緊急事態解除へと向かい、いよいよポストコロナ時代に向かって世界が動き出しています。
大きな痛手を受けた飲食店は、今こそHACCP制度化に向かって一歩前に進むべきでしょう。
前回、そして今回と、二部構成で今飲食店がすべき具体的なHACCP対応についてお話させていただきます。
(今回はその後編となります)
改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えいたします。
- HACCPは、食品安全の確保の仕組みである「HACCP」(重要管理)と、基礎的な衛生管理項目である「一般衛生管理」の二層構造である
- 「一般衛生管理」とは、次の7項目である
①原材料の受入確認、②冷蔵冷凍庫内温度の確認、③交差汚染や二次汚染の防止、④器具などの洗浄・消毒、⑤トイレの洗浄・消毒、⑥従事者の衛生管理、⑦衛生的な手洗い - 「一般衛生管理」の衛生管理計画は、各一般衛生管理の項目に対し、次のことを取り決め、文書化していく
①いつ行うか、②どのように行うか、③問題がある場合はどうするか - 「重要管理」のポイントは、次の2点である
①食品の加熱の確認、②食品の保管状況の確認 - 「重要管理」では、まずメニューを「加熱の有無と、その後の冷却の必要性」によって3つに分類する
- 「重要管理」では、分類したメニューの各衛生管理方法について取り決め、文書化していく
- 作成した「衛生管理計画」は、日々実施し、そのモニタリング結果を記録していく
- これらは厚生労働省の手引書や東京都食品衛生協会の「食品衛生管理ファイル」を利用するとよい

目 次
HACCP制度化に向けて飲食店がやるべきこと
(こちらは二部構成の「後編」になりますので、もし以下の「前編」をお読みでなければそちらを最初に読んでいただくと理解がより深まります)
。前回、HACCP制度化に向けて「「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理(旧B基準)」である飲食店がすべきことをお話いたしました。
具体的には次の3つです。
- HACCPに沿った「衛生管理計画」の策定
- 衛生管理計画に沿ったモニタリングの実施
- その記録・確認
さあ、これらは実際にはどのように行っていけばいいのでしょうか。

「HACCP」とは何かをもう一度確認しよう
その前に、今一度「HACCP」とは何かを、要点だけに絞ってもう一度確認しておきます。
「もう知っているよ」
そう言う前に、もう一度、目を通してみてください。
「HACCP」とは「危害分析及び重要管理点」のことである
つまるところ「HACCP」というのは、科学的に微生物汚染を予防して食品安全を維持するための仕組み、手法のこと、です。
HACCP以前の食品安全は、出来た製品の幾割かをサンプリング検査し、それが安全であることで全体も同様だというような考え方によって成り立ってきました。
ですが、それだとたまたま偶然それが安全だっただけで、全体の安全を担保出来ません。
そこで考えられたのが「HACCP」です。
「HACCP」の根幹は「7原則12手順」ですが、ざっくり言えば次のような仕組みです。
「HACCP」では、食品の製造工程において何が危険なのかをまず分析します。
これが「危害要因分析」です。
英語で言うなら、「Hazard Analysis」。
頭文字で略すると、「HA」。「HACCP」の「HA」がそれに当たります。
そしてそこで見つかった危害における工程上で最も重要な管理点を定め、そこを「監視」(モニタリング)することで全体の安全性を論理的に担保しよう、というわけです。
で、この「重要管理点」を英語で言うなら、「Critical Control Point」。
頭文字で略すれば「CCP」。
先の「HA」に続けて「CCP」となれば、「危害分析及び重要管理点」。
これが正式名、「Hazard Analysis and Critical Control Point」、略して「HACCP」です。

HACCPとは、「一般衛生管理」との二段階構造である
さて「HACCP」は、このように食品のある重要なポイントを管理することで食品安全を守る仕組みです。
なので、一般的な食品衛生、例えば手洗いや清掃だったり、虫の管理などについては、これはHACCPの対象外になります。
でも当たり前ですが、それが守られなければ「衛生的な食品だ」とは言えませんよね。
お店の中でゴキブリが発生し、あちこち徘徊している。
トイレが掃除しておらず、余りにも汚らしい。
従事者の着衣が度を越して汚らしい。
そんな状況で、「ウチは重要管理点をモニタリングしています」と言われても、「いやそれ以前だろ!」と言いたくなりますよね。
このような、「食品安全」を支える一般的な「それ以前だろ」の衛生管理のことを、「一般衛生管理」と呼びます。
なお、この「一般衛生管理」には主に、次のようなものが含まれます。

つまり、HACCPでは、この「一般衛生管理」をまず行って、その上で先のような「HACCP=危害分析及び重要管理点」を行っていくのです。
構造のイメージとしては、こんな感じです。

