新型コロナウイルスで注目を集めた、「PCR検査」。
これは一体どんな検査なのでしょうか。
食品の衛生管理屋が、誰にも判るように頑張って解説します。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えいたします。

 

今日のお話の概要
  • 「PCR検査」というのは、一言で言うと「それがどんな生物なのか」を遺伝子情報によって調べる検査手法のことである
  • PCRによりDNA(あるいはRNA)を調べることで、その遺伝情報、塩基配列情報からどんな生物なのかを知ることが出来る
  • PCRでは、ポリメラーゼを使うことでDNAを人工的に増幅させ、遺伝子情報を調べる
  • PCRでは、電気泳動による「定性PCR」が行われていたが、今はリアルタイムでモニタリング出来る「定量PCR」=「リアルタイムPCR」が主流である
  • 新型コロナウイルスはRNAウイルスであるため、「RT-PCR」が行われている

 

 

てゆーかPCR検査って何?

緊急事態宣言は解除されたものの、未だに新型コロナウイルスへの注目は高まったまま。
毎日のように報道が繰り返され、不要不急の外出自粛が求められています。

その中、2月くらいからしきりに「PCR検査」という言葉が報じられています。
今ではそれをマスコミで耳にしない日はないほど。
街の中の人に訪ねたって、「PCR検査」という言葉を知らない、聞いたことがない、なんていないかと思います。

ですが、「じゃあそれは具体的に一体どういう検査なのか」について答えられる人は、多くはありません。
というか、知っている人ってほとんどいないんじゃないかな。

「よく判らないけれど、遺伝子検査らしい」という認識が、99%以上なのではないでしょうか。
にも関わらず、「PCR検査の検査数を増やすべきだ」などとしきりに議論にあげられている。
一時期は「国民皆にPCR検査をすべきだ」なんて声もあがっていましたよね。
でも、そう言いながら、「てゆーかPCR検査って何?」と聞くと、その答えは「よく判らないけれど、遺伝子検査らしい」となる。
これって結構おかしなことではありませんか?

と、ここまでお話をしながらなのですが。
実際、ぼくも事細かなところまで知っているわけではありません。

おいおい、と思うでしょう。
でも、ぼくは食品衛生の専門家なので、この分野での検査として「PCR検査」を行うことはありました。
例えば、アレルギー検査。
例えば、遺伝子組み換え食品検査。
例えば、ノロウイルス検査。
例えば、微生物検査。
例えば、肉などの資材の適切性のために行う検査。
こうしたときに、遺伝子検査である「PCR検査」が行われます。

なので、最低限の基礎知識としては知っているつもりです。

そこで今回は、このPCR検査とはどういうものかを「わかりやすさ」重視でお話したいと思います。

 

PCR検査とは「どんな生物か」を調べる遺伝子検査

結論から先に言うと、「PCR検査」というのは「それがどんな生物なのか」を遺伝子情報によって調べる検査手法のことです。

遺伝子とは、言ってしまえばその生物の「設計図」です。
その遺伝情報、「設計図」を読み解くことで「この生物はこういうものです」と目に見えるようにするのが、PCRの目的です。
だからPCRを行えば、その食品が遺伝子組み換え食品なのか、その肉がどんな動物の肉なのか、がわかりますし、人間から採取した検体の中にコロナウイルスがいるかがわかります。

最も簡単に解説するのであれば、このように「PCR検査」とは「遺伝子を読み解く検査」です。

さあ、ここからは中学~高校レベルの理科の知識です。

この遺伝子情報は、ゲノムDNAに暗号として書かれています。
ゲノムDNA、つまりDNA配列情報には、その他様々な情報が書かれています。
そのうち、その生物特有の遺伝情報を、検体から「PCR検査」によって読んでいくのです。

では、どのようにして読んでいくのか。
DNAは、実はある特殊な手法を行えば「増幅」が出来ます。
「増幅」すると、そこに書かれている遺伝情報が読みやすくなります。
PCRは、それを意図的、人工的に施すことで遺伝情報を読みやすく、それこそ目で見えるまでにしてあげる検査手法です。

 

DNAとRNA?高校理科を思い出そう

ここで、もう少しばかり、学生時代の理科の復習をしておきましょう。

ぼくらの体を形成する細胞の中には、「細胞核」があります。
この細胞核の中にあるものを「核酸」と言います。

「核酸」は2つあります。
それが、いわゆる「DNA」、つまり「デオキシリボ核酸」。
もうひとつがDNAからつくられる「RNA」、つまり「リボ核酸」です。
覚えていますか?

