全く言われていませんが、今年に入ってこの4月まで、やたらと増えている虫がいるのをご存じですか。
それが「ユスリカ」です。
今回は、この冬から春に生息が増えていたユスリカについて、その実情や原因、対策などについて前回、そして今回と、二部構成でこれらについてお話させていただきます。
(今回はその後編となります)
改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えいたします。
- 今年の冬は記録的な暖冬であり、昆虫の活動への影響も大きかった
- 暖冬の結果、ユスリカの活動が停止せずに、冬季まで継続していたものと思われる
- この時期のユスリカ対策は、晴れた日の日中の扉やシャッターの開閉管理が重要である

ユスリカの増加が冬季~春季の傾向だった
さて、前回からのお話をまとめてみましょう。
今年の2月くらいから、真冬にも関わらず、ここ首都圏ではやたらとユスリカの増加が目立っていた。
つまり、普通は虫の数が大きく激減する真冬なのにユスリカが少なくならない。
どころか、下手をすれば増えている。
これは明らかな、各工場や各店舗の周辺環境や立地などの個々のもつ「特性」を超えた、もっと広く共通的な今年特有の「傾向」だった。
で、この「傾向」がそのまま冬から春に継続されており、どうも今に至っている。
まあ、そんな内容でした。
(もし「前編」をお読みでなければそちらを最初に読んでください。)
【今年の冬から春にかけて「ユスリカ」が滅茶苦茶増えているって、ホント!?(前編)】
さて、「三度目の山」など各種データなどを示して、そのデータ的裏付けをしてきた前回。
ここからは、その理由や現状、この後の対策についてなど、もっと深く追っていくとしましょう。

この冬にユスリカが多かった理由
さて、なぜこの冬に、こんなにユスリカが多く捕獲されたのでしょうか。
そもそも冬にユスリカがピークを迎えた年は、それほど多くはありません。
(というか、だからこそこうやって取り上げて記事にしているわけです)
前回も触れたように、一般的にユスリカの捕獲ピークは年に2回、「晩秋~初夏」と「秋」です。
というのも真夏は暑すぎて、逆に減少してしまうのです。
ですが、これを上回って…とまではいかずとも、ここまで冬の捕獲数が多かった、なんてことはそれほどに聞いたことがありません。
(ないわけではありませんし、そういう傾向の年もありますが、でも珍しいことには違いないでしょう)
この理由はなぜか。
この冬にユスリカが多かったいくつかあるであろう複合的な理由の大きな一つとして、暖冬だったということがあるかと思います。
なんでも気象庁のデータの中に、各月の平均気温と、基準値「過去30年(1981年から2010年まで)の平均値(℃)」との乖離差を示す「月平均気温偏差(℃)」というものがあるそうです。
で、今年の2月の月平均気温偏差(℃)は、「+1.65℃」で、これはこの10年内で最も高いものだったのです。
(ちなみに過去5番目の高さ、ということ)
https://plaza.rakuten.co.jp/techmfg/
気象統計していたブログさんのデータを拝借してしまいましたが、これが一番わかりやすい。
要するに、今年の冬は、ここ近年きっての暖冬だったわけです。
しかも「冬(12月~2月)」の平均気温偏差としては、観測史上最高を記録。
まさに記録的な暖冬だった、ということでしょう。
実際、東京ではろくに雪らしい雪も降りませんでしたし、これコートいるのかっていうような温かい日があったことを覚えているでしょう。
さあ、本来、自然環境に生きている虫は、その多様な生態に従って、こうした自然の影響を我々人間よりはるかに大きく、ダイレクトに受けて生きているものです。
(だからこそ、工場や店舗の個々の環境を受けた「特性」や、それらを大きく超えて共通するこうした「傾向」というものが生じるのです!)
当然ながら、「暖冬」という自然環境条件は、冬の寒さが生死に直結する昆虫にとっては大きな影響を及ぼすことでしょう。
結果、本来なら晩秋から冬季に入って活動を停止していく(場合によっては、死んでいく)はずの昆虫が、しかし活動し続けていたことは記憶に新しいことです。
例えば、夏季の昆虫の代表である、クロゴキブリ。
これも12月なのに成虫で生息しているのを見かけたこともありました。
本来は、幼虫や卵で越冬するのに、です。
これもおそらくは暖冬の影響だったかと思います。
つまり普通なら秋を迎えて気温低下とともに活動が鈍っていき、冬季には卵(卵鞘)か早めに孵化した幼虫で過ごすはずが、しかし気温が下がらないのでずっと成虫としての活動が継続している、あるいは幼虫の成長が止まらず育ち続け成虫になっている。
こんなことがみられたのが、去年の12月から今年の2月にかけてでした。
これも勿論、一つの「傾向」でしたね。
【今年の冬は成虫のゴキブリも見る?】
こうした暖冬の影響は、クロゴキブリのみにとどまらず、ユスリカなどにも及ぼした。
結果、冬でも活動するユスリカが他の年よりも多くみられるようになった。
ぼくは防虫管理屋、衛生管理屋であって昆虫の研究者ではないのでこれはあくまで予想でしかありませんが、しかしあながち間違ってはいないかと思います。

4月現在のユスリカ事情
では、現在ユスリカはどのような状況となっているのでしょうか。
さて、ここでもう一度先ほどの月度推移データを見てみましょう。
で、一番最後の3月のデータを見て、昨年の3月の水準と比べてみてください。

