全く言われていませんが、今年に入ってこの4月まで、やたらと増えている虫がいるのをご存じですか。
それが「ユスリカ」です。

今回は、この冬から春に生息が増えていたユスリカについて、その実情や原因、対策などについて今回、そして次回と、二部構成でこれらについてお話させていただきます。
(今回はその前編となります)

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えいたします。

 

今日のお話の概要
  • 今年の冬から初春にかけては、例年になくユスリカが非常に多かった
  • 工場や店舗での防虫対策には、「特性」を超えた「傾向」が働くときがある
  • 首都圏内における2020年の冬から春の「傾向」が、ユスリカの増加だった。
  • 昨年~今年のユスリカ捕獲数には、「真冬」という三つ目の山があった

 

 

2020年に入って急激に増加し始めたユスリカ

しかし大変なことになってきました。

新型コロナウイルスでの「緊急事態宣言」発令から、二週間経過。
この記事を書いている今は、その延長論すら深刻に議論されているところです。

 

さて、そんなコロナウイルスが広まる頃合い同様、まだ真冬のうちから。
東京を含めた関東地方においてやたらと急激に増えている虫が、実はあります。
この冬から春にかけての、大トレンド。
それがユスリカです。

これに気がついたのは、まだ寒い2月のこと。
日々様々な工場を回り、データを集計しているなか、あちこちの工場で真冬にも関わらず、やたらとユスリカが多いことに気がついたのです。
これはいったいどうしたことなのか。

なお、こちらは二部構成の「前編」になりますので、もし「後編」から来られた方は、まずはこちらを最初に読んでください。

やたらと急増していた冬季活動可能型のユスリカ

今思えば、この実感を受けて書いたのが、以前のこちらの記事でした。

【真冬なのにユスリカが多量生息?】

 

上でも書いたように、冬季活動可能型…と言ってしまうと語弊があるのですが、とにかくそんな真冬でも活動することの出来る冬季も活動可能なユスリカは、案外と珍しくはありません。

例えば有名なものが、フユユスリカ。
その名の通り春から秋は幼虫として過ごし、冬にのみ成虫として活動する、まさに冬季活動型というようなユスリカなのですが、しかしこれらは愛知県の「木曽川」周辺にのみ生息するなど地域限定的に生息するユスリカです。
しかしこれ以外にも、実は春から秋までのみならず、冬季にも成虫として活動しているユスリカは結構存在する。

というのも、ぼくは経験上このように実感しているだけでしたが、先日この記事の際にTwitterで昆虫の研究者の方から色々と教えて頂きました。
(その節はありがとうございました!)

 

研究者から教えていただいた、冬でも活動することの出来るユスリカの例
  • フユユスリカ(地域限定的に生息するユスリカ)
  • エリユスリカ亜科
  • セスジユスリカ
  • ヒロバネエリユスリカ、など

 

いやあ、凄い情報だな!
ありがとうございます。

と、このように冬季だからといって工場内でユスリカの捕獲が見られるのはそう珍しいことでもありません。

ですが!
だからといってよっぽど大きな河川に隣接でもしていなければ、真冬に捕獲されるユスリカの捕獲数なんてたかが知れています。

ところがこの冬は違っていた!
そう、
例年を遙かに越えて、ユスリカの捕獲数が目立って高かったのです。

少なくとも、千葉県、東京都内、埼玉県。
このような首都圏内の工場や店舗では、ユスリカが非常に多かった。
実際、そんな話をして、わかるわかるとうなづく工場や店舗は結構多いと思いますよ。
ですから該当の方、ご自身のモニタリング結果があるような工場や店舗は、この冬のデータを見直してみてはいかがでしょう。

これ、どこにも出てこない情報でしょうが、長年現場を生きているプロの防虫屋の実感であり、多分間違っていないと思いますよ。

ユスリカとはどんな虫か

ここで再度、ざっくり簡単にユスリカの解説に触れておきましょう。
あ、以前の記事で読んだ、そんなの知っているよという方は読み飛ばして頂いても全然結構です。

さて。
よく夏の夕方の河原などで、いわゆる「蚊柱」をたてて、ブンブンと飛び回っている虫を見たことがあるかと思います。
一見すると、「カ」のように見える。
そう思って刺されないように逃げる人もいるかもしれませんが、あれが「ユスリカ」です。


Wikipedia

まず「ユスリカ」という名が付いてますが、「カ」の仲間ではありません。
むしろ「ハエ」の仲間ですらあります。
ユスリカは正確には、「双翅目ユスリカ科」と言うのですが、この「双翅目」とはハエのことです。

