「5S」。食品関係の工場や店舗における衛生管理の基本中の基本、とされています。
ですが、余りそれが異物混入事故防止の基礎として語られていないように見受けられます。
やれトヨタでは云々、経営の効率化が云々。
そんなコンサル屋の戯言はいいから、食品工場の現場での生々しい5Sの話をしようじゃないか。
というわけで、誰も教えてくれない食品工場における本当の異物混入対策という5Sについて、お話していきましょう。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えいたします。

 

今日のお話の概要
  • 金属異物などの硬質異物
  • 異物混入のうち、「設備構造由来」「管理運用由来」の異物混入は5Sで防ぐことが出来る
  • 異物混入が起こりやすい状況とは、次の3つである
    ①「なくなっていることがわからないもの」がある
    ②「なくなっていることがわからない状況」である
    ③「なくなっていることに何もしない状況」である

 

 

「異物混入防止」のための5Sの話をしよう

さて、ですよ。

「5S」、なかんずく「食品」を取り扱う、工場・店舗における5Sをどう行うかについて書かれたものは、実はそれほど多くはありません。
そのせいで食品衛生の基礎中の基礎にも関わらず、んじゃ「実際に食品工場で5Sってどうやんのよ」となると、なんだか自動車の部品工場やオフィスの5S対策の話のみが出てきたりします。

おかしくないすか、これ?

すんげえ当たり前で語るまでもないことですが、オフィスと食品工場では、5Sの目的が異なります。
だって、効率化や社員のやる気を育てるための「5S」と、異物混入したら会社が傾く食品工場での「5S」が、そりゃ確かに基本的には同じだとしても、それが「全く同じだ」と誰が言えますか?
んじゃその「全く同じ」に、あなた、企業の責任持てますか?

そして、それを話している5Sのコンサル屋さんは、食品衛生、異物混入のド素人です。
ド素人も何も、それ以前で彼らは食品工場の現場を、一切知りません。
知らないので、オフィスや自動車工場の話をします。
金属の切りクズ一つが製品のパッケージに入っても、「あ、すんませんでした」で済む世界の話をします。

結果。
食品工場で、何が問題になって、何に一番気をつけなければいけないのか。
そもそもとして、5Sを行う目的として、やれ社員育成だとかやる気だとかそんな呑気な話ではなく(それも勿論重要だとは思いますが)、もっと切実とした「てゆーかそんな呑気な話以前に、異物混入したら会社が吹っ飛ぶような事態を防ぎたい」という、喉元に迫るような食品工場・店舗の現実(というか切実)に対応していなかったりします。

いや、こんなことはぼくがここで言う以前に、実際にネット上で「5S・やり方」とか検索すれば、誰も1分かからず理解出来ますよ。
何なら、というか一度、試しにGoogleで今、調べてごらんなさい。

はい。
ということで、すでにご存知だとは思いますが、改めまして。
ここでぼくがしているのは、あくまで「異物混入対策としての食品工場・店舗の5Sの話」です。

オフィスで社員のやる気を育成したい。経営の改善を進めたい。
そういう人は、ここではないコンサル屋さんの話を参考にしてください。
それはぼくの完全な専門の範疇外です。
ぼくは、食品衛生、異物混入対策のプロですので、その話は出来ません。
そのかわりに、彼らには絶対に出来ない、絶対に知らない「衛生管理、異物混入対策としての、食品工場・店舗の5Sの話」をします。

はっきりと言っておきますが、ぼくが話す5Sの目的は、食品の「異物混入防止」です。
何故ならぼくは異物混入対策のプロだからです。

ぼくは20年以上、食品工場や店舗の現場を毎日駆け巡ってきたので、それしかわかりません。
逆に、そこにおいてはプロ中のプロですので、食品工場や店舗の方は、引き続きご安心を。

混入異物は何が多いのか

まず最初に、「異物混入」というものについて少しお話しましょう。

製造工程、調理工程などでの「混入異物」は何が多いのか。
前にも書いたことがありますが、実は「データがないのでわかりません」。

 

勿論、過去記事にも書いたように、「それっぽいデータ」なら、全くないわけではありません。
ですが基本的には、やっぱりそんなデータは、世に出ていません。出回りません。

こうしたものは検査屋が多少ながら肌身で実感しています。
が、別に行政にそれを届けるわけでないですし、一社だけのものしかわかりませんので、「なんとなく」しかわかりません。
「とあるパン工場の」だとか、「とある清涼飲料水工場の」というデータはないわけではありませんが、はっきり言って工場によって異物状況は違うので、一概にそれを参考にするのもどうかと思います。
だって食パンに魚の骨は入らないでしょうし、缶ジュースに絆創膏は入りづらいものです。

例えばこれは東京都の苦情発生データを資料としてまとめたものです。(2012年度)

 

これを見た誰もが、すぐに
「そうか、異物混入の異物は、虫が一番多いのか!」
「ガラス・石・金属や毛髪なんかも多いんだ!」

と思うことでしょう。
一方、食品メーカーの品管さんは、「いやこれ、金属・ガラス多すぎじゃね!?」ともう少しだけプロ目線で捉えるかもしれません。
(そこまで出来たら合格です)

