プロに聞く、衛生管理&防虫管理Q&A。
前回に引き続いて今回と二回に分けて、食品工場の照明の明るさについてのご質問に答えます。
また簡単手軽に工場内の照度を調べる方法も教えます。
改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えいたします。
- 工場内の照度は一定ではなく、照明の種類や数や位置、使用状態や劣化状態などで大きく変わってくる
- LEDや補助照明などで照度を調子柄している工場が多い
- スマホアプリで手軽に照度を調べられるものがある

質問:食品工場の照明の明るさはどの位がいいのですか?
「食品工場の照明は、異物混入対策上、どのくらい明るければいいのでしょうか。」
はい、
早速お答えしていきましょう。
なお、こちらは二部構成の「後編」になりますので、もし「前編」をお読みでなければそちらを最初に読んでください。

「照度」の意外なブレ
というわけで前回からの続きです。
工場の照度にはJIS規格の基準があります。
一般的な製造環境においては、500lx~750lx、と定められています。
ですが一般的な食品工場では、もう少し高めの基準を設けているところが多いですよ…というのが前回のお話でした。
さて、そうなのですが。
少しばかりこの「照度」について考えてみることにしましょう。
「照度」というのは、「結果的な作業箇所の明るさ」のことです。
つまり、こういう性能の照明機器を使いなさい、とか照明の位置をここにしなさい、とかではなく、それらを用いた結果としての作業箇所の明るさをこのくらいにしなさい、という話です。
すると、様々な要因によってその「明るさ」への影響が働くことになります。
例えば、照明の明るさは常に一定ではありません。
使用していれば、その分明るさは低下します。
つまり各箇所においての照明の使用期間によって、照明の明るさが変わってきます。
というかそもそも、「ある空間の全ての箇所の照度を一定にせよ」というのは、かなりムリがある話です。
照明は何も全方向に均一ではありませんし、重なる箇所もあれば届きづらい箇所もあります。それに光を当てれば影だって生じます。
それら全てに、一定の照度を求めるのは現実的には結構難しいものです。
つまり、工場内は照明の種類や数や位置、使用状態や劣化状態などで大きくその照度に差が生じるものです。
とくに蛍光灯は、安価な分だけそうしたムラの大きい照明器具です。
例えば、蛍光灯の直下にある作業台で計ったら問題ない照度が、しかし真上に蛍光灯のない箇所での作業場でそれを維持出来るかは、実は結構難しいものです。
更に言えば、窓がある工場では、昼と夜の作業箇所での照度が絶対に違うはずです。
場合によっては曇りや晴れなどの天候にも左右されるでしょう。
もっと言うなら、実は温度によっても差が生じます。
このように、様々な条件によって照度は大きく変わります。
これらを単純に一様に、この位にしろだのと決めるのはかなり乱暴な行為だとなりかねません。

様々な照明対策
こうしたことを踏まえ、各工場ではそれぞれ照明に対して工夫を行っていることでしょう。
例えば、省エネのみならず、照度対策としてLED照明を導入している工場もあるかと思います。
LED照明は、発光効率が高いため、照度の確保がしやすいのが特徴です。
また低温での作業が求められるような工場では、発熱が少なく、室温に明るさが影響されづらいのも特徴です。
また寿命が長く、照度が長期に維持される、というのもLEDならでは。
これらのことから、LED照明を導入する、というのも対策の一つといえるでしょう。
その他、補助照明を用いることもよくあるかと思います。
作業台の上だけ照明を設置する、検品工程のみスポットライトを導入する、というのはよくやられている照度対策です。
というか、室内照明に加えて補助照明を用いて照度を満たす、というのは極めて現実的な方法でしょう。
また照度を高めるために、蛍光灯に専用の照度対策カバーを取り付けることもあります。
これによって蛍光灯の灯火を反射させ、照度を高める、という方法です。

自分の工場の照度が判らない?そんなときは…
自分の工場内の照度を計るには、照度計が一番です。
ちょっとしたものなら数千円で手に入ります。
ですが、照度計なんて持っていない、という工場もあることでしょう。
でも大丈夫。
世の中便利なもので、実は、照度計のスマホアプリがあるのです。
そりゃ本物照度計には精度は到底かなわないでしょう。
でも、手軽に工場内の明るさを計るのであれば、とりあえずのところ、これでもいいかもしれません。
こうした照度計アプリは、実は色々あったりもするのですが、幾つか試した結果、ぼくはこの「QUAPIX Lite」をお勧めしています。
この「QUAPIX Lite」は、照明メーカーの岩崎電気が作った無料のスマホアプリです。
iOS、Androidのいずれも使用が可能です。
「QUAPIX」というアプリの簡易版のようなものなのですが、まあ工場内の照度を測るくらいならこんなもので十分過ぎます。
ちなみにこれが↓アプリの画面なのですが、照度計として必要なのは左側2/5位の黒バックのところだけです。
残りの3/5は何かといえば、照度測定には全く関係ない、照明機器などのただのメーカーの宣伝です。
まあタダで使えるものなので、この位の宣伝は仕方ないのかもしれません。
(イヤだという方は他のアプリを使ってください。この手のものは割とあります)

このソフトのいいところは、「用途・場所」の設定と、「推奨値」の表示が出来ることです。
どういうことかというと、「工場内の適正照度」が判定表示される、ということです。
例えば、上画の左下のように「工場」の「一般作業」を選ぶと、ほら、その上の「照度スケール」の400lxから700lxくらいのところが赤くなっています。
この間にあれば、一般的な作業を行う上ではほぼほぼ合格となります。
この場合、850lxですから、判定は「明るい」となります。

また同じように左下で「精密作業」を選ぶと。
ほら、今度は1100lxから1500lxが赤くなります。ここのゾーンが検品などの工程では合格というわけです。
この場合850lxですから、そこに至っておらず、暗いと判定されることになります。
とまあ、このように手軽に照度を測るにはなかなか便利なアプリなのですが、どうも本物の照度計より若干ながら低めに数値が出やすい傾向があるようです。
まあ、照度計なんて安いものは3000円くらいから探せますので、やはり一つくらいは持っていてもいいのかなあとは、ぼくは思いますがね。
まとめ
今回は工場内における照明の話をさせていただきました。
まず最初は、ご自身の工場の様々な作業場を、照度計や上のスマホアプリなどで見てみるとよいでしょう。
前回の目安をもう一度出しますが、その際にこのくらいの照度が保たれていれば取りあえずはよろしいかと思います。
- 1,000lx~1,500lx:検品工程
- 700lx~1,000:計量・盛付・包装工程(製造後)
- 300lx~700lx:下処理~加工調理(一般的な製造作業)
- 150lx~300lx:入出荷・開梱、その他
以上、このように当ブログでは食品衛生の最新情報やPCO、防虫対策の知識は勿論、その世界で長年生きてきたプロだから知っているテクニックや業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

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