ですからメスもオスも人を指したり吸血したりはしません。
それどころか、口が退化しているので吸血はおろか、食べられないためほんの数日しか生きられません。
ですから、よく多量にユスリカが飛んでくるとき、翌日には死骸が散乱していることがままあります。

釣りをする方は、「アカムシ」という幼虫を川釣りの餌にすることはありませんか。
あれはユスリカの幼虫です。
これですね。

 

このユスリカの幼虫は河川や湖、その他の水域に生息しています。
水の中で、藻や微生物や有機物を食べて生きています。

で。この幼虫はやがて、蛹となって、水面で成虫となります。
水域で発育するため、成虫のユスリカが多量に生息し、浮遊しているのも、自ずと河川などの近くになります。
河川や湖などの近くの工場でユスリカが問題になるのは、そういうことからです。

さて、先の通り、ユスリカの成虫は多量にブンブンと飛び回り、「蚊柱」を作ります。
これは、ユスリカの交尾であり、メスを巡ってオスが多量に飛んでいるのです。

工場の「特性」と、それを越えて共通する「傾向」

さて、ここでもう一つ押さえておくべき「防虫管理の基礎知識」があります。

それは、第一に、工場の昆虫生息状況には「特性」がある、ということ。
第二に、しかしそれを越えて共通する「傾向」というものがある、ということです。

これを、どうぞ覚えておいてください。
何事にも個々の状況を超えた共通のなにがしかの「傾向」があるように、防虫管理にも実は、様々な要因によって生じるそのときそのときの「傾向」とでもいうものが存在するのです。

ちょっと話を進めましょう。

まず第一に。
以前記事にも書いたように、そもそも工場での昆虫生息状況というものは、それぞれ工場が備えている「特性」によって全く変わるものです。

【工場の「特性」とは】

 

詳しくは、上の記事を読んでみてください。
工場の防虫管理においては極めて基礎的ですが、しかしだからこそ重要な話が書かれています。

で、その記事に詳しいのですが。
こうした「工場の特性」には、

①どうした場所にどのように立地し、どんな自然環境の影響を受けているのか、と」いったような、工場の外的要因、つまり工場の立地環境や地域的特徴などによって生じる「環境特性(外的特性)」と、
②どのような施設で何をどのように作って、それをどう管理しているのかといったような、工場の内的要因、つまり工場の製品の特長や施設などに由来して生じる「状況特性(内的特性)」

の、二つがあります。

 

工場の「特性」
  • 環境特性(外的特性):工場の外的要因、つまり工場の立地環境や地域的特徴などによって生じる特性
  • 状況特性(内的特性):工場の内的要因、つまり工場の製品の特長や施設などに由来して生じる特性

 

一般的に、この二つの特性の関係によって、その工場で捕獲される昆虫は全く変わってしまうため、一概に「この虫が多い」というものが全ての工場に当てはまることは基本的にはありません。

ただし、です。
ではこのユスリカはどういう現象なのか、ということです。

そう。
そうはいえど、やはり自然環境下での昆虫の生息には「傾向」ともいうべきものがある、ということです。
だから、個々の工場においてはやもすると当てはまらないかもしれないけれど、それでも広くデータを取って分析すれば、やはりその年、その時期、その地域なりの、どこかに共通するような「傾向」があるものです。

勿論、こんなデータは世に存在しません。
統計しようがないですし、その必要性もそれほどに注目されてはいない。
しかし、それでも確かにこうした業界内には伝えられ、存在する。
それが、この「傾向」です。

なんとなく、こっちの工場であの虫が増えている。
あれ、そういえばあっちの工場でもあの虫が増えている。
いや、待てよ、そういえば向こうの工場にも増えているな。
ん、いやこれ全体的にあの虫、マジで増えてない?
こういうケースが、実は結構多いものです。
多いというか、毎年そんなことがあちこちで(地域差は勿論あるかと思いますが)

ちなみに昨年は前半、アザミウマとアブラムシの当たり年で、めっちゃ増えていました。
そしてその後おとなしくなり、そしてこの冬から初夏にかけての「傾向」として、ユスリカが高まってきている、というわけです。
これが、2020年の防虫管理における、一つの「傾向」だというわけです。
つまり、皆さん。
共通していえる「傾向」なのだから、今のうちにそれを知り、対策を考えておけばいいのです。

ユスリカはどのくらい増えているのか

では、ユスリカの増加状況はどのようになっているのでしょうか。
判りやすく、データの実例を出して考えてみるとしましょう。

例えば、これは首都圏内に立地した中小規模の某お弁当工場「A工房」(仮名)における、真冬、今年2月の昆虫種別捕獲比です。
(傾向は変えていませんが、細かい数値は当然ですが変えています)

 

ほら。
これを見ると、圧倒的にユスリカの捕獲数値が高かったことがわかるでしょう。
で。
こうした傾向は、この工場のみに留まりません。
他の工場でも似たようなことが起きています。

例えばこんな様子です。
こちらは同じく首都圏内の、しかしもっと大きな規模である割と名の知れた印刷工場、「B印刷」(仮名)の2月度のデータ。
こちらも勿論ながら数値は変えてありますが、しかし傾向自体は変えていません。
ね、ユスリカが、どーんでしょ?