つまりこれは、飲食店での異物混入データなのです。
そうとしてしか参考にならないデータです。
なんといっても東京ですからね、とんでもない数のお店が密集している。
そこでの保健所クレームを統計したものです。
だから工場での異物混入はここに余り入っていない。例え入っていたとしても、割合が限りなく低い。低すぎて全くここからは見えない。

そこで、かつては大手衛生管理企業で実際に検査なども受けていたぼくの経験で、異物として多いものを上げてみます。
まあ多少の差こそあれ、それほど大きくは変わりません。
それだけは異物混入のプロとして、断言出来ます。

 

これらを見て「ガラス片」とか「金属」って以外と少ないんだな、と思うかもしれません。
ですが、ここで一つ注意が必要です。

異物混入は混入数が少なければいいというものではありません。
実は、異物混入で一番考えなくてはいけないこと、それは「健康被害」です。

正直「健康被害」という面からのみすれば、最も混入数が高く頻出する「虫」や「毛」の混入というのは、は健康被害への直結の危険性が限りなく低いものです。
(とはいえ、企業のイメージを大きく損ねるので、当然ながら対応が必要ですがね)

しかし、「金属片」や「石」「ガラス片」などといった「硬質異物」は、確かに頻出は少ないながら、しかし一度起こればただちに健康被害につながり、やもすれば訴訟問題、社会的責任問題と、一発で企業生命を危うくさせかねません。

ですから、例え混入数が少なくとも、健康被害に直結が容易い金属などの硬質異物の混入は、食品メーカーにとって一番避けるべき事態なのです。
メーカーが必死になって金属探知機などを用いるのは、そのためなのです。

 

特に注意すべき混入異物
  • 虫、毛髪:混入事故数が高い、イメージを大きく損ねやすい
  • 硬質異物(金属、ガラス片、石など):混入事故数は少ないが、健康被害を起こしやすい

 

多くの混入異物は5Sで防ぐことが出来る

上の表は、以前の記事を書くときにぼくが作ったものです。
ではそれを踏まえてお話します。

さて、ここでいきなりのぷちクイズ。
これらのうち、「樹脂」「カビ」「金属」「ガラス片」に共通するものは、何でしょうか。
つまり、およそ半分に共通するものですね。何でしょう。

え、ヒントですか?
ではこれらに加えて、この10位内に挙げられていない、例えば「紙片」「輪ゴム」「ボルト・ナット」などもそれに入りますね。

そう、
いずれも「5Sが要因であるもの」「5Sをしっかり行えば防げるもの」だということです。

多くの異物混入は「原材料由来」だったり「人間由来」だったり「生物由来」だったり、あるいは「消費者由来」だったりします。
ですが、そうではない「設備構造由来」「管理運用由来」のものも数多くあるものです。
しかも先の通り、健康被害に直結し、企業に大きなダメージを一発で生み出しやすい「硬質異物」がそれらを占めているということにも注目すべきでしょう。

そして、それらは「5S」を効果的に行うことで回避することが出来ます。
だからこそ、企業の危機的状況を生み出さないためにも、「5S」は重要なのです。

 

異物混入の混入要因による区分け
  • 原材料由来(植物片、骨片、石など)
  • 人間由来(毛髪、繊維など)
  • 生物由来(昆虫、獣毛、糞など)
  • 設備構造由来(ガラス片、ボルト・ナット、ガムテープなど)
  • 管理運用由来(ブラシ脱毛、包材片、摩耗機材の金属片、事務用品、カビなど)
  • 工程由来(コゲ、他の食品など)
  • 製造後・消費者由来(歯、昆虫、繊維など)

 

異物混入事故が起こりやすい状況とは

ということで、基本に立ち返りましょう。
異物混入事故はどんなところで起こるのでしょうか。

 

異物混入が起こりやすい状況
  • 「なくなっていることがわからないもの」がある
  • 「なくなっていることがわからない状況」である
  • 「なくなっていることに何もしない状況」である

 

「なくなっていることがわからないもの」がある

まずひとつ目は、「なくなってもわからないものが現場にあるから」です。
異物として入り込んでしまっているのに、なくなっていることがわからない。
だから、問題が発生するまで気づかない。
これが異物混入の起こる状況の一つです。

では「なくなったことがわからないもの」とはどのようなものでしょうか。

 

なくなったことがわからないもの
  • 定数管理が難しいもの(例:輪ゴム、折刃式カッター、磁石など)
  • 小さくて見過ごしがちなもの(例:紙片、金属片など)
  • 消耗品として使い捨てされてしまうもの(例:シャープペンの芯、ホチキスの芯など)
  • 剥離や落脱が生じるもの(例:テープ、ビス、針金など)
  • 劣化破損しているもの(例:天井パネル、壁面クラックなど)
  • 個人所有に由来するもの(例:小銭、アクセサリーなど)
  • 突発的に現場に持ち込まれたもの(例:工具など)
  • 目の届かないような箇所にあるもの(例:ライン機械内、高所にあるものなど)

