プロに聞く、衛生管理&防虫管理Q&A。
今回はこの時期に突如として大量発生する、タカラダニについてお答えしましょう。あの、コンクリートの上などで生息している赤い小さな虫は何なのでしょうか。殺虫剤が効かないって本当なのでしょうか。
前回、そして今回と、二部構成でこれらについてお話させていただきます。
(今回はその後編となります)

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えいたします。

 

今日のお話の概要
  • タカラダニにはピレスロイド系薬剤の効果が薄い、という実証データが出ている
  • つまり、一般的な家庭用殺虫スプレーによるタカラダニの駆除は効果が薄い
  • タカラダニには有機リン系薬剤が効果的である
  • タカラダニ対策として、生息箇所への高圧洗浄も有効である
  • 防水材の塗布はタカラダニ対策として非常に有効性が高い

 

 

質問:あの赤い虫は何ですか?どうやって退治すればいいですか

皆様、こんにちは。
白崎食品衛生コンサルティング事務所です。
プロに聞く、衛生管理&防虫管理Q&A。
今回は、この質問に答えています。
(衛生管理、防虫管理のご質問は、お問い合わせのメールにて承ります)

質問:「この連休時期になると、決まって晴れた日の日中、赤い小さな虫が大量に工場のコンクリート上で発生します。
この赤い虫は何ですか?どうやって退治すればいいのでしょうか」

それでは前回のお話を踏まえて、さらに解答を進めたく思います。
前回を読んでおられない方はこちらから先にどうぞ。


Wikipedia

ええっ!タカラダニは殺虫剤が効かない!?

さて、実はここからが本題です!
このようなタカラダニですが、近年非常に興味深く、また衝撃的な研究結果が実は出されています。

それは、タカラダニには一般の殺虫剤が効かない(効きづらい)、というものです。

いや、トコジラミみたいに「タカラダニに殺虫剤が全く効かない」とは、さすがに少々言い過ぎです。
でも、少なくとも一般の家庭に普通にあるようなスプレー式の殺虫剤などでは、完全な駆除が難しい、というのは事実です。

というのもですね、一般的に市販されている殺虫剤。
皆さんが、ごく一般的に「殺虫剤」と呼んで使用しているもの。
その大半、ほとんどは、「ピレスロイド系薬剤」というものです。
で、この「ピレスロイド系薬剤」が、タカラダニには効果が薄い、ということが最新の研究結果で判明しているのです。

この実験資料をご覧ください。
一番上が「タカラダニ」です。

 

一番上の「カベアナタカラダニ」を見てください。
このように、タカラダニには、確かに有機リン系薬剤やカーバメート系薬剤の効果はあるものの、「ピレスロイド系薬剤」の効果は「×」、つまり「1,000mg/㎡も薬剤を散布したのに完全駆除できなかった」とあります。

そう、確かにイエダニなどには、ピレスロイド系薬剤は効果があります。
しかし、タカラダニをはじめ、コナダニ、ツメダニなど割と多くのダニ類には、ピレスロイド系薬剤は効果が希薄なのです。
そしてこのことは、経験値や伝聞として、ぼくら一流のプロの防虫業者なら知っていることだったりもします。

またもう一つ加えて考えるべきは、駆除屋のプロならだれもが知っている、屋外に殺虫剤を散布することの効果の限界です。

タカラダニは、晴れた日中に活発に活動します。
さて一般的なピレスロイド系薬剤はその安全性上、分解が早く、残効性はあまり期待できません。
(薬剤個々の差はありますが)
当然、タカラダニが活動するような太陽光下では分解が激しく進みます。
さらに雨風にもさらされれば効果は薄まります。
そもそも殺虫剤は虫にある程度触れなければ効果を発揮しません。
全てのタカラダニにそれを行うことには限界があります。
これらのことも、一応念頭に入れておいてください。

さあ、いずれにせよ。
この最もポピュラーな殺虫剤の一種である「ピレスロイド系薬剤」が効かない、ということは、タカラダニがわらわらといたからといって一般の方が普通の殺虫スプレーなどで駆除するのは非常に困難で非効率だということになります。

ネットでタカラダニの駆除方法を検索すると、何の知識もない素人がちょろっと回って集めたうわべだけのネット情報ばかりで作り上げたサイトにすぐたどり着きます。
で、そこにある「タカラダニはスプレー剤で駆除しましょう」という情報を目にすることでしょう。
へえ、と思い、ホームセンターでスプレー剤を買ってきて、かけてみる。
これは効果がないよ(あっても薄いよ)、という話をここではしているわけです。

一体どこのサイトですか?
知識もソースもないまま、コピペのように「ダニ類は殺虫剤に弱いので、ピレスロイド系薬剤を使うといい」とか書いているのは。
上のデータ見て、それがもう一度言えますか?

