前々回に、冬なのにユスリカが多量に捕獲される現象についてお話しました。
ただしそれは外からユスリカが多量に侵入している場合のお話でした。
でも、違う場合だってあるのです。もしかしてそのユスリカ、内部発生なんじゃありませんか?
今日はそんな状況についてお話します。

改めまして、皆様こんにちは。
高薙食品衛生コンサルティング事務所です。
ここだけしか聞くことの出来ない神髄中の神髄、
「プロが本気で教える衛生管理」を、毎日皆様にお教えいたします。

 

今日のお話の概要
  • 冬なのに、工場の内部でユスリカの捕獲が減らない工場がある
  • ユスリカは、ある一定の条件が揃えば工場内でも内部発生する
  • ユスリカの内部発生は、他の虫に比べて発見が遅れたり、現実的にそれを防ぐのが難しいことが多い
  • ユスリカの内部発生には、「泥と綺麗な水」が重要なファクターである
  • ユスリカの内部発生時期は、一年を通じて行われる危険がある

 

 

冬なのにユスリカが減らない?

前々回に、フユユスリカのお話をさせていただきました。

 

河川などで真冬に活動のピークを迎える、ちと変わりダネなユスリカ。
それがこのフユユスリカです。

この場合、何故か冬季にどーん!と工場内での捕獲数が増加します。
ですからユスリカだけの捕獲数を月度推移のグラフにすると、例えばこんな感じになります。

12月と1月が年間を通じて最もユスリカの捕獲数が高まっている。
これが典型的、教科書的なフユユスリカの外部侵入データです。

 

ただし、ここには一つの特徴があります。
それは、この問題は「外部侵入要因」によって生じているため、工場の外側に近いところの捕獲が如実に突出したかたちになります。
前室だったり、倉庫だったり、入出荷庫だったり、従事者入り口だったり、そうした外に面したエリアでのトラップの捕獲状況がこのようになるのです。

だって、「外部侵入要因」ですから。外から入ってきているのですから。
なので、自ずと工場内部の捕獲状況は、それを受けて、中に進むに向かって減っていくのが一般的です。

つまり、「外から入ってくる=外部侵入要因」なので、結果的に「外側が一番多く、中に進むにつれ減少して捕獲される」のです。

逆に言うなら、製造室内などといった工場の「中の方が多い」場合には、それは「外部侵入要因」ではない可能性が高まります。
「外部侵入ではない」ということは、つまり捕獲の要因は「内部発生要因」であるかもしれない、ということです。

更に、ちょっとだけ補足を加えるとしましょう。
でもこれ非常に重要で基礎的なお話なので、どうか少しだけお付き合いください。

そもそも、工場で捕獲された昆虫は「外部侵入要因昆虫」「内部発生要因昆虫」とに分けられます。
つまり、その虫は、「外から入ってきた」ものなのか。それとも「工場内で生まれ育った」ものなのか。
このどちらかに分けることで、その問題の「要因」を探るのです。

このことは防虫管理の基礎中の基礎であり、また下の「防虫対策の極意」に詳しいので、どうぞそちらを読んでみてください。

 

さて。
ぼくにご相談があったお客様で、次のような捕獲がみられているところがありました。
勿論、微妙に数値は変えてあります。

 

成る程、確かに夏場がピークではある。
でもここで重要なのはそこではありません。
冬になっているのに、思いの外ユスリカが減っていない。
そして重要なのは、これが製造室内の捕獲状況だったことです。そして月によっては、外側の捕獲以上に工場内部での捕獲数が高かったのです。

これはどういうことでしょうか。

ユスリカとは

ここで簡単にユスリカの解説に触れておきましょう。
あ、以前の記事で読んだ、そんなの知っているよという方は読み飛ばして頂いても全然結構ですが、太赤字のところだけはせめて見ておいてください。(後に関連して出てくる話です)

さて。
よく夏の夕方の河原などで、いわゆる「蚊柱」をたてて、ブンブンと飛び回っている虫を見たことがあるかと思います。
一見すると、「カ」のように見える。
そう思って刺されないように逃げる人もいるかもしれませんが、あれが「ユスリカ」です。


Wikipedia

まず「ユスリカ」という名が付いてますが、「カ」の仲間ではありません。
むしろ「ハエ」の仲間ですらあります。
ユスリカは正確には、「双翅目ユスリカ科」と言うのですが、この「双翅目」とはハエのことです。

