食品工場に入場するには、一般の人が知らない、いくつもの「してはいけないこと」が存在します。
それはどういうものでしょうか。
前回、そして今回と、二部構成でこれらの「してはいけないこと」についてお話させていただきます。
題して、「食品工場の入場時にこれをしては、いけま10(テン)」。
なおこちらは二部構成のうちの後編、二部目「手洗い・入場編」となります。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えいたします。

今日のお話の概要
  • ローラー掛けの前に手を洗うと清潔にした手がローラーを持った際に汚染されるため、ローラー掛けは手洗い前に行うのが望ましい
  • 爪の間、指の間は菌によって汚染されていることが多いので、しっかりと手洗いで洗浄することが重要である
  • 濡れた手にアルコールを散布しても効果が薄いので、しっかりとジェットタオルなどで乾燥させることが重要である
  • エアシャワーの送風が終わる前に場内に入場すると、送風で舞い上がった毛髪が場内に持ち込まれやすくなるため、しっかり送風が終わってから入場することが重要である

 

食品工場の入場時にしてはいけない10のこと

「食品工場の入場時にこれをしては、いけま10(テン)」。
ということで10個ほど、食品工場の入場時にしてはいけないことを前回、今回とで挙げて解説していきましょう。

まず、前回も挙げましたが、「食品工場の入場時にしてはいけない10のこと」が、これです。

食品工場への入場手順例
  1. 食品工場では、帽子から毛を、例え1本でもはみ出させてはいけない
  2. 食品工場では、頭巾の首元を緩めて着用してはいけない
  3. 食品工場では、マスクから鼻を出してはいけない
  4. 食品工場では、ローラー掛けをせずに入場してはいけない
  5. 食品工場では、着衣着帽のチェックをせずに入場してはいけない
  6. 食品工場には、くるぶしの出るソックスをはいてきてはいけない
  7. 食品工場では、ローラー掛けをする前に手を洗ってはいけない
  8. 食品工場では、爪の間や指の間の洗浄を軽視してはいけない
  9. 食品工場では、濡れた手にアルコールを噴霧してはいけない
  10. 食品工場では、エアシャワーの風が完全に止まる前にドアを開けてはいけない

 

はい、
この通りです。いかがでしょうか。
さて、ここで「それは、何故か」に答えられますか?

7つ以上だという方、優秀です。
かなり食品工場の品質管理に精通していますね。

5つ以上だという方、食品工場で働いておられる方ですかね。
判ってますねえ。

それ以下だという方、いいんです。それが一般的です、普通の人なんです。
こっちがマニアックなんです。
だから大丈夫です、ここで「食品工場とはどういうところなのか」を学んでいってください。

さて。
このうち、前回の前編は1から6まで。
「食品工場では、どこもこんなことをしていない。そうではなくこうやっているのが普通の食品工場の衛生管理というものだ」という、どちらというと食品工場以外の一般向け、飲食店さん向けのお話でした。

しかし今回の後編では、7から10まで。
確かに食品工場でしてはいけない、やっていないことなのですが、やもするとこういうことをしちゃってる工場も時々あるよ、でもこういうのは結構危ないことだから注意、チェックしてみてね、という前回よりは食品工場さん向けの内容になっています。

なお、こちらは二部構成の「後編」になりますので、もし「前編」をお読みでなければそちらを最初に読んでください。

ローラー掛けをする前に手を洗ってはいけない

さて「してはいけない」の後編、早速ながらやってまいりましょう。

まずは7つめ。
「ローラー掛けの前に手を洗ってはいけない」
です。

「ローラー掛け」というのは前回お話した通りです。
オッケー、いい感じー。それはローラだけ。
コロコロってあるでしょ。部屋の床を掃除するやつ。

そうこれです。

で、これの柄の短いやつで、体全身をコロコロするのです。
そうやって全身に付着している「かもしれない」毛を除去するのです。

 

