プロに聞く、衛生管理&防虫管理Q&A。
今回は食品工場での査察における無茶ぶりな指摘をどう捉えるかについてのお話です。
色々とよくある話ですが、まず一例として「現場でホウキを使ってはいけない」という指摘を題材にお話を進めていくとしましょう。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えいたします。

 

今日のお話の概要
  • 食品工場の査察官の技量差、資質差は実際のところ、かなり大きい
  • 指摘を受けた場合、それぞれ「何が問題なのか」「どうして問題なのか」と根拠を聞く
  • 工場や店舗が「衛生管理」というPDCAサイクルをどう回しているのか、どこにつまづいているのか、どこが上手く機能しているのか。
    そのレベルを見出し、つまづいているところを指摘するのが、本来の査察である

 

 

質問:工場内でホウキを使ってはいけないのか

「取引先による現場査察の際、ホウキではなく掃除機で清掃を行うように、との指摘をされてしまいました。
やはりそのように変えるべきなのでしょうか。」

実はこれ、以前にぼくのお客さんから実際に受けた質問です。
今回はこうした査察官の定期査察での問題指摘に対し、衛生管理、異物混入対策のプロとしてお答えしていきたく思います。

査察官の資質と実情について

まず、真実をぶっちゃけてしまいます。
これから書くことを読んでドキっとする、身に覚えのある査察官は「確実に存在します」
いや、想像を軽く超えて、結構多いです。

さて。
どの取引先でも、どの認証機関でも、どの代行監査でもこれは共通する「真実」があります。

それは、査察官の技量差、資質差はものすごく大きい、ということです。
もっとぶっちゃけてしまうと、その求められる技量、力量、知識、情報力、センスなどにおいて、その資格に至っていないスキル不足の査察官は、世にごまんと存在します。

で、
そのスキルがないものが現場踏査すると、どうなるか。

結果、査察官から出る指摘がこんなものになります。
ロジカルではない指摘、根拠のない指摘、重特性がさほど感じられない指摘、ズレた指摘、効果のない指摘、意味のない指摘、プロのぼくがその話を聞いて明らかに間違っている指摘、「そこじゃないだろ」という指摘…。

こんなものがごく普通にごく平気にまかり通っているのが現実です。
ていうか、だから「ホウキを使うな」なんて指摘が起きるのです。
そもそもぼくが査察官なら、そんなセンスの欠片もない指摘はしません。もしそれでも指摘するというなら、違う目線で指摘します。(後で書きます)
そしてお客さんには、以下書くことを伝えて「お立場はわかりますが、この査察官の言うことは余り鵜呑みにしないほうがいいですよ」と加えます。

はい、
そこのHACCPやISOの監査員さん、今、ドキっとした人いますね。
するはずなんです。
だって彼らの割と多くは、現場査察についてのスキルを持ち合わせていませんから。
(あ、全部とは言いませんよ、一応念の為。)

人には、仕事には「専門」、というのがあります。
それを考えた場合、例えば一般的な食品メーカーさんの品管さんの衛生管理に対するスキルやレベルは、プロから見れば「まだまだ全然」という場合が結構な頻度で、多いものです。
例えば、「ルールの種類を知っている、あれはダメこれもダメを知っている」程度。こういうのが多いですね。

一方、ぼくら衛生管理のプロは、各々の工場での製造上の細かな知識は持っていません。
なので、それらを聞かれても専門ではないので、全くわかりません。
ですが、そのぶんだけ様々な工場を日々廻り歩いているので、そのかわり「あれはダメこれもダメ」のプロです。
ですから、「何がどのくらいダメで、それはどの程度問題で、それはどこに根因があって、それをこう直せばよくなる」を知っており、その目で現場を見ます。
何もかにも平坦に現場を見ず、奥行きで現場を見るスキルを養わされます。
それが一流のプロか、そうでないかの目線の違いです。

特に、防虫管理に対する資質。
これについて一般の食品工場の品管さんは、ぼくらからすればそう大して素人と変わりません。
「そんなことない!」という品管さんは、どうぞ手前味噌ながらこのブログの虫の記事をいくつか読んでみてください。
なるほど、これがプロのレベルかと実感出来ると、絶対!に思います。
その自信もプライドも誇り(あ、同じか笑)もあります。
なぜなら他のことはさておき、こう見えてぼくは、ことこの世界にかけてだけは一流の域ですから。

