プロに聞く、衛生管理&防虫管理Q&A。
今回は新型コロナウイルスの広がりで目下話題になっている「次亜塩素酸水」についての質問にお答えしましょう。
「次亜塩素酸水」とは何でしょうか。「次亜塩素酸ナトリウム」とは何がどう違うのでしょうか。
改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えいたします。
- 質問:「次亜塩素酸水」って何ですか?「次亜塩素酸ナトリウム」とは違うのですか?
- 次亜塩素酸水は安全性が高く、殺菌効果に非常に優れている上、また即効性が高く多使用向きである一方、分解が早い、コストがかかる、などの特徴がある
- 「次亜塩素酸水」は、食塩水(塩化ナトリウム水溶液)あるいは塩酸を電気分解させて作る
- 「次亜塩素酸水」には、「強酸性」「弱酸性」「微酸性」の三種があり、なかでも「微酸性次亜塩素酸水」が最も安全で、殺菌効果が高い
- 「次亜塩素酸水」は酸性だが、「次亜塩素酸ナトリウム」はアルカリ性である
- 「次亜塩素酸水」の主成分はより殺菌力の高い「次亜塩素酸」だが、「次亜塩素酸ナトリウム」の主成分は「次亜塩素酸イオン」である

目 次
質問:「次亜塩素酸水」って何ですか?「次亜塩素酸ナトリウム」とは違うのですか
「新型コロナウイルスに効果があると最近よく耳にする次亜塩素酸水って何ですか?
それは、次亜塩素酸ナトリウムとは違うものなのでしょうか」
広がりを見せる新型コロナウイルスの影響から、本日2020年4月7日、いよいよ、「緊急事態宣言」が出される、という事態にまでなってしまいました。
新型コロナウイルスの感染が都市部で急速に拡大している事態を受けて、安倍総理大臣は7日、東京など7都府県を対象に法律に基づく「緊急事態宣言」を行います。
そして7日夜、記者会見して、宣言を行う理由や具体的な措置を説明し、国民に協力を呼びかけることにしています。

コロナウィルスに関しては、先月ウチでも記事を書きました。
別途、また今度ぼくの知っている情報なども含めて書いていきたいと思っています。
さて、今日はそんなコロナウイルスを巡って、お客さんや友人から質問されたことに答えたいと思います。
これ、意外と知らない人が食品製造関係にもいたりするものです。