DNAはその生物をかたちづくる設計図、遺伝子の本体です。
あの誰もが知っている鎖のからまった二重らせん構造で、細胞核の中に「染色体」として存在しています。
そしてその鎖は「アデニン」「チミン」「シトシン」「グアニン」という4種の「塩基」が連なった重合体で構成されています。
この塩基の配列は、生物によって異なるので、それを見ればどんな生物であるかがわかるようになっています。
それを、「PCR検査」で読み取るのです。

一方、RNAはDNAの情報に基づいてタンパク質を合成させる役目があります。
DNAの持つ遺伝子には、タンパク質の部品であるアミノ酸の配列情報が書かれています。
それがRNAに写し取られることで、アミノ酸へとそれが翻訳され、そしてタンパク質がつくられます。
なお、RNAは「アデニン」「グアニン」「シトシン」「ウラシル」の塩基で構成されています。
つまりDNAの「チミン」ではなく「ウラシル」で構成されているのです。

遺伝情報をもっている「DNA」と、その情報に基づいてタンパク質をつくるRNA
この存在こそが、PCRの鍵です。

「PCR検査」はこれらのDNA、あるいはRNAを調べることで、その遺伝情報、塩基配列情報からどんな生物なのかを知るのです。
例えば、新型コロナウイルスに感染した恐れのある患者から採取した検体を調べ、新型コロナウイルス特有の遺伝情報、塩基配列情報があるかを調べます。
もしそれが見つかったら、その患者は陽性、つまり新型コロナウイルスに感染していることがわかります。
もし見つからなければ、新型コロナウイルスはそこに存在せず、セーフ、というわけです。

 

PCR検査とはどのようにするのか

「PCR検査」とは、「ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)」の略です。
この「ポリメラーゼ」とは、核酸の中で様々な働きをする酵素のことです。
この酵素は、DNAの遺伝情報を複製したり、あるいは先に書いた「DNAの遺伝子情報を、RNAに転写する」役目をつとめています。

「PCR検査」では、このポリメラーゼを使うことでDNAを人工的に増幅させ、遺伝子情報を調べるのです。
もう少し言うなら、「プライマー」という1本鎖DNAを利用して、DNA配列のある特定領域(目的領域)を意図的に増幅させます。
すると、たった数分子しかない核酸が数ミリグラムまでDNAを増幅させることが出来ます。

では、具体的にどうするか。
検体をある検査溶液に入れて、以下のような熱の上下作用を繰り返すのです。

 

PCR検査のサイクル
  1. 熱変性
  2. アニーリング
  3. ポリメラーゼによる相補鎖の合成

 

まず、鋳型2本鎖DNAを94度の熱で1本鎖に物理的に分離させます。これが「熱変性」です。
というのも、プライマーは1本鎖DNAとしか結合できないからです。

次に60度くらいにまで温度を下げ、増幅の目的領域の鋳型DNAにプライマーを結合させます。
これを「アニーリング」といいます。

更に、DNAポリメラーゼが良く働く温度帯(70度近く)にまで温度を高め、DNAが増幅させるようにします。

この熱の上下サイクルを繰り返すことで、DNAはねずみ算式に増幅し、数時間の間に数百万~数億倍にまで増幅させることができるのです。
このDNA増幅のことを、「PCR」、つまり「ポリメラーゼ連鎖反応」といいます。
80年代にこの手法を開発した生化学者、キャリー・マリス博士は、後の1993年にノーベル化学賞を受賞しました。

ちなむとこのキャリー・マリス博士は彼女とのデートでドライブ中にこのPCRを思いついたという有名な逸話があります。
更に言えばこの人、薬物&大麻好きのサーファーで、モテたいのとドラッグに関われるので化学者になったという、かなりファンキーすぎる天才だったりする。
他にも様々な逸話に溢れた最高に型破りで素敵なノーベル学者なので、興味のある人は自伝を読んでみてください。

 

リアルタイムPCRとは

さて、話を戻して。

PCRでは、もともと増幅させたDNAを電気泳動によって確認する「定性PCR」が行われていました。
DNAがマイナス荷電であるという特徴を使い、電流を流してプラス極に移動させる、という手法です。

