「5S」。食品関係の工場や店舗における衛生管理の基本中の基本、ですね。
ところが、これが実はシンプルに見えて、なかなか奥深い。
特にね、この「整頓」はめっちゃ奥深い。
というわけで、誰も教えてくれない本当の5Sの話、今日は「整理」に続き「整頓」について、前回の基礎編を踏まえながら実践編をお話していきましょう。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えいたします。

 

今日のお話の概要
  • 「整理」は定期的に一斉に実施するものだが、「整頓」は日々の業務の中で毎日いつでも行っていくものである
  • そのため「整頓」は「毎日誰でもすぐ出来る、わかるようにすること」が大きなポイントである
  • 「3定」とは次の通りである
    ①定位:どこに(場所)
    ②定品:何が(品目)
    ③定数:どれだけ(数量)
  • 「表示」とは、いるものの名前と数を記すことであり、「標識」とは、いるものの場所を記すことである
  • 「整理」とは、様々な取り決めやルール、表示付けなどによって「毎日誰でもすぐ出来る、わかる」仕組みを現場に整えることである

 

 

「整頓」とは「なくなったことがわからない」をなくすこと

前回お話しました、「整頓」とは何かというお話。

そう、「整頓」というのは、現場でものがなくなったことが判らない、そんな状況をなくすことです。
では、なくなったことがわからない状況とはどういうものか。

 

なくなったことがわからない状況
  • 保管に対する表記がない(=保管に対するルールがない)
  • 保管すべきでないものがある(=保管に対するルールが認知、理解、許容されていない)
  • 保管されているものをチェックしていない(「整頓」の不徹底)

 

このような状況が、「ものがなくなったことがわからない」、つまり「整頓」がなされていない状況です。
これが、「経営効率や社員のやる気を上げるため」のオフィスや自動車部品工場などと、「異物混入事故防止」という切実な目的で行う、食品工場や飲食店など食品衛生に関わる5Sの、最大の違いです。

例えば、オフィスのファイル置き場でホチキス止めした書類のホチキスが取れてしまって、なくなっている状態のものを指差して「整頓」がなされていない、とは誰も言いません。
自動車部品工場でも、上長は全く気にもしないことでしょう。

で、同じものが現場の包装工程のライン近くに置いてあるのを食品工場の品管の課長さんが見つけたら、どうなるか。
怒鳴られるどころでは、ことはすみません。
場合や企業によっては、場内に停止ブザーがけたましく鳴り響き、そして工場従事者全員で捜索がなされ、そして芯が見つかるまで製造が一旦停止させられます。
書類の重要性、必要性はそこに全く関係がありません。
この状況差こそが、それらの「整頓」の違いを指し示す証左です。

これは「要るもの」だろうがなんだろうが、「なくなったことが判らない」ものがどうしてここにあるんだ、という話です。
「ホチキスの芯」は、例えそれを止めている書類がどんなに「要るもの」でも「適切な保管場所」は「事務所」なのです。
ですから「整頓」が「要るものを適切な場所に保管すること」であるならば、その「適切な保管場所」である「事務所」に持っていくしかないのです。
(というか食品工場で、事務所であってもそもそもホチキス使うなよ、という話でもありますがね。普通は紙ホチキスが常識です。)

そのような食品工場や飲食店での「整頓」とは、次のようなことを行わなくてはいけません。

 

「整頓」で「なくなっていることがわかる」ようにする
  1. 要るものの保管に対するルールを策定、明示(表記)する
  2. 「なくなったら判らないもの」を撤去する
  3. 保管ルールに従って適切な保管場所に保管する
  4. 適切に保管されていることを確認、改善する

 

と。
これまでが前回のお話です。

 

では、これらを踏まえながら実践していくことにしましょう。

「整頓」が「整理」と違うところ

これらを理解した上で、「整頓」を実際に行うわけですが、ここでもうひとつ。
「整頓」には「整理」とは大きく違うポイントがあります。

それは、「整理」とは定期的に一斉に実施するものですが、「整頓」は日々の業務の中で毎日いつでも行っていくものである、ということです。
つまり、毎日出来ていることが「整頓」です。
そのため、「整頓」は日々の業務として根付かせることが重要です。
ですから、「毎日誰でもすぐ出来る、わかるようにすること」が大きなポイントになります。

「整頓」とは、日々の業務の一環としてなされるための「仕組みづくり」です。
ですから、簡単にすぐ出来て、誰にもわかるように様々な工夫をし、環境を作っていくわけです。
それらの結果、毎日の業務の一つの中に自ずとそれが組み込まれていく。それが「整頓」です。

 

それと同時に。
何度も言うように、ここは食品工場や飲食店です。
ですから、食品衛生を踏まえたうえで現場を常に次のようにしておくルールづくりや環境づくりをしなければならない、ということです。

 

「整頓」とは
  • 要るものがいつでも取り出せるようにすること
  • 要るものが誰でも取り出せるようにすること
  • 要るものが簡単に保管出来るようにすること
  • 要るものが「あるのか・ないのか」が誰でもすぐわかるようにすること