「次亜塩素酸水」の特徴
新型コロナウイルスの影響で、「次亜塩素酸水」への注目が俄然高まっています。
安全性、使いやすさ、効果、といった点でアルコールや次亜塩素酸ナトリウムなどに比べて優れているところが、その人気の理由でしょう。
「次亜塩素酸水」は、厚生労働省から次のように定義づけられています。
殺菌料の一種であり、塩酸又は食塩水を電解することに得られる次亜塩素酸を主成分とする水溶液
…うーん。
当然ですが、これだけではよく判らないですね(笑)
でもとりあえずここで厚生労働省が言っているポイントは、これです。
- お上が「食品添加物でいいよ」と認めているくらいに安全性が高い
- 塩酸や食塩水を「電解」して作る
- 「次亜塩素酸水」とは、殺菌効果に優れた「次亜塩素酸」の水溶液である
まずは、この3点を押さえましょう。
あ、「電解」というのは電気を通電させて化学分解させることです。
次亜塩素酸水を「電解水」などと呼ぶのはこのためです。
さて、「次亜塩素酸水」にはどんな特徴があるのでしょうか。
どうしてこんなに「次亜塩素酸水」が今求められているのでしょうか。
- 安全性が高い(人体への影響が極めて低い)
- 多量様々な用途として使いやすい
- 殺菌効果が極めて高い
- 即効性が高い
- 食品工場などでの多量使用に向いている
ていうか「次亜塩素酸水」ってどんなの?という方。
歯医者さんでの歯の治療の際に、うがい用で水を与えられることがあるでしょ?
あれを思い出してください。あの水が「次亜塩素酸水」です。
あの水は、もしうがいの際に飲んでしまっても、何ら問題はありませんよね。
このように「次亜塩素酸水」は人体への影響が少ない除菌水として、厚生労働省から「食品添加物」として認められています。
そもそも「次亜塩素酸」は、ぼくら人間の体内でも殺菌を目的に作られているものです。
ぼくらの体の中の白血球は、酸素を使って「次亜塩素酸」を作り、体内に入ってきたウイルスや病原菌を倒そうとしているのです。
こうした「次亜塩素酸水」の高い安全性から、例えば家庭では加湿器などに入れて散布したりといったこともされているようです。
アルコールのような刺激の強いもの、引火性のあるものでは絶対に出来ない手法ですね。
さらに食品に使った場合、ビタミンを失う率が少なく、影響を及ぼしづらい、というデータも出ているようです。
このような使い勝手の良さも「次亜塩素酸水」の特徴でしょう。
もう少し踏み込んで話すと、「次亜塩素酸水」はタンパク質に触れると、酸化反応と塩素化反応を起こします。
この酸化と塩素化によって、菌やウイルスを殺すのです。(不活化)
「次亜塩素酸水」はその殺菌効果が高く、一般的なアルコール(70%)以上、と言われています。
なお、「次亜塩素酸水」は農業分野でも使われています。
2014年には「特定防除資材(特定農薬)」、2017年には「有機栽培資材」として、農林水産省からの認可が受けられました。
では、逆にデメリットはなんでしょうか。
まず、即効性や安全性の一方、分解が早い、ということです。
(特に強酸性電解水)
そのため保存が短い、出来ない、という面もあります。
(次で説明しますが、精製方法によります)
またこのことから、殺菌対象が汚れている(有機物がある)と効果が極めて薄い、という特徴があります。
というのも、「次亜塩素酸水」の殺菌成分である「次亜塩素酸」は、有機物があると分解が進みやすく、殺菌力が発揮しずらくなる特徴があるのです。
それと、「次亜塩素酸水」(強酸性電解水)はその精製の特性上、製造装置が大がかりでコストが高い、ということがあるかもしれません。

「次亜塩素酸水」はどうやって作るのか
ではその「次亜塩素酸水」とは、一体どのようなものでしょうか。
先に書きましたが、そもそも「次亜塩素酸水」は、食塩水(塩化ナトリウム水溶液)、あるいは塩酸を電気分解させて作る「次亜塩素酸」の水溶液です。
「電解水」、などとも呼ばれるのはそのためです。
つまり、食塩水、あるいは塩酸との混合液を電気分解させるのです。
工場などで「次亜塩素酸水」を使用する場合、大掛かりな電解装置をドンと購入設置します。
で、それによって大量の「次亜塩素酸水」を精製し、殺菌槽などに流しこんでドカドカ使用します。
ただし、この「電解水」の場合、分解が非常に早いので、保存は出来ません。
殺菌している瞬間からどんどん分解していくからです。
分解すると、「次亜塩素酸水」はただの水になります。
一方、「次亜塩素酸ナトリウム液」からも「次亜塩素酸水」は作れなくもありません。
その場合、強アルカリ性である「次亜塩素酸ナトリウム液」に塩酸を混合して、中和させます。
こちらは「混合水」、あるいは「中和水」と言います。
歯医者さんでうがい用途で使うような医療機関向け、或いは今コロナウイルスで求められている家庭用など、一般的に製品として販売されている「次亜塩素酸水」は、こちらの「混合水」です。

