最新の食品業界ニュースからピックアップし、食品衛生管理のプロの目線からコメントさせていただきます。
今回の話題は、米国でリステリア菌に汚染されたキノコを食べて死者が出たというニュースについて、解説していきましょう。
リステリアって余り知られていませんが、実はヤバイヤツだったりするんです。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えしています。

なお、こちらは二部構成の「前編」になりますので、もし「後編」から来られた方は、まずはこちらを最初に読んでください。
この前編では、まずニュース内容の紹介から「リステリア」のヤバさについて、それから今回起きた食中毒の原因予測について迫ってみたいと思います。

 

本日の時事食品ニュース

 

 

今日のお話の概要
  • 米国で韓国産のエノキダケからリステリア食中毒が発生し、死者4人が報告された
  • 更に韓国内での検査から、輸出エノキダケ企業のうち2社製品からリステリアを検出
  • リステリア食中毒は、日本では余り発生しないが、アメリカや海外では死者が出る集団食中毒へと発展するケースが多い
  • リステリアの「ヤバさ」は、①発症時の致死率が高い②冷蔵環境や塩漬けなどでも増殖可能③自然界に広く存在している④潜伏期間が長く、腸管内保持者もいるため、原因特定が難しい

 

米国でリステリア菌に汚染されたキノコを食べて死者続出

先日、米国でのことですが、韓国産のエノキダケを食べてリステリア菌による食中毒事件が発生し、死者が出るにまで至っています。

以下ニュースを引用します。

米カリフォルニア州やハワイ州で、リステリア菌感染が原因で4人が死亡、30人が入院した。
メーカーが自主回収を発表していたエノキダケを食べたことが原因と思われる。

米食品医薬品局(FDA)によると、問題のエノキダケについてはサンホンフーズという会社が9日、リステリア菌に感染している可能性があるとして自主回収を発表していた。

米疾病対策センター(CDC)によれば、4人の死亡はカリフォルニア、ハワイ、ニュージャージーの3州で報告された。
感染者は17州で36件報告されている。

 

というわけで、韓国産のエノキダケで食中毒。
食中毒菌は、リステリア。
しかも死者が出る騒ぎになって、どうやら向こうではそれなりに大事になっているご様子。

マジかよ、と思ってよく読んでみるとこの人達、エノキダケ、加熱もせずに生で食ってるんですよ。
マジかよ!
エノキダケ、生で食ったのかよ!

でその結果、米国疾病予防管理センター(CDC)は、これらの韓国産エノキダケの販売と食べることを控えるよう警告。
親方FDA(米国食品医薬品局)が、韓国産のエノキダケ全量リコール(行政回収)を命じました。

しかも、ここから数日後、更に進展。
これについて韓国政府が国内のキノコ輸出企業に調査を行った結果、2社のエノキダケから同様にリステリアが検出された、とのことです。

Yahoo!ニュース
エノキタケ輸出の韓国会社2社、食中毒菌検出(中央日報日本語版) - Yahoo!ニュース
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200319-00000006-cnippou-kr
最近、米国で韓国産エノキタケを食べて4人が死亡した事故に関して韓国政府が調査を行った結果、韓国輸出会社のエノキタケから食中毒菌が検出された。韓国農林畜産食品部と食品医薬品安全処は米国にエノキタケを輸 - Yahoo!ニュース(中央日報日本語版)

最近、米国で韓国産エノキタケを食べて4人が死亡した事故に関して韓国政府が調査を行った結果、韓国輸出会社のエノキタケから食中毒菌が検出された。

韓国農林畜産食品部と食品医薬品安全処は米国にエノキタケを輸出する会社4社を調査した結果、2社のエノキタケからリステリア菌が検出されたと18日、明らかにした。

 

