新型コロナウイルスが猛威をふるっている今日この頃、完全にそれに霞んでしまっている感の否めないノロウィルス。
しかし注目度がそれほど高まっていない影で、意外とノロウイルスの被害は進んでいたりします。
では2020年のノロウイルス事情は一体どうなっているのでしょうか。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えいたします。

 

今日のお話の概要
  • この冬から春にかけても、ノロウイルスの食中毒はしばしば発生している。
    特に1月には、長野県上田市の旅館では、300人近くものノロウイルス集団食中毒が発生した。
  • ノロウイルスの食中毒は、「事件数」も結構多くて、しかも集団化しやすく「患者数」も多くなりやすい。
  • ノロウイルスは、コロナウイルスと違ってノンエンベロープウイルスであり、アルコールなどの失活効果が極めて薄い。
  • ノロウイルスは人体の腸内でしか増殖出来ないため、ワクチンの開発が極めて困難である。
  • しかし、間もなくノロウイルスのワクチンが開発され、世に出回る可能性が高まっている。

 

 

地味に各地で起きているノロウイルス集団感染

新型コロナウイルス騒動が世界的規模で沸き上がっている昨今。
やれ学校閉鎖だ、イベント中止だ、自粛だ云々。
ほんとね、東京オリンピックもどうなってしまうんでしょうか。

尤も新型コロナウイルスについて衛生管理のプロであるぼくが言えることは以前の記事に書きましたので、そちらを読んで頂くとして。

 

今回は、如何せんその影に隠れてしまっていがちな「ノロウイルス」のお話をするとしましょう。

もう新型コロナの報道ばかりされているから、ノロウイルスなんてなくなっちゃったのかと思っている方もいるかもしれませんが、んなこたあ勿論ありません。
この冬から春にかけても割と、というか地味にノロウイルスによる集団での食中毒はあちらこちらで発生していました。

例えば、これを書いている3月半ばにも、埼玉県和光市の市役所の食堂で15人の感染が認められたばかりですし、今月初頭には岐阜県の弁当屋さんで33人が感染。
さらには今月3月4日、鹿児島県の海上自衛隊鹿屋航空基地にて、給食施設で食事をした隊員89人がノロウイルス食中毒にかかったとの報道がなされたことは記憶に新しいことでしょう。

FNN.jpプライムオンライン
 
鹿屋航空基地で89人が食中毒 下痢や嘔吐を訴える 鹿児島 - FNN.jpプライムオン...
https://www.fnn.jp/posts/2020030400000006KTS
鹿児島県鹿屋市の海上自衛隊鹿屋航空基地の食堂で先月、ノロウイルスによる集団食中毒が発生し隊員89人が下痢や嘔吐などの症状を訴えました。  県によりますと、先月27日、海上自衛隊鹿屋航空基地が運営する食

 

ノロウイルスのピークは12月~2月で、春が見えてくる3月は既に収束へと向かう時期でもあるのですが、このようにゼロではありませんし、意外と夏場前まで時折発生が見られるものです。

またもう少しさかのぼると、昨月2月には茨城県で、二か所の幼稚園にわたって、80人近くの集団感染がおこったことが報じられていますし、

 

同時期には千葉県銚子市の中学校で、51人の集団感染が発生し、学校閉鎖に至っています。

Yahoo!ニュース
中学校でノロ集団感染 生徒・教員52人が症状訴え/銚子(千葉日報オンライン) - ...
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200211-00010001-chibatopi-l12
千葉県は10日、銚子市内の中学校でノロウイルスによる感染性胃腸炎が集団発生したと発表した。県疾病対策課によると、1~3年の男女51人の生徒と教員1人が2~6日にかけて、嘔吐(おうと)や下痢の症状を訴 - Yahoo!ニュース(千葉日報オンライン)

 

なお、今季で尤も規模が大きかったのは、1月下旬に起こった長野県上田市の旅館で起こった案件でした。
ここではスキー合宿に来た中学生らが発症し、最終的には300人近くにまで被害が及んでいます。

 

このように、ノロウイルスはそれほど騒がれなくなってきた中で、しかしそれでも案外と、今年もあちこちで発生しているのがわかることでしょう。

集団食中毒化しやすいノロウイルス

厚生労働省の統計によると、2018年の食中毒患者数は17,282名。
このうちノロウイルスによる食中毒患者数は8,475名と、ぶっちぎりのダントツでした。

食中毒の「多さ」を語るには、実は二つのデータが必要です。
それは「事件数」「患者数」です。

 

食中毒の「多さ」の見方:食中毒の状況別分類
  • 事件数:食中毒が発生した件数
  • 患者数:食中毒になった人の数

 

「事件数」とは、食中毒が発生した件数のこと。
「患者数」とは、食中毒になった患者の数のこと。
これら双方から、「食中毒の多さ」を判断します。

 

今、お伝えした「8,475」名というのは、「患者数」のことです。
つまりそれは、様々ある食中毒の中でノロウイルスの「患者数」が一番多かった、という意味です。

患者数の多かった食中毒
  1. ノロウイルス:8,475人
  2. ウェルシュ菌:2,319人
  3. カンピロバクター:1,995人

 

このように、カンピロバクターやウェルシュ菌を抑えて、ノロウイルスの「患者数」は群を抜いています。

では、今度は「事件数」を見てみましょう。

事件数の多かった食中毒
  1. アニサキス:468件
  2. カンピロバクター:319件
  3. ノロウイルス:256件

 