 

まず、これが原理原則です。

「整頓」とは、「要るもの」の保管場所を定め、正しい箇所に保管することです。
そしてその結果、それらをいつでも誰もが取り出せる状況にすることです。
そして、それが「あるのか・ないのか」が誰でもすぐわかるようにすることです。
そして重要なのは、それらのことは、入ったばかりの新人さんでも誰に聞かずともわかるようにしている、なっている、ちゃんと日々現場がそう動いている、ということです

それが「仕組みづくり」というものです。

「整頓」の手順とは

さて。
「整理」を行うためには、「要るもの:生品」の「定位置」を定め、「定数」を定め、「表示・標識」する、というステップが必要になります。

 

「整頓」のステップ
  1. 生品の定位置化
  2. 生品の体品化
  3. 生品の定数・定量化
  4. 生品の表示・標識化
  5. 生品整頓ルールの確認と明示

 

まず、ここで「3定」を知って下さい。
あ、大丈夫。そんな難しくはないです。

「3定」とは、「どこに・何が・どれだけ」の3つを定めることです。

 

「3定」とは
  • 定位:どこに(場所)
  • 定品:何が(品目)
  • 定数:どれだけ(数量)

 

 

「定位」とは、道具や文具、器具など、すべての生品の住所を定めることです。
そしてそこに何が保管されているかを定めるのが、「定品」です。

そもそも「要るもの」を見つけるために探す、という行為は、その定位置がないために行う行為です。
「要るもの」の定位置が判っていれば、そこを見ればいいだけです。
なので、まずは「要るもの」の定位置を決める。

さらにこれらがどのくらいあるのか、その適正数を定めます。これが「定数」です。
そして食品工場において最も重要なのが、この「定数」です。

一般的なオフィスや自動車工場などでの「整頓」の目的は、「ムリ・ムダ・ムラ」をなくすことです。
(5Sの目的でもあると思いますが)
勿論、それも大切でしょう。
ですが、ここは食品工場・店舗です。
そこ独特の目的が自ずと生じます。

つまり、異物混入防止のために、その要因、根因を排除し作らず、また迅速な対応が出来るようにする。
これが「整頓」の目的となります。
そのため、あるべきものがあるのか、ないのか、誰の目からも明らかにしておく必要が求められることになります。

ちなみに、世にはやれ「5定」だ、いやいや「6定」なんだとありますが、はっきり言って、いりません。
数増やせばいいってもんじゃ、全くないです。
ではなく、重要なのはこうした基本を踏まえて、しっかり一つずつ行っていくことです。
なんかやった気になることが一番効果が出ないパターンだというのが、この世の定石です。

「持ち込まない」原則外は、「どれだけ」を判る仕組みに

さて、ここで様々な現実にぶつかります。

例えば、工場内には様々な消耗品があります。
ここで普通の工場の5Sだと定量数を算出する、発注管理を進める、といったことに取り組むのですが、この目的はあくまで「ムリ・ムダ・ムラ」対策。
勿論それもやっても全然構いませんが、我々がここで本当に考えるべきは異物混入対策です。

つまり、より重特性の高い消耗品。
例えば、輪ゴムや磁石、クリップなど、小さくていつ製品混入するかが判らないものです。

基本、こうしたものは食品工場内で使用しないのが大前提です。
すなわち、異物の要因を場内に「持ち込まない」。
こうした持ち込み制限ルール、禁止ルールが必要です。

ですが、そうもいかない、どうしても使う工程がある、という場合もあるかもしれません。
その場合、最低でも本数や一日の使用数を制限し(例えば10本単位の輪ゴムフックを用意するなど)、過剰に持ち込まれたり、使用残量がすぐに判るような仕組みを作ることが重要です。

ただし!
余談にはなりますが、この時代クリップや輪ゴムなどの代わりになる異物混入防止用品など、ネットで探せばいくらでも出てきます。
本当に現場でそれを使うことが必要なのか、いい機会なのでそこに立ち返って、改めて考えるべきだとぼくは強く思います。
(近く、そんな代理品や使えるツール例をご紹介する記事を書く予定です。お楽しみに。)

「3定」を定めたら次は「表示」「標識」

さあ、「3定」が定まりましたか?
では次は、「表示」「標識」。
これらを実際にテプラや掛札などをして、「見える化」していきます。

さて、
ここでのポイントは、全ての「いるもの」に対して「表示」「標識」を行う、ということです。

 

「表示」「標識」とは
  • 表示:「いるもの」の名前と数を記すこと
  • 標識:「いるもの」の場所を記すこと

 

現場の全てのものに、これを行っていくのです。

いやいや、こんなのここにあるの判っているから、とその部署の人は言うでしょう。
ですが、ぼくにはわかりません。
何故ならその保管ルールが明確ではないからです。
同様に、新しく入ってきた新人さんや本社から来た品管さんなども、そのルールは判りません。
だからこそ、「表示・標識」が必要なのです。