普通の殺虫剤=ピレスロイド系殺虫剤、って?

少しだけ、殺虫剤のお話をしておきます。

殺虫剤には幾つか種類がありますが、その中でもこの「ピレスロイド系」薬剤は、非常に扱いやすいため、昔から、それこそ100年くらい昔からよく使われてきました。
勿論ながら、今でも現役バリバリ主役で使われ続けています。

つまり、ホームセンターに売られているもの、ネット販売されているもの、一般家庭で使われているもの、工場や店舗で使われているもの、などなどぼくら特殊な防虫業者以外の人たちが使っているものが、この「ピレスロイド系薬剤」です。

 

ピレスロイド系薬剤の特徴
  • 即効性が高い
  • 忌避効果が高い(フラッシングアウト効果が期待できる)
  • 昆虫への効き目が高い一方で、人畜への安全性が高い(選択毒性が高い)
  • ただし魚毒性は高い
  • 残効性が低く、分解性が早い
  • 安価で入手しやすい
  • 抵抗性が養われやすい

 

ピレスロイド系薬剤とは本来、安全性が極めて高いとされる除虫菊(シロバナムシヨケギク)由来の殺虫剤です。
「フェノトリン」や「エトフェンプロックス」などが代表どころ。
昆虫への効果が非常に高い一方で、他の動物には安全性が非常に高く、吸収してもすぐに分解されてしまう。「選択毒性が高い」などと専門的には言います。

また即効性が早い分だけ、空気中での分解も早く、すぐ消えてしまう。つまり環境に優しい、ということにもなります。

さらに忌避効果も高い。虫が嫌がってこなくなる、ということですね。
蚊取り線香はそれを利用した忌避剤です。

 

どんな殺虫剤なら効果があるのか

さあ、ピレスロイド系の殺虫剤が効かない、となると一体どんな薬剤なら効果があるのでしょうか。

まず有力な候補は、「有機リン系薬剤」です。
有機リン系薬剤とは、「リン(P)」を含んだ殺虫剤で、一般的にピレスロイド系薬剤に比べると殺虫力が強いものが多いです。

手に入りやすいものだと、スミチオンなどでしょうか。
これらを規定に従って希釈し、散布して使用します。

 

またデータ表のとおり、カーバメート系薬剤の効果も期待できます。
ですからフマキラーの「まちぶせスプレー」も効果があるでしょう。

 

この薬剤、前から何度も書いている通り、かなり優れた薬剤です。
ですが、ちと薬剤が強いことだけご注意ください。
使用の際は、マスクと手袋をくれぐれも忘れないように。

専門家が教える、本当に効果のあるタカラダニ対策

それでは、防虫対策の専門家が「本当に効果のあるタカラダニ対策」を教えましょう。

有機リン系やカーバメート系の薬剤で駆除する

まず一番手っ取り早いのは、ピレスロイド系ではない薬剤を散布することでしょう。
例えば、園芸用の農薬散布用ボンベや、場合によっては大きめの霧吹きを用いたり、局所的であれば、バケツでもいいかもしれません。
そこに、スミチオンを規定に従って希釈し、散布すればいいのです。

またカーバメート系の薬剤である、上の「まちぶせスプレー」でも駆除は可能です。

高圧洗浄で洗い流す

生息している箇所を高圧洗浄で洗い流す。
こうすることで、虫体もろとも洗い流してしまうことは有効かと思われます。

またタカラダニは花粉やコケや微小な虫をエサとしているため、これらを洗浄で除去することで生息源を取り除き、生息しづらい環境にすることが出来ます。

ただし、生活の知恵系のサイトで見たようなことは結構な度合いでデタラメです。
ましてや、洗剤をその時混ぜれば窒息死で効果絶大、とか、おいおいと言いたくなる話。

ゴキブリなどでも時折聞きますが、そもそも洗剤を混ぜて虫を窒息死させる、というのであれば、数匹単位ならまだしも多量に生息している虫を死滅させるためにはかなりな発泡量が必要でしょう。
こういうことを言う人は、それを自分で試したことがあるのかな。せいぜい、洗剤をぴゅっと虫にかけて、あー死んだーってレベルでしょ?
ぼくはプロなので発泡による殺虫を何度も経験していますが、そんな簡単じゃないし専用の機械もテクニックも必要なものですよ?
家庭の台所洗剤バケツにちょろっと入れてバーっと撒いて、はい死滅ーっ、なんて話じゃないですからねこれは。
しかも、「タカラダニは水に弱いので、水をかけられると死んでしまいます」とか、普通の頭があればそんなことありえないことくらいわかるでしょ?
雨で死ぬくらいなら、最初からこんな出てねーよ!(笑)