事件数を見ると、実は先程には上がらなかったアニサキスよりは少なかったことが判ります。
これは中々面白い。

どういうことか。

アニサキスは魚を食べることで起こる食中毒ですが、1匹の魚を大勢で食べることは稀です。
しかもその中のアニサキスにあたるのはごくわずか。
つまり患者数が極端に減るわけです。

また患者数の方に出てきたウェルシュ菌も、事件数は極端に減っています。
だって、患者数がカンピロより多くて2,000人越えですが、事件数は実はたった年間8件なんですぁら。
ウェルシュ菌の食中毒についてはこの間もお話しましたが、一発で100人規模の食中毒が起こりやすいのが特徴なのです。

 

おっと、話をノロウイルスに戻します。
これらのデータから判ることはどういうことか。

「事件数」も結構多くて、しかも集団化しやすく「患者数」も多くなりやすい。
それがノロウイルスによる食中毒の最大の特徴だということです。

ノロウイルスはノンエンベロープウイルスである

新型コロナウイルスのせいなのですが。
「エンベロープ」なんていう食品衛生や医学や理系の勉強でしか出てこない単語が、テレビなどで時折耳にすることになるなんて、なんだか凄い世の中になってきました(笑)。

ですからもしかしたら、皆さんも耳にしたことがあるかもしれませんね。

ウイルスには、構造上から二種類に分けられます。
それが、この「エンベロープ」のあるウイルスと、ないウイルス、つまり「ノンエンベロープウイルス」です。

そして、ノロウイルスはエンベロープのないウイルスであり、新型コロナウイルスはエンベロープのあるウイルスです。
では、これらはどう違うのでしょうか。

ウイルスは、遺伝子である「核酸」をタンパク質で出来ている殻(「カプシド」)で覆っています。(「ヌクレオカプシド」といいます)
そして、ウイルスによって更にその周辺に「エンベロープ」という皮膜を持つものと、そうでないものがあるのです。

エンベロープは脂肪や糖タンパクなどで出来ているのですが、そのためアルコールや界面活性剤などといった脂質に影響を与えるような消毒剤で破壊することが出来ます。

しかし一方で、エンベロープを持たないウイルスへの効果は今ひとつです。
というのも、これらのウイルスは本体が剥き出しの状況であり、これらがアルコールで溶けてしまうということはないからです。

つまり、新型コロナウイルスなどのエンベロープを持つウイルスは、アルコール消毒液や石けんで失活させることがしやすい、ということになります。
一方で、ノロウイルスなどのエンベロープを持たないウイルスはアルコール消毒液などでの失活が難しい、ということになります。
ノロウイルスにアルコールが効かない、ということはこうした理由からなのです。

さらに言うなら、ノロウイルスはこのようにアルコールが効かないのみならず、乾燥にも非常に強いウイルスです。
ノロウイルスが感染しやすいのは、こうした特徴によるところが大きいのです。

ノロウイルスにはワクチンが存在しない

さて、そんなノロウイルスですが、実は2020年現在、ノロウイルスに対するワクチンは存在せず、治療薬が開発されていません。
しかし、それが市場に出るのもそれほど遠い先の話ではなくなりそうなのです。

このあたりの話になるとぼくの専門である食品衛生から離れて医学の話になってしまうのですが、興味深いものがあるので進めていきましょう。

そもそもワクチンは、ウイルスなどの病原体から作ります。
これを無毒化もしくは弱毒化させたものを人体に接種し、体内に病気に対しての抗体を生じさせるのがワクチンの働きです。

ですから、まず最初にノロウイルスを増殖させる作業が必要になります。
ところが、ノロウイルスは人間の腸内でしか増えないのが特徴です。
ですから、研究施設などの試験管培養が出来ません。
これがノロウイルスのワクチン開発が進まなかった最大の理由です。

それに加えてノロウイルスには多くの遺伝子型(株)があります。
人間に感染するノロウイルスのうち、その遺伝子株は30近くもあり、それぞれ抗原性が違う。
それらの流行が毎年変化するため、効果的なワクチンの開発がなされずらい、ということも理由としてあるようです。

ノロウイルスのワクチンが近く発表される!?

しかしそんな中、様々なメーカーがこぞってそのワクチンの開発に勤しんでいます。なかでも

今年に入って、インフルエンザワクチンで知られる化学大手メーカーのデンカが、北里大学の教授とライセンス契約を結び、ワクチンを開発した、とのニュースが報じられました。
ということは、既にノロウイルスのワクチンは完成しており、2020年3月現段階では認可の申請とともに、生産体制の整備に向かっている様子です。

デンカは2015年に独アイコンジェネティクスを子会社化した。
アイコンは植物の遺伝子組み換え技術を活用し、抗体や抗原などの高分子たんぱく質を低コストで短時間に産生する技術を持つ。
この技術を用い、ウイルス様中空粒子(VLP)を抗原としたノロウイルスワクチンを開発している。

 

またデンカのみならず、数年前から他医薬品メーカーでも開発が進められています。
特に武田薬品などは、数年前から臨床試験に取り組んでいました。

これらから、ノロウイルスのワクチンが出回るのもそれほど遠くない先の話と言えそうです。

まとめ

今回は、コロナウイルスの大流行の話題に押されがちな、昨今のノロウイルスの実状についてお話させていただきました。

そろそろシ最盛期のシーズンは終わりますが、しかし年間を通じてゼロにはならず、ぽろぽろと発生が報じられるのがノロウイルスです。

今後もまた折を見て、取り上げていくとしましょう。

以上、このように当ブログでは食品衛生の最新情報やPCO、防虫対策の知識は勿論、その世界で長年生きてきたプロだから知っているテクニックや業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

 

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