 

いやね。
そりゃ確かにユスリカは他の昆虫に比べて、捕獲数が突出しやすいのも事実なんですよ。
何故なら、スリカは無数の昆虫の中でもその種類の多さで突出していることで著名な昆虫だからです。
ましてや他の昆虫の活動がほとんど見られなくなる真冬というのは、ユスリカの独壇場になることも珍しくはありません。
ですが、とはいえこれほど差が生じることもそんなにあるわけではありません。

面白いので、昨年からの月度推移も見てみましょうか。
こっちのデータのほうが判りやすいかもしれませんね。

はい、これが「A工房」の、2019月2月から毎月のユスリカの捕獲数の月度推移です。
2020年の2月のデータを見てください。これがどのくらい高いところに位置しているか、がポイントです。

 

そして、こっちが「B印刷」の同じく月度推移。
これも2月の真冬の捕獲数がどのくらいにあるのか、を見ることが重要です。

 

お、こうやって月度で見るとわかりやすくなったかな。
そう。
なんと、いずれも昨年の2019年4月より真冬のほうが、捕獲数値が高くなっているのがわかりますよね。

いいですか?
今のような春より、真冬の2月のほうが、捕獲数が多かったんですよ?
これ、結構すごいことなんですよ。

さて、実はこのグラフには共通点があります。
そしてその共通点こそが、このデータから読み取るポイントでもあります。
それはユスリカの活動の活性化時期です。
つまり、ユスリカはいつ増えているか、ということです。

さあ、もう一度見てください。並べてみますよ?
山ができているところはどこですか?

 

上データでユスリカ捕獲の増えている時期
  • 晩春~初夏(5月~7月)
  • 秋(10月~11月)
  • 真冬(1月~2月)

 

これ、わかりやすい2つの工場データを例に出したのですが、しかしこの「傾向」はこれら工場のみにとどまりませんでした。

勿論、外部環境や立地、気温差などの「特性」もあるでしょうから、工場・店舗別の差異は当然ながらあるでしょう。
しかし。多かれ少なかれ、今年の首都圏近隣の工場や店舗が、このようなユスリカの「傾向」を受けていたはずです。

ユスリカの捕獲ピークと「第三の山」?

尤も、真冬にユスリカが多く捕獲されるケースは他にもあります。

例えば工場や店舗の中で、ユスリカが内部発生しているケースですね。
その場合、冬場でも捕獲数が減らない、なんてこともままあります。
以前記事に書いたような状況ですね。

【ユスリカの内部発生】

 

このような特殊な例を除いて、一般的な、つまり外部自然環境に生息しているユスリカが場内に侵入している、という場合。
ユスリカの成虫の捕獲ピークは「晩春~初夏」「秋」の年2回、というのが普通です。

例えば、こんな捕獲例です。

 

ほら、春先からぐぐっと上昇し始まり、7月に年間のピークを迎えるでしょ?
そして、一端真夏の8月に下落する。
でそのまま秋に向かって下がるのかな、と思いきや9月にまた急激に高まる。
そして、寒くなり、日没が早まって気温が低下し、冬になるなっていう頃に、ほとんど捕獲が見られなくなっていく。

おおよその工場や店舗のユスリカの捕獲状況というのは、まあこんなものです。
こんな風に、一年の推移グラフで山が二つできることになります。

ここでふと思うかもしれませんね、どうしてユスリカの捕獲は真夏に減少するのか、と。
尤もこれについては長くなってしまうので、また別に記事を書くことにします。
いずれにせよ、しかしそうではなくこうした初夏と秋の二つの山に、もう一つの「第三の山」が真冬にできたのが、実は今年の冬だったのです。

 

わかりますかね、この「第三の山」の存在が。
この「第三の山」が例年にはそれほど見られない特異なものだった、ということです。

前編:まとめ

さあ、このように今年の「傾向」として、今年の冬から春にかけてユスリカが増えていたことがおわかりかと思います。

ではこの冬にユスリカが多かったのはなぜだったのか。
またGWを目前にした現状では、どうなっているのか。
これについて、どう対策を行っていけばいいのか。

それらについて、後編で詳しくお話していこうかと思います。

 

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

 

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