それともうひとつ。
保健所の査察と違って、企業の査察官というのは問題を指摘するのが仕事です。
「何もありませんでした」と言って「宿題」なしに、「おみやげ」なしに帰ったら、上司から「お前は一日かけて何をやってきたんだ!」と怒られる立場にある人たちなのです。
だから、ときにイチャモンをつけます。むちゃくちゃな自己理論で、やれ危ないリスクだ何だとケチをつけます。
プロからすれば「そこより言うことあるでしょ(笑)」と思いながら、「これはこう管理しているからいいんじゃないですか?」といくらでも反論出来ることを、言ってきます。
でも仕方ないんです、それが彼らの仕事なんですから。

ですから、彼らの言い分が全部皆正しく、従うべきだ、とは思わないほうがいいでしょう。
まあ、こんなの皆薄々抱いていることですよね。
でも取引先だから、仕方なく「わかりました」と対応し、改善して写真を撮って、是正を報告してますよね。
ね、こんなのどこも同じだってことです。

リスクの想定と重特性のレベル付けから始めよう

おっと、少し話を戻します。

なぜ現場でのホウキの使用が咎められたのでしょうか。
その根拠はなんでしょうか。
どんなリスクがあるからダメだと言っているのでしょうか。

はい、
このように、まず指摘結果についてはそれぞれ「何が問題なのか」「どうして問題なのか」と根拠を聞くようにしましょう。
すると案外、「それって重要?」というものが出てきます。

例えば、この場合。
ホウキの脱毛がいかん、ということが最初にあがりそうです。
「現場でホウキを使っていると脱毛が異物になりかねない」という話です。
これにはまず、床を履くようなホウキの脱毛がどこでどのように異物として混入するのかを考えてみましょう。

普通、製造時に清掃はしませんよね。
では、高所の清掃でホウキを使うのですか?
いや、床面で使います。

つまりこの査察官は、製造後の清掃時に発生した床面のホウキの脱毛が、放置されて、次の製造時に何らかの力が働いて上にあがって混入するのだ、と言っていることになります。
この時点で異物混入リスクとしては、相当に低くなりますよね。
だって、製造ライン付近でそんな気流が作られているのですか。
例えば、低所からサーキュレイターのようなもので、製造ラインに向かって送風でもしているとか?
そんなん、ありえませんよね。
それでも上がるかな?

もう一つ。
ホウキを履くという行為において、勢いで飛ばされ舞い上がる、というリスクがある、という見方も出来るでしょう。
だから掃除機で吸い込む作業のほうが適しているのだ、という意見です。

つまり、製造後の清掃で床面から舞い上がったゴミや落下毛髪などが、ライン上や機材などに付着し、そのまま使用して異物になる、という話です。
いやそれ使用前の清掃や点検で除去されるのではないか、と普通に思います。
であればこれは、ホウキの使用云々ではなく、製造前の清掃、点検ルールの話になります。
(それに落下毛髪の問題は、毛髪管理の問題として取り扱うべきです。)

こう考えると、「リスクとしては結構低いんじゃね?」「というか論点そこじゃなくね?」となると思います。
まあ諸事情あるのでしょうが、正直、ちょっとこの指摘はセンスなさすぎです。
するならするで、違う方法があったはずです。
でもリスクは一応リスクだ、と捉えることにしましょう。

さて、次は「では現場で本当にホウキが必要なのか」というところから考えを始めましょう。

掃除機ではいけない理由、そのホウキでしかいけない理由はありますか?
どのような箇所を、誰が、どのように清掃するのでしょうか。
その際に、そのホウキが最も適しているのか、そうではないのか。
これをここで考えてみてください。

その上で、次の話に向かいます。

代理用品のデメリットも知っておくべき

それから、代理用品に変えたからって問題が万事解決、めでたしなんてありえません。
それを使うことのデメリットがない、なんてことは少ないことの方が多いものです。

効率が悪い、効果が低い。
コストが圧倒的にかかる、対費用効果が極めて低い。
使用が難しい、スキルが必要だ、現場の使用にそぐわない。
使用勝手が悪い、などなど。

あるいは、別の問題をはらんでいる、なんてこともあるかもしれません。
例えば、掃除機の場合だったら、こんなことも考えられるでしょう。

これはチリトリなんかでも「あるある」なのですが、虫の発生要因がよく判らない、色々調べてみたら掃除機の中だった。
これ、結構あります。
とくに穀粉を多用する工場や店舗などでは、心当たりがあるところもあることでしょう。