さて、このローラー掛けですが、一つポイントがあります。
それは、手洗いの前にするな、ということです。

ではなぜ、「ローラー掛けの前に手を洗ってはいけない」のか。
それは、多くの従事者が触れるローラーで手指の汚染が拡散してしまうからです。
折角洗った手を、ローラーの柄を持つことで汚染するリスクが生じてしまうからです。

だからローラー掛けというのは通常、手洗いの前に行います。
ローラー掛けの際に、ローラーを介して手指汚染がされたとしても、その後に手洗いの手順があるからそこで洗浄殺菌されます。

「みんな手洗いすれば別に柄で汚染されることってなくね?」
確かにそうかもしれません。
でも、コロコロローラーって、結構交差汚染するんです。
テープがなくなれば交換しますし、その際にもあちこちを触ります。

で。
そもそも何故こんなことにこだわるのかといえば、食品工場の入場時の手指は、殺菌されているというのが条件だからです。
工場に入った時には、何も触れず、汚染されていない、というのが求められる条件なのです。

色々触らなければいけない手指は、菌に汚染されていない状態で最初に入場する。
このように、汚いものを、汚染リスクを持ち込まない。
つまり、製造現場というのは、人工的に作られる外部の汚染のリスクから切り離された環境であるべきだ。
それが基本的な食品工場の考え方でありコンセプトであり理想像なのです。
これは菌に対しても、虫に対しても、異物に対しても、その他の汚染物に対しても共通した考え方です。

なので、もしその後もしたい、というのであれば、ローラー掛けのあとに再度アルコールで手指殺菌が必要になります。
だからあちこちでローラー掛けを行う際には、必ず手指のアルコール殺菌、あるいは手袋の交換が必要になります。

爪の間や指の間の洗浄を軽視してはいけない

続いて8つ目。
「爪の間や指の間の洗浄を軽視してはいけない」
です。

先で書いたように、ローラー掛けを終えたら、次は手洗いです。
ここ最近は新型コロナウイルス問題から、手洗いへの注目度が高まっていますね。

さて、工場入場時の手洗いでは60秒、あるいは90秒などとタイマーをかけて、その間手を洗いましょう、というルールにしている工場も多いことでしょう。
まあ、確かにある一定の時間の手洗いは効果的でもあります。
しかし、だからといってただ漫然と手を洗えばいいってものでもなかったりします。

少し長いですが、昔ぼくが経験した話をさせて下さい。

結構昔、ぼくがまだ大手PCO会社に勤めていたときのお話です。
当時のぼくの職場の先輩は、洋菓子工場で数か月に1回、作業中の従事者の手指の菌数をはかる、ということをやっていました。
まあそれ自体は別によいことなのですが、初めてぼくがサポート役で現場について行ってみると、なんと。
そこでは従事者は一旦作業をやめて手袋を取ってシンクに向かい、「手を洗い直して」から菌数を測っている姿があったのです。

先輩PCO業者が、現場責任者に検査するむねを伝える。
すると、現場責任者は「はいー、皆さん、これから検査ですよー。」と現場の皆に言う。
皆、「はーい」と一旦作業を止めて、ビニール手袋を外して、で、検査をするのではない。
まず、近くの手洗いに並び、さっと手を洗う。
「さっと」です。
つかえているので、「さっと」手を洗ってます。
そしてなんと、そのまま先輩のところに来て、手指の検査を始めたのです。

え?
手を洗って菌検査するの?

これって、意味あります!?

要するにこの工場は、「うちは手指がきれいな状態で製造しています」の証明のために、この先輩を使っていたのです。
こんな悪い意味で意識の低い検査には全く意味がありません。
なんの向上もありません。工場だけに。いや全然うまくないよ!