おっと、話を戻すとして。
プロに依頼すると、動力噴霧器でスミチオンなどの有機リン系薬剤を多量散布してくれます。
これは、洗浄と薬剤駆除を一緒に兼ねた作業、というわけで「一応は」理にかなっているわけです。
もっともそれはただ「スミチオンが安上がりで多量散布に向いている」というだけの話であって、「ピレスロイド系はタカラダニへの効果が薄い」という学術データを知らないプロは多いものですけどね。
だって実際に今、ネットで「タカラダニ ピレスロイド」でググってみればその実態がすぐわかりますよ。そこまで勉強していない業者が多いんです。

防水材を塗布する

これも時折目にする対策です。
ウレタンなどの防水材で、生息箇所を防水塗装する。
これは効果があるのでしょうか。

はっきり言います。滅茶苦茶、あります。
ソースは、プロの防虫屋であるぼくの自宅です。

そう、学術資料だけではなく、身をもって、プロのぼくがそれを経験、実証しているのです。

というのものですね、ぼくのうちのベランダのコンクリートには、毎年タカラダニがこの時期出ていたのですが、ある時(別にタカラダニ対策ではなく)ちょっとした理由から全面的に防水塗装を施することになりました。
すると、あれだけ出ていては毎年駆除していたタカラダニが、プロの身で驚くほどにピタっと収まったのです。

考えられる理由はいくつかあります。

 

防水塗装がタカラダニの生息を防止する理由
  • コンクリートに比べて、エサであるコケや花粉が付着しずらい、雨風で除去されやすい
  • コンクリートに比べて、クラックが生じずらく生息場所になりにくい
  • コンクリートに比べて、表面が平滑で移動しづらい
  • コンクリートに比べて、雨水を吸収しない(雨が降ると水を全く吸収せず流してしまうため、歩行性昆虫が生息しずらい)
  • コンクリートに比べて、湿度を維持しない

 

実は、「なぜ防水材を塗布するとタカラダニの生息が減るのか」を書かれた文献はありません。
ですが、プロの経験値として、また生活するなかで見ていて、おそらくこんなところが理由ではないかと推測します。

防水材自体を忌避している、いやいや、そんなことはないでしょ。だって殺虫剤じゃないんですよ?どういう原理ですかそれ。
単にタカラダニが滅茶苦茶に生息しづらい環境になるだけです。
そもそもこれだけ生息しづらい条件が揃ったら、じゃあ他で生息するわってなるかと思いますしね(笑)。

(あ、これ↓は別にウチのベランダではない、ただのフリー画像です。念のため。)

まとめ

以上、タカラダニにピレスロイド系薬剤の効果が薄い、という話と、その対策についてでした。

とにかくネット上でのタカラダニ対策情報は、防虫対策の知識や経験がない人がさらにネット上の情報を互いに寄せ合って作ったようなものばかりで、データもなく信ぴょう性がないものばかりです。
生活便利系、清掃系、アフィリ系…。
この人たち、虫のことなんて全く知らないただの素人さんですからね。
先の「水をかけると死ぬ」がいい例です。

あ、でも「クモを多量に放つ」という対策は軽く斜め上を突き抜けていて、ちょっとだけ好感が持てましたけど。(笑)
いいなあ、「クモを放つ」、かあー。
食品工場か飲食店舗のどなたか、どうか、お試しと効果のご報告を。
多分翌月、あなたの工場内や店内でクモが内部発生することうけあいですよ。(笑)

というわけで、これからがタカラダニのシーズンです。
この記事をもとに、どうぞ効果のある対策に役立てるようにしてください。

以上、このように当ブログでは食品衛生の最新情報やPCO、防虫対策の知識は勿論、その世界で長年生きてきたプロだから知っているテクニックや業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

 

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だったら貴方が防虫・衛生管理のプロになればいいのです!

高薙食品衛生コンサルティング事務所にようこそ
  • 私達は、どんな工場、お店の方でも防虫管理・衛生管理のプロレベルに育成することが出来ます。
  • 何故なら、防虫管理・衛生管理のプロとは、基礎知識に加えて「正しい管理の仕組み」を作れる能力を持つ者のことだからです。
    この「管理の仕組み作り」を知るこそが、防虫管理・衛生管理のプロへの道なのです
  • そんな防虫管理・衛生管理のプロを育成し広めることで、日本の「食の安全安心」を、さらにより広く、より高くさせることが私たちの使命だと信じています
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