まず基礎となる「それ以前」の衛生管理、「一般衛生管理」を行う。
そして、衛生的な環境や運用のもと、その土台の上で初めて、食品安全維持の「仕組み」である「HACCP」の「重要管理」を行う。
このようにHACCPは、二段構造となっているのです。
この基本的な考え方は、飲食店が含まれる旧基準B、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」でも何ら変わりません。

衛生管理計画を作ろう
これでHACCPとはどういうものか、2層構造になっていることなどがお判りになったかと思います。
そんなわけで、これらを踏まえて、さあいよいよ実践です。
まずは「何を行うか」の柱となる、「衛生管理計画」を作ります。
PDCAサイクルのうちの「P」、計画作りですね。
上にも書いた通り、HACCPは三角の二段階構造です。
ですから、ここでは2つ、つまり「それ以前だろ」の基礎的な衛生管理である「一般衛生管理」と、各メニューに対する「HACCP=危害分析及び重要管理点」に対する計画を立てることになります。
- 一般衛生管理
- 重要管理

一般衛生管理の「衛生管理計画」を作る
まずは土台となる、「一般衛生管理」の衛生管理計画を作っていきます。

これらについてのルールを、それぞれ作っていくわけです。
具体的には、主に次のようなことを定めていきます。
- いつ行うか
- どのように行うか
- 問題がある場合はどうするか
例えば、「原材料の受入確認」だったら、それはいつ行うのか。
「原材料の納入時に行う」、とかね。
そして、どのように行うのか。
「外観、匂い、包装の状態、期限や保存方法の表示、品温を確認する」、とかね。
で、もし問題がある場合はどうすればいいか。
「返品する」のか、それとも「廃棄する」のか…。
こんな感じですね。

で、
これらを7項目、あるいは10項目に対して定め、実際にそれを「文書」として記載し、かたちにしていきます。

ヒイイイイイイイイーーーーーっ!!
…と思うかもしれませんね。
でも大丈夫。
これもすでにおおよそのベースが出来ていて、それを使うことが出来ます。
(勿論これも後でその「出来ているもの」を教えます)
重要管理の「衛生管理計画」を作る
次は、いよいよHACCPに対する衛生管理計画を作っていきます。
危害分析ってどうするの?
さて、HACCPの「HP」は「危害分析」です。
危害分析?そんな難しいこと出来るかな?
と心配になる必要はありません。
すでに大方のベースを、厚生労働省が作ってくれているので、それに書いてある通りに従えばいいだけです。
一般的にはこのようなことを守ればいいのです。


ギョエエエエエエエーーーーーっ!!
…と思うかもしれませんね。
でも大丈夫。
要は、次のことを守ればいいのです。
「重要管理」のポイントは、次の2点のみです。
これを押さえておけば大丈夫です。
- 食品の加熱の確認
- 食品の保管状況の確認
メニューを3つに分類する
上の通り、重要管理のポイントは、「食品の加熱の確認」と「食品の保管状況の確認」。
この2点です。
では、これを行うために具体的にその取り決めを定めていくとしましょう。
まず、あなたのお店で作っているメニューはどんなものでしょうか。
加熱しますか?
あるいは、加熱しないで、冷たいままお客さんに出すものですか?
それとも、加熱後に冷却するものですか?
この「加熱の有無と、その後の冷却の必要性」によって、メニューを3つのグループに分類します。
- 第1グループ:非加熱のもの(刺し身、サラダ、冷奴など)
- 第2グループ:加熱してすぐ食べるもの(ステーキ、焼き鳥、唐揚げ、茶碗蒸しなど)
- 第3グループ:加熱と冷却を繰り返すもの(カレー、スープ類、ポテトサラダなど)
これらをメニュー分区分けし、これもまた実際にそれを「文書」、つまり表にしてまとめていき、かたちにしていきます。

グハアアアアアアーーーーっ!!
…と思うかもしれませんね。
でも大丈夫。
これについてもおおよその分類例が出来ていて、それを使うことが出来ます。
(勿論これも後でその「出来ているもの」を教えます)
重要管理の管理方法を定める
それぞれ分類したら、どのように安全であることを確保出来るか、その管理方法を定めていきます。
例えば第2グループの「生姜焼き」だったら、「その加熱が十分に行われたことをどう確認するか」。
「火の強さと時間で確認する」という方法もあれば、「見た目や触感で判断する」というのものあるでしょう。
また、例えば第3グループの「カレー」だったら、上のそれに加えて冷却についても考えなくてはいけません。
「調理後すぐに冷却し、提供時の再加熱まで冷蔵庫で保管する」というルールを作るとするなら、ではその冷蔵庫の温度は何度にすればいいですか?
であれば、「冷蔵庫の温度が10℃以下であることを確認する」などのルールも必要になってくるかもしれませんね。
で、これらにおいて、もし問題があった場合にはどうしますか。
「廃棄する」のか、「再加熱する」のか。
その対応方法も決めておきます。