ですが研究の進歩と技術革新により、今や「定量PCR」、つまり「リアルタイムPCR(qPCR)」が主流になっています。
これはDNAの増幅をリアルタイムでモニタリングして解析する、というものです。
これによって、その「電気泳動」の手間がなくなり、検査の迅速さ、簡略さが大幅にアップされました。

今、新型コロナウイルスに対し行っているPCR検査も、この「リアルタイムPCR」です。

 

RT-PCR検査とは

この「リアルタイムPCR検査」を時折、「RT-PCR検査」と混合、あるいは勘違いしているケースがみられます。
ですが、新型コロナウイルスで行われている検査は、正確には「リアルタイムPCR検査」でありまた「RT-PCR検査」でもある、「リアルタイムRT-PCR検査」です。

ってややこしいな!

では「RT-PCR検査」とは何でしょうか。

「RT-PCR検査」の「RT」は「Reverse Transcription」の略です。
日本語では、「逆転写PCR検査」といいます。
こっちのがわかりやすいな。
んじゃ、「逆転写」ってなんだよ、となるわけですが。

ウイルスの中には、遺伝情報が「RNA」で構成されているものが存在します。
そう、新型コロナウイルスがそれです。
その他、ノロウイルスなどもそうです。

先にも書いた通り、RNAの役目は「DNAの情報に基づいてタンパク質をつくる」でしたね?
ウイルスには人間などの体に入りこんだとき、宿主の持つDNAを用いてRNAの役目を行い、増殖するものがあります。
それがこのRNAウイルスです。

こうした「RNAウイルス」に対しては、RNAを調べなければいけません。
ではどうするか。

まずウイルスのRNAについて、「逆転写酵素」を用いてDNAに変換させる必要があります。
これを「逆転写」と言います。
DNAからRNAへ変換させることを「転写」というのに対して、その逆、つまりRNAからDNAへの変換なので「逆転写」、というわけです。
こうして逆転写酵素に逆転写されたDNAは、「cDNA(相補的なDNA)」と呼ばれます。
そしてこの「cDNA」を増幅させることで、PCRを行うのです。

現在、新型コロナウイルスについては、この「RT-PCR検査」をリアルタイムで定量確認する「リアルタイムRT-PCR検査」を行っている、というわけです。

あーくっそややこしい!

いずれにせよ、一般的には一言「PCR検査」と言われていますが、実際は「RT-PCR検査」だ、というわけです。

 

PCR検査は増やせるか

最後に一点。

これまで、新型コロナウイルスに対して「PCR検査を増やせ」という議論をしばしば聞いてきました。
これについての意見は、人それぞれでしょう。
ですが、一般的にこうした検査は普通の食品衛生を取り扱う民間検査機関で行うことは余りしていません。
新型コロナウイルスの「PCR検査」を行うためには、その検査施設に「登録衛生検査所」としての登録が必要になります。
一般的に食品衛生業務を主としている検査機関は、この登録をしていないことがままあります。

となると、「PCR検査」ができる検査機関というのは、都道府県に登録された「登録衛生検査所」のみとなるので、自ずと限られてくる、と思います。

また「PCR検査」は、料金自体もそれなりに金額がかかります。
(特にRT-PCRは、先の通りRNAを抽出するひと手間が加わります)
検査機関にもよるでしょうが、一般的には2~3万円が相場でしょう。
健康保険適用で3割負担なら、個人負担分は6千円。老人なら2千円です。
その残りは健康保険負担となります。
すげえ当たり前ですが、検査機関はそれでみんな飯を食い、生きているのでタダじゃないです。
国民全員やったらそれを誰が払うのでしょうか。
もしやるならやるですが、そうポンポン行うにはただではない、ということも議論として押さえておくべきでしょう。

 

まとめ

今回は、食品衛生でも用いられている、昨今耳にする機会が増えているPCR検査について、お話いたしました。

ネットではかなり複雑な話が多いので、極力分かりやすく解説したつもりですが、いかがだったでしょうか。
お判りになりましたか?

いやあ、それにしたって「PCR検査」が子供でも知っているような時代が訪れようとは考えてもいなかった。
検査屋、食品衛生関係の人は皆、そう思うことでしょう。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

 

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