当たり前ですが掃除機もホウキもチリトリも、清掃する道具であって殺虫する道具ではありません。
よく考えればすぐ判るでしょうが、発生源と一緒に吸われたり集められた虫はどうなるのでしょうか。
「発生源」ですから、卵だってあるでしょう、幼虫だっているでしょう。

その場合、往々にして掃除機は発見が遅れがちです。
勿論、その掃除機自体を清掃、メンテするルールがあって、それがなされていて、確認されていれば話は別です。
(ここ、ヒントです)

勿論、ホウキだって同じこと。
ゴミを履く用途である以上、同様のことが言えます。

例えば、チャバネゴキブリが発生しやすい工場では、清掃用具置き場であるロッカー内が営巣箇所になりやすいときがあります。
理由はもうお判りですね。

こうしたことを考えて、何が適しているのかを考える必要があります。

ホウキの管理ルールはどうなっているのか

さて、それでもこのホウキが必要だとなります。
まあ、掃除機でも同じですが、いずれにしたってぼくが査察官ならこう聞きます。

「では、そのホウキはどう管理されているのですか?」

このホウキを管理するルールはどうなっていますか?
正しい状態の基準はどう確認するのですか?
脱毛したかどうかをどう確認するのですか?
劣化した場合に、誰がいつ確認するのですか?
何を基準に交換するのですか?
そのルールはどこに書かれているのですか?
そのルールは現場の方が誰でも今すぐにでもわかるようになっていますか?

これらを聞き出して、なるほど「管理」がしっかりされているな、と理解できれば指摘項目に含みません。

というか何にしたって、杓子定規に、これがあるからダメだとはよっぽどの場合でないと言いません。

これを使う必要があるのはわかった。
ではそれを管理するルールはどうなっているのか。あるのか、ないのか。
で、どうルールが遵守されているのか。
それによって、この工場や店舗は「衛生管理」というPDCAサイクルをどう回しているのか。
どこにつまづいているのか、どこが上手く機能しているのか。
そのレベルを見出し、つまづいているところを指摘するのが、査察官の本来の仕事です。

本来の現場指摘とはどういうものか

実際のところ、こちらのお客さんの工場はほぼ満点で、「おみやげ」がなかったのでこんなケチを言われた。
そんな工場でした。

でも、そうではない場合だって、十分に考えられることでしょう。
例えばこれについても、まともな資質のある査察官なら「勿論、そういう意味で指摘してるんですよ」と抗いたくなるところだと思います。

実際、こうした場合は、得てして工場側の理解不足ということがよくあります。
つまり、査察官自身は「ホウキを使っている=ルールの問題が1つある」と指摘されているのではなく、「リスクに対する管理においてここに問題がある」と指摘されている、と。
でも、それを工場側が理解出来ていない、というケースです。

「ここにルールの問題がある」と「管理上、ここに問題がある」は意味が全く違います。
なぜならそれは、前者が一つの現象を見て表層的に「これおかしい、間違っている、は^ーいバツ1つ見つけ!」と言っているのに対し、後者は工場全体を見て「この工場は管理、つまりマネジメントシステムのPDCAサイクルにおいて”P”が弱い、だからこういう問題になっている」と評価することになるからです。
これが本当の査察官のすべき指摘です。

「木」を見て、「森」を見る。
「個々」に張り巡らされた、「要因」に目を向ける。
見える「具体」の裏にある、見えない「抽象」を見つける。
「事象」に対し、「なぜ」「なぜ」「なぜ」と掘り下げて、見る。
そして「現象」の一つ一つを、「根因」に結びつける。
そして、それに対する「評価」「問題」「要因」「対策」の段階をロジカルにすすめる。
これが、本来求められるべき査察官の資質です。

だからここでは、ホウキの裏にある、「管理」を問うべきなのです。

対策を考えてみよう

で、その上でこの問題の対策について考えてみましょう。
管理上の問題や要因は、ちょっとここでは置いておきます。

まあ、ホウキは現場には必要だ。
リスクもそれほど高くはないが、全くないわけではないし、なにがしかの取り組みが必要だ。
ではどうしよう、となります。

異物混入対策の基本は「整理・整頓」です。
突き詰めて言えば、「整理・整頓」とは、「なくなったことがわからない」をなくすための仕組みづくりです。

 