と、このように、それぞれのメニューの管理方法を定めて、これもまた「文書」として記載していきます。

zm2kfくさdじsl@&$”ーーーっ!!
…と思うかもしれませんね。
でも大丈夫。
これについてもちゃんとベースがありますから。
(勿論これも後でその「出来ているもの」を教えます)
衛生管理計画を実施し、モニタリングを記録確認する
さあ、かくして作成した「衛生管理計画」に沿って、日々モニタリングします。
つまり、状況を計画どおりに確認し、それを記録し、問題があれば改善します。
そう、PDCAサイクルを回すのです。
「危害要因分析」を行ってそれに基づいた「衛生管理計画」を作成する。
これはまさにPDCAサイクルでいうところの、「P:計画」に当たります。
で、それを実際に行い(D:実行)、モニタリングし(C:確認)、問題が起これば改善する「A:是正」。
そしてこの「PDCAサイクル」を記録して「文書化」=「見える化」する、というのがこの「HACCP」という仕組み」です。
いやいや、言いたいことは判るけれど、どう記録すればいいのよ。
そうなるかもしれませんね。
大丈夫。
これもすでに何かしらの形でベースが出来ていて、それを取り寄せることが出来ます。
次でそれを教えます。

手引書と「食品衛生管理ファイル」を手に入れよう
このような「HACCP」の取り組みですが、たしかにこれを自分ひとりでイチから始めるのは結構大変かもしれません。
ですが、すでに厚生労働省から、詳細でわかりやすい食品関係団体が作成した「手引書」が出されています。
ですからこれらを見れば、まあ大概はそれほど難しくなく、取り組めるようになっています。
まずはここから始めましょう。
さらに。
昨今、色々な講習会などで配布されている資料の中には、これらを簡素化して出来るようにされたツールがしばしば配布されていたりします。
それを使う、というのも勿論いいでしょう。
他にも、各企業がパソコンやスマホ、情報端末用のHACCPアプリやソフトを作っているので、それを使うという手もあるでしょう。
ですが、これらにお金を出すほどでは、全くありません。
このコロナ時代をサヴァイヴすべき飲食店は、余計な出費は極力避けたいもの。
だったら、地域HACCPであり、原発問題から長らく食の安全安心にこだわっている福島県が出している無料スマホアプリで十分です。
しかもこれが結構よく出来ている上に、他地域でも全然使えます。(2020年5月現在)
なにせ行政、お上が「これをやれ」と言っているのですから、お墨付きです。
そして。
今回お勧めするのが、これ。
東京都が、一般社団法人東京都食品衛生協会の編集によって出している2020年度版「食品衛生管理ファイル」です。
これは協会の会員には毎年配布されるのですが、別に会員じゃなくてもネット上で、都の保健局のサイトからダウンロードが出来ます。
また、上にあるこれは日々の記録がカレンダーのようになっている2020年度版のものですが、別に日付を自分で入れればどの月でも使えるバージョンもちゃんとネット上にあります。
これについてはまた別に詳しく扱うことにします。

まとめ
今回は、飲食店はHACCP制度化に向けて何をしなければいけないのか、についてお話をしました。
少し長くなってしまいましたが、お判りになったでしょうか。
各ツールを用いて実際やってみると、案外とそんな難しいわけではなりません。
またこれを日々記録していくのは一見大変そうですが、慣れてしまうとそうでもなくなるものです。
いずれにせよ、HACCPの導入は、こんな時期にいち早く「ウチはしっかりと衛生管理に努めています」というアピール、そして何より実際にこんな時期に絶対に避けたい食中毒防止にはうってつけと言えるでしょう。
これらのノウハウを実際に使って、このコロナ自粛期間のうちに衛生管理のベースを作り、明日の一歩につなげていくことをお勧めいたします。
以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

・どうやって防虫管理・衛生管理をすればいいか判らない
・今やっている防虫管理・衛生管理が正しいか判らない
・何か問題が発生したときの対応が判らない
・取引先や保健所の査察が不安だ
・でも余りコストもかけられない
だったら貴方が防虫・衛生管理のプロになればいいのです!
- 私達は、どんな工場、お店の方でも防虫管理・衛生管理のプロレベルに育成することが出来ます。
- 何故なら、防虫管理・衛生管理のプロとは、基礎知識に加えて「正しい管理の仕組み」を作れる能力を持つ者のことだからです。
この「管理の仕組み作り」を知るこそが、防虫管理・衛生管理のプロへの道なのです。 - そんな防虫管理・衛生管理のプロを育成し広めることで、日本の「食の安全安心」を、さらにより広く、より高くさせることが私たちの使命だと信じています
- どうですか?
そんな防虫管理・衛生管理のプロにあなたもなって、本当の「食の安全安心」を私達と一緒に広げていきませんか?