これは「検査結果を悪くしたくない」という一念で行っていることでしょうが、これでわかるのはただの「手を洗った直後の菌数」であり、「手をきちんと洗ってから作業し、手袋の切り替えなどもしっかり行っており、手指汚染は生じていない」という適切な作業の検証には全くなっていません。

心の中でその先輩の仕事ぶりに頭を抱えたものですが、それでもただ一つ。
このとき面白いことを知りました。

それは「爪を立てて測る人の結果が総じて悪い」ことです。

今手を洗ったばかりなのに、結果が悪い。
いや、むしろ慌ててちゃっちゃと手を洗うからこそ、爪の間などまで意識が回っていない。
結果、爪の間の菌が出てしまう。

いや、待てよ。
ということは、そもそも入場時にこの人はちゃんと爪の間を洗っていない。
そういう習慣が出来ていない。
つまり、この工場は、そういう「仕組み」作りに失敗しているわけです。

失敗しているのに、本来はその検証であるこの「菌検査」は、「すること」が目的化している。
もっと言えば、本当に問題であることを治そうとせず目隠しして、問題が起きたときの言い訳を得ようとしている。
問題の発見や改善の検証ではなく、検査することを目的にして、そこに外部業者にお金を払うというおろかな選択をしている。

そして本来はそれを「こうではなくこうしたほうがいい」と提案すべき業者の先輩が、言われるがままにそれを行って、バカだからそれに気づかない。
両方アホだな、と心のなかで呆れながら、その先輩の手伝いをぼくは昔していました。
これ、あのときぼくが上司だったら、この先輩を呼びつけて大目玉ですよ。

おっと、昔話が長くなってしまいました。
何が言いたかったのかといえば、このように、正しく洗わないと手洗いはあまり意味がない、ということです。
「時間を決めて洗う」「長く洗う」ことは、本来は「手段」です。
目的は、「手から菌のリスクをなくすこと」のはずです。
だからぼくはローラー掛けでも手洗いでも「時間を長くすればいい」「回数を多くすればいい」には、基本的に反対です。
(だから前回、ちょっとだけローラー掛けについて、ほんの少しの皮肉を混ぜ込んで書いたのです)

一番重要なこと。
それは、定期的に教育、チェックし、しっかり手が洗えているか(=しっかりローラー掛けがされているか)を確認し、従事者に教え、改善していくことです。

濡れた手にアルコールを噴霧してはいけない

そろそろクライマックス。
9つ目は、
「濡れた手にアルコールを噴霧してはいけない」
です。

アルコールというものは、濡れている手に噴霧してもあまり効果がありません。
新型コロナウイルスで騒がれているこのご時世、このことは声を大きく言いたい話です。

その理由は、手の水によってアルコールが薄まってしまうこと、それからルコールは稀発することで効果を発揮するからです。
そのため手洗いをしたら、ペーパータオルやジェットタオルでしっかりと乾燥させることが重要です。

ついでに、新型コロナウイルス絡みで一つ。

新型コロナウイルスが騒がれ始めた3月終わりくらいからでしょうか、商業施設などでの「ジェットタオル」の使用を禁止とするところが出てきました。
その結果、今では、ほとんどどこでも使われていないような状況となっていますよね。
その理由は、「ジェットタオルの空気は感染者のウイルスによって汚染される危険があるから」。

これで一気に一般の人に、ジェットタオルというものが、あたかも汚れた空気をまき散らす存在に認定されてしまったような感すらあったものです。(今もですかね)

ですが。
これに違和感を抱く品質管理さん、衛生管理の関係者はいませんでしたか?
「え、だってジェットタオルって、そもそもアルコール殺菌という目的のために手を乾燥するための補助的なものでしょ?」と。

そうです。
ジェットタオルって、アルコールをかける準備を行うために手を乾燥させる機械であって、空気の汚染云々というより、その後にアルコールを使うことがはなから前提のものじゃなかったの?と。
ジェットタオルの送風が不衛生とか、あんま関係なくね?と。