 

例えば、輪ゴムや磁石など、定数管理が難しいもの。
ポキポキと折って使う折刃式カッターナイフなどもそうですね。
折った刃にナンバリングして保管するなどすればまだしも、まずは普通そういうことをしないので、折った刃がどれだけあるかを迅速に知ることは余りありません。

あるいは、もっと小さな紙の切れ端など。
更にはホチキス、シャープペンの芯のような、消耗品としてどれだけ使ったか判らないもの。
こうしたものは「なくなったこと自体が気づかない」というケースが生じがちです。

また剥離、脱落といった状況が起きやすいもの。
補修で「これでいいか」と使ったテープ類や針金、インシュロック。
あるいは機会や壁面に打ち込んだビス。
これが脱落するかどうかなんて、普通はわかりません。

そう考えると、劣化破損しているものもそのうちパラパラ、ポロっと落下する危険も考えられます。
その下に仕掛品やラインがあったらどうなるでしょう。

その他、指輪や小銭など、従事者の個人でしか持っていることが判らないものも、その人だけしかなくなったことがわかりません。
また何かの突発的な事情で、絵工場内に持ち込んだもの。
これもその担当者でしか、なくなったことがわからない、ということになります。

異物混入を防ぐためには、こうした「なくなったことがわからないもの」を現場から取り除き、持ち込まず、「なくなったことをわかる状況にする」ことが必要になります。

つまり、5Sにおける「整理」「整頓」、そしてその結果としての「清潔」はその「なくなったことをわかる状況」作りでもあるわけです。

あ、それともう一つ。

残念ながら人間は完璧な存在ではありません。
限界、というものがあります。
全てを見通すことなんて出来ません。
だから「なくなったことがわからないもの」だって出てきます。

例えば、目の届かないことろにあるもの。
製造機械の内部のビスだったり、または高所の照明の部品だったりといった「目の見えないところ」というのは、それゆえに結構怖いものです。

なおこうしたものは、食品工場や店舗においては持ち込み禁止品、制限品となっていることが多いものです。
つまり異物になるものを「持ち込まない」という対策ですね。
例えば、このようなものは異物要因となりかねないので、工場内に持ち込んではいけないものだとされています。

「なくなっていることがわからない状況」である

次は、そもそもそうしたもの自体が「なくなっていることがわからない」ほどひどい状況にある、ということが考えられます。

いくら現場から「なくなっていることが判らないもの」を取り除いたとしても、乱雑な状況であったらどうでしょうか。
なにがしかが原因で異物混入が生じることはあるのではないでしょうか。

 

なくなったことがわからない状況
  • 保管に対する表記がない(=保管に対するルールがない)
  • 保管すべきでないものがある(=保管に対するルールが認知、理解、許容されていない)
  • 保管されているものをチェックしていない(「整頓」の不徹底)

 

更に掘り下げられましたね。

こちらは、ものの保管に対する「ルール」とそれに対する現場の遵守の関係性のお話です。
つまり、「整頓」の話です。

3S、特に「整頓」の根幹とは、ズバリ「ルールの策定と遵守の循環」です。

ある取り決めを定め、それを回し、まもり、問題が生じ、取り決めを直し、また回し、まもり、また問題が生じ、また取り決めを直し…。
この「小さなPDCAサイクル」を繰り返し日々回していくことが「整頓」です。

ですから、この「整頓」が出来ていない状況、つまり「なくなったことがわからない状況」というのは、そもそもそうしたルール自体がなく、また広く通達されておらず(ルールの認知)、また理解されておらず(ルールの理解)、また遵守にムラがあったり形骸化されていたり(ルールの容認)といった、「ルールの4ステップ」において何らかの問題が生じている状況であることが想像できます。

 

「なくなっているのに何もしない状況」である

少なからず、こういうケースもあります。
「整理・整頓・清掃」の3Sをろくに行わず、つまり「清潔」までいかず、またそうした教育訓練がされていない、つまり「躾」が全くなされていない。

こうした環境では、ものがなくなっているのに放置されていることがあります。
これが悪化した場合、異物混入の危険があるのにも関わらず、製造を止めることなく作業が進み、やがて異物混入した製品が出される結果になりかねません。

まとめ

今回は、食品工場における5Sと異物混入についてのお話でした。

異物混入の中でも健康被害を与えかねない重特性の高い「硬質異物」の混入。
企業を一発で危機的状況に落とし込むこの是が非でも避けたい「硬質異物」の混入を避けるために、5S改善活動は重要だというお話でした。

また、異物混入が起きやすい状況とはどういうものかも解説いたしました。

 

異物混入が起こりやすい状況
  • 「なくなっていることがわからないもの」がある
  • 「なくなっていることがわからない状況」である
  • 「なくなっているのに何もしない状況」である

 

これらを踏まえて、5S活動に向かうことが必要です。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

 

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