出されたイコール糞便汚染だ、というわけでもありません。

多くの食品には、それぞれ「成分規格」というのがあります。
細菌数このくらいまで、大腸菌群は陰性、みたいなものが省令なんかで出されています。
保健所は所轄の市場の食品をサンプリングして検査します。
そこで「成分規格」の規格基準が外れたものが出ることが時々あります。
そういう場合、一応法律違反になってしまうので、行政として製品回収(リコール)をメーカーに命じます。
それが今回の最初に出した牛乳だったというわけです。

こういう例は時折あります。
また、細菌では企業でも自主基準を設けており、それに逸脱する結果が自社の検査から出た場合、自主的に回収することもあるでしょう。
「ことも」というか、こっちのほうが多いですね。
ただしこの場合、別に行政機関から法令違反を摘出されたわけではないので、基本的に何の違法でもありません。
「もしかしたら可能性があるから回収します」というだけの話です。
だって、そのサンプルだったものがたまたま菌数が高かったなんてことだって十分にありえます。
企業もバカではないし風評も怖いので、必要以上に厳しくもなく実現可能な現実的かつ理にかなった自社規格をどこも設定しているものです。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

 

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