それらを踏まえ、韓国政府はエノキダケへの「加熱調理用」表示制度化、キノコ生産会社への衛生点検強化、などで対応する、と報じられています。

リステリア菌とは

「リステリア」って、一般的にはあまり聞き慣れないかもしれませんね。

「リステリア」とはその昔、DEF LEPPARDというロックバンドが出したヒットアルバム…って、
節子、それ「ヒステリア」。

 

はい、ごめんなさい。真面目にやりますよー。

なぜか、日本ではマイナー。
なのに、欧米ではよく聞くどころか、死亡事故もしばしばな確立で起こる。
そんな、実はヤバイ食中毒菌が、この「リステリア(リステリア・モノサイトゲネス)」です。


Wikipedia

実際、アメリカや海外ではこの件以外にもしょっちゅう起きていて、結構な数の死者を出しています。
データによれば、何でもアメリカでは毎年500人くらいがリステリアの食中毒で死亡しているようです。
尤もリステリアの食中毒自体(患者数)はそれほど多いわけではありません。というか全食中毒のうち、わずか0.003%と非常に少ないのです。
にも関わらず、食中毒による死者のうちリステリアが占める割合は全体の20%と随分と高い。
(食中毒死者2,500人中のリステリアによる死者500人!)
事件数や感は数は少ないのに、死者だけやたら多い。
これがリステリアが海外で恐れられている由縁です。

ところが。
このリステリアの食中毒は、日本ではあまり起こらない。ほっとんど起こらない。
尤も、実際に起きても統計に出てこないので、判らない。
判らないけれど、一説では実際の国内推定患者数は年100~200人くらいはいるんじゃないか、と言われています。
とにかく、日本じゃほっとんど届け出られないし、ほっっっっっとんど報じられることはありません。結果、死人も出ていない。
そもそも健常者の発症リスクがかなり低い。かかっても、ほとんど重症化しない。
だから余り知られていない。

でも、海外ではやっべえ食中毒のトップランカー。
リステリアはそんな、地味なくせに、実はやっべえ菌だったりします。

 

リステリア、ここがヤバイ!

確かにリステリアは、地味ですが、結構やべぇやつです。
では一体、どこがやべぇのでしょうか。

致死率、めっちゃ高い

リステリアのヤバイところといえば、やはりその致死率です。

上にも触れたように、リステリア食中毒は健常者の発症リスクがかなり低く、結構な菌数を摂食しても食中毒にならなかったり、もし仮に感染したとしても、ほとんど重症化しません。やべ、ちょっと胃下したかな、腹痛いな、風邪引いたかもな、とかその程度だったりもします。(非侵襲性リステリア症)
しかし、免疫が低下している人、例えば病人や高齢者、子供などは少ない菌数でも感染しやすい。
そして、その場合は重症化する可能性が、極めて高い。(侵襲性リステリア症)

ちなみにリステリアの食中毒にかかり、重症化し、これが髄膜炎や敗血症といった「侵襲性リステリア症」へと進行した場合、致死率は20~30%へと跳ね上がる、と言われています。
この致死率は統計次第で差があるのですが、ぼくが所有し活用している割とポピュラーな学術本には、「髄膜脳膜炎に至った場合の死亡率は30~50%」と怖い数値が書いてあります。
マジかよ!

「老人や病人?
はっ、若い俺には関係ねーし!」

ハイ、そう思った方に悲報です。
奥さんや赤ちゃん。そう妊婦も、リステリアはヤバいです。

特に妊婦さんはリステリア食中毒に、健常者の数十倍なりやすい。
しかも妊娠中に感染した場合、胎児は大概、流産、早産するか、生後まもなく死亡します。

はい、ゴレイヌ先輩、どうぞ。

低温や塩漬けでも楽勝で増殖する

「大丈夫、
ウチは食品はみんな冷蔵庫に低温保管しているから!」

ハイ、そう思った方に悲報です。

リステリアは、低温増殖する菌としてもよく知られています。
そもそも食中毒菌で、冷蔵環境下で増殖出来るというのは、かなりレアでアレなのですよ。

例えば、もし大腸菌が食品に付着していたとしても、冷蔵保存がしっかりなされていれば増殖することはありませんから、そうそう食中毒にはなりません。
ですがリステリアは、10℃以下、いや0℃近くでも繁殖します。
無論、冷凍環境にも耐えるので死滅しません。
だから冷蔵庫で長期保存出来るようなもので、リステリンの食中毒が発生します。