このように、誰でも「判る」、視覚として目に「見える」ようにするため、全てのものに「表示」「標識」を行い、ルールを明確化させていきます。
これが「整頓」です。

「整頓」とは「毎日誰でもすぐ出来る」仕組みを作ること

さて、これが大まかな「整頓」の流れです。
あとは細かい表示や標識の仕方などありますが、まあ、一番の目的が果たされればそれはそれ。
勿論、それは異物混入防止のための仕組みづくりなのですが、それを果たすためにどうすることかといえば、それは「毎日誰でもすぐ出来る・すぐ判る」こと、に尽きます。

そう、「整頓」の目標とは、「毎日誰でもすぐ出来る」状況にすること、です。

 

「整頓」とは
  • 毎日出来る=毎日する
  • すぐ出来る=すぐにやれる
  • 誰にでも出来る=誰もがやれる、誰もがわかる

 

これはつまり、「整頓」とは日々、毎日、誰もが例外なく皆、今すぐに行うことだということです。
定期的、例えば1ヶ月や数ヶ月に1回、「せーの!」で一斉に行う「整理」とは、そこが大きく違っているところです。

もう少し言うなら、様々な取り決めやルール、表示付けなどによって「毎日誰でもすぐ出来る、わかる」仕組みを現場に整えることを「整頓」というのです。

だからボトムアップが大事なんだということ

さあ。
ここまでくると、「整頓」において、どうして「安全安」神さま(の権威を借りた神官、工場長さま)による「いいからルールに従えばいいんだ」教が、いかにまずいかわかりませんか?

 

そうです!
お判りでしょうか?

だからぼくは、この「整理」を終えて「整頓」の話をするタイミングで、わざわざ↑この記事、つまり「安全安」神、「いいからルールに従えばいいんだ」教の話を敢えてしたのです!

とどのつまり、「いいからルールに従えばいいんだ」教は、トップダウンの「こじらせ」です。
トップダウンこじらせて、「整頓」が上手くいくはずがないのです。
なぜなら、それでは「ルールが現場に根付かない」からです。

「いいからルールに従えばいいんだ」教の悪いところは、「ルール以外のことをやらなくなる」です。
で、考えてみて下さい。
「いいから従えコノヤロウ」というような風潮で、このように自ら毎日を律するルールを作ると思います?

ですよねー。
「整頓」はこの宗教下では現場に絶対、根付かないのです。

ではこの「いいからルールに従えばいいんだ」教のもとで、「整頓」を行うとどうなるか。

「トップダウンでやるとうまくいきませんよ」というのに、それを行う。

確かに最初は現場も、イヤイヤ従います。
でもそのうち、必ず緩みます。
「いいから従えコノヤロウ」が出ます。
その繰り返しが、更に緩やかに、そして顕著になります。
最初怒っていた管理者もそれがなんとなく日常だ、となっていきます。
結果、現場に「諦め」が広がります。従事者にも、管理者にも。
こうやって、「整頓」の現場への「根付き」が消えます。
やがて多くの表記や標識はただの日常風景の文字となり、やれ「3定」だもただのスローガン以下になります。
こんななかで、管理者だけがドヤ顔で「ウチは3定どころか、6定だ!」と言っている。
そして、「うちの現場は言ったことしかやらない」とボヤきます。

 

「言ったじゃないですかー!」
ドンデンドンデンーッ!

 

とね、
こうならないようにするには、ボトムアップが必要なんです。

現場に「整頓」をまかせる。
現場の社員をリーダーにして、自ら取り組むようにする。
管理者は首を突っ込まず、そしてリーダーの指示に自ら率先して従う。
こういうルールを作りました、と上につなげる。
誰それの働きでこんなに現場が改善されました、上に報告する。
うまくいかなくなったら、怒らず、もう一度活動を振り返らせ、また取り組ませる。

ボトムアップとは、この繰り返しです。

まとめ

今回は、食品工場における「整理」についてお話いたしました。
何度も言うように、異物混入においては「整頓」のレベルが非常に重要になることがあります。
なぜなら「整頓」とは、そうした異物混入リスクを軽減させるため、現場にあるものを「見える化」することだからです。

 

「整頓」とは、「毎日誰でもすぐ出来る」仕組みを作ること
  1. 要るものがいつでも取り出せるようにすること
  2. 要るものが誰でも取り出せるようにすること
  3. 要るものが簡単に保管出来るようにすること
  4. 要るものが「あるのか・ないのか」が誰でもわかるようにすること

 

これらの目標を果たすために、「3定」を表示・標識化していきます。

 
  • 定位:どこに(場所)
  • 定品:何が(品目)
  • 定数:どれだけ(数量)

 

と、これらを進めていくことが「整頓」です。

さあ、「整理・整頓」の2Sのステップが進めたなら、次は「清掃」です。
これについて、次回よりお話を進めていきましょう。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

 

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