特徴的なのは、まず1つめ。
いずれも2月から3月にかけて下落がみられていることです。
左データ、「A工房」の3月度は、幾分ながら下落が激しい。
他方、右の「B印刷」は少しだけ落ちたかな。でもそんなに大きく変わってない。
いずれにせよ、2月から3月に向かって、多少ユスリカの捕獲数が減っている。
それからもう一つ。
いずれも昨年の3月データに比べて、今年の3月のほうが捕獲数の水準が高い。
矢印を見れば、その差が生じていることがわかるでしょう。
これらはどういうことかというと、冬季に活動していたユスリカが幾分落ち着き始めるとともに、他方で多種のユスリカが活動を始めているという、この3月が転換期だったということです。
だから、両工場ともに確かに下落は見れているけれど、昨年度の同月3月より今年のほうが捕獲数は高いのです。
それは、冬季活動限定のユスリカがドーンと春にいなくなって、さあ違うユスリカがこれから出てきますよ、というのでは全くなく(だったらもっとおそらくは激減していますし、何よりも前回も書いた通り「冬季活動限定のユスリカ」ではなくこれらは「通年的に冬でも活動できるユスリカ」です)、緩やかに様々な種が混ざり始めているということだと思います。
要するに、例年よりユスリカ全体の活動期自体が早まっている、ということです。
そして。
ユスリカのシーズンは、一般的にむしろこれからが本番です。
これから多くの種のユスリカが、越冬を終えて自然界にバンバンと出始め、そして6月か7月のピークへと向かっていきます。
ですから、この捕獲数が今後下に向かうということは余り考えられません。
さあ、何度も言いますが、これは今年の「傾向」です。
個々の工場や店舗の、周辺環境や立地などの「特性」を超えた「傾向」です。
つまり、どこの首都圏内の工場や店舗でも、多かれ少なかれ現状、このような状態になっていても何らおかしくはない、ということです。

工場ではユスリカ対策はどうすればいいのか
では、工場でのユスリカ対策はどのようにすればよいのでしょうか。
ユスリカ対策、というと真っ先に夜間灯火対策が話に上がります。
工場や店舗の明かりをどうにかせい、というものです。
例えば、照明を防虫用に加工され、虫の集まらないようにしたものを使う、とかです。
一般的な専門業者や販売屋は、すぐにそれを口にします。それに、そう言えば、防虫用ランプなどそうした資材販売ができますしね。
勿論、これはこれでそれほど間違ったものではありません。
何故ならユスリカは光に誘引される性質が強いからです。(正の走光性、と言います)
ですが、残念ながらそれは一方でピント外れ、スキルや知識に欠けるというもの。
いや、一般的な方々ならまだしも、少なくとも一流のプロならばもう少し踏み込んでこうアプローチをするのです。
実は冬季から春季にかけて活動するこの時期のユスリカは、夜間の灯火に誘引されて工場に侵入するというよりは、日中の暖かな時間に気流と一緒に工場に流入していることが多いのです。
これらのユスリカは、さすがに温度の低い夜間に飛来するのではありません。
いやそれが全くないわけではないかもしれませんが、主に日中活動しており、それらが冬や春の強い風によって外気とともに入りこむケースが最も多い。
日中侵入してくるユスリカに、いっくら夜間の灯火対策を行っても、あまり意味はありません。
少なくとも汗ばみ始める季節近くまでは。
だから、まず「今最初にすべき」は、実は日中の外気の流入防止対策なのです。
確かに夏季から秋にかけてのユスリカであれば、灯火漏洩や照明対策などは相応の効果が期待できます。
が、春季のユスリカの侵入を防ぎたいのであれば、晴れた日や強風の日のシャッター、扉の開閉管理を行ったり、隙間からの流入をシーリングなどで防ぐなどといった対策のほうが全くもってはるかに有効です。
それにこの対策はユスリカのみならず、今後急激に増加することが予測される緑地由来の微小な昆虫、例えばアブラムシなどにも非常に有効です。
今から是非行うべきでしょう。
またこの時期、工場外周の側溝などは、強風などで泥が溜まりやすくなっています。
こういったところに雨水が流れ込むと、しばしばユスリカの発生要因となります。
何故ならユスリカは、「泥と流れの弱い、比較的澄んだ水」が発生条件だからです。
むざむざ工場の敷地内にユスリカの養殖場を与える必要もないでしょう。
ただちに泥をかき出したり洗い流したりして、卵や幼虫を除去することが必要です。
こうした対策を行った上で、それでもまだ問題が生じているのであれば、これから迎える夏に向けて照明対策を計画していく、というのが最も有効で、コストがかからず行えるのではないでしょうか。
(あーこの話、ホントは3月上旬くらいに書こうと思っていたんですよね。
だってこのころのユスリカ対策というのは、まさにこれだから。
ちょっと旬を逃してしまいました…)

まとめ
今回は、この冬から春にかけて多かったユスリカのお話をさせていただきました。
しかし先にも話した通り、ユスリカのシーズンは、むしろこれからが本番です。
気流による流入防止対策、日中の扉管理対策は、これからでも遅くありません。
どうぞ、明日からの工場の防虫対策にお役立てください。
以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

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