ですからメスもオスも人を指したり吸血したりはしません。
それどころか、口が退化しているので吸血はおろか、食べられないためほんの数日しか生きられません。
ですから、よく多量にユスリカが飛んでくるとき、翌日には死骸が散乱していることがままあります。
いいですか、ユスリカは幼虫期間が長く、成虫はほんの数日しか生きられない。これ、この後の話でも出てきます。

釣りをする方は、「アカムシ」という幼虫を川釣りの餌にすることはありませんか。
あれはユスリカの幼虫です。
これですね。

 

このユスリカの幼虫は河川や湖、その他の水域に生息しています。
水の中で、藻や微生物や有機物を食べて生きています。
この際、ゆらゆらと水中で揺れるように動いていることから、「ゆすり蚊」と呼ばれるようになった、と言われています。
ですから、比較的水流が穏やかで、泥が多く水の綺麗な川を好むのが特徴です。
(これ、後に重要な話として出てくるから、ここだけ押さえておいてください。)

このユスリカの幼虫、通称「アカムシ」は、その名の通り体が赤いのが特徴的です。
これは体液の中に、酸素を余り含まない水の中でも生きていけるよう呼吸色素を含んでいるからです。
ただし、全てのユスリカが皆、赤い幼虫ではありません。
何せユスリカは種類がめちゃくちゃ多いし、まだわかっていないものも多い。
これはあくまでオオユスリカやアカムシユスリカなどの幼虫がそうであって、少なくとも全てのユスリカが皆赤い訳ではないことは、ここに一応付け加えておきます。(このことも後の話に出てきますので)

で。この幼虫はやがて、蛹となって、水面で成虫となります。
水域で発育するため、成虫のユスリカが多量に生息し、浮遊しているのも、自ずと河川などの近くになります。
河川や湖などの近くの工場でユスリカが問題になるのは、そういうことからです。

さて、先の通り、ユスリカの成虫は多量にブンブンと飛び回り、「蚊柱」を作ります。
これは、ユスリカの交尾であり、メスを巡ってオスが多量に飛んでいるのです。

実は内部発生もするユスリカ

このように、多量に外部で生息し、多量に工場などに侵入してくるユスリカなので、ついつい「ユスリカ=外部侵入要因」というイメージを抱きがちです。
しかもこれは、プロのPCO業者においても同様です。
というか寧ろ、プロのPCO業者のほうが、むしろそうした傾向が強かったりします。
ですから、よくよく見たらこれ完全に内部発生しとるやん、というケースだって実のところ少なくはありません。

事実、ユスリカは、ある一定の条件が揃えば製造室内や工場内などで内部発生します。
そしてこの場合、得てしてそれに気付かず対応が遅れることが多いです。かなり多いです。

僕自身が経験した実例を、幾つか挙げてみましょう。

豆腐の製造工場では、充填時に水を多用するので、ライン周辺に水が散ります。
この散った水、大豆の栄養素を含んだような水なのですが、それが床面に貯まるのです。
特にライン周辺はパイプやケーブルなどが多く、完全に汚水の除去がしづらい状況になります。
すると、清掃が行き届きにくい、ここからユスリカが発生してしまいます。
充填機のすぐ付近ですよ!?当たり前ですが、混入リスクが急激に高まります。

総菜工場で、野菜の皮を剥く機械で発生したこともあります。
水を用いて皮を剥き、それを受け皿で受けてパイプで排水升に流す。
ごぼうなどの根菜は、泥が多く付着しています。それをこの機械で皮を剥きながら落とすわけですが、その泥や野菜の皮を流すパイプ内や排水升で、ユスリカの内部発生が進行していました。

番重洗浄機の排水なども、しばしばユスリカの発生要因となります。
というか、このパターンは本当によく見ます。
番重には汚れや有機物、泥などが付着していますので、それをこの洗浄機で洗い流します。
洗い流した排水は、配管を通じて排水桝に流されます。ここでユスリカが発生する例は、しばしば目にする話です。
とくに番重洗浄機は外側に面したエリアに設置されていることが多いことでしょう。当然、自ずとユスリカもそこに住み着きやすくなる。
しかしモニタリングにおいては、外部に近いのだから外部侵入したものだと錯覚する。実際、外部侵入要因で捕獲されているもの多いから、すぐには判別できない。
結果、ユスリカが何故か多く捕獲されているのでてっきり外部侵入かと油断していたら、実はその排水升での多量発生に気付かなかった。こんな話は、ざらにありますし、プロも見逃しがちなので要注意です。

