ピロー包装機。
食品工場なら何処にもあるこの普通の包装機械ですが、これに関わって製品への虫の混入事故が発生しうることが、稀ながら実はあるのです。
それでは、前回に引き続いて今回と二回に分けて、実際に起こった事例を交えながらお話いたしましょう。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えいたします。

 

今日のお話の概要
  • 食品で最もメジャーな包装手法がピロー包装である
  • ピロー包装工程で、落下した菓子片が包装機の下で堆積し、シバンムシの発生要因になっていた
  • ピロー包装の意外な盲点として、機械下に食品片が散らばりやすい、またそれが発見さえづらい、というのがある
  • 昆虫の異物混入事故には人的要因や、最終的な「トリガー」が隠れていることがよくある

 

 

今日のテーマ:ピロー包装機で虫の混入が!その原因は?

ケーススタディ・ザ衛生管理。
「工場の現場で起こりやすいこと」、「実際に起こったこと」を例題事例とし、現場に即した対処方法を、ここではお教えしてきます。

というわけで、今回のテーマは、こちら。

「ピロー包装機で虫の混入が!その原因は?」
です。
なお、こちらは二部構成の「後編」になりますので、もし「前編」をお読みでなければそちらを最初に読んでください。

 

洋菓子工場でのシバンムシ類の混入経路は包装工程だった

はい、前回のおさらいです。
前回を読んでこちらに来られた方は、重複してしまいますのでここは読み飛ばして結構です。

とある洋菓子工場で、シバンムシの異物混入が何度か立て続きました。
混入の状況は、いずれも表面に付着、あるいは包装の中にいる、というもの。
製品に練り混まれているわけでも、また加熱さえているわけでもないことから、包装工程での混入事故である、ということが判りました。

 

ただここで、ある疑問が生じます。
包装工程エリアというのは、まあ大概がドライ環境で、他のエリアよりも粉体の堆積が少ないエリアでもあるのです。
例えば、小麦粉をザザーっと開封しているような仕込みや成形のほうが、シバンムシは絶対に多いはずです。
でもそこで問題にならずに、何故包装工程で問題が生じたのか。

後編はその秘密に迫っていくことにしましょう。

ピロー包装とは

では、食品の包装について少し説明していきます。

食品の包装には様々な方法があります。
で、その中でも代表的なもの、一番メジャーな包装手法として、「ピロー包装」というものがあります。

「ピロー包装」は、側面の合わせ(サイドシール)がなく枕(Pillow)のような形態であることがその語源です。
フィルムを合わせて筒状にし(センターシール)、食品を充填包装したら上下両端を熱溶着(エンドシール)し、裁断して作ります。
センターシールの背貼りが手を合わせている状態に見立て、「合掌袋」とも時に言われます。

 

ぼくのうちにあった、冷凍食品。
これもピロー包装です。
裏側を見ると、上下、背の真ん中で3箇所熱溶着(ヒートシール)されているのがわかります。

赤い箇所ですね。

 

このように、「真ん中」(センターシール)、そして「頭」「お尻」(エンドシール)(これは「左右」両端ですが)を、機械によって熱溶着(ヒートシール)する包装のことを、「ピロー包装」といいます。
呼び名はさておき、こういう包装ってよく見るでしょ?

ピロー包装は、包材をくるっと丸めて合わせ目をヒートシール(熱溶着)させて筒を作り(これが真ん中のセンターシールになります)、そこに製品をくぐらせて入れ、入ったらバツンと上下をヒートシールして封じ込め(エンドシール)、裁断することで包装します。


(株)サンコー商事

シンプルに説明すると、まあこんな感じです。
そしてそれを行う機械が、下の写真のものです。

ではどうしてこれが虫の混入に関係あるのでしょうか?

 


ピロー包装機:フジキカイ(株)

ピロー包装の意外な盲点

食品の包装でも最もメジャーな方法である、ピロー包装。
これが何故、問題の要因となるのでしょうか。

ピロー包装の工程をもう少し細かく見てみます。


一般遮断法人日本食品包装協会

 

ピロー包装は、まず製品をフィードコンベアで包装機に供給します。
この際、コンベアから包装機へのコンベアに「乗せかえる」必要が当然生じます。
ですからここで、軽い、ほんの軽ーい揺れや振動による衝撃が加わります。

そして載せ替えられたピロー包装機のコンベアは、構造上、コンベアの中央にセンターシールのための隙間が生じているものでした。

そこから製品は包装フィルムに包まれ、ただちにセンターシールされて筒の中に入ります。
当然、製品は送り出されるので、ここでも同様の、ちょっとした揺れや衝撃が加わります。

さて筒に入ったらもうあとは上下をヒートシールされ(エンドシール)、同時に裁断が行われて、包装が出来上がります。

…で。
この作業に何の問題があるのでしょうか。
一見、全く見えませんよね。

ですが。
一日何万単位の包装をしていると、地味ながら、しかし確実に蓄積されていくものがあるのです。

そう、重要なのが、ここです。

この際、コンベアから包装機へのコンベアに「乗せかえる」必要が当然生じます。
ですからここで、軽い、ほんの軽ーい揺れや振動による衝撃が加わります。

そして載せ替えられたピロー包装機のコンベアは、構造上、コンベアの中央にセンターシールのための隙間が生じているものでした。

 

そう、もうお判りですね。
これね、結構な盲点なんですよ!