「次亜塩素酸水」の種類
実は、「次亜塩素酸水」は、その塩素濃度、pH値によって、「強酸性」、「弱酸性」、「微酸性」と、大きく三つに区分けされています。
強酸性次亜塩素酸水
食塩水(塩化ナトリウム水溶液)を電解させて作る「電解水」です。
その名の通り、最も酸性で、「有効塩素濃度20~60ppm(0.002%~0.006%)、PH2.7以下」という規格があります。
塩素ガスを発生しやすく、金属への影響も考えなくてはいけません。
弱酸性次亜塩素酸水
これも、強酸性同様、原料は食塩水(塩化ナトリウム水溶液)の「電解水」です。
但しこちらは強酸性よりも中性に近く、「有効塩素濃度10~60ppm(0.001%~0.006%)、PH2.7~5.0」という規格となっています。
こちらも同様で、塩素ガスを発生しやすく、金属への影響も考えなくてはいけません。
微酸性次亜塩素酸水
最も中性に近いもの。
どちらかといえば「混合水」が多いのかな。
こちらは「有効塩素濃度50~80ppm(0.005%~0.008%)、PH5.0~6.5」と規定されています。
塩素ガスも発生せず、金属への影響も少なく安全性が最も高いのがこの「微酸性次亜塩素酸水」です。
また三つのうちで最も「次亜塩素酸」の比率が高いのがこの「微酸性」のものです。
「次亜塩素酸」の比率が高い、ということは、殺菌効果が高い、ということです。
そのため「微酸性次亜塩素酸水」は、ノロウイルスも含めた多くのウイルス、更には芽胞菌(45ppm以上)にも有効と、非常に殺菌効果が高いことで知られています。
つまり、三つのうち最も安全で、かつ殺菌効果が高いのが「微酸性次亜塩素酸水」ということになります。
下は厚生労働省のデータグラフです。
かなり不親切ですが(笑)、横軸が左に向かえば向かうほど酸性、右に向かえば向かうほどアルカリ性となっています。
そして横軸左、つまり一番PHが低いものから「強酸性次亜塩素酸水」、このグラフには書いてはいませんがその右、つまりもう少しだけPHの高いところに「弱酸次亜塩素酸水」が位置し、そしてほとんど中性に近いところに「微酸性次亜塩素酸水」が位置されています。

「次亜塩素酸ナトリウム」とは何が違うの?
さて、ここまで「次亜塩素酸水」の解説を行ってきました。
では、工場で一般的に使われている「次亜塩素酸ナトリウム」とは何が違うのでしょうか。
「次亜塩素酸水」と「次亜塩素酸ナトリウム」は名前が似ていますが、しかし別物です。
全く違うわけではありませんが、やはり違います。
まず一言で言えば、PHが違います。
先程の厚生労働省のデータグラフをもう一度見て下さい。
横軸右側、PH値が高いほうに、つまりはアルカリ性のところに「次亜塩素酸ナトリウム」がありますね。
一方、「次亜塩素酸水」は左側、つまりPH値の低い酸性にありますよね。

つまり、「次亜塩素酸水」は酸性(~中性)ですが、「次亜塩素酸ナトリウム」はアルカリ性です。
それもPH9~12以上の「強アルカリ性」のものです。
主成分が「次亜塩素酸」であった「次亜塩素酸水」に対し、「次亜塩素酸ナトリウム」は「次亜塩素酸イオン」が主成分です。
ですから製造方法も違います。
「次亜塩素酸ナトリウム」は、水酸化ナトリウム水溶液に塩素ガスを吸収させて製造します。
勿論、「混合水」がそうであるように、「次亜塩素酸ナトリウム」からも「次亜塩素酸水」は作れます。
アルカリ性である「次亜塩素酸ナトリウム」をPH調整すれば、「次亜塩素酸水」になります。
ですから全くの別物、というわけではありませんが、しかしやはりその性質、用途など全く別物と思ってもよいでしょう。
要するに「次亜塩素酸ナトリウム」は、言ってみればキッチンハイターなどの「塩素系漂白剤」です。
いわゆる、「次亜塩素酸ソーダ」です。
ですから当たり前ですが飲んだり、原液で使ったり、空気中に散布したら大変なことになります。
タンパク質を分解するので手に直で触れれば、皮膚を痛めます。
なお厚生労働省は、「次亜塩素酸水」は「次亜塩素酸ナトリウム」よりも高い殺菌力があるよ、と言っています。
その理由は、「次亜塩素酸水」の主成分である「次亜塩素酸」のほうが、「次亜塩素酸ナトリウム」の主成分「次亜塩素酸イオン」より約80倍もの殺菌力があるから、とのことです。
まとめ
今回は、新型コロナウイルスで注目の高まっている「次亜塩素酸水」と、一般的に食品工場などでポピュラーに使われている「次亜塩素酸ナトリウム」についてのお話を致しました。
この二つ、結構混合していることが多いですので、それぞれの特徴を踏まえて見分けるようにしましょう。
以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

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