異物混入が起こりやすい状況
  • 「なくなっていることがわからないもの」がある
  • 「なくなっていることがわからない状況」である
  • 「なくなっていることに何もしない状況」である

 

 

さて、ホウキは何故ダメだというのでしょう。
脱毛して、毛が「なくなったことがわからない」からだ、という。

では、工夫して毛が「なくなったことがわからない」ようにしたらどうでしょう。

例えばよくある一例として、脱毛が明らかにしている状況のホウキをデジカメで撮影し、交換基準とする、というのがあります。
これを形骸化させないように、週に一度はチェック表でそれが満たされているかをチェックする、というのも有効かもしれません。

あるいは、製品の色と違う、現場の床面の色と違う。
そんな目立つ、例えば赤や黄色の毛のホウキを使用する。
保管場所などでは、白い受皿を用意し、その上に保管する。
すると清掃時に、脱毛したホウキの毛が見え始める。
各エリアによって、それをどこかジップ袋にでも入れておき、交換の基準にする、などなど考えればいくつか使えそうなルールは出てくることでしょう。

どんなルールでも構いませんが、各工場にあった「なくなったことがわからない」ためのルールを現場にあわせて定め、表記し、実施し、確認し、カスタマイズしていく。
そうしてPDCAサイクルを回すことで、「なくなったことがわからない」状況から脱する。

弊社はホウキを使うリスクを理解し、そのうえでそれに対する管理をこのように行っています。
と、これを示してそれでも「ホウキはダメです」という査察官なら、そういう程度なのだと見限ったほうがいいでしょう。
減点されて納得はいかないかもしれませんが、向こうはそういう立場の仕事なのだ、と思うしかありません。

まとめ

今回は、時にある現場査察での指摘について、本来あるべき指摘のあり方や、それに対する考え方、対応法などについてお話させていただきました。

このように、現場査察の指摘は様々です。
そして個々の現象をとらえて、「はい、バツ1つ」とされることが多いものですし、受け手としても個々の問題に「あ、じゃこれ直さなくちゃ」と思いがちです。
でも本来はそうではなく、「この工場は、管理上”D”が弱いので教育訓練に不備があるため、このような問題がおきている」というように、工場のあり方が評価され、それを補うよう管理を本来直していくべきでしょう。

だって、それこそ「査察」って、それ自体が工場全体を取り巻く大きなPDCAサイクルのうちの「C:評価」なんです。
だって、企業としてなにがしかの取り組みを決めて、行って、でこれどうでしょう、の「評価」です。
であれば、うん「取り決めが悪いね」「行いが悪いね」「その確認がされてないね」「問題直されてないね」と見るのが当たり前じゃないですか。

どうぞ、あなた自身の工場の査察についても、このように捉えてみることを強くお勧めいたします。

あ、なお査察官さんのスキルについてのご相談も行っていますので、「お問い合わせ」からどうぞ。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

 

 

■□貴方の工場・店舗で悩んではいませんか■□
・どうやって防虫管理・衛生管理をすればいいか判らない
・今やっている防虫管理・衛生管理が正しいか判らない
・何か問題が発生したときの対応が判らない
・取引先や保健所の査察が不安だ
・でも余りコストもかけられない
だったら貴方が防虫・衛生管理のプロになればいいのです!

高薙食品衛生コンサルティング事務所にようこそ
  • 私達は、どんな工場、お店の方でも防虫管理・衛生管理のプロレベルに育成することが出来ます。
  • 何故なら、防虫管理・衛生管理のプロとは、基礎知識に加えて「正しい管理の仕組み」を作れる能力を持つ者のことだからです。
    この「管理の仕組み作り」を知るこそが、防虫管理・衛生管理のプロへの道なのです
  • そんな防虫管理・衛生管理のプロを育成し広めることで、日本の「食の安全安心」を、さらにより広く、より高くさせることが私たちの使命だと信じています
  • どうですか?
    そんな防虫管理・衛生管理のプロにあなたもなって、本当の「食の安全安心」を私達と一緒に広げていきませんか?