まあ、アルコールの使用前提ではない、楽に乾燥だけが目的である施設のジェットタオルはそうではないかもしれませんが、それでもモヤっとした感情が晴れません。

そんなわけで、多くの食品工場では今でもジェットタオルが現役です。
しっかり活用し、そしてその後しっかりとアルコールで手指を殺菌していただければ、と思います。

エアシャワーの風が完全に止まる前にドアを開けてはいけない

さあ、いよいよ最後。
10個目は、
「エアシャワーの風が完全に止まる前にドアを開けてはいけない」
です。

食品工場ではローラー掛けを行い、手洗いを行い、アルコールを噴霧した後、最後にエアシャワーを通ってからやっと工場内に入れます。

エアシャワーとは、その名の通り、人が1~3人程度入れる小さな部屋を設け、そこに複数の風の吹き出し口を作り、その名の通り、まるでシャワーのように風を吹き付ける機械です。
どうしてそんなことをするのかというと、その目的は、体に付着している毛髪やその他の異物要因を入場前に吹き落とすことです。

 

エアシャワーは高額で、設置工事を含めれば1台数十万円などが相場です。
決して安いものではありません。
そんな「安くはないもの」を「毛髪などの除去」の目的で導入するのが食品工場なのです。

確かに高額ですので、設備として買えない、という小さな工場もあることでしょう。
それはそれで別段仕方がないことです。

さて。
ぼくは以前、食品工場で毛髪モニタリングを行ったことが、何度かあります。
これはコロコロローラーを用いて、工場内のどこに毛髪が落下しているかを採取し、その落下毛髪の本数を比較するのです。

これを行うと面白いことがわかります。
どんなところに落下毛髪が多いかが判るのです。

ひとが着替えたりする更衣室や、ローラーがけや鏡の前で身だしなみチェック(アピアランスチェック)を行ったりするような前室などに落下毛髪が多い。
これは、まあ、普通に想像出来る、わかる話です。

では、製造エリアのどこに落下毛髪が多いのか。
意外なことにエアシャワーから出たところでした。

これらからわかることは何か。
それは、エアシャワーの送風が完全に終わる前に、エアシャワーから出るなよ、と。
そうすると、飛ばされた毛髪がエアーで場内に入り込むよ、ということです。

場内に入った毛髪は、床に落ちて、何かの拍子に舞い上がる危険が全くないわけではない。
そうなると何かの拍子に異物混入する危険性があるぞ、というわけです。
そこまで考えて、風が完全に止まるまでエアシャワーが開かないようにしている工場だってたくさんあるのです。

まとめ

前回、今回とで、「食品工場の入場ルール」について、あれこれと書かせていただきました。
食品工場の入場時にしてはいけないことは、次の「いけま10」です。

食品工場への入場手順例
  1. 食品工場では、帽子から毛を、例え1本でもはみ出させてはいけない
  2. 食品工場では、頭巾の首元を緩めて着用してはいけない
  3. 食品工場では、マスクから鼻を出してはいけない
  4. 食品工場では、ローラー掛けをせずに入場してはいけない
  5. 食品工場では、着衣着帽のチェックをせずに入場してはいけない
  6. 食品工場には、くるぶしの出るソックスをはいてきてはいけない
  7. 食品工場では、ローラー掛けをする前に手を洗ってはいけない
  8. 食品工場では、爪の間や指の間の洗浄を軽視してはいけない
  9. 食品工場では、濡れた手にアルコールを噴霧してはいけない
  10. 食品工場では、エアシャワーの風が完全に止まる前にドアを開けてはいけない

 

これらは基礎的といえば基礎的ですが、本質的といえば極めて本質的なことばかりです。
極めて本質的なことなので、いずれにしても共通的なことがあります。
というか、その共通点を結んでみれば、「食品工場とはどういうところなのか」、「どういうところであるべきなのか」がわかります。

それは、先にも書きましたが、製造現場というのは、人工的に作られる外部の汚染のリスクから切り離された衛生的な環境であるべきだという、基本的な食品工場の考え方でありコンセプトであり理想像です。
これは菌に対しても、虫に対しても、異物に対しても、その他の汚染物に対しても共通した考え方です。

それが、工場という「均一な製品を安定的に作る環境」における品質管理と、飲食店などの店舗との大きな違いとなっているわけです。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

 

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