先にも書きましたが、小さな揺れや振動、衝撃から「微小な菓子片」が生じます。
一つ一つは大したことがないのですが、何万個、何十万個と製造していくうちに、「ちりも積もれば」となっていきます。

勿論、虫は一日では発生しません。
虫は、成虫がいて、それが複数いて、交尾し、卵を産み落とし、幼虫になって、成虫になることで増加します。
シバンムシなら、3週間~1ヶ月はかかることでしょう。
ですからその日やその週のうちに清掃しておけば対応できたのです。
それを、長期間、まあ2、3ヶ月ほど放置してしまった。

そう、
このわずかな衝撃や揺れによって生じた焼き菓子の菓子片が、コンベアの隙間から落下し、包装機の下の床面に飛散、堆積し、それに気付かず、見逃してしまった。
そしてそれが、シバンムシなどの昆虫の発生要因となっていたのです。

「なんだってー!?」←

意外と発見が遅れがちな包装機下の問題

そう、
今回の問題はピロー包装機の仕組みや構造上、食品片が下に落下しやすいということ。
またそれに気付くのが遅れた、というのが原因だったのです。

 

つまり、ここから落下した食品片が床面に堆積していた。

おっと、手頃な画像がなかったので上で使用したフジキカイさんの画像を借用してしまいました。
この機械がダメというわけでは全然ないですよ!誤解なきように。
(寧ろ包装までの距離がある上、これ下カバーも付いていそうですから、なかなかこうした問題は起きにくい、優れたものだと思います)

でも、この機械でもそうであうように、もし網の懸かっている赤丸に問題が発生していたとしたら、どうでしょうか。
ここが、間違いなく問題の死角になります。
このように、得てしてこうした製造機械や包装機械の下の問題というのは、結構気付きづらいものです。

例えばミキサーなどで目に見えて判るようなあからさまな汚れや粉溜まりなどは、見れば誰でも判ります。
でも一見そうした問題に関係がなさそうで、しかし一日、一日、わずかながらも着実に増えていく汚れや粉溜まりはそう気付きません。

また例えば、このコンベアの下には番重や受け皿などを置いて対応している工場も見かけます。
ですが、機械下までそれを行っている工場は、実はそれほど多くはありません。

いや、実を言えば従業員さんも当然ながら、包装機の周辺って食品片が散らばるんだ、なんてことは多少ながら知っているんです。
ですから、見える床面はしっかり清掃します。
こうなると、一見何の問題もないように見える。
ですが、一番問題なのは、目の届かない包装機の下なのです。
寧ろ、目が届かないからこそ、長時間かけて問題が進行していくのです。

大体、機械にも大きくよりますが、包装機の下はなかなか覗き込みづらいもの。
だって、ちょっと自分の身になって考えて見てください。
貴方は汚れたら着替えないといけない、白衣を着ています。
余り問題に関係がなさそうな機械の、それも数㎝しかない下の隙間を、床面にはいつくばって懐中電灯を当てて覗かないと判らないものを、そう日々チェックしますか?

加えて、大型の包装機は大概、足をしっかりと固定しています。
ですからこんな重いものをそう簡単にどかして清掃出来るものでもありません。

大体、食品が落ちて、虫が発生することまで考えて機械を作っている包装機メーカーはそれほど多くはありません。
そもそも彼等は包装のプロであり、虫に関しての知識を全く持っていないからです。
勿論、中にはサニタリー性を強化して下面が清掃しやすいもの、移動しやすいコンパクトなもの、落下しづらいもの、落下しても機械下ではなく周辺床面に散らばり清掃しやすくなるもの、などなど色々開発もされています。
ですが、やはりセンターシールや供給部での食品片の落下は、なかなか物理的に防止しづらいのが現実です。

さて。
かくして堆積したり飛散した穀粉や食品片などが放置され、それに気付かずに放っておくと、これを生息源とするシバンムシが餌に誘引され、生息し、繁殖して増加します。
何せ、剥き出しの製品が何万個も流れ、包装されるその1メートル直下の話です。
シバンムシは飛翔して移動しますので、ふわふわっと飛んで機械内に向かえば異物混入のリスクが大きく高まる。
これがこの問題の「トリガー」だったのです。

まとめ

今回は、一般的に広く食品製造で使われているピロー包装機の、その意外な盲点について、昆虫の異物混入というちょっと変わった目線からお話いたしました。

今回は、製品を包装する、という最後の工程のすぐ真下で問題が生じていたことが、異物混入事故の「トリガー」でした。
この発生が製品より離れた箇所であれば、リスクは大きく回避出来たことでしょう。
また前回もお話しましたが、異物混入事故には人的要因が隠れているものです
今回もその問題にいち早く気付き、清掃を行っていれば、生息源は除去され要因を逃れることが出来たことでしょう。

そしてこのように、昆虫の異物混入事故には人的要因や、最終的な「トリガー」が隠れていることがままあるものです。

以上、このように当ブログでは食品衛生の最新情報やPCO、防虫対策の知識は勿論、その世界で長年生きてきたプロだから知っているテクニックや業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

 

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