以前の記事で書きましたが、そんな昔でもない2015年、アメリカでは大手「ブルーベル」のアイスを食べて、三人が死亡しています。
アイスですよ?凍結してますよ?で普通にアイス食って、で三人死亡ですよ!?
マジかよ!

 

更に言えば、塩漬けされた食品(12%食塩濃度下)でも増殖します。
普通、微生物は塩漬けされた環境では増殖が難しいものですが(水分活性)、リステリアはそれでも増殖可能です。
つまり保存食でも食中毒を起こす、それがリステリア。

加えて耐酸性もあり、発育pH域が広い。
生ハムやスモークサーモン、チーズなど保存食での海外事例が多いのはそのためです。
だから長期保存出来るようなものこそ、リステリアに要注意なのです。

どこにでもいる

またこのリステリアは、自然界に広く存在しています。
土壌をはじめ、河川、汚泥、植物、農場、その他。
つまり、自然界のどこにもいます。

どこにでもいるということは、どんな食品でも汚染の可能性が高い、ということです。

今回の件も同様です。
やれ韓国産のエノキダケにリステリア菌が付着していた。

これは恐らく、菌床管理や使用水の汚染管理が甘かったのかと思います。

どこにでもいる土壌菌で、しかも耐酸性も高い。
そんなリステリアの汚染を栽培時に許してしまった。
キノコ自体はその性質上、完全に洗浄や加熱殺菌して出荷することは出来ないのだから、これはもう栽培時の汚染防止を行うしかないわけです。

おっと、付け加えておくと、どこにでもいる菌なので栽培後の交差汚染、ということも考えられなくもありません。
人の腸管保持例もあるから、手指汚染だってあり得ます。

発症や原因の特定が難しい

リステリアの食中毒は1週間から何と1ヶ月以上(!)と、めっちゃ潜伏期間が長く、また初期症状がはっきりしないことが多いです。
大体1週間前に食べたもので食中毒とか、もう感染源判るわけないじゃないすか。

ちなみにアメリカでは、2ヶ月前に食べたメロンでリステリアの集団食中毒で33人が死亡したことが以前話題になったことがあります。
ってメロンで食中毒!?
メロンなんて、皮食べねーだろ、と思ったのですが、なんでもここではカットの際に包丁に付着して中を汚染したということ。
でも、こんなぼくだって普通メロンを洗って食べないもんなあ。

おっと、本題に戻ります。
とにかくリステリアは、潜伏期間がやたらと長い。
やたら長いと、感染源の特定が難しくなります。

さらにリステリアの食中毒は、悪寒、発熱、筋肉痛などで、症状による風邪やインフルエンザとの区別が難く、はっきりしない。
はっきりしないと、食中毒だと診断されずらくなる。
本人自体、食中毒の自覚もないことが多い。
だから診断されづらくなり、自ずと食中毒の拡散が進み、対策も後手後手に回ります。

また先にも書きましたが、どこにでもいる菌なので人の腸内保持者もあります。
ということは、検便をしてリステリア菌が検出されたとしても、「リステリア食中毒です」と決められません。
だって、保持者かもしれないじゃないですか。

うわ、めたくそ面倒くせえなこいつ!

前編:まとめ

こちらの前編ではリステリアの特徴やヤバさについて解説させていただきました。
また食中毒の原因についても、予測させていただきました。

後編では、リステリア対策について、それから海外や日本国内でのリステリアの食中毒事情について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。

以上、このように当ブログでは食品衛生の最新情報やPCO、防虫対策の知識は勿論、その世界で長年生きてきたプロだから知っているテクニックや業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

 

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