たまにあるのが、ドラムフリーザーや冷却機のドレン水による発生です。
これも製品や食材の暴露工程のすぐそばですから、異物混入のリスクはかなり高いです。
しかもこの場合は、別の昆虫、例えばチャタテムシだったりチョウバエだったりを併発している危険性も孕んでいるので、これも注意が必要でしょう。

漬物工場で、壁の中でユスリカが発生していた、という事例。
これも結構な「あるある」ですね。
漬物工場は、えてして次亜塩素酸ナトリウム液を多用します。
その結果、壁面がボロボロになり、劣化、破損が進みやすくなります。
するとその内壁に水が貯まり、ユスリカが発生するのです。

んー、ざざっと軽く思い出すだけで結構あるな。
このように、長らくこの仕事をやっていると、それなりの確立でユスリカの内部発生に合うことになるものです。

発見、対策しずらいユスリカの内部発生

ユスリカの内部発生は、他の虫に比べて発見が遅れたり、現実的にそれを防ぐのが難しいことが多いものです。

そもそも外側から大量に侵入してきたユスリカが、工場の内部で生息を定着させるのが「内部発生」です。
となるとその外部侵入を食い止めることが、そもそもの根底ですが、それをするのはちょっと困難なことが多いでしょう。
何せ昆虫の中でも種類も多く、数も多く、また灯火に集まりやすい虫の代表例がユスリカですから、そんな単純な話でもありません。

しかも外部侵入と内部発生のジャッジは、モニタリングデータの捕獲数からではなかなか見いだせないことが多いものです。
付近のトラップにユスリカが少々多めに捕獲されていても、大概はそれを見逃しがちです。

ここで改めて、冒頭の月度推移グラフを見てみましょう。

 

成る程、こうやって「ある箇所の切り取られたユスリカのデータだけ」を見てみれば、そりゃ12月なのにちょっと高まっているかな、と思わなくもないですし、2月に成虫が40匹くらい捕獲されているのもプロなら怪しい、とアンテナが働くところではあります。

ですが、工場のモニタリングというのは何もユスリカだけを見ているわけではありません。
全ての昆虫相を、膨大な数値データの中で解析し、見ていくわけです。
ですからこの程度の微妙な差異は、多くのデータの中にどうしても埋もれがちになります。
大体、あらゆる虫の生息同行を追いかける中で、このくらいの異常に気付くのは至難の業でもあります。
(まあ、そこに我々のセンスや知識や腕の見せ所もあるわけですが、そんな容易いものではないのも事実です。)

そして。
そもそもユスリカは、幼虫期が長い昆虫です。
先に述べたように、成虫はほんの数日しか生きられません。
だから、成虫を見る機会が極端に少ないのです。これもまたユスリカの内部発生の危険に気付きづらい理由の一つです。

そりゃ製造室内でブンブンと蚊柱が上がっていたら、誰だって異常だと気付くことでしょう。
「だって蚊柱立てるのがユスリカでしょ?」
いいえ、ユスリカの内部発生とはそうした状況には大概、なりません。
あれはあくまで莫大な量のユスリカが河川で発生しているから起こる現象なのです。
そりゃ悪化が進行するとなるかもしれませんが、大概はそこまで至らないものです。

「最近なんだか、ふわふわ飛ぶ虫を時々見かけるようになってきた。」
ですから、これがユスリカの内部発生の注意信号です。

飛翔力の弱いチョウバエなら壁面を伝い止まるように生息しているので、目視で成虫を見つけることがありますが、ユスリカの成虫が見られることはそんな多くはありません。
ですからこれが始まっているとしたら、それはかなり悪化している危険性を示していることになります。

では現実的なユスリカの内部発生確認はどのようなものか。
排水升や床面などで小さな幼虫が、よーく、本当によーーーーーく!見たら、ウネウネしていた。
これを見つけるのが、ユスリカの内部発生確認作業になります。

となると、現場でじーっと排水升を懐中電灯で照らし、数ミリの幼虫を探すことになります。

「アカムシで赤いんだから、すぐに見つかるんじゃない?」
いいえ、ユスリカの幼虫は、真っ赤とは限りません。そして内部発生するユスリカの幼虫はとにかく微小で、しかも黒かったり白濁色だったりのものが多いものです。
(恐らくですが、内部発生しやすいユスリカは種類が限定的なのだと思います)
ですから、これを泥混じりの排水升で、目視で見つけるのは、そんな簡単ではありません。
懐中電灯を照らし、じーっと床面や排水升を眺めること数分。
これで何とか、やあーっと見つけることが出来るか出来ないかなのが、ユスリカの幼虫なのです。

ましてや壁の内側で発生していたり、機械内部で発生しているケース。
これはもう洗浄してしまうか、薬剤を注入するかしか手がありません。
薬剤を注入する、と簡単に言いますが、壁の中なんてどうなっているか判らないところに薬剤を流し混んだところで何処まで行き渡るのかは極めて不明です。
てゆーか、普通届きません。届いていません。全く、です。

え、ガス剤や燻煙剤を使えばいい?
成る程、成虫ならそれもいいでしょう。
でも相手は幼虫、それも水中のですよ?
水の中にまで浸透するガス剤や燻煙剤なんてありませんし、あっても効果の期待はしないほうがいいでしょう。

ユスリカの内部発生の共通条件とは

このように厄介なユスリカの内部発生ですが、実はユスリカの内部発生には大きな一つの条件があります。
先にぼくは言いましたよ?
「ユスリカは、ある一定条件が揃えば、工場内でも部発生する」ってね。

ではその「一定条件」って何でしょうか。

ユスリカの幼虫は河川に生息します。
そして泥や微生物、有機物などを食べています。
つまり、餌である泥や有機物があって、それなりに綺麗な水中しか生息していません。
そう、「綺麗な水と泥」、これがユスリカの発生条件です。

先の発生事例をもう一度見てみましょう。

豆腐工場では、栄養価の高い大豆の汁が水に混じっていました。
総菜工場では、剥いた野菜の皮と泥が水に混じっていました。
番重洗浄機には、番重内の泥が水に混じっていました。
漬物工場には、野菜の洗浄で出来た泥や床面の泥が水に混じっていました。

ね?判りますか?

このように、ユスリカの内部発生がする際には、しばしば「綺麗な水と泥」が重要なファクターとなっていることが多いのです。

余り汚れすぎない水、腐敗していない水、油や残渣まみれならない水、というのもここでは重要です。
ですから、そうなった場合には、チョウバエやショウジョウバエ、ノミバエなどの、ユスリカではない別のコバエが発生しがちです。
ユスリカは案外この手のコバエとは発生条件が異なるため、併発しないことが多いです。
(ただし、先にも少し書きましたが、チョウバエとは時にかぶることもあります)

ユスリカの内部発生時期は?

ではユスリカのこの内部発生時期というのはあるのでしょうか。

一般的には、やはり夏場が多いです。
ユスリカの活動ピークは年2回ある、と言われています。
それは、春~初夏にかけてと、秋です。
一見、活動が最も活性化しそうな真夏は、実は意外とユスリカは少なかったりします。
これはユスリカの生態に由来するものなのですが(これについての詳しい話はまた別途するとしましょう)、いずれにせよユスリカは真夏は一端活動が停滞するものです。

ですがこれは気温がバカ高い、外の自然環境での話。
そこまで室温が高まらないような工場内での内部発生については、これに含まれません。
尤もほぼ外にあるような番重洗浄機などなら判りませんし、空調次第だとは思いますが。

ですから一般的には、6月くらいから内部発生が始まるケースが多いことでしょう。
そしてそのまま秋まで問題が続く。
で、冬に何となく問題が収まっていく、きっとそんなところが多いかと思います。

しかしその一方で、温水などが使われたり、比較的温かい工場内などは、場合によっては冬季でも内部発生が止まらないケースもあります。
事実、12月にユスリカの内部発生がバカ高まりした工場をぼくは経験済みです。

つまり、通年敵に問題は起こりうる、と考えておいたほうがいいということです。

まとめ

今回はユスリカの内部発生についてのお話をさせていただきました。

いいですか、
ユスリカの発生要因は、「泥と綺麗な水」です。
ですから、これをキーワードに懐中電灯を片手に排水升を覗いて見るのもいいかもしれません。
そして、恐らくは思うと思います。
「判らん!」と(笑)。
本当に、そんなものなのです。
それくらいにユスリカの内部発生の確認は難しいし、実はそもそも工場で生きている小さな虫体を探すというのは困難なものなのです。

以上、このように、このブログでは食品衛生の最新情報や知識は勿論、その世界で長年生きてきた身だから知っている業界の裏側についてもお話しています。
明日のこの国の食品衛生のために、この身が少しでも役に